18 / 55
第二章 降霊あそびと秘密の小部屋
第五話 誘拐と謎の少年
しおりを挟む
……わからない。
錯乱した青年を母親と医者に任せた私達は、彼の家を辞した後、村の宿屋に落ち着いていた。
夜になってから例の小屋へ行くのは危険だと判断したためである。当然、ルードとは別部屋だ。
かつて小屋で亡くなったのは病気の母親。しかし青年が目撃したのはその娘。――名前は、『ネル』というらしい。
少女が引っ越し先で亡くなっていたとして、何故、以前住んでいた家なんかに出てくるのだろう。
ただでさえヨナス氏の死についてもわからないのに、余計にこんがらがってきてしまった。
「いま、あれこれ考えても、意味ないかなぁ……」
独り言を言いながら、ごろごろと寝返りをうつ。
転がりながら、左手の薬指に視線をやった。
そこには、ルードにもらった指輪が光っている。……お守り、か。なら、つけたまま寝ちゃっても大丈夫……だよね?
赤い宝石が、照明の光を拾ってキラリと輝いた。その色を見ていると、不思議と落ち着いてくる。
「……おやすみ。ルード」
目を閉じる。疲れた体はすぐに眠りの世界へと引きずり込まれていった。
*****
……身体の痛みで、目が覚めた。
「……ッ!?」
声が出ない。目も見えない。……起き上がろうにも、身体が動かない。どうやら両手両足を縛られて転がされているようだ。と、なると……目隠しと猿ぐつわもされているのだろうか。
「おや、起きてしまいましたか」
すぐ近くから声がした。……聞き覚えのある、粘着質で、嫌な声だ。高級そうな葉巻の残り香が漂ってくる。どこかで嗅いだことのある匂いだ。
「いえね、万が一にでも、真実に辿り着かれたら困るんですよ。なので、貴女にはここで退場してもらおうかと。……そうすればあの男も調査どころじゃなくなるでしょう」
足音が、私から離れていく。コツ、コツと、階段を登る音と、扉か何かを開ける音。そして
「お嬢さんは美人さんですからなぁ。大金払ってでも欲しい人は沢山おるでしょう。……しばらく、ここで待っていてくださいねぇ」
それを最後に、声は消えた。
*****
「ンンンんんん!!!!」
声の主が去った後、私はどうにかして縄を抜けられないか身を捩っていた。……抜けない。
途方にくれ始めたとき、控えめな声が聞こえてきた。
「……大丈夫か……?」
少年。男の子の声だ。コクコクと頷くと、躊躇うような間の後、拘束が解かれる。……助かった。ぷは、と深呼吸をして、起き上がる。
「……あなた、誰?……ここは……どこ……?」
そこには一人の少年がいた。十二、三歳くらいだろうか。少年は私を見下ろすと「ナハト」と名乗った。
「ここは……俺んち。の、地下。今は……さっき姉ちゃんを運んできたオッサンに閉じ込められてる」
周りを見渡してみる。ひとつだけランプの光が灯っていて、辛うじて周囲の様子が見て取れた。ナハトの言を信じるなら、石造りの地下室のようだ。
ナハトは忌々しそうに天井を睨みつける。
「地上への蓋に、重しかなんか置かれてんだ。いくら押しても開かない」
「そうなんだ……。ねぇ、なんであなたは閉じ込められたの?」
「……言いたくない。そっちこそ何やったんだ?」
「悪いことはしてないわ。むしろさっきのオッサンが悪の親玉なのよ」
「……ふは、なんだよ、悪の親玉って」
私の言葉に、ナハトは初めて笑うと、再び真顔になる。
「ここに閉じ込められて三日になるんだ。水と食料はまだあるけど、姉ちゃんの分も考えるとちょっと怪しい。それにあのオッサンがいつ戻ってくるかもわかんねえし、早く脱出しないと」
「そうなの……わかった。協力するわ」
ナハトに右手を差し出す。少し戸惑ったようだったが、すぐに頷いて私の手を握り返した。……しっかりした子だけど、手の大きさはやっぱり年下だ。私がなんとかしないと。
そう思いながら、視線を上げて息を呑む。
部屋の隅、ナハトの肩越しに。少女が一人立っていた。
幼い女の子だ。ナハトより少し年下だろう。シンプルなワンピースを身にまとい、おかっぱにした前髪の下から虚ろな瞳がこちらを見ている。
少し傾げて、あらわになった細い首筋から……おびただしいほどの血を流しながら。
「……?なんだ?何かあるのか?」
ナハトが振り向く。しかし彼には何も見えていないらしい。だとすれば……彼女は、この世のものではない。
ナハトの問いかけを無視して、少女を観察する。首の他に、右腕にも刺し傷が見て取れた。……痛々しい姿に眉をひそめる。少女は口を動かして……何かを言っている?
