上 下
73 / 661
第3章 王立フェブリア学院 ~ 2年生編 ~

第69話 暗躍者たち

しおりを挟む
 話が纏まった(?)ところで、落ち込みから復帰したジュディさんから、再び話が再開される。

「皆さん、先程ケビン君が言った通り、Sクラスはクラス自体を目指すものじゃありません。日々の研鑽を積み重ねていって頑張っていれば、おまけでSクラスになれる程度に考えておいて下さい。毎日の努力こそが皆さんに確かな自信を付けてくれます」

 ジュディさんが話している中、最初の話題でふと気になった事を尋ねてみる。

「なんかいい感じに、纏めに入っているところで悪いんですけど、敷地外への外出禁止令は、初等部の低学年層のみですか?」

「いえ、高等部までですね。学院部の生徒は成人した大人として見られているので、特に規制は掛けていません。自己責任といったところです。個人の能力も高いですし」

「ということは、ケビン君は、学院部の生徒並みに能力があるんですか?」

「お前は話の腰を折るのが好きだな。全然、先に進まないじゃないか。そんな事はどうでもいいだろ」

「だって、どのくらい鍛えたら自由になれるかの目標になるじゃん」

「だから、お前は筆記で引っかかるから諦めろよ」

「まぁまぁ、そう言わずに。日々の研鑽が大事なんでしょ?」

「ケビン君、話しても大丈夫ですか?」

 一応の了解を取りたいのか、ジュディがケビンに尋ねてくる。

「ある程度なら構いませんよ。代表戦では、実力を隠していたのがバレていますし」

「では、皆さんも気になっているケビン君の強さについてですが、予想でしかないのですが、少なく見てもAランク冒険者以上です。Aランク冒険者もピンキリなので実際の実力は分かりませんが」

 その回答にクラス中が騒ぎ出す。今までダラダラと過ごしている姿しか見ていなかったので、そこまで強いとは思わなかったのだろう。

 代表戦の時もEクラスの生徒が相手だったからか、判断材料としては足りなかったが、先生からの回答でケビンの強さに信憑性が増した。

「ケビン君って本当に強かったんだね。Aランク冒険者の件は盛ってたのかと思ってたのに」

「どうでもいいだろ」

「それでは、質問がなければ授業に移りたいと思います」

 それから、いつも通りの授業が始まり一日が終わるのだった。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 暗がりのとある場所で……

「学院が敷地外への外出禁止令を出した」

 それなりに身なりのいい服装をした者が報告を上げる。

「どうにか出来ないのか? 計画に支障が出るぞ」

 その報告に対して、尋ねた男も如何にも身なりのいい服装だった。

「今まで通り、攫うことが出来ないかもしれないが、他にも方法はある」

「どうするんだ?」

「王都内に住む生徒に対して、こっそりと外出許可を出す。自宅に帰るだけなら特例として認めるとな」

「それだとほとんど貴族にならないか? ことを大きくする訳にはいかない。秘密裏に動いているんだぞ?」

「貴族を狙うのは後からだ。先ずは平民だ」

 そこで新たに発言する者がいた。身なりは普通だが、堂々とした出立ちだった。

「もうどっちでもいいだろ。攫っちまえばこっちのもんだ」

 次に発言した者はどこか見窄らしい様子の男だった。

「そういう訳にはいかないだろ。バレたら計画が台無しになってしまう」

「この際、学院に侵入して攫っちまえばいいのさ。ちまちましているのは性にあわないんだよ。一気に攫ってさっさとこの国とは、おさらばすればいいのさ」

「学院への侵入は最後の手段だ。今はまだ表立って動くわけにはいかない」

「ちっ! 面白くねーな」

 それなりの身なりをした者に、見窄らしい男が悪態をつく。

「とりあえずは当初の計画通り、敷地外に出てきた初等部の低学年層を狙うとしよう。ステータスが低い分攫いやすいだろう」

「了解した。お前もそれでいいな」

「わかってるよ。こんなつまらねぇ仕事、引き受けるんじゃなかったぜ」

「状況が変わり次第、また連絡する。今日はこれで解散だ」

 如何にも身なりのいい服装をした者の発言が終わると、集まっていた者たちはそれぞれ去っていくのだった。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 学院の帰り道……

