【完結】Ωの王子はαのドS執事と絶倫騎士に啼かされる~生意気な王子でごめんなさい~

翡翠蓮

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第四話「ワガママ言いたい放題!王子って最高~」

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「い、いや、なんでもない。それより、俺は何歳なんだ?」
「十六歳です。今年から王立学園高等部に所属しておられますね」

 十六歳!? なんて若いんだ……。まだブラック企業に就職することも知らない若造じゃないか……。

 まぁ、この国の王子に生まれたからには、ブラック企業になんて務めることもないんだけど……。

「そういえば、カルヴェとグランは見た目からして成人しているよな。第二の性はなんだ?」
「私はαです」
「俺もαですよ」

 カルヴェもグランもαなのか。
 でも、身分的には王子である俺のほうが上。

 何せカルヴェもグランも俺に仕えているわけだからな。
 二人がαでも、α(たぶん)で王子の俺には敵わないわけだ。

「……ふふ」

 俺は不適な笑みを浮かべた。

 前世でのひどい社畜扱い。
 何度も上司に怒鳴られ、何をやっても褒められることはなかった。

 その鬱憤が、未だに心にずっしりと溜まっている。
 今、αの王子の前で陛下以外に誰かが俺の上になることはない。

 まぁ、まだ第二の性は診断されていないけど。
 でも次期国王である俺がαでないはずないだろう。

 俺より下のカルヴェとグランに、たっぷりと溜まった俺の鬱憤を晴らしてもらおう。
 俺は柔らかいベッドから起き上がり、跪いているカルヴェを見下ろす。

「カルヴェ。喉が渇いた。さけ……こほん、冷たいジュースが飲みたい」
「もう、体調は大丈夫なのですか? 水にしたほうが……」
「ジュースがいい。ああ、ケーキもつけてくれると嬉しいなー」
「かしこまりました」
「ジュースは美味しいので頼むよ。美味しくなかったら許さないからな!」
「……承知致しました」

 俺は絶対に美味しいジュースを持ってこいというようにビシッとカルヴェを指さす。
 カルヴェが左手を胸にあて、右手を後ろに回して礼をする。

 ああ、気持ちいい!
 俺が一つ何か頼みごとをしただけで、カルヴェはお辞儀をして言うことを聞くのだ。

 うん、最高。王子に転生できてよかった。

 こんなこと、社畜で上司にこき使われているときの俺ではできなかった。
 今はこうして上の立場として我儘を言えることがなんだかスッキリするし、気持ちがいい。

「ああ、グラン。肩揉んでくれると嬉しいな」
「……かしこまりました」

 俺が背を向けると、グランの両手が伸びて肩を揉む。

「ん……いたっ! いたぁっ!」
「も、申し訳ありません。力が少し強かったでしょうか」
「痛いに決まってるだろ! もっと弱くしてくれよ!」
「申し訳ありません……」
「はぁ……」

 なんという馬鹿力だ。肩がちぎれるかと思った。

 やっぱり近衛騎士の団長というくらいだ、鍛え上げているから普通の人の何倍も力が強いのだろう……。

「もっと右がいい。もっと。そこそこ……あー気持ちいい。今度は左やって」
「かしこまりました。こちらですか?」
「ああ」

 カルヴェがやってくるまで、俺はグランに肩を揉んでもらうことにした。
 意外にも王子の肩は凝っていて、グランの太い指が沈んでいき、解されていく。

「次は背中揉んで」
「背中ですか?」
「凝ってるんだって。揉んでよ。俺の言うこと聞けないのか?」
「かしこまりました」

 そろそろカルヴェがやってくるかと思ったが、まだ来なかったから凝りが解れた肩はやめて、背中を揉んでもらった。

 さっきの俺の悲鳴が効いたのか、グランはそっと慎重に揉んでいる。

「もっと強くしてほしい。……それは痛いっ! 痛い!」
「も、もう少し弱くですか?」
「普通の力で肩揉んでくれよ。グランは肩もみが下手だなぁ」
「申し訳ありません……」

 グランがしょぼんと声を落として謝る。
 ……ちょっとやりすぎてしまっただろうか。

 しばらくするとドアがノックされ、カルヴェがトレーに橙色のジュースとチョコレートケーキを持ってきた。
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