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第1章 異世界転生
第23話 哀れ襲撃者
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時は襲撃者が動き出す前まで遡り、ケビンはサナに警戒させながらもご飯を食べていた。
仕方ないのだよ……晩ご飯を食べていないのだから……お腹が空くのだよ。
しかも母さんが取り分けてくれた料理は、どれも俺好みとなっている。流石は母さんだ。非の打ちどころがない。
「それにしてもあのネズミさんは、挨拶に行く時にでも実行に移すのかしら? 警戒が緩くなったところを狙うなんて中々の計画性ね」
「そうですね。毎年恒例ともなると警戒もそれなりに緩くはなりますよ。同じことの繰り返しですから。なおかつ挨拶に来るのも子供連れの親ですし、子供には警戒が薄まりますからね」
「ケビンは聡明ね。そんなところまで考えが及ぶのだから」
「そんなことはないですよ。一般論です」
それにしても襲撃されるとは何か恨みでも買っているのかな? まぁ、王家だったら恨みとか関係なく狙われそうだけど。
それに比べ俺は男爵家ではあるが普通の家庭に生まれてよかった。ソフィには感謝だな。
そのようなことを考えていると、サナから報告があがる。
『襲撃者が動くみたいですよ。見た感じナイフで襲うみたいですね』
『そうか、わかった』
“見た感じ”って、そもそもサナはどうやって見ているのだろうか? システムだから体とかないはずなんだが。
なんてことを考えていると、ホールの方から女の人の叫び声が聞こえる。
……始まったか。
それにしてもこの肉料理は美味いな。白いご飯が欲しいところだ。とりあえず口の中のものを飲み込んでから、俺は母さんに話しかける。
「どうやら、始まったようですね」
「そうね。是非とも騎士には頑張って欲しいところではあるけど、大丈夫かしら? 反応できていないように見えるわ」
襲撃者の先には王女がいた。襲撃者は王女狙いなのか? あらら、王女は顔が恐怖で染まってるぞ。折角の可愛い顔が台無しだな。
護衛騎士は一体何をしているのかね? 護衛できていないし名前負けしてるな。
とりあえずバレないように助けるつもりだけど……笑いかけとくか? 少しは安心するだろう。
さて、どうやって助けるかだが……ここから走った所で間に合わないし、助けたのがバレバレになっちゃうから魔法でも使うか。刺されないようにするためには壁が必要だな。
土魔法だと透過しないから死角ができてしまうし、風魔法だとあたり一帯吹き飛ばしそうだし、ここはやはり水魔法でちょいちょいっと氷の壁でも作りますかね。
もうすぐ王女の所に到達しそうだな。本当に役に立ってないな騎士は。あぁ、王女は諦めて目を瞑っちゃった。
見ていないなら今のうちに魔法使ってしまうか。無詠唱はまだ覚えてないから、いつも通りサナにサポートを任せよう。
『《アイスウォール》』
ついでに襲撃者も動けないようにしておくか。
『《アイスロック》』
口に出して呪文詠唱した訳でもないし、これで誰も俺が魔法を使ったことはわかるまい。さて、楽しい食事の時間にでも戻りますかね。
「ケビンったら、いつの間に魔法を使える様になったの? お母さん、ビックリしたわよ」
あれ? こっそり使ったのに何でバレているんだ……ヤバくないか? これ。
『サナえも~ん! ヘルプ!』
『ボク、サナえもん。どうしたんだい? ケビ太君』
『母さんが魔法使ったのに感づいたんだよ。便利な魔法を出してくれよ』
『それは魔力の流れを感じ取ったんだから仕方ないよ』
『そんな事が出来るんだったら、最初から教えてくれよ』
『呪文詠唱のサポートにまわってたから仕方ないじゃないですか! それが嫌なら【無詠唱】を覚えて魔力を隠蔽して下さい』
それもそうか……結局、迂闊な俺が悪いのね。
「ケビン? 黙っているけどお母さんに隠し事するの? 悲しいわ」
「え、えっとね、前にね、魔法使いたいなぁって思って、試行錯誤してたらできたからどう説明したら上手く伝わるか考えてたんだよ」
バレないような必死な言い訳をしてしまい、ついつい口調がおかしくなってしまった。
「あら、そうなの? 別に不思議なことじゃないわ。素質のある人はそうやって魔法を覚えていくのよ?」
「えっ!? そうなんですか? 魔法使いの弟子になるとか、学校で専門的なことを教わるとか、そんなことをしないといけないと思ってました」
意外となんとかなったみたいで、おかしくなった口調が戻せた。別に不思議なことではなかったらしい。無駄に焦って損した気分だ。
「まぁ、普通はそうなるわね。でもケビンは素質があったから独学でいけたのよ」
「そうなんですね。教えていただきありがとうございます。てっきり自分が異常なのだと思って話してませんでした」
「ケビンが異常なわけないわ。私の可愛い子供なのよ? ケビンを“異常だ”なんて言う人がいたら、お母さんが生まれてきたことを後悔させてあげるわ」
やはり母さんを怒らせると怖いようだ。生まれてきたことを後悔させるって一体なにをするつもりなんだ? 聞くだけで後悔しそうな雰囲気なんだが。
そうこうしているうちに襲撃者は捕えられたようだ。ようやく働いたのか護衛騎士よ。遅すぎやせんかね。
「予定外のことも起きたし、もうお開きになるみたいね。帰りましょうか、ケビン」
「はい、母上」
