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第2章 王立フェブリア学院 ~ 1年生編 ~

第63話 闘技大会 ~代表戦~ ⑥

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 試合を終わらせたケビンがのんびりリングを下りると、シーラとターニャが出迎える。

「お疲れ様、ケビン」

「お疲れ様ですわ、ケビン君」

「どうもありがとうございます、ターニャさん」

「ケビン? お姉ちゃんには何もないの? ……やっぱり何かしたわね、ターニャ」

 シーラから威圧を感じ取ると、ターニャがケビンを窘める。

「何もしてませんわよ。ケビン君、シーラも応援したのだからお礼を言わなきゃダメですわよ」

「すみません。姉さんも応援してくれてありがとう。あと、威圧は解こうね。迷惑かけちゃダメでしょ」

「わかったわよ、もう」

 ポカンとしている代表選手たちを他所に、目の前では奇妙な三角関係が成立していた。そのような中で勇気を振り絞ってサイモンがケビンに声を掛ける。

「ケビン君、その、お疲れ様。Eクラスに勝てて良かったよ。これで来年はEクラスだね」

「俺は別にクラスなんてどうでもいいけどな。どのクラスに所属していようが実力を隠してる奴はいるからな」

「君が言うと説得力があるね。カトレアさんもそうだったし」

「それじゃあ試合も終わったことですし、帰りますわよシーラ」

(ターニャさんグッジョブ!)

「えっ、帰るの? まだケビンと一緒にいたいんだけど」

(そこは丁重にお断りさせていただきます)

「ここに来るまではあんなに恥ずかしがっていたのが嘘みたいですわ」

「姉さん恥ずかしかったの?」

「だって、久し振りに会うから……」

「以前は出会い頭に突っ込んできてたのに、随分と萎らしくなったね」

「今年から中等部に進学したし、いつまでも子供みたいなことはできないなと思って、お姉ちゃんらしくしようと頑張ってるんだよ?」

「偉いね。是非とも尊敬できるような姉になれる様に高みを目指して頑張ってね」

「任せて! お姉ちゃんはこれからも誰にも負けない強いお姉ちゃんであり続けるわ」

「ではターニャさん、姉のことをよろしくお願いします」

「任されましたわ。帰りますわよシーラ」

「またね、ケビン! 闘技大会が落ち着いたら逢いに行くわ」

(そこは遠慮して欲しいのだが。面倒くさくならない様に先に手を打っておくか)

「ターニャさんと是非一緒に来てね。バイバイ」

 2人は仲良く喋りながら去って行き、これで落ち着けるかとケビンは思っていたがまだまだ落ち着けないようである。

「ケビン君、【氷帝】の弟だなんて聞いてないんだけど?」

 空気と化していたカトレアがジト目でケビンを睨んでくる。

「ん? 空気から戻ったのか? 姉さんにやられて随分と凹まされていたようだが?」

「誰でもそうなるよ。あの時の闘技場の惨状は見たでしょ? ビビらない方がおかしいよ」

「人によりけりだろ。ターニャさんは耐えていたじゃないか」

「同じSクラスの人でも耐えるのが精一杯なのに、今年入学した初等部の私が耐えられるわけないでしょ!」

「そもそもお前がサドンデス戦に出てれば良かっただけだろ? 大方、直前で気づいて俺に一泡吹かせようと悪巧みしたのが運の尽きだな。自業自得だろ」

「ケビン君が真面目にやってれば問題なかったのよ」

「言っただろ。俺はダラダラ過ごすことが好きなんだよ」

「こういう時までダラダラを目指さなくてもいいじゃん」

「それは俺の勝手だろ? 俺の生き方に口出しする権利がお前の何処にある?」

 余りにもズケズケと踏み込んでくるので、ケビンは軽く威圧して返答する。

「そ、それは……ないけど」

「なら、口を挟むな。嫌なら友達辞めるか?」

「それは、ヤダ!」

「なら、納得しろ。俺は俺の生きたいように生きる」

「……わかった。だから、友達は辞めない」

 姉さんと更には俺からも凹まされてカトレアは気落ちしているようで、さすがにいつもの元気はなくシュンとしていた。

「はぁ……仕方ない。カフェテリアに行ってデザートでも食べるぞ」

「何で?」

「一応、Eクラス昇格は確定したんだ。その祝いとお前が凹まされて元気がないからな。景気づけだ」

「凹ませた本人が言うかな」

「なら行かないんだな? 俺は帰るぞ」

「い、行くよ、行きます! もちろん奢りなんだからね!」

 先程とは打って変わってカトレアはテンションの上がった声を出す。

「現金なヤツめ」

 そして2人はカフェテリアに赴くのだった。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 2人が去った後、闘技場では代表選手が何とも言えない空気のまま佇んでいた。

「なぁ、俺たち空気だよな?」

「仕方ないんじゃないかな? あまり会話したこともないし」

「それなら、私たちは私たちで祝勝会でもする?」

「そうするか。カフェテリアに行こう」

「そうだね。向こうに行っても空気のままだろうし、迷惑はかからないと思うしね。何だか別の意味で疲れちゃったね」

「私も疲れちゃったから甘いものが欲しいわ」

 こうしてカフェテリアに誘われなかった3人は、疲れた様子で闘技場を後にするのだった。
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