【完結】Ωの王子はαのドS執事と絶倫騎士に啼かされる~生意気な王子でごめんなさい~

翡翠蓮

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第十四話「嘘だろ、俺が……Ω?」

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「……」

 嘘だろ、と思った。
 現に、エリクも驚いている。

 そんな。俺がΩ?
 父様がαで、弟のエリアンもαということが確実に考えられていて、カルヴェもαで、グランもαなのに、俺だけΩなのか?

「殿下」

 言葉を失っている俺に、エリクが声をかけた。

「こちらの性別診断は、間違った判断は決して致しません。……私は殿下の第二の性を誰にも言いません。約束します」

 エリクが真摯な瞳でこちらを見つめている。
 どうやら嘘ではなさそうだ。

 気遣いが目に見えて、俺はショックを受け止め切れなかった。

「それと……今日、もしかしたら発情期が起こる場合がございます。陛下には少し体調が優れないと申し、自室で休まれるのをお勧めいたします」
「……わかりました」
「では、性別診断はこれにて終了です。殿下は、団長……は危ないな、侍従の方や執事の方と共におられるのがよろしいかと思います。……お気をつけて」

 まだ自分の第二の性がΩだという事実が信じられなかった。
 冷や汗が出てきて、呼吸が震える。

 俺は深呼吸して気持ちを落ち着かせ、エリクと共に部屋を出て、会場へとやってきた。

「……殿下?」

 カルヴェが性別診断が終わった俺の元に駆け寄ってきた。
 俺の憂鬱な表情を覗いて、怪訝な瞳を向ける。

 何かあったのだろうかとカルヴェが不安そうに見つめるが、俺はまだ事実を受け止め切れていなくて、何も言えなかった。

 発情期になってしまったら、匂いでこの貴族たちからΩだとバレてしまう。

 そしたら多分、俺が犯される可能性だってあるんだ。
 想像したくないけど。

 Ωがどんな差別を受けるのかはなんとなくわかるけど……まだ目の当たりにしたことはない。
 だけど、エリクが真剣な表情で今日は自室で休むのを勧めてきた。

 王宮魔術師の気遣った言葉だ。
 早々に従ったほうがいいだろう。

「カルヴェ。俺、今日早めに休むよ」
「……? はい、わかりました、殿下」

 俺は発情期が来ないかハラハラしながら成人式を過ごした。
 俺が主役だから、すぐに席を離れるわけにはいかない。

 額に汗を浮かばせながら貴族たちと会話して、少し食事を摂りながら夕方頃解散した。

「殿下、夜会に参加致しませんか?」

 先ほど挨拶してきた公爵令嬢のエミリア・ガーレットが俺に聞いてくる。
 成人式が終わったあとは、夜会がある。

 日本でいう二次会みたいなものらしい。
 みんなでお酒を飲んだり、食事や会話をしたり、音楽に合わせて踊るというもの。

 でも俺は……正直、怖い。

 ――今日、もしかしたら発情期が起こる場合がございます。

 発情期がどういうものかはわからない。

 だけど、それがきたら俺はαの人を無差別に襲ってしまったり、αに襲われたりすることがあるかもしれないのだ。

 そんな状況に陥りたくない。

「俺は、遠慮してお――」
「何を仰るんですか、殿下! 今日は殿下が主役なのですよ。ぜひ私と一緒に踊りませんか? 殿下」

 な、なに!? 今にきて女の子からアプローチ……だと!?
 でも、俺はΩだ。
 αとして生活することはできない。

 俺がこうやって女の子から誘われるのは、王子だからというのもあるが……成人してからは、きっと第二の性で良い意味として注目を浴びるか、悪い意味として注目を浴びるかなんだと思う。

 このエミリア嬢は、俺が性別診断でαだと診断されたと勘違いしているんじゃないだろうか。

 だから、このアプローチだって応えても俺がΩだってわかったら失望すると思う。
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