――聞こえない。どうしてだろう。
……もしかして、ルードがいないから?
私が聞こえていないことを察したのだろう。少女は少し悲しそうに顔を歪める。そうして、地下室の奥の……床を指さして、消えた。
「なあ!なんなんだよ、アリー姉ちゃん、どうしたの?」
「……うん。奥に、何かあるかも」
暗い中、躓かないように注意しながら、少女が消えた部屋の奥へと歩みを進める。膝をつき、床の上を見回す。
「……これ……!」
部屋の隅、一段と暗がりになっている場所に何かが落ちていた。……小さな瓶だ。中には赤色のドロリとした液体が満ちている。
そしてその瓶には、七色に光る粉が付着していた。
私の手元を覗き込んだナハトが、その瓶を見て息を呑んだ。
「……なんでまだ、それがここに」
「ナハト、あなた……、これが何か知ってるの?」
ナハトは答えない。でも、顔面蒼白で震えている。……怯えてる。これが何か……どれだけ忌まわしいものか。知ってるのは、間違いない。
――この……妖精を使って作った奇跡の薬のことを。
「……困りますなあ。勝手に動き回られては」
背後から、嫌味ったらしい声がした。
いつのまにか、天井の蓋が開いている。
階段の下にいたのは予想通り――騎士団の、ジェラルドだった。
錯乱した青年を母親と医者に任せた私達は、彼の家を辞した後、村の宿屋に落ち着いていた。
夜になってから例の小屋へ行くのは危険だと判断したためである。当然、ルードとは別部屋だ。
かつて小屋で亡くなったのは病気の母親。しかし青年が目撃したのはその娘。――名前は、『ネル』というらしい。
少女が引っ越し先で亡くなっていたとして、何故、以前住んでいた家なんかに出てくるのだろう。
ただでさえヨナス氏の死についてもわからないのに、余計にこんがらがってきてしまった。
「いま、あれこれ考えても、意味ないかなぁ……」
独り言を言いながら、ごろごろと寝返りをうつ。
転がりながら、左手の薬指に視線をやった。
そこには、ルードにもらった指輪が光っている。……お守り、か。なら、つけたまま寝ちゃっても大丈夫……だよね?
赤い宝石が、照明の光を拾ってキラリと輝いた。その色を見ていると、不思議と落ち着いてくる。
「……おやすみ。ルード」
目を閉じる。疲れた体はすぐに眠りの世界へと引きずり込まれていった。
*****
……身体の痛みで、目が覚めた。
「……ッ!?」
声が出ない。目も見えない。……起き上がろうにも、身体が動かない。どうやら両手両足を縛られて転がされているようだ。と、なると……目隠しと猿ぐつわもされているのだろうか。
「おや、起きてしまいましたか」
すぐ近くから声がした。……聞き覚えのある、粘着質で、嫌な声だ。高級そうな葉巻の残り香が漂ってくる。どこかで嗅いだことのある匂いだ。
「いえね、万が一にでも、真実に辿り着かれたら困るんですよ。なので、貴女にはここで退場してもらおうかと。……そうすればあの男も調査どころじゃなくなるでしょう」
足音が、私から離れていく。コツ、コツと、階段を登る音と、扉か何かを開ける音。そして
「お嬢さんは美人さんですからなぁ。大金払ってでも欲しい人は沢山おるでしょう。……しばらく、ここで待っていてくださいねぇ」
それを最後に、声は消えた。
*****
「ンンンんんん!!!!」
声の主が去った後、私はどうにかして縄を抜けられないか身を捩っていた。……抜けない。
途方にくれ始めたとき、控えめな声が聞こえてきた。
「……大丈夫か……?」
少年。男の子の声だ。コクコクと頷くと、躊躇うような間の後、拘束が解かれる。……助かった。ぷは、と深呼吸をして、起き上がる。
