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R18 第三十二話「獣のように貪られて」

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「はぁ……はぁ……もう、むりだ……」

 俺は練習棟の部屋で仰向けになって倒れる。

 素振りを行ったあと、グランの言う通り腕立て伏せをして、そのあとは腹筋、足の筋トレ、背筋、そしてまた腕立て伏せを百回した。

 もうダメだ。何もできない。

 魔法を付与した剣は振るっていないから魔力を使ったわけではないが……体力が持っていかれた。

 部屋に帰って早く夕食を食べたい。腹がなんの躊躇いもなくきゅううっと鳴る。

「はは、殿下、お腹空いたんですか? もう夕食の時間ですしね、戻りましょうか」
「ああ……」

 グランが手を貸してくれて、よっこいしょと起き上がる。

「防具を脱いで、取り出したところにしまいましょう。すぐに魔法で綺麗にしてくれるので、心配なさらないでくださいね」

 俺は鎧を脱いで、グランに渡す。
 グランは奥の壁を二回ノックして、そこにできた架空の空間に防具をぽいっと投げてしまった。

 これで終わりなのか。
 日本でもこうなってくれないかなぁ。洗濯って面倒くさいんだよなぁ。

 グランも自分の防具をぽいっと空間に投げ込んでいく。
 振り返ったグランは額に浮かんだ汗を拭った。

 グランは筋トレも一緒にやってくれた。

 俺がへばりそうになったとき、「もう少しですよ、殿下!」と鼓舞してくれて俺は頑張れたのだ。

 だが、グランは腕立て伏せを百回やっても腹筋や足の筋トレを長い時間やってもまったく疲れた様子は見せなかった。

 今だってそうだ。一つも息切れしていない。
 俺もようやく息が整ってきたが……自分の顔は疲れているのが見なくてもわかる。

 グランはすごい。
 こうなるまで、どれほどのトレーニングを積んだのだろう。
 グランは数えきれないほどの努力をしている人なのだと、今日の筋トレで感じた。

「行きましょうか、殿下」
「ああ、行こ……っ!?」

 扉を開けて部屋から出ようとしたとき、ずくんと身体の芯から痺れが湧きあがった。

「っ……はぁっ……」
「……殿下?」

 甘い痺れが足のつま先から頭まで駆け上がってくる。
 身体が火傷しそうなくらいに熱い。

 ……この感覚を俺は知っている。
 以前成人式で経験した、発情期だ。

 そうだ。俺、昼食で薬を飲もうとしたときレヴィルに絡まれて、飲むのを忘れてしまっていた。
 そして運悪くこの日が発情期の日だったんだ……!

 ポケットから薬を取り出そうとしても、発情期がきてしまった今飲んだって収まるはずがない。

「殿下、この匂い……」
「グ、ラン」

 グランにも俺が放つ匂いがわかってしまったようだった。
 発情をなんとか抑えようと自分の胸を掴んだが、そんなの何の効果にもならない。

 それより、グランからαの良い香りがたちこめている。
 花のように甘い香りで、息を吸えば吸うほど頭がぼうっとして考えが鈍くなってしまう。

 俺がグランのほうを見上げると、グランは息を呑み獰猛な瞳で俺を見つめていた。

「殿下、辛くないですか? 大丈夫ですか?」

 グランに声をかけられただけで、その声が耳の奥のほうまで伝わって欲情の波が襲いかかってくる。

 俺の花芯はすっかり立ち上がってしまっていて、スラックスが盛り上がっているのが見えてしまう。

 グランに気づかれないように下肢を両手で隠したが、グランは気づいているようだった。

「俺が、処理しましょうか?」
「……っ!? 自分でするから、いい……」

 グランがとんでもないことを言い出したから、すぐに首を振って断った。
 だけどグランは俺の前に一歩歩み出て、髪を指に絡ませる。

 たったそれだけのことなのに、びくびくと身体が跳ねてしまった。

「自分一人でするだけで、発情期は収まるのですか? α……俺と、シたほうがいいんじゃないですか?」
「……っ、ぁ……」

 グランの声は低音で耳に響く。
 グランもラットの抑制ができないようで、呼吸が浅くなっていた。

 俺の身体もα……グランを求めて心の奥底が疼いている。
 頭がぼうっとしてしまって、グランと身体を繋げることしか考えられない。

 理性を保つことができない。
 でも我慢しないと、ただの淫乱王子になってしまう。そんなことは避けたい。

「はぁ……っ、ぁ……んっ!?」

 小さく喘ぐ俺に、理性の糸が切れたのかグランが俺の顎をくいと上向かせ、乱暴にキスしてきた。

「んぁ……ぁっ、ん……」

 抵抗しようとグランの胸板を押すが、硬くてびくともしない。
 グランは必死に俺の唇を求めていて、決して優しくはない噛みつくようなキスだった。

「殿下……俺、我慢できません……」

 吐息混じりに言ったグランのほうの目をうっすらと開けてみると、彼の瞳は情欲を孕み、ギラギラと灯っていた。

 雄の瞳だ。Ωを食らいつくす、αの瞳……。

 ずく、と窄まりが疼く。
 グランからの絶え間ないキスに、俺は無意識に腰を振ってしまった。

「もう、ずっと我慢していたのですよ、練習棟に馬車で向かうときから……練習が終わった、自分は襲わなかったと褒めたかったのに……貴方が甘い香りを放つから……」
「はぁっ、あっ、ん」