こうして襲撃者は何もすることなく、お縄についたのだった。色々と計画を練った上での襲撃だったんだろうが、無駄になったな。
哀れ、襲撃者よ……極刑は免れないだろうから安らかに眠るといい。
仕方ないのだよ……晩ご飯を食べていないのだから……お腹が空くのだよ。
しかも母さんが取り分けてくれた料理は、どれも俺好みとなっている。流石は母さんだ。非の打ちどころがない。
「それにしてもあのネズミさんは、挨拶に行く時にでも実行に移すのかしら? 警戒が緩くなったところを狙うなんて中々の計画性ね」
「そうですね。毎年恒例ともなると警戒もそれなりに緩くはなりますよ。同じことの繰り返しですから。なおかつ挨拶に来るのも子供連れの親ですし、子供には警戒が薄まりますからね」
「ケビンは聡明ね。そんなところまで考えが及ぶのだから」
「そんなことはないですよ。一般論です」
それにしても襲撃されるとは何か恨みでも買っているのかな? まぁ、王家だったら恨みとか関係なく狙われそうだけど。
それに比べ俺は男爵家ではあるが普通の家庭に生まれてよかった。ソフィには感謝だな。
そのようなことを考えていると、サナから報告があがる。
『襲撃者が動くみたいですよ。見た感じナイフで襲うみたいですね』
『そうか、わかった』
“見た感じ”って、そもそもサナはどうやって見ているのだろうか? システムだから体とかないはずなんだが。
なんてことを考えていると、ホールの方から女の人の叫び声が聞こえる。
……始まったか。
それにしてもこの肉料理は美味いな。白いご飯が欲しいところだ。とりあえず口の中のものを飲み込んでから、俺は母さんに話しかける。
「どうやら、始まったようですね」
「そうね。是非とも騎士には頑張って欲しいところではあるけど、大丈夫かしら? 反応できていないように見えるわ」
襲撃者の先には王女がいた。襲撃者は王女狙いなのか? あらら、王女は顔が恐怖で染まってるぞ。折角の可愛い顔が台無しだな。
護衛騎士は一体何をしているのかね? 護衛できていないし名前負けしてるな。
とりあえずバレないように助けるつもりだけど……笑いかけとくか? 少しは安心するだろう。
さて、どうやって助けるかだが……ここから走った所で間に合わないし、助けたのがバレバレになっちゃうから魔法でも使うか。刺されないようにするためには壁が必要だな。
土魔法だと透過しないから死角ができてしまうし、風魔法だとあたり一帯吹き飛ばしそうだし、ここはやはり水魔法でちょいちょいっと氷の壁でも作りますかね。
もうすぐ王女の所に到達しそうだな。本当に役に立ってないな騎士は。あぁ、王女は諦めて目を瞑っちゃった。
見ていないなら今のうちに魔法使ってしまうか。無詠唱はまだ覚えてないから、いつも通りサナにサポートを任せよう。
『《アイスウォール》』
ついでに襲撃者も動けないようにしておくか。
『《アイスロック》』
口に出して呪文詠唱した訳でもないし、これで誰も俺が魔法を使ったことはわかるまい。さて、楽しい食事の時間にでも戻りますかね。
「ケビンったら、いつの間に魔法を使える様になったの? お母さん、ビックリしたわよ」
あれ? こっそり使ったのに何でバレているんだ……ヤバくないか? これ。
『サナえも~ん! ヘルプ!』
『ボク、サナえもん。どうしたんだい? ケビ太君』
『母さんが魔法使ったのに感づいたんだよ。便利な魔法を出してくれよ』
『それは魔力の流れを感じ取ったんだから仕方ないよ』
『そんな事が出来るんだったら、最初から教えてくれよ』
『呪文詠唱のサポートにまわってたから仕方ないじゃないですか! それが嫌なら【無詠唱】を覚えて魔力を隠蔽して下さい』
それもそうか……結局、迂闊な俺が悪いのね。
「ケビン? 黙っているけどお母さんに隠し事するの? 悲しいわ」
「え、えっとね、前にね、魔法使いたいなぁって思って、試行錯誤してたらできたからどう説明したら上手く伝わるか考えてたんだよ」
バレないような必死な言い訳をしてしまい、ついつい口調がおかしくなってしまった。
「あら、そうなの? 別に不思議なことじゃないわ。素質のある人はそうやって魔法を覚えていくのよ?」
「えっ!? そうなんですか? 魔法使いの弟子になるとか、学校で専門的なことを教わるとか、そんなことをしないといけないと思ってました」
意外となんとかなったみたいで、おかしくなった口調が戻せた。別に不思議なことではなかったらしい。無駄に焦って損した気分だ。
「まぁ、普通はそうなるわね。でもケビンは素質があったから独学でいけたのよ」
「そうなんですね。教えていただきありがとうございます。てっきり自分が異常なのだと思って話してませんでした」
「ケビンが異常なわけないわ。私の可愛い子供なのよ? ケビンを“異常だ”なんて言う人がいたら、お母さんが生まれてきたことを後悔させてあげるわ」
やはり母さんを怒らせると怖いようだ。生まれてきたことを後悔させるって一体なにをするつもりなんだ? 聞くだけで後悔しそうな雰囲気なんだが。
そうこうしているうちに襲撃者は捕えられたようだ。ようやく働いたのか護衛騎士よ。遅すぎやせんかね。
「予定外のことも起きたし、もうお開きになるみたいね。帰りましょうか、ケビン」
「はい、母上」
こうして襲撃者は何もすることなく、お縄についたのだった。色々と計画を練った上での襲撃だったんだろうが、無駄になったな。
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