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第一話「目が覚めたらイケメン二人が目の前にいました」
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「こんなこともできないのか、お前は!」
「申し訳ありません……」
上司に怒られ、日々残業する毎日。
今日も上司に怒鳴られて、深夜零時まで残業するハメになった。
俺が住む家は会社から徒歩十分以内で、終電という概念がない。
それをわかっている上司は俺にばかり仕事を押し付け、時間までにできていないと怒られてしまう。
会社を辞めようとも思ったが、俺の代わりになれる人はいない。
上司に怒られて、帰宅し適当に風呂に入って、コンビニで適当に買ったカップラーメンを啜る。
こんな日々があと何十年も続くのかもしれないと思うと、次第に吐き気がしてきてしまう。
だから考えないようにしている。心を無にして働くのだ。
ああ、この鬱憤をどこかにぶつけたい。
同僚も俺に仕事を押し付けてくるし、友人は結婚したり出世して忙しい奴らばかりだ。愚痴を言える相手がいない。
帰り道をとぼとぼと歩くと、お腹が大きく鳴ってしまった。
コンビニに寄ってカップラーメンでも買って帰ろうと、横断歩道を渡ろうとしたとき。
疲れからだろうか。赤信号の歩道を渡っていることに気づかなかった。
そして、俺は大きなクラクションの音を聞いて――意識が途切れた。
目が覚めたら、巨大なベッドに寝転がっていた。
腕を伸ばしても全然広いくらいのベッドで、多分キングサイズはあると思う。
天蓋つきのベッドで、金色のカーテンが窓から入る風に吹かれて揺れていた。
周りには、高級そうな瓶や壺、燭台などの調度品が置かれている。
病院のベッド……にしては、華やかすぎないだろうか。
「お目覚めですか、殿下」
誰かがカーテンを開けて俺の顔を覗きこんできた。
柔らかそうな黒髪は二の腕あたりまであって、一つに横流ししている。
通った鼻梁に、唇は薄く、肌も透るように滑らかだ。
瞳の色は薔薇のように赤い。
着ている真っ黒の燕尾服は皺ひとつない。
イケメン……すぎない?
それより、今、なんて言った? 殿下?
「殿下? 私の言葉がわかりますか?」
「え、えっと……殿下って、俺?」
「何を仰るんですか。記憶が混乱しているのでしょうか、自分の名前はわかりますか?」
名前……久実崎蒼じゃないのか?
意味がわからず黙っていたら、男が口を開いた。
「本当に記憶が混乱しているんですね。貴方の名前はアルマ・フェリードですよ」
あ、アルマ・フェリード? 誰だ、そんな奴。俺は知らないぞ。
しかも、殿下というのは俺で間違いないようだ。
男は部屋を出て医者を呼びに行ってしまい、一人ベッドに残された。
男がいなくなってすぐに、また扉がノックされて開いた。
「殿下! 大丈夫ですか?」
次にバン! とドアを開けて焦ったように俺の前に姿を現した人は、白い騎士服を着たガタイの良い人だった。
袖口からちらりと覗く手首は太く、背も高い。
肌は少し日焼けしていて、蜜色になっている。
唇は厚く、碧色の目も切れ長。
髪は金髪で、少々くせ毛だ。
この人も、イケメンすぎる。
それより、俺は死んだんじゃなかったのだろうか。
でも、こんな外国人のような人、しかも騎士のような服を着た人が医者なわけがない。
「目覚めたと聞いて、飛んできました。もうすぐ医者が来るので、待っていてくださいね」
俺はこくりと頷く。
そしてふと、サイドチェストに置かれている金縁の鏡を取った。
そこに映っていた俺の姿は……。
「……え?」
「申し訳ありません……」
上司に怒られ、日々残業する毎日。
今日も上司に怒鳴られて、深夜零時まで残業するハメになった。
俺が住む家は会社から徒歩十分以内で、終電という概念がない。
それをわかっている上司は俺にばかり仕事を押し付け、時間までにできていないと怒られてしまう。
会社を辞めようとも思ったが、俺の代わりになれる人はいない。
上司に