 キスをしている間にいつの間にか俺の服は脱がされていて、唇が離れたと思ったその刹那、胸の飾りを一気に口に含まれた。

「あぁっ! やっ、グラン……っ!」

 一つは唇、もう一つは片手で捏ねられ、一気に甘い痺れが脳を震えさせる。
 いきなり絶え間ない快楽が来たものだから、身体が追いついていかない。

 がくがくと膝が揺れだして、だらしなく唾液が顎を伝う。

「あっ、んあぁ! ダメ……ダメっ! なんか、きちゃう、からぁ……っ!」
「殿下、乳首でイけるんですか? 淫乱な人……」

 グランが上手すぎるんだよ!
 グランの愛撫に俺は溺れ、次第に快感が中心に集まってくる。

 乳首を舌先で執拗なくらいに転がされ、もう片方を指で弾かれて愉悦に打ち震えてしまう。
 そしてグランが俺の陰茎を一撫でしたとき、一気に白濁が放出された。

「はぁ……っ、は……」
「殿下、後ろを向いてください」
「え……? あ、あああぁっ!」

 達したばかりだというのに、グランはいつの間にか避妊具をつけたのか、俺の後孔に欲望を宛がいそのまま一気に奥へと貫いた。

 俺の後ろはぐずぐずに濡れていて、グランのものを喜んで受け入れている。
 痛みは一切なく、代わりに耐えがたい快感が俺の身体全てに襲ってくる。

「はぁっ、ぁっ、んあぁっ!」

 理性を失ったグランは獣のように俺の奥を突いてくる。
 俺は自力で立つことができず、壁に手をついて気持ちよさに耐えていた。

 ごちゅん、と奥に当たるたび中の前立腺が抉られるほどに擦れて、歓喜の声を何度も上げてしまう。

「殿下、俺のもので感じてるんですか? 可愛い……」

 グランが俺を力強く抱き竦めてきた。

 それのせいでがっちりと俺の身体は固定されてしまい、逃げようにも逃げられなくなってしまう。

「はぁっ、ダメ、気持ちいい……っ! やぁっ、も、ダメ、やあぁっ!」
「嫌ならやめますか? でも殿下のここ、嬉しそうに吸い付いてきますよ」
「……っ、ふ、うぅ……っ」

 確かな事実に羞恥で唇を噛み締めることしかできない。
 グランは淫らに喘いでいる俺の顎を自分のほうに向かせて、ゆっくりとキスをしてきた。

 その間も律動は止まらない。
 それどころか、動きが速くなってきて俺も限界を迎えてしまいそうだ。

「殿下、かわいい、ずっと貴方の中にいたい……」
「んぁっ、んっ、そんなこと、言われても、困る……っ」

 グランの甘い言葉を初めてこのセックスで聞いて、そういうものに慣れていない俺は耳まで赤くなってしまう。

 グランは額に汗を流していて、微かに汗の香りがした。
 それも良い匂いだと思ってしまう。

 必死に腰を振り、短く息をするグランに尋常じゃないほど色気を感じて、俺の胸が一瞬高鳴った。

「殿下の中が、一番気持ちいい……ああ、何度でも突きたくなってしまいます。どうしてそんなに俺好みの身体をしているんですか」
「そ、んなの、しらない……っ! あっ! ダメ、くる、イっちゃう……!」
「イって。俺にイく姿を見せてください。俺ももうすぐイきますから……」

 熱い吐息が俺の耳にかかって、一際強く奥を擦られると俺は呆気なく達してしまった。

 白濁を溢れさせると同時に窄まりがグランの欲望を強く絞って、グランのものは大きくなり、避妊具越しに達するのがわかった。

 俺の精液はぽたぽたと練習棟の部屋を汚していく。
 グランはゴムを引き抜き、タオルに包んで……何故かもう一度避妊具を身に着けていた。

「グラン……?」
「殿下、もう一回……」
「え? んあぁっ!?」

 グランが俺の手首を引っ張り、壁に押し付ける。
 そのまま俺の片足を持ち上げて、自分の欲を思いきり俺の中に叩きつけた。

 えげつないピストンが開始され、え、今グランは達したばかりだよね……? と身体をゆさぶられたまま考える。

 どうしてかもう一度俺はグランとセックスをするはめになっていた。
 そこで、エシエルの言葉を思い出した。

 ――団長って、その……絶倫で、有名なんですよ。

 その通りだった……!
 あれ、でもグランってβ以外の男の人は抱かないんじゃなかったっけ。

 発情期を迎えたから俺を抱いたのかもしれないが、グランはΩの男とセックスをすることをどう考えているのだろう……と考える余裕もなく、俺は気絶するまで何度も犯された。
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