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第二十七話「なんだよその回復の仕方!」
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◇◇◇
今日も魔法の練習をする。
カルヴェは自然を感じ取りやすいように、いつも庭で練習させてくれた。
その日も小池の傍で、魚が時折池から舞うのが見える。
「お! できた!」
今日は水魔法を放って宙にハートを描く練習だ。
これができるようになれば、自然と水を打ちたいところに打つことができるとカルヴェが言っていた。
一昨日から練習を始めて、今日はハートを描くのに初めて成功した。
「すごいですね殿下! その調子でもう一度やってみましょう」
カルヴェは褒められるところは純粋に褒めてくれるので嬉しい。
カルヴェに促されてもう一度やったが、ぐちゃぐちゃになって失敗してしまった。
「くぅー、やっぱり難しいな……」
水栓柱の蛇口に水を当てるのは、こないだできるようになった。
少しずつだけど成長を実感できて、進歩していると思うと俄然やる気がわく。
この調子で水魔法を極められるようになりたい。
数時間後。
俺の魔力がかなり削れてしまって、今日はお開きになった。
「カルヴェ。そういえば、魔力の回復方法はわかったか?」
「あ……まぁ、その、わかりましたね」
ん? なんだろう、歯切れが悪いな。
あまり言いにくいことなのだろうか。
でも俺にとっては薬以外で魔力を回復させる方法は知っておきたい。
「カルヴェ、教えてくれ。俺も知りたいんだ」
「……わかりました」
一か月以上カルヴェと練習を続けて、毎回へとへとになってしまい貴重な魔力回復薬をいつも飲んでしまっている。
俺がずいっと前のめりになって聞くと、カルヴェは横流しにしている黒髪を少しだけ弄ったあと口を開いた。
「消耗してしまった魔力の回復方法なのですが……」
「うん」
「Ωでしたら、αの体液を摂取することなんだそうです」
「……」
……は?
「βの場合でも同様で、αの体液を摂取することで魔力が回復できるそうなんです。Ωはβの体液でも魔力を回復できますが、αの体液のほうが回復しやすいと……」
「は、はあ……」
「αは魔力を大量に保持しているので、底を尽きそうになることも尽きることもありませんし、魔力回復薬をそこまで飲まなくても回復するらしいですが……βとΩは、そうらしいですね。第二の性がわからない成人未満の方々は、魔力回復薬でしか回復方法はないそうです」
じゃあ、なんだ。
魔力が削られた俺は、薬を飲まない方法ならαのカルヴェの体液を摂取しなければならないということか?
「だ、第一、体液ってどうやって摂取するんだ?」
「それは……まぁ、キス、とかでしょうね」
カルヴェと、キス!?
俺は思わず身体を重ねたときのことを思い出して、ぶわっと顔が熱くなってしまった。
カルヴェも気まずそうに視線を逸らしている。
「い、いや、カルヴェはいいのか? 俺が魔力を消耗するたび、俺とキ……キスなんてして」
「……」
カルヴェの耳がほんのりと赤くなるのがわかった。
ずっと黙っているということは、嫌という意思表示で間違いないだろうか。
でも正直今日の俺は相当魔力を消耗してしまって、ここから王宮まで歩ける自信がない。
カルヴェや護衛をしているグランに魔力回復薬を持ってきてくれれば回復するけど……最近薬を摂取しすぎているし、金銭的にも申し訳ないからやめておきたい。
「……貴方がいいのなら、私はしますよ」
長い沈黙のあと、ようやくカルヴェがぽつりと言った。
なら……もう、するしかない。
「カルヴェ……」
俺が甘ったるい声で呼ぶと、それを「いいよ」と感じたカルヴェが唇を重ねてきた。
「ん……ぁ、んっ……」
カルヴェの唇は柔らかくて、癖になる。
角度を変えてキスを重ねると、すごい気持ちよくて腰が砕けそうになった。
それをカルヴェが支え、俺はカルヴェにされるがままになる。
「ああ、殿下、キスをするととても可愛い顔をするんですね……」
