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第四十三話「獣人騎士団への救援要請」
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エリオットの実家に行ってから、一か月が経った。
ルルアと時々手紙を送り合っていて、ルルアはもう少しで一人暮らしが出来るらしい。
家も決めていて、あとは私の両親から許可を貰うだけだそうだ。
『アイリス様には申し訳ありませんが、リナージア様とルージェ様から離れられると思うと、今から楽しみでなりません』なんて手紙に綴られていた。
私の両親は侍女にも冷たくあたっているのだろう。
レビィでは期間限定のアフタヌーンティもパスタも爆発的に売れ、二週間後に再び新メニューを出さなければならず、カフェの閉店後にルウィーナさんたちと共に話し合っている。
この一か月間、エリオットとも休日にカフェ巡りをして楽しんでいた。
エリオットとのカフェ巡りは楽しい。
私が行きたいところがあればそこに一緒に行ってくれるし、行きたいところがなければオススメを教えてくれる。
昨日も休日が揃っていたからカフェ巡りを楽しんだけれど、今日の朝、エリオットがさらりと告げたことが衝撃的だった。
「最近、南のタニア村付近で大きな魔物が暴れてるようなんだ。冒険者だけでは歯が立たないから、獣人騎士団に救援要請が来てる。南のタニア村に魔物が侵入されたら、そのまま王都にも害を及ぼしてくる可能性があるからね」
「それじゃあ……エリオットも、そっちに行くの?」
「ああ。副団長だから、団員を引っ張ってくる。もし何かあれば団長に応援要請を頼むよ。明日にはベスティエ街を出るつもりだ。……絶対離れないって言ったのに、本当にごめん」
「いえ、仕事ならいいのよ。いいけど……本当に大丈夫なの?」
「そんなに心配しなくても、すぐ帰ってくるから。安心して」
私が作ったお弁当を受け取って、いつも通りに頭を撫でてくる。
でも、私は不安で仕方なかった。
地方で魔物が出現したとき、それは冒険者が優先で倒す規定が国にある。
騎士団たちが全て倒してしまうと、冒険者の報酬がなくなり、生活できなくなってしまうからだ。
でもそんな冒険者でも歯が立たないなんて。
どれほど大きい魔物なのだろう。
「ひ、一人で行かないのよね?」
「さっきも言っただろう、団員を引っ張る役目を俺が担うんだ。だから、安心していいんだよ。アイリスは俺の帰りをどっしり構えていてくれればいい」
エリオットは「それじゃあ、行ってくるね」と笑顔でドアを開け、行ってしまった。
そして翌日の早朝。
私がお弁当を作り終えたころくらいに、エリオットはそれを受け取って家を出て行った。
私は「エリオットが無事でいますように」と目を瞑って祈る。
今日のお弁当は、おかずもご飯もたっぷり入れた。
戦闘の際にたくさん体力を使うだろうから、絶対空腹になるはず。
だから、少しでもお腹が満たされるように。
「エリオット……」
無事を毎日祈ったけれど、エリオットはそれからひと月も帰ってこなかった。
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