ぽっちゃり令嬢の異世界カフェ巡り~太っているからと婚約破棄されましたが番のモフモフ獣人がいるので貴方のことはどうでもいいです~

翡翠蓮

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第四十三話「獣人騎士団への救援要請」

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◇◇◇

 エリオットの実家に行ってから、一か月が経った。

 ルルアと時々手紙を送り合っていて、ルルアはもう少しで一人暮らしが出来るらしい。
 家も決めていて、あとは私の両親から許可を貰うだけだそうだ。

 『アイリス様には申し訳ありませんが、リナージア様とルージェ様から離れられると思うと、今から楽しみでなりません』なんて手紙に綴られていた。

 私の両親は侍女にも冷たくあたっているのだろう。

 レビィでは期間限定のアフタヌーンティもパスタも爆発的に売れ、二週間後に再び新メニューを出さなければならず、カフェの閉店後にルウィーナさんたちと共に話し合っている。

 この一か月間、エリオットとも休日にカフェ巡りをして楽しんでいた。
 エリオットとのカフェ巡りは楽しい。
 私が行きたいところがあればそこに一緒に行ってくれるし、行きたいところがなければオススメを教えてくれる。

 昨日も休日が揃っていたからカフェ巡りを楽しんだけれど、今日の朝、エリオットがさらりと告げたことが衝撃的だった。

「最近、南のタニア村付近で大きな魔物が暴れてるようなんだ。冒険者だけでは歯が立たないから、獣人騎士団に救援要請が来てる。南のタニア村に魔物が侵入されたら、そのまま王都にも害を及ぼしてくる可能性があるからね」
「それじゃあ……エリオットも、そっちに行くの?」
「ああ。副団長だから、団員を引っ張ってくる。もし何かあれば団長に応援要請を頼むよ。明日にはベスティエ街を出るつもりだ。……絶対離れないって言ったのに、本当にごめん」
「いえ、仕事ならいいのよ。いいけど……本当に大丈夫なの?」
「そんなに心配しなくても、すぐ帰ってくるから。安心して」

 私が作ったお弁当を受け取って、いつも通りに頭を撫でてくる。
 でも、私は不安で仕方なかった。

 地方で魔物が出現したとき、それは冒険者が優先で倒す規定が国にある。
 騎士団たちが全て倒してしまうと、冒険者の報酬がなくなり、生活できなくなってしまうからだ。

 でもそんな冒険者でも歯が立たないなんて。
 どれほど大きい魔物なのだろう。

「ひ、一人で行かないのよね?」
「さっきも言っただろう、団員を引っ張る役目を俺が担うんだ。だから、安心していいんだよ。アイリスは俺の帰りをどっしり構えていてくれればいい」

 エリオットは「それじゃあ、行ってくるね」と笑顔でドアを開け、行ってしまった。

 そして翌日の早朝。
 私がお弁当を作り終えたころくらいに、エリオットはそれを受け取って家を出て行った。

 私は「エリオットが無事でいますように」と目を瞑って祈る。

 今日のお弁当は、おかずもご飯もたっぷり入れた。
 戦闘の際にたくさん体力を使うだろうから、絶対空腹になるはず。
 だから、少しでもお腹が満たされるように。

「エリオット……」

 無事を毎日祈ったけれど、エリオットはそれからひと月も帰ってこなかった。
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