「そ、そんなこと、言うなよ、ん……っ」
カルヴェだって、雄の顔をしているくせに。
それより、カルヴェはこういうことをすると性格が変わったように甘くなる。
俺はその甘さに酔いしれそうになるから、勘弁してほしい。
うっすら目を開けたら、とびきり長いカルヴェの睫毛が見えた。
カルヴェは美形だ。
こんな男、狙っている女性なんて星の数ほどいるだろうに……αだしな。
なのに、どうして俺に構ってばかりいるんだろう。
婚期を逃すぞ、カルヴェ。
「殿下、口、開けて」
「ん……んぁ、ふ……っ」
カルヴェの舌が俺の口内に入ってくる。
俺の舌の裏側や、上顎、歯列を舐めとって、そのあとに俺の舌と絡ませる。
気持ちいいと同時に、全身が元気になってくるような感覚を感じた。
疲れていた身体が徐々に回復していくような感じ。
もっと、もっと回復したい。
「カルヴェ、もっと……んんっ、んあ……っ」
俺が強請るとカルヴェは貪るように激しいキスを繰り返してきて、俺の顎に唾液が伝った。
濃密な口づけは頭をクラクラさせて、何も考えなくさせる。
カルヴェ、いい匂いがする。レモンみたいなさっぱりする匂いだ。
香水かな。それすらも、頭をふわふわさせてくる。
キスに夢中になっていると、カルヴェがすっと俺の服の下に手を滑りこませた。
「……っ!? カルヴェ、何して……」
「あ……すみません、殿下」
驚いて口を離すと、申し訳なさそうにカルヴェが眉尻を下げる。
カルヴェ、その……やる気になっちゃったのか!?
でも、ここは庭だぞ!?
庭を出たところにはグランもいるんだし……してはいけないだろう。
気まずい沈黙が流れたとき、俺の身体がすっきりしていることに気づいた。
「カルヴェ、もう魔力は回復したみたいだ。だから、その……もう、キスしなくていいよ」
「……わかりました」
あの気持ちいいキスが終わりだと思うと、少々名残惜しい。
って、いやいや、流されちゃいけない。
気持ちはその……良かったけど、でもあくまで魔力を回復するためのものなんだから。それだけのことだから!
……カルヴェは俺のことどう思っているんだろう。
キスもして、セックスもして……でもそれはどちらも発情期を収めるためだったり、魔力を回復させるためだったりと必要なことだった。
そこに愛があるわけじゃない。
それに対して、俺はなんとなく寂しく思うのだった。
今日も魔法の練習をする。
カルヴェは自然を感じ取りやすいように、いつも庭で練習させてくれた。
その日も小池の傍で、魚が時折池から舞うのが見える。
「お! できた!」
今日は水魔法を放って宙にハートを描く練習だ。
これができるようになれば、自然と水を打ちたいところに打つことができるとカルヴェが言っていた。
一昨日から練習を始めて、今日はハートを描くのに初めて成功した。
「すごいですね殿下! その調子でもう一度やってみましょう」
カルヴェは褒められるところは純粋に褒めてくれるので嬉しい。
カルヴェに促されてもう一度やったが、ぐちゃぐちゃになって失敗してしまった。
「くぅー、やっぱり難しいな……」
水栓柱の蛇口に水を当てるのは、こないだできるようになった。
少しずつだけど成長を実感できて、進歩していると思うと俄然やる気がわく。
この調子で水魔法を極められるようになりたい。
数時間後。
俺の魔力がかなり削れてしまって、今日はお開きになった。
「カルヴェ。そういえば、魔力の回復方法はわかったか?」
「あ……まぁ、その、わかりましたね」
ん? なんだろう、歯切れが悪いな。
あまり言いにくいことなのだろうか。
でも俺にとっては薬以外で魔力を回復させる方法は知っておきたい。
「カルヴェ、教えてくれ。俺も知りたいんだ」
「……わかりました」
一か月以上カルヴェと練習を続けて、毎回へとへとになってしまい貴重な魔力回復薬をいつも飲んでしまっている。
俺がずいっと前のめりになって聞くと、カルヴェは横流しにしている黒髪を少しだけ弄ったあと口を開いた。
「消耗してしまった魔力の回復方法なのですが……」
「うん」
「Ωでしたら、αの体液を摂取することなんだそうです」
「……」
……は?
