ぽっちゃり令嬢の異世界カフェ巡り~太っているからと婚約破棄されましたが番のモフモフ獣人がいるので貴方のことはどうでもいいです~

翡翠蓮

文字の大きさ
上 下
49 / 49

番外編3「エリオットは私のどこが好きなの?」

しおりを挟む

「うん、もうほぼ完治だね。毎日薬を飲んでくれて良かった」

 フレッドが目覚めてから大分経ったころ、私とエリオットはベスティエ街の病院に来ていた。

 治癒魔術師の人が私の頬に触れて、笑顔になる。
 殿下に叩かれた頬は、もうほとんど完治のようだ。

「一応あと三日分薬を出しておくね。それでもまだ痛むようだったら、またいつでも来てくれ」
「はい、ありがとうございました」

 診察室から出て、薬師に処方箋を提出する。

「ね? 王都の病院じゃなくても大丈夫だったでしょう?」
「ま、まあそうだけど……」

 エリオットが私の腫れあがった頬を見て「病院に行こう」と言ってきたのだ。

 私はこのくらいなら放置していても治るだろうけど、念のためベスティエ街の病院に行こうとしたら、「王都の病院に行ったほうがいい!」とエリオットが真剣な表情で私の肩を掴んで言ってきた。

 理由は王都のほうが医療も発達しているし、魔法のプロである宮廷魔術師も一部病院で働いているから。
 私は大げさだと言ってエリオットの反対を押し切り、ベスティエ街の病院に行った。

 治癒魔術師は頬に手を当てて治癒魔法を送りこみ、薬を処方してくれた。
 そのおかげで、私はもう笑っても食事をしても頬は痛くない。

「さあ、家に帰って昼食の準備をしましょう。あ、それともカフェとか入る?」
「いや、アイリスは安静にしておくべきだ。家で食べよう。俺が作る」

 ほぼ完治してるし、頬だってもう腫れてないから外で食べても平気なんですけど!
 と、抗議しようとおもったけれど、エリオットの心配を無下にしてしまうのもなんだか申し訳ない。

 辻馬車を拾って家に帰り、エリオットが昼食を作り始めている間、私は読書をすることにした。

 こないだ書店で買った、『運命の番がもたらす影響』という本だ。
 私は『王シン』の殿下とミリアの話でしか、『運命の番』の仕組みを知らない。

 だからもっと知識を植え付けた方がいいと思って購入した。
 頁をめくって読み進める。

 『運命の番』同士は惹かれ合う存在、だけれど惹かれ合うだけであって、本当に想いを伝えて愛し合えるわけじゃない。だから、本当にお互いに愛し合えたとき、人間の髪先は獣人の髪色に染まる……。

 自分の髪先を見遣ると、本当に銀色に染まっている。
 なんだかいつでもエリオットを感じられるみたいで、嬉しい。

「アイリス。昼ごはん、できたよ。ボロネーゼなんだけど、いい?」
「わあ! 嬉しい! ありがとう!」

 エリオットが持ってきた皿に盛られているボロネーゼは、チーズがたっぷりかかっている。
 スープは私が朝食で作ったミネストローネの残りだ。

「ん~~~~! 美味しい!」

 いつもの挨拶をしてからフォークでボロネーゼを巻いて食べると、ソースに野菜のうまみが感じられ、パスタももちもちで最高の食感。

 できたてのあつあつパスタが美味しくてもきゅもきゅ頬張っていると、なんとエリオットが爆弾発言を放った。

「アイリスって、俺のどこが好きなの?」
「……むぐっ!? ごほっ、げほっ」

 危うくパスタを喉に詰まらせるところだった。危ないでしょ、エリオット!
 水を飲んで落ち着かせ、エリオットのほうをそっと見る。

 エリオットはにこにこ微笑んでいて、何の悪気もなさそうだった。

「そ、そうね……えっと……ま、守ってくれるところとか……努力家なところとか」
「本当? 俺、アイリスを守れてる?」
「たくさん守ってくれたじゃない。百貨店の前で絡まれたときとか……」