『マスター、人攫い共はどうするんですか?』

『どうもしないよ。俺に被害がある訳でもないし』

『確かにそうですね。ボッチのマスターには助ける友達もいませんしね』

『おい、友達はいるぞ』

『カトレア以外でですか?』

 ぐっ! カトレアと言おうとしたのに、先制攻撃を仕掛けてくるとは。

『ターニャさんだ』

『シーラさん繋がりですね。無駄な抵抗を』

『それにクリスも、一応は友達の範囲だ』

『基本的に年上ばかりですね。年上キラーなんですか?』

『変なこと言うな。称号に付いたらどうするんだ』

『別にいいじゃないですか。事実なんですから』

『称号欄に不名誉なのが、増えて困るのは俺だぞ』

『それよりもマスター、つけられてますよ?』

『知ってるよ。例の人攫いだろ。雑魚なんだから放っておけ』

『まぁ、あとは家に帰るだけですからね』

 最近はステータスのバランスを取るため、馬車は使わず走って通っている。敏捷が結構あるので、馬車よりかは早く着くのだ。

 走って通うなんて面倒くさいと思っていたが、ステータスが上がり始めると、少し楽しくなって三日坊主にならなくて済んだ。

 ということで今日も走るのだが、つけている奴に見られるのは癪だから、ぼちぼち【生命隠蔽】を使おうと思う。普通に門からも出してもらえないしな。

 前に出ようとしたら、危険だからという理由で通して貰えなかったのだ。それからは、門に差しかかる前にスキルを使うようにしている。

『さて、ぼちぼち門に到着するな』

『そうですね』

『そこら辺の店に入ってスキルを使うか。無駄に待ちぼうけをくらうから、隠れている奴はざまぁだな』

 適当な店に入りスキルを使うと、そのまま外に戻る。案の定、つけていた奴は、建物の陰からこちらの様子を窺っていた。

『とりあえず顔は覚えたし、気配も覚えたから問題ないだろ』

『そうですね。マヌケの気配は記録に残しておきますね』

『頼む。じゃあ、いつも通りに帰ろう』

 ケビンは門から堂々と、王都外へ出て走り出した。

『マスターがムキムキマッチョになる日も近いですね』

『ならねーよ。その前に楽する魔法を考える』

 その後も、帰りつくまではサナとの会話を楽しみながら、走っていたのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ビッチな姉の性処理な僕(R-18)

量産型774
恋愛
ビッチ姉の性処理をやらされてる僕の日々…のはずだった。 でも…

序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。 え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし

水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ ★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位! ★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント) 「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」 『醜い豚』  『最低のゴミクズ』 『無能の恥晒し』  18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。  優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。  魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。    ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。  プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。  そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。  ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。 「主人公は俺なのに……」 「うん。キミが主人公だ」 「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」 「理不尽すぎません?」  原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

死んだら男女比1:99の異世界に来ていた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?

わんた
ファンタジー
DVの父から母を守って死ぬと、異世界の住民であるイオディプスの体に乗り移って目覚めた。 ここは、男女比率が1対99に偏っている世界だ。 しかもスキルという特殊能力も存在し、イオディプスは最高ランクSSのスキルブースターをもっている。 他人が持っているスキルの効果を上昇させる効果があり、ブースト対象との仲が良ければ上昇率は高まるうえに、スキルが別物に進化することもある。 本来であれば上位貴族の夫(種馬)として過ごせるほどの能力を持っているのだが、当の本人は自らの価値に気づいていない。 贅沢な暮らしなんてどうでもよく、近くにいる女性を幸せにしたいと願っているのだ。 そんな隙だらけの男を、知り合った女性は見逃さない。 家で監禁しようとする危険な女性や子作りにしか興味のない女性などと、表面上は穏やかな生活をしつつ、一緒に冒険者として活躍する日々が始まった。

金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!

夕凪五月雨影法師
ファンタジー
AIイラストあり! 追放された世界最強の勇者が、ハーレムの女の子たちと自由気ままなスローライフを送る、ちょっとエッチでハートフルな異世界ラブコメディ!! 国内最強の勇者パーティを率いる勇者ユーリが、突然の引退を宣言した。 幼い頃に神託を受けて勇者に選ばれて以来、寝る間も惜しんで人々を助け続けてきたユーリ。 彼はもう限界だったのだ。 「これからは好きな時に寝て、好きな時に食べて、好きな時に好きな子とエッチしてやる!! ハーレム作ってやるーーーー!!」 そんな発言に愛想を尽かし、パーティメンバーは彼の元から去っていくが……。 その引退の裏には、世界をも巻き込む大規模な陰謀が隠されていた。 その陰謀によって、ユーリは勇者引退を余儀なくされ、全てを失った……。 かのように思われた。 「はい、じゃあ僕もう勇者じゃないから、こっからは好きにやらせて貰うね」 勇者としての条約や規約に縛られていた彼は、力をセーブしたまま活動を強いられていたのだ。 本来の力を取り戻した彼は、その強大な魔力と、金貨1,000万枚にものを言わせ、好き勝手に人々を救い、気ままに高難度ダンジョンを攻略し、そして自身をざまぁした巨大な陰謀に立ち向かっていく!! 基本的には、金持ちで最強の勇者が、ハーレムの女の子たちとまったりするだけのスローライフコメディです。 異世界版の光源氏のようなストーリーです! ……やっぱりちょっと違います笑 また、AIイラストは初心者ですので、あくまでも小説のおまけ程度に考えていただければ……(震え声)

18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした

田中又雄
ファンタジー
『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。 しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。 そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。 そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。 なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。 あらすじを読んでいただきありがとうございます。 併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。 より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!

処理中です...