「βの場合でも同様で、αの体液を摂取することで魔力が回復できるそうなんです。Ωはβの体液でも魔力を回復できますが、αの体液のほうが回復しやすいと……」
「は、はあ……」
「αは魔力を大量に保持しているので、底を尽きそうになることも尽きることもありませんし、魔力回復薬をそこまで飲まなくても回復するらしいですが……βとΩは、そうらしいですね。第二の性がわからない成人未満の方々は、魔力回復薬でしか回復方法はないそうです」
じゃあ、なんだ。
魔力が削られた俺は、薬を飲まない方法ならαのカルヴェの体液を摂取しなければならないということか?
「だ、第一、体液ってどうやって摂取するんだ?」
「それは……まぁ、キス、とかでしょうね」
カルヴェと、キス!?
俺は思わず身体を重ねたときのことを思い出して、ぶわっと顔が熱くなってしまった。
カルヴェも気まずそうに視線を逸らしている。
「い、いや、カルヴェはいいのか? 俺が魔力を消耗するたび、俺とキ……キスなんてして」
「……」
カルヴェの耳がほんのりと赤くなるのがわかった。
ずっと黙っているということは、嫌という意思表示で間違いないだろうか。
でも正直今日の俺は相当魔力を消耗してしまって、ここから王宮まで歩ける自信がない。
カルヴェや護衛をしているグランに魔力回復薬を持ってきてくれれば回復するけど……最近薬を摂取しすぎているし、金銭的にも申し訳ないからやめておきたい。
「……貴方がいいのなら、私はしますよ」
長い沈黙のあと、ようやくカルヴェがぽつりと言った。
なら……もう、するしかない。
「カルヴェ……」
俺が甘ったるい声で呼ぶと、それを「いいよ」と感じたカルヴェが唇を重ねてきた。
「ん……ぁ、んっ……」
カルヴェの唇は柔らかくて、癖になる。
角度を変えてキスを重ねると、すごい気持ちよくて腰が砕けそうになった。
それをカルヴェが支え、俺はカルヴェにされるがままになる。
「ああ、殿下、キスをするととても可愛い顔をするんですね……」
「そ、そんなこと、言うなよ、ん……っ」
カルヴェだって、雄の顔をしているくせに。
それより、カルヴェはこういうことをすると性格が変わったように甘くなる。
俺はその甘さに酔いしれそうになるから、勘弁してほしい。
うっすら目を開けたら、とびきり長いカルヴェの睫毛が見えた。
カルヴェは美形だ。
こんな男、狙っている女性なんて星の数ほどいるだろうに……αだしな。
なのに、どうして俺に構ってばかりいるんだろう。
婚期を逃すぞ、カルヴェ。
「殿下、口、開けて」
「ん……んぁ、ふ……っ」
カルヴェの舌が俺の口内に入ってくる。
俺の舌の裏側や、上顎、歯列を舐めとって、そのあとに俺の舌と絡ませる。
気持ちいいと同時に、全身が元気になってくるような感覚を感じた。
疲れていた身体が徐々に回復していくような感じ。
もっと、もっと回復したい。
「カルヴェ、もっと……んんっ、んあ……っ」
俺が強請るとカルヴェは貪るように激しいキスを繰り返してきて、俺の顎に唾液が伝った。
濃密な口づけは頭をクラクラさせて、何も考えなくさせる。
カルヴェ、いい匂いがする。レモンみたいなさっぱりする匂いだ。
香水かな。それすらも、頭をふわふわさせてくる。
キスに夢中になっていると、カルヴェがすっと俺の服の下に手を滑りこませた。
「……っ!? カルヴェ、何して……」
「あ……すみません、殿下」
驚いて口を離すと、申し訳なさそうにカルヴェが眉尻を下げる。
カルヴェ、その……やる気になっちゃったのか!?
でも、ここは庭だぞ!?
庭を出たところにはグランもいるんだし……してはいけないだろう。
気まずい沈黙が流れたとき、俺の身体がすっきりしていることに気づいた。
「カルヴェ、もう魔力は回復したみたいだ。だから、その……もう、キスしなくていいよ」
「……わかりました」
あの気持ちいいキスが終わりだと思うと、少々名残惜しい。
って、いやいや、流されちゃいけない。
気持ちはその……良かったけど、でもあくまで魔力を回復するためのものなんだから。それだけのことだから!
……カルヴェは俺のことどう思っているんだろう。
キスもして、セックスもして……でもそれはどちらも発情期を収めるためだったり、魔力を回復させるためだったりと必要なことだった。
そこに愛があるわけじゃない。
それに対して、俺はなんとなく寂しく思うのだった。
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