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第1章 異世界転生
第9話 誕生
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次の日の朝、というか朝なのかどうかも此処では分からないが……目覚めた後に身支度を整えて2人でダイニングへ向かい軽い食事を終えると、とうとう転生の時がやってきた。
「もうやり残したことはない?」
「ないと言えば嘘になるが、いつまでもここにいる訳にはいかないだろ?」
「それもそうだけど、健が望むなら転生しないでここに残ることも可能よ?」
「それはありがたい申し出だがそういう訳にもいかないだろ? ソフィーリアがせっかく作ってくれた機会だ。きちんと転生して新たな人生を楽しんでみるよ」
「ちなみに転生先は生まれてからのお楽しみだから、今は言わないでおくわね」
そう言って微笑むソフィの顔はどこか悲しげだった。
「そんな悲しい顔をしないでくれ。決心が鈍るから笑って送り出してくれないか? ソフィの笑顔は格別だからな。愛する妻の笑顔を見ながら転生したいんだ」
「いつも甘い言葉に乗せられると思ったら大間違いよ」
「そう言いつつニヤニヤしているのは、何処の誰かな?」
「ふふっ、やっぱりあなたといると楽しいわ。さぁ、お別れの時間よ。これから第2の人生を楽しんでね。愛してるわ、健」
「あぁ、精一杯楽しんでみるよ。愛してるよ、ソフィ」
健の足元に魔法陣が現れると光を放ち始めて、視界いっぱいに光が満ちると健の意識はそこで途絶えた。
「頑張ってね、健。いつまでもあなたの人生に幸あらんことを願っているわ」
そしてソフィーリアは暫く健のいなくなった場所を眺め続けた。時が経つのも忘れて……
「さぁーて、仕事でも再開しましょうかね。あまり溜め込むと健に逢いに行けなくなっちゃうし」
それからのソフィーリアは、寂しさを紛らわすかのように仕事に励むのであった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
時は経ち、とある執務室で。
「旦那様、元気な男の子が産まれました! 母子ともに健康です」
「それは本当か!? よし、仕事は後回しだ!」
仕事を一旦切り上げて廊下を歩いて行く中年男性の後ろに、報告へ来ていたメイドも遅れぬようについて行く。
(バタンっ!)
勢いよく扉を開けて部屋の中へ入ると、ベッドで休んでいる女性の傍らへと歩みを進めていく。
「あなた……そんなに騒がしくしてはこの子が目を覚ましてしまいますよ?」
「おぉ、すまん。嬉しくてついつい、な。それはそうとして我が子の顔をよく見せてくれ」
「どうぞ、お抱きになって。今はスヤスヤと眠っていますから」
「お前に似て綺麗な顔立ちだな。将来はきっと女泣かせになるだろう」
「目元とかはあなたにそっくりですよ」
「そうかそうか、私に似ているのか。今はまだ小さいが将来はきっと立派な男に育ってくれるだろう。大きくなるのが楽しみだな」
「あなた、早く可愛いわが子の名前をお決めになって」
「うむ。そうだなぁ……ケビンにしよう! 今日からお前はケビンだ!」
「まぁ、素敵な名前ですこと。我がカロトバウン家にピッタリですね」
メイドが部屋の隅で控える中、2人は我が子を抱きながら暫く歓談したのであった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
それから数年の月日が経過して家族に囲まれながら楽しく過ごしていたケビンは、大した病気もせずにすくすくと育っていった。
とある日の朝、俺はいつも通りソファで寛いでいたら母さんがやってきて隣へ座った。
「今日はケビンの3歳の誕生日ですよ。夜にはご馳走がいっぱい出るから楽しみにしててね」
「ありがとう、母さん。今から楽しみだよ」
「相変わらずケビンは落ち着いているわね。とても3歳には見えないわ。大人びているケビンも素敵だけど、お母さんとしては歳相応のケビンをもっと見てみたいわ」
母さんには申し訳ないが歳相応の対応というのは難しい。子供っぽい行動が取れるように努力はしているのだが、何せ前世の記憶を持ったまま転生したからな。如何せん恥ずかしい場合がある。
