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第2章 王立フェブリア学院 ~ 1年生編 ~

第34話 いざ、入学試験! ~筆記試験編~

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 翌日、朝食を摂り終えると母さんから話があった。

「今日の試験は一緒について行ってあげられないけど……1人で大丈夫?」

「大丈夫だよ。アレスが学院までは馬車で送ってくれるんだし」

「お母さん心配だわ」

「俺ももう初等部に入る年頃だよ? 1人でできないと周りに笑われてしまうよ」

「もしそうなったらすぐに言うのよ? お母さんが根絶やしにするから」

 母さん、いくらなんでも根絶やしは不味いと思うぞ。何かあっても自分で解決できるから母さんの出番はないだろうけど。

「ケビン様、そろそろ時間です」

 閉じているドアの向こう側からアレスが声をかけてきたので、俺はのんびり母さんと一緒に玄関まで向かった。

「では母さん、行ってきます」

「行ってらっしゃい。アレス、くれぐれもケビンのことはお願いするわね」

「かしこまりました」

 馬車に乗り込んだら閑静な住宅街を学院へ向けて出発する。所々に同じ様な年頃の子供がいるので、きっと試験に向かっているのだろう。

 少ししたら学院に到着したので、俺は馬車から降りて御者をしてくれたアレスに声をかける。

「じゃあ、行ってくるよ。帰りはいつ試験が終わるかわからないから迎えはいいよ。歩いて帰れるし」

「かしこまりました。奥様にもそのように伝えておきます」

「よろしく頼むよ」

 その後、アレスと別れたケビンは試験会場へと向かうのであった。

 初めて来る学院内は広々としており、入学試験会場への案内表示もきちんとされていた。恐らく迷子防止だろうがそれぐらいこの学院は広すぎるのだった。

 しばらく歩いて会場へ到着すると受付が見えたので、ケビンはそこへ向かい係の者に尋ねると名前を聞かれる。

「氏名を述べて下さい」

「ケビン・カロトバウンです」

「はい、確認しました。こちらが受験札になりますので右胸に付けておいて下さいね」

 そう言われて渡された札は円形の札に番号が書かれた簡素な物だった。ちなみに受験番号は《0301》だった。4桁あるって事はそれだけ受験者数が多いのか?

 全員合格するわけじゃないだろうから、1学年の学生はもっと少ないだろうけど。少し気になったので俺は受付の人に尋ねてみた。

「4桁の番号になっているのはそれだけ受験者がいるのですか?」

「そうですね。さすがに1日では消化しきれないので、300人ずつわけているのです。筆記と実技で150人ずつ分けて、午前・午後で入れ替えて1日で300人消化していきます。それを全員が終わるまで続けると試験期間は終わりですね」

「なんか途方もないですね」

「毎年恒例ですからもう慣れましたよ」

「お仕事が大変でしょうけど、試験を頑張るのでお姉さんも頑張ってください」

「ふふっ。貴方のような受験者は初めてですよ。大抵受験者は今から受ける試験のことで頭がいっぱいですからね」

「社会勉強の一環として受けに来ているので、そこまで気負っていないんですよ」

「受験理由も変わってるわね。とにかく頑張ってね」

「はい、ありがとうございます」

 それから案内に従って赴いた先はなんの変哲もないただの教室だった。10クラスあるので1クラス30人になると思われる。

 ケビンは自分の番号が書かれた席に座るとすることがないことに気づいてしまった。待ち時間のことまで考えていなかったのだ。

(始まるまで暇だな……)

 周りの生徒は手持ちの本を読みながら復習をしているような印象を受ける。まさに受験といった感じでケビンのアウェー感が半端ない。

 しばらくして試験官らしき人物が入ってくると、教壇の前に立って試験説明が始まった。

「試験時間は2時間だ。わかっていると思うがカンニングや不正を働いた者は即失格となり、その後の受験資格も未来永劫剥奪だ。愚かな真似はするなよ?