 ぼそぼそ言うと、エリオットは満足気に笑んでいた。
 なんだかその余裕さが悔しくなって、私は唇を尖らせる。

「そういうエリオットは、私のどこが好きなのよ」
「アイリスの?」
「そう」

 私が聞くと、エリオットはますます笑みを深めて大きく息を吸った。

「俺が作ったご飯を美味しい美味しいって食べてくれるところ、髪が美しいところ、俺を支えようと頑張って働いてくれているところ、俺のことをいつも心配してくれるところ、笑顔が可愛いところ、」
「わーーーーー! ストップ、ストップ!」
「俺と話すときいつも楽しそうに頷いてくれるところ、仕事先の人とすぐに打ち解けられる気さくさを持っているところ、手先が器用なところ、アイリスが一生懸命料理を作ってくれて、それもすっごく美味しいところ、歩き方がちょこちょこしていて可愛いところ、仕草が上品なところ、あとは……」
「わかった! わかったから!」
「本当? 俺がどれだけアイリスを愛してるかわかってる?」

 エリオットが笑いながら首を傾げる。
 その仕草にきゅんときてしまって、悟られないように水を飲み込む。

「わ、わかってるわ……」
「愛してるよ、アイリス」

 顔を見てはっきりと言われてしまい、私はぼわっと顔が熱くなる。
 エリオットは口癖のように「愛してるよ」と言ってくる。

 恥ずかしいからそんなに言わないでと言っても、「愛を伝えるのは恋人同士にとって大切なことだろう?」と言って、たくさん伝えてきてくれる。

 私は気恥ずかしいと思いながらも、内心嬉しく思うのだった。
しおりを挟む
感想 16

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(16件)

Kobato
2022.09.18 Kobato

最後にイチャラブお願いいたします🙇‍♂️

2022.09.18 翡翠蓮

番外編も投稿予定ですので、投稿したら読んでいただけると嬉しいです〜(*^_^*)

解除
華南
2022.09.18 華南

つついに!エリオットの帰還!そして、お話が進む予感!
アイリスがエリオットに気持ちを伝えていない事が、ずぅ〜と気掛かりで…エリオットに気持ちを言わせっぱなしかよ😑と思ってモヤモヤしてました。
確かに自分に自信がないと自分の気持って二の次ですけど、相手は違いますものね。
相手の為にも想いを伝えて次へ進んで欲しい!

2022.09.18 翡翠蓮

感想ありがとうございます!✨
エリオットが気持ちを伝えている場面が多いですね(^_^;)
18:10に最終話を予約投稿してありますので、良ければぜひ読んでいただけると嬉しいです🥰

解除
白菜
2022.09.09 白菜

ルルアさん良いこと言いますねえ。話し合うことは大事です(^^)d ナイスアシスト!!
2人でゆっくりじっくり話し合って絆を深められれば良いですね。主人公頑張れ。

2022.09.10 翡翠蓮

ルルアに背中を押されましたね!(*^_^*)
悩んでることがあったら話し合うのは大事ですよね👍
感想ありがとうございます✨

解除

あなたにおすすめの小説

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

【完結】断罪後の悪役令嬢は、精霊たちと生きていきます!

らんか
恋愛
 あれ?    何で私が悪役令嬢に転生してるの?  えっ!   しかも、断罪後に思い出したって、私の人生、すでに終わってるじゃん!  国外追放かぁ。  娼館送りや、公開処刑とかじゃなくて良かったけど、これからどうしよう……。  そう思ってた私の前に精霊達が現れて……。  愛し子って、私が!?  普通はヒロインの役目じゃないの!?  

異世界で悪役令嬢として生きる事になったけど、前世の記憶を持ったまま、自分らしく過ごして良いらしい

千晶もーこ
恋愛
あの世に行ったら、番人とうずくまる少女に出会った。少女は辛い人生を歩んできて、魂が疲弊していた。それを知った番人は私に言った。 「あの子が繰り返している人生を、あなたの人生に変えてください。」 「………はぁああああ?辛そうな人生と分かってて生きろと?それも、繰り返すかもしれないのに?」 でも、お願いされたら断れない性分の私…。 異世界で自分が悪役令嬢だと知らずに過ごす私と、それによって変わっていく周りの人達の物語。そして、その物語の後の話。 ※この話は、小説家になろう様へも掲載しています

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

もしも生まれ変わるなら……〜今度こそは幸せな一生を〜

こひな
恋愛
生まれ変われたら…転生できたら…。 なんて思ったりもしていました…あの頃は。 まさかこんな人生終盤で前世を思い出すなんて!

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。