この世界に生まれてからというもの、最初の方はとても苦労したものだ。自分の意思で動けなかったり言葉を話せないのは当たり前なのだが、それ故にトイレに行けずオムツの中に垂れ流すという行為になり、とても気持ちが悪かった。そんな時は泣いてアピールをするとすぐに交換してもらったのだが。
1番の苦行はやっぱり食事だろう。俺からしてみれば母親の母乳を飲むというのは、食事であると理解していてもドキドキするものだ。
いくら母親だと言われても感覚的には若い女性の胸にむしゃぶりつくわけだからな。
とある人種には「ご褒美です!」と言って喜びそうなものだが、俺にはドキドキして理性を保つのに苦労するばかりで無理だった。ある程度成長して離乳食になった時はとても嬉しかったものだ。
「それと今日は3歳になったから教会へ行って《洗礼》を受けなきゃいけないわ。準備が出来たら出発するわよ」
「洗礼って何?」
「神様にお祈りして加護を頂くのよ。加護と言っても何かあるわけではないわ。神様へ無事に成長出来たことへの感謝をするの。たまに洗礼の時に加護がつく人もいるけど滅多にいないわ。殆どの人は祝福されて終わりよ」
「へぇー、加護ってどんなのがあるの?」
「そうねぇ……剣術だったら【剣術神の加護】、魔法だったら【魔法神の加護】、商売だったら【商業神の加護】、他にも色々あるだろうけどそれぞれの道を頑張っていたらいつの間にか加護がついてるって感じなのよ」
そうか……この世界は色々な神様がいるんだな。勉強とか面倒くさくてしなかったからそこら辺の知識がないのが痛い。
それに生まれてからは魔力操作の練習ばかりしてたしな。【創造】を使うのには必要不可欠なスキルだし仕方ない。
「母さんは何か加護を持ってるの?」
「ふふっ、気になる? 見てみたい?」
母さんは聞かれたのが嬉しいのか、ニコニコしながら返答を煽ってくる。
そもそも加護って簡単に見れるのか? 話の流れ的に教会へ行かないとわからないと思い込んでいたんだが。
洗礼で加護がつく人もいるって言ってたしな、ここはとりあえず母さんの望み通りに子供っぽく答えてみよう。おねだりする子供のようにはしゃぐ感じで。
「見たい! 気になるから見せて!」
「もうやり残したことはない?」
「ないと言えば嘘になるが、いつまでもここにいる訳にはいかないだろ?」
「それもそうだけど、健が望むなら転生しないでここに残ることも可能よ?」
「それはありがたい申し出だがそういう訳にもいかないだろ? ソフィーリアがせっかく作ってくれた機会だ。きちんと転生して新たな人生を楽しんでみるよ」
「ちなみに転生先は生まれてからのお楽しみだから、今は言わないでおくわね」
そう言って微笑むソフィの顔はどこか悲しげだった。
「そんな悲しい顔をしないでくれ。決心が鈍るから笑って送り出してくれないか? ソフィの笑顔は格別だからな。愛する妻の笑顔を見ながら転生したいんだ」
「いつも甘い言葉に乗せられると思ったら大間違いよ」
「そう言いつつニヤニヤしているのは、何処の誰かな?」
「ふふっ、やっぱりあなたといると楽しいわ。さぁ、お別れの時間よ。これから第2の人生を楽しんでね。愛してるわ、健」
「あぁ、精一杯楽しんでみるよ。愛してるよ、ソフィ」
健の足元に魔法陣が現れると光を放ち始めて、視界いっぱいに光が満ちると健の意識はそこで途絶えた。
「頑張ってね、健。いつまでもあなたの人生に幸あらんことを願っているわ」
そしてソフィーリアは暫く健のいなくなった場所を眺め続けた。時が経つのも忘れて……
「さぁーて、仕事でも再開しましょうかね。あまり溜め込むと健に逢いに行けなくなっちゃうし」
それからのソフィーリアは、寂しさを紛らわすかのように仕事に励むのであった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
時は経ち、とある執務室で。
「旦那様、元気な男の子が産まれました! 母子ともに健康です」
「それは本当か!? よし、仕事は後回しだ!」
仕事を一旦切り上げて廊下を歩いて行く中年男性の後ろに、報告へ来ていたメイドも遅れぬようについて行く。
(バタンっ!)