 途中退席は1時間経過した後から許可する。その時は知らせるので試験用紙を裏返して退出するように。なお、試験中の再入室は禁止だ。再度入ってもいい頃合は扉を解放しておくので、それを目安にするように。

 それから午後からは実技に入るので、昼食を摂ったら再度この場にいるように。集まり次第、実技試験場へ案内する。

 では試験用紙を裏側のまま配るので、開始の合図をするまではそのままの状態で伏せておくように」

 そう言うと試験官は答案用紙を配りだした。1人1人配っていくあたり、不正に注意しているようだ。開始までは紙にすら触れさせないのか。徹底しているな。

「それでは、始め!」

 その合図とともに一斉に紙を裏返す音は、中々懐かしいものを感じた。それにしても2時間もあるなんて相当難しい問題なのだろう。当初の予定通り筆記試験は捨てるしかないな。

 そのようなことをケビンは考えながらボケーっと答案用紙の問題に目を通すと、そこには足し算が書かれていた。

『!!』

 えっ!? 何これ? 足し算だよな? 間違ってないよな? 簡単すぎやしないか? 俺だけ問題用紙を間違えてるのか? 周りを確認しようにもカンニング扱いされてしまうし、どうやって確認しようか……

『マスター、それで合ってますよ』

『えっ!?』

『マスターは転生者なんだから簡単で当たり前でしょ。普通の人は足し算なんてあまり知らずに試験を受けたりするんですから』

 そうだった……普通の6歳児は足し算なんかあまり知らないよな。英才教育を受けてるやつは別だろうが。当たり前のことを忘れてたな。

 まぁ、1枚目は簡単で良かった。これならそこそこの点数は取れるだろう。50問もあって飽きそうだが。

 ケビンはのんびり解答を書いていき、50問解き終わってから2枚目に移る。

『……』

 次は引き算だった。

 何これ? こんなんでいいの? これなら普通に合格しちゃうよ? 仕方がないから引き算ものんびり解いていく。

 3枚目……掛け算でした。なんだろうこの脱力感……この流れでいけば次は割り算か?

 4枚目……案の定、割り算でした。四則演算は確かに普通の6歳児にしてみれば難問になるのかもしれないが、前世の記憶がある以上、俺には苦痛でしかない。

 悩む要素がないのだ。もうすでにこの試験は消化試合と化している。せめて5枚目からは別のに変わってくれ。

 5枚目……絵が描いてあってそれが何か答える問題だった。食べ物だったり、動物だったり、色々と……

 もう、なんか別の意味でやる気をなくしていく感じだ。さすがに絵が書いてあるので15問しか載ってなく50問なかったのだけがせめてもの救いだった。

 そう思っていた時期が私にもありました……

 6枚目……さっきの続きだった。きっちり落としてきたな。希望を持たせやがって。

 7枚目……さらに続く……もう、分かってますよ。次もなんでしょ?

 8枚目……きっちり50問。もう打ち止めだ。俺はやり切った。

 9枚目……ジャンル的には一般常識か? ようやく頭を悩ませる問題が出てきた。やっと、試験らしくできるな。

 まずは……この国の名前? まぁ、最初だしな簡単なやつにしたんだろ。次は……国王の名前? 国の名前ときたら次はこうなるよな。まだ序盤だし、期待を持とうじゃないか。

 結局、当たり前のことを聞かれていただけで25問終わってしまった。

 10枚目……予想通り、当たり前のことを残り25問解いただけだった……

 終わった……何だこの脱力感……やり切った感じじゃないタイプの疲れ方だ。そうだよな6歳児に解かせるんだもんな。大人が解くような問題とか出るわけないよな。そもそも異世界の教養が日本みたいに進んでいるとも思えないし。

 もう疲れたから寝よう。開始から1時間もかからなかったし、無駄に問題数が多かっただけで疲労感が半端ない状態だ。主に心労が……

 俺はやることがなくなり机に突っ伏してふて寝した。周りには諦めたと思われてるんだろうが、俺には関係ない。俺は疲れたのだ、寝かせてくれ……

 どうやらスヤスヤと寝ていたらしく、不意に起こされてしまった。

「君、1時間経過したよ。退出するかね?」

「ん……」

 あぁ、そういえば試験中だったか。マジ寝していたみたいだ。ここにいても仕方がないから出るとするか。

「はい、出ます」

「また、来年頑張りたまえ」

「?」

 試験官にそう言われたが、もしかして試験中に寝てはいけないとか決まりとかがあったのだろうか。もしそうなら試験は落ちたな。まぁ、どうでもいいが。

「はぁ」

 俺は曖昧な返事を返しつつ教室を出たのだった。

 さて、少し早いが気分転換がてら街にでも出てご飯でも食べるかな。
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