「……あなた、誰?……ここは……どこ……?」
そこには一人の少年がいた。十二、三歳くらいだろうか。少年は私を見下ろすと「ナハト」と名乗った。
「ここは……俺んち。の、地下。今は……さっき姉ちゃんを運んできたオッサンに閉じ込められてる」
周りを見渡してみる。ひとつだけランプの光が灯っていて、辛うじて周囲の様子が見て取れた。ナハトの言を信じるなら、石造りの地下室のようだ。
ナハトは忌々しそうに天井を睨みつける。
「地上への蓋に、重しかなんか置かれてんだ。いくら押しても開かない」
「そうなんだ……。ねぇ、なんであなたは閉じ込められたの?」
「……言いたくない。そっちこそ何やったんだ?」
「悪いことはしてないわ。むしろさっきのオッサンが悪の親玉なのよ」
「……ふは、なんだよ、悪の親玉って」
私の言葉に、ナハトは初めて笑うと、再び真顔になる。
「ここに閉じ込められて三日になるんだ。水と食料はまだあるけど、姉ちゃんの分も考えるとちょっと怪しい。それにあのオッサンがいつ戻ってくるかもわかんねえし、早く脱出しないと」
「そうなの……わかった。協力するわ」
ナハトに右手を差し出す。少し戸惑ったようだったが、すぐに頷いて私の手を握り返した。……しっかりした子だけど、手の大きさはやっぱり年下だ。私がなんとかしないと。
そう思いながら、視線を上げて息を呑む。
部屋の隅、ナハトの肩越しに。少女が一人立っていた。
幼い女の子だ。ナハトより少し年下だろう。シンプルなワンピースを身にまとい、おかっぱにした前髪の下から虚ろな瞳がこちらを見ている。
少し傾げて、あらわになった細い首筋から……おびただしいほどの血を流しながら。
「……?なんだ?何かあるのか?」
ナハトが振り向く。しかし彼には何も見えていないらしい。だとすれば……彼女は、この世のものではない。
ナハトの問いかけを無視して、少女を観察する。首の他に、右腕にも刺し傷が見て取れた。……痛々しい姿に眉をひそめる。少女は口を動かして……何かを言っている?
――聞こえない。どうしてだろう。
……もしかして、ルードがいないから?
私が聞こえていないことを察したのだろう。少女は少し悲しそうに顔を歪める。そうして、地下室の奥の……床を指さして、消えた。
「なあ!なんなんだよ、アリー姉ちゃん、どうしたの?」
「……うん。奥に、何かあるかも」
暗い中、躓かないように注意しながら、少女が消えた部屋の奥へと歩みを進める。膝をつき、床の上を見回す。
「……これ……!」
部屋の隅、一段と暗がりになっている場所に何かが落ちていた。……小さな瓶だ。中には赤色のドロリとした液体が満ちている。
そしてその瓶には、七色に光る粉が付着していた。
私の手元を覗き込んだナハトが、その瓶を見て息を呑んだ。
「……なんでまだ、それがここに」
「ナハト、あなた……、これが何か知ってるの?」
ナハトは答えない。でも、顔面蒼白で震えている。……怯えてる。これが何か……どれだけ忌まわしいものか。知ってるのは、間違いない。
――この……妖精を使って作った奇跡の薬のことを。
「……困りますなあ。勝手に動き回られては」
背後から、嫌味ったらしい声がした。
いつのまにか、天井の蓋が開いている。
階段の下にいたのは予想通り――騎士団の、ジェラルドだった。
2
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
前世持ち公爵令嬢のワクワク領地改革! 私、イイ事思いついちゃったぁ~!
Akila
ファンタジー
旧題:前世持ち貧乏公爵令嬢のワクワク領地改革!私、イイ事思いついちゃったぁ〜!
