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第2章 王立フェブリア学院 ~ 1年生編 ~
第58話 闘技大会 ~代表戦~ ①
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初日の初勝利からというもの、学院中はFクラスの話題で持ち切りだった。他のクラスの試合も見所はあったんだろうが、どの学年でも万年ビリのFクラスが初白星を上げたことに比べれば大した話題性もなかったのだろう。
何故Fクラスが万年ビリになるのかと言うと、この学院のシステムに問題があった。クラス昇格は闘技大会の他にも筆記試験で成績がよければ実技の評価と併せて吟味され、個人単位でクラスを昇格できるからだ。
そして昇格した生徒分だけ余剰が出るので下位成績者はクラスを降格する羽目になる。それによって成績不良者がFに集まる仕組みとなっている。
筆記試験が悪いだけで実技はいい成績を残す生徒がいるので一概に弱者の集まりとは言えないのだが、そういう者たちがこぞって闘技大会で奮闘するのだろう。
初勝利の後は先に脱落した生徒たちからなぜ勝てたのか守備隊の生徒たちが質問攻めにあって、その矛先がこちらに向くとFクラスの司令塔になるよう言われたが丁重にお断りした。
当然次はDクラスとの対戦になるが、Eクラスに勝てたのだから無理して勝ちに行く必要もない。クラスが一気に昇格したところで実力がないのだから現状が分相応と言うものだ。
その後の結果は残りの対戦クラスに負けて終わった。結局FクラスはEクラスに勝っただけとなる。ちなみにEクラスはうちに負けているので全敗となった。
総員戦の残り試合が消化されたことにより、次は代表戦の試合が待ち構えている。ここでも俺以外の生徒に頑張ってもらわないとダラダラ過ごせなくなってしまう。
先に3勝した方の勝ちだから最悪4番手で3勝になれば5番手希望の俺が試合に出ることはなくなり、ゆっくりと観戦でもして過ごせるというわけだ。
『サナ、今のところFクラスがEクラスに勝てる確率はどの位だ?』
『マスターを抜きにして考えると、対戦相手にもよりますが五分五分と言ったところです』
『勝率5割か……カトレアの1勝は揺るがないとして、問題はそれまでに2勝できるか否かということになるな』
『そうですね』
そこでいつもの様にジュディさんが教室へとやってくる。
「はーい、みんな席についてー」
その恒例ともなった掛け声と同時に、談笑していた生徒たちも席へと移動する。
「とうとう代表戦が始まりますが代表の生徒たちは準備万端かな? それ以外の生徒たちはしっかり応援してあげるようにね」
代表戦のメンバーは俺とカトレア以外、緊張からか表情が硬い。このままで本当に大丈夫なのだろうか?
「代表戦の順番は、サイモン君、マイク君、マルシアさん、カトレアさん、ケビン君の順番で戦ってもらいます。相手はEクラスだけど、いつもの訓練通り気負わずに戦えば勝てない相手ではないから頑張ってね」
「ケビン君が大将だね。目立ちそう」
「俺は戦わない方針で行くから残りのメンバーで3勝してくれ」
「そうならないように努力するよ」
「いや、そこはそうなるように努力してくれよ」
「1人だけ楽するとかズルいじゃん」
「何もズルくないぞ。最初から戦わないって言ってただろ?」
「もし、私の前で2勝してたら負けるからね?」
「お前が負けたら手を抜いたって思われるだろ。総員戦であれだけ無双してたんだから」
「たまたま体調が良くなかったって言えば問題ないよ」
くっ……こいつ何としてでも俺を戦わせる気だな……最近性格の悪さが表に出てきてるぞ。最初の頃の初々しさはどこへ行った?
「もしそうなったら俺も負けてやる。たまたまやる気が出ませんでしたって言ってな」
「そろそろケビン君の本気が見たいんだけどなぁ。絶対実力を隠してるでしょ?」
「隠してなどいない。俺は落ちこぼれなんだよ」
「落ちこぼれの生徒があんな的確に戦場指揮なんか取れないよ。あれで頭がいいことは確実にわかったし」
「あんなものは誰にでもできるだろ」
「できないから混成隊と攻撃隊が呆気なくやられちゃったんだよ」
「相手はEクラスなんだから仕方ないだろ」
「そのEクラス相手に全滅戦をしてのけたのはケビン君でしょ?」
「たまたまだ。それに俺は攻撃に参加してない。やったのは守備隊の連中だ」
「指揮が良かったからだよ。いい加減認めなよ、本当はやればできるんでしょ?」
「やってもできないのが俺だ」
「頑固だねー」
「お前もな」
そんなやり取りを続けていると、ジュディさんの話は既に終わっていたらしい。
「じゃあ、代表戦の選手は闘技場に行ってね。それ以外の生徒は応援席に向かうように」
ぞろぞろと教室から出ていく生徒たちを他所に、ケビンも移動を開始するのであった。
「これで勝ったらEクラスへ昇格かな?」
「勝てたらな。負けたら現状維持だろ」
「消極的だねぇ、勝ちに行こうよ」
「それなら先に3勝しろ。そしたら晴れてEクラスだ」
「んー……Eクラスに勝ちたい気持ちと、ケビン君の実力を見たい気持ちで揺らいじゃうね」
「お前がわざと負けるなら俺はすぐに降参して負けてやる」
「そう言ってる時点で真面目にやれば勝てるって言ってるようなもんだよ」
「何故そうなる?」
「勝つつもりがないってことは逆に言えば勝とうと思えば勝てるってことでしょ? 普通なら勝てるかどうかわからなくて不安になるんだし」
「実力がなくて端から勝てる気がしないと諦めることもあるだろ」
「ケビン君からはそんな感じがしないんだよ。初志貫徹でダラダラするのが最大の目的で、実力がなくて諦めてるって感じがないんだよ」
中々に鋭い奴だな。なんでFクラスにいるんだ? こいつもわざと実力を隠してないか? 総員戦でもFクラスとは思えない立ち回りをしていたし。
そのようなことを考えていたらいつの間にか闘技場についてしまった。闘技場は以前とは違い中央にリングが設置されていた。
あの上で戦えってことなのだろう。だいたい直径100m程か。わざと場外負けを狙うならリング端に行かなきゃいけないな。
「結構広いリングだねー場外へ落とすのに苦労しそうだよ」
「お前なら斬り伏せて終わりだろうに」
「そっちの方が早いしね。疲れたくないからそうするよ」
試合を見に来た観客たちも多いようで、2クラス分の人数とは言いきれない程に観客席は埋め尽くされていた。
「何でこんなにギャラリーがいるんだ? Fクラスの試合だぞ?」
「総員戦で勝っちゃったからだよ。学院中で噂になってたから知ってるでしょ? 今年のFクラスは一味違うって」
「暇な奴等だな。視線が鬱陶し過ぎる」
そんな会話をしていると、先にいた審判も準備ができたようでルール説明が行われた。
「代表戦のルールを説明する。相手選手を戦闘不能か降参させるかしたら勝ちになる。あと、場外へ落ちても負けだから注意してくれ。リング上は結界が張られていて実際に怪我をすることはないし、魔法が外部に出ることもないから心置きなく戦ってくれたまえ。代表戦の選手が先に3勝した方のクラスが勝利となる。もし最終成績で引き分けたならサドンデスで代表1人を決めて延長戦を行う。以上だ」
サドンデスがあるのか。平和的にジャンケンで決めるってことはないんだな。そもそもこの世界にジャンケンがあるかどうかは知らないが。運任せになるから採用してないのかもしれないな。
「最初の選手はリングへ上がってくれ」
審判がそう伝えるとサイモンがリングへと上がる。相手のEクラス代表も上がってきたようだ。
「よう、総員戦ぶりだな。体調は万全か? サイモン」
「オリバーか。体調は万全だ、今日はとことんやり合うぞ」
「望むところだ」
なんだ? あいつら知り合いなのか? なんか熱血っぷりが似ているな。
「それでは、第一回戦……始め!」
審判の掛け声と同時に両者の戦いの火蓋が切られた。
何故Fクラスが万年ビリになるのかと言うと、この学院のシステムに問題があった。クラス昇格は闘技大会の他にも筆記試験で成績がよければ実技の評価と併せて吟味され、個人単位でクラスを昇格できるからだ。
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当然次はDクラスとの対戦になるが、Eクラスに勝てたのだから無理して勝ちに行く必要もない。クラスが一気に昇格したところで実力がないのだから現状が分相応と言うものだ。
その後の結果は残りの対戦クラスに負けて終わった。結局FクラスはEクラスに勝っただけとなる。ちなみにEクラスはうちに負けているので全敗となった。
総員戦の残り試合が消化されたことにより、次は代表戦の試合が待ち構えている。ここでも俺以外の生徒に頑張ってもらわないとダラダラ過ごせなくなってしまう。
先に3勝した方の勝ちだから最悪4番手で3勝になれば5番手希望の俺が試合に出ることはなくなり、ゆっくりと観戦でもして過ごせるというわけだ。
『サナ、今のところFクラスがEクラスに勝てる確率はどの位だ?』
『マスターを抜きにして考えると、対戦相手にもよりますが五分五分と言ったところです』
『勝率5割か……カトレアの1勝は揺るがないとして、問題はそれまでに2勝できるか否かということになるな』
『そうですね』
そこでいつもの様にジュディさんが教室へとやってくる。
「はーい、みんな席についてー」
その恒例ともなった掛け声と同時に、談笑していた生徒たちも席へと移動する。
「とうとう代表戦が始まりますが代表の生徒たちは準備万端かな? それ以外の生徒たちはしっかり応援してあげるようにね」
代表戦のメンバーは俺とカトレア以外、緊張からか表情が硬い。このままで本当に大丈夫なのだろうか?
「代表戦の順番は、サイモン君、マイク君、マルシアさん、カトレアさん、ケビン君の順番で戦ってもらいます。相手はEクラスだけど、いつもの訓練通り気負わずに戦えば勝てない相手ではないから頑張ってね」
「ケビン君が大将だね。目立ちそう」
「俺は戦わない方針で行くから残りのメンバーで3勝してくれ」
「そうならないように努力するよ」
「いや、そこはそうなるように努力してくれよ」
「1人だけ楽するとかズルいじゃん」
「何もズルくないぞ。最初から戦わないって言ってただろ?」
「もし、私の前で2勝してたら負けるからね?」
「お前が負けたら手を抜いたって思われるだろ。総員戦であれだけ無双してたんだから」
「たまたま体調が良くなかったって言えば問題ないよ」
くっ……こいつ何としてでも俺を戦わせる気だな……最近性格の悪さが表に出てきてるぞ。最初の頃の初々しさはどこへ行った?
「もしそうなったら俺も負けてやる。たまたまやる気が出ませんでしたって言ってな」
「そろそろケビン君の本気が見たいんだけどなぁ。絶対実力を隠してるでしょ?」
「隠してなどいない。俺は落ちこぼれなんだよ」
「落ちこぼれの生徒があんな的確に戦場指揮なんか取れないよ。あれで頭がいいことは確実にわかったし」
「あんなものは誰にでもできるだろ」
「できないから混成隊と攻撃隊が呆気なくやられちゃったんだよ」
「相手はEクラスなんだから仕方ないだろ」
「そのEクラス相手に全滅戦をしてのけたのはケビン君でしょ?」
「たまたまだ。それに俺は攻撃に参加してない。やったのは守備隊の連中だ」
「指揮が良かったからだよ。いい加減認めなよ、本当はやればできるんでしょ?」
「やってもできないのが俺だ」
「頑固だねー」
「お前もな」
そんなやり取りを続けていると、ジュディさんの話は既に終わっていたらしい。
「じゃあ、代表戦の選手は闘技場に行ってね。それ以外の生徒は応援席に向かうように」
ぞろぞろと教室から出ていく生徒たちを他所に、ケビンも移動を開始するのであった。
「これで勝ったらEクラスへ昇格かな?」
「勝てたらな。負けたら現状維持だろ」
「消極的だねぇ、勝ちに行こうよ」
「それなら先に3勝しろ。そしたら晴れてEクラスだ」
「んー……Eクラスに勝ちたい気持ちと、ケビン君の実力を見たい気持ちで揺らいじゃうね」
「お前がわざと負けるなら俺はすぐに降参して負けてやる」
「そう言ってる時点で真面目にやれば勝てるって言ってるようなもんだよ」
「何故そうなる?」
「勝つつもりがないってことは逆に言えば勝とうと思えば勝てるってことでしょ? 普通なら勝てるかどうかわからなくて不安になるんだし」
「実力がなくて端から勝てる気がしないと諦めることもあるだろ」
「ケビン君からはそんな感じがしないんだよ。初志貫徹でダラダラするのが最大の目的で、実力がなくて諦めてるって感じがないんだよ」
中々に鋭い奴だな。なんでFクラスにいるんだ? こいつもわざと実力を隠してないか? 総員戦でもFクラスとは思えない立ち回りをしていたし。
そのようなことを考えていたらいつの間にか闘技場についてしまった。闘技場は以前とは違い中央にリングが設置されていた。
あの上で戦えってことなのだろう。だいたい直径100m程か。わざと場外負けを狙うならリング端に行かなきゃいけないな。
「結構広いリングだねー場外へ落とすのに苦労しそうだよ」
「お前なら斬り伏せて終わりだろうに」
「そっちの方が早いしね。疲れたくないからそうするよ」
試合を見に来た観客たちも多いようで、2クラス分の人数とは言いきれない程に観客席は埋め尽くされていた。
「何でこんなにギャラリーがいるんだ? Fクラスの試合だぞ?」
「総員戦で勝っちゃったからだよ。学院中で噂になってたから知ってるでしょ? 今年のFクラスは一味違うって」
「暇な奴等だな。視線が鬱陶し過ぎる」
そんな会話をしていると、先にいた審判も準備ができたようでルール説明が行われた。
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