勢いよく扉を開けて部屋の中へ入ると、ベッドで休んでいる女性の傍らへと歩みを進めていく。
「あなた……そんなに騒がしくしてはこの子が目を覚ましてしまいますよ?」
「おぉ、すまん。嬉しくてついつい、な。それはそうとして我が子の顔をよく見せてくれ」
「どうぞ、お抱きになって。今はスヤスヤと眠っていますから」
「お前に似て綺麗な顔立ちだな。将来はきっと女泣かせになるだろう」
「目元とかはあなたにそっくりですよ」
「そうかそうか、私に似ているのか。今はまだ小さいが将来はきっと立派な男に育ってくれるだろう。大きくなるのが楽しみだな」
「あなた、早く可愛いわが子の名前をお決めになって」
「うむ。そうだなぁ……ケビンにしよう! 今日からお前はケビンだ!」
「まぁ、素敵な名前ですこと。我がカロトバウン家にピッタリですね」
メイドが部屋の隅で控える中、2人は我が子を抱きながら暫く歓談したのであった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
それから数年の月日が経過して家族に囲まれながら楽しく過ごしていたケビンは、大した病気もせずにすくすくと育っていった。
とある日の朝、俺はいつも通りソファで寛いでいたら母さんがやってきて隣へ座った。
「今日はケビンの3歳の誕生日ですよ。夜にはご馳走がいっぱい出るから楽しみにしててね」
「ありがとう、母さん。今から楽しみだよ」
「相変わらずケビンは落ち着いているわね。とても3歳には見えないわ。大人びているケビンも素敵だけど、お母さんとしては歳相応のケビンをもっと見てみたいわ」
母さんには申し訳ないが歳相応の対応というのは難しい。子供っぽい行動が取れるように努力はしているのだが、何せ前世の記憶を持ったまま転生したからな。如何せん恥ずかしい場合がある。
この世界に生まれてからというもの、最初の方はとても苦労したものだ。自分の意思で動けなかったり言葉を話せないのは当たり前なのだが、それ故にトイレに行けずオムツの中に垂れ流すという行為になり、とても気持ちが悪かった。そんな時は泣いてアピールをするとすぐに交換してもらったのだが。
1番の苦行はやっぱり食事だろう。俺からしてみれば母親の母乳を飲むというのは、食事であると理解していてもドキドキするものだ。
いくら母親だと言われても感覚的には若い女性の胸にむしゃぶりつくわけだからな。
とある人種には「ご褒美です!」と言って喜びそうなものだが、俺にはドキドキして理性を保つのに苦労するばかりで無理だった。ある程度成長して離乳食になった時はとても嬉しかったものだ。
「それと今日は3歳になったから教会へ行って《洗礼》を受けなきゃいけないわ。準備が出来たら出発するわよ」
「洗礼って何?」
「神様にお祈りして加護を頂くのよ。加護と言っても何かあるわけではないわ。神様へ無事に成長出来たことへの感謝をするの。たまに洗礼の時に加護がつく人もいるけど滅多にいないわ。殆どの人は祝福されて終わりよ」
「へぇー、加護ってどんなのがあるの?」
「そうねぇ……剣術だったら【剣術神の加護】、魔法だったら【魔法神の加護】、商売だったら【商業神の加護】、他にも色々あるだろうけどそれぞれの道を頑張っていたらいつの間にか加護がついてるって感じなのよ」
そうか……この世界は色々な神様がいるんだな。勉強とか面倒くさくてしなかったからそこら辺の知識がないのが痛い。
それに生まれてからは魔力操作の練習ばかりしてたしな。【創造】を使うのには必要不可欠なスキルだし仕方ない。
「母さんは何か加護を持ってるの?」
「ふふっ、気になる? 見てみたい?」
母さんは聞かれたのが嬉しいのか、ニコニコしながら返答を煽ってくる。
そもそも加護って簡単に見れるのか? 話の流れ的に教会へ行かないとわからないと思い込んでいたんだが。
洗礼で加護がつく人もいるって言ってたしな、ここはとりあえず母さんの望み通りに子供っぽく答えてみよう。おねだりする子供のようにはしゃぐ感じで。
「見たい! 気になるから見せて!」
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