【第2章スタート】【第1章完結約30万字】
王都から馬車で約10日かかる、東北の超田舎街「ロンテーヌ公爵領」。
主人公の公爵令嬢ジェシカ(14歳)は両親の死をきっかけに『異なる世界の記憶』が頭に流れ込む。
それは、54歳主婦の記憶だった。
その前世?の記憶を頼りに、自分の生活をより便利にするため、みんなを巻き込んであーでもないこーでもないと思いつきを次々と形にしていく。はずが。。。
異なる世界の記憶=前世の知識はどこまで通じるのか?知識チート?なのか、はたまたただの雑学なのか。
領地改革とちょっとラブと、友情と、涙と。。。『脱☆貧乏』をスローガンに奮闘する貧乏公爵令嬢のお話です。
1章「ロンテーヌ兄妹」 妹のジェシカが前世あるある知識チートをして領地経営に奮闘します!
2章「魔法使いとストッカー」 ジェシカは貴族学校へ。癖のある?仲間と学校生活を満喫します。乞うご期待。←イマココ
恐らく長編作になるかと思いますが、最後までよろしくお願いします。
<<おいおい、何番煎じだよ!ってごもっとも。しかし、暖かく見守って下さると嬉しいです。>>
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
フェンリルさんちの末っ子は人間でした ~神獣に転生した少年の雪原を駆ける狼スローライフ~
空色蜻蛉
ファンタジー
真白山脈に棲むフェンリル三兄弟、末っ子ゼフィリアは元人間である。
どうでもいいことで山が消し飛ぶ大喧嘩を始める兄二匹を「兄たん大好き!」幼児メロメロ作戦で仲裁したり、たまに襲撃してくる神獣ハンターは、人間時代につちかった得意の剣舞で撃退したり。
そう、最強は末っ子ゼフィなのであった。知らないのは本狼ばかりなり。
ブラコンの兄に溺愛され、自由気ままに雪原を駆ける日々を過ごす中、ゼフィは人間時代に負った心の傷を少しずつ癒していく。
スノードームを覗きこむような輝く氷雪の物語をお届けします。
※今回はバトル成分やシリアスは少なめ。ほのぼの明るい話で、主人公がひたすら可愛いです!

家から追い出された後、私は皇帝陛下の隠し子だったということが判明したらしいです。
新野乃花(大舟)
恋愛
13歳の少女レベッカは物心ついた時から、自分の父だと名乗るリーゲルから虐げられていた。その最中、リーゲルはセレスティンという女性と結ばれることとなり、その時のセレスティンの連れ子がマイアであった。それ以降、レベッカは父リーゲル、母セレスティン、義妹マイアの3人からそれまで以上に虐げられる生活を送らなければならなくなった…。
そんなある日の事、些細なきっかけから機嫌を損ねたリーゲルはレベッカに対し、今すぐ家から出ていくよう言い放った。レベッカはその言葉に従い、弱弱しい体を引きずって家を出ていくほかなかった…。
しかしその後、リーゲルたちのもとに信じられない知らせがもたらされることとなる。これまで自分たちが虐げていたレベッカは、時の皇帝であるグローリアの隠し子だったのだと…。その知らせを聞いて顔を青くする3人だったが、もうすべてが手遅れなのだった…。
※カクヨムにも投稿しています!
美形王子様が私を離してくれません!?虐げられた伯爵令嬢が前世の知識を使ってみんなを幸せにしようとしたら、溺愛の沼に嵌りました
葵 遥菜
恋愛
道端で急に前世を思い出した私はアイリーン・グレン。
前世は両親を亡くして児童養護施設で育った。だから、今世はたとえ伯爵家の本邸から距離のある「離れ」に住んでいても、両親が揃っていて、綺麗なお姉様もいてとっても幸せ!
だけど……そのぬりかべ、もとい厚化粧はなんですか? せっかくの美貌が台無しです。前世美容部員の名にかけて、そのぬりかべ、破壊させていただきます!
「女の子たちが幸せに笑ってくれるのが私の一番の幸せなの!」
ーーすると、家族が円満になっちゃった!? 美形王子様が迫ってきた!?
私はただ、この世界のすべての女性を幸せにしたかっただけなのにーー!
※約六万字で完結するので、長編というより中編です。
※他サイトにも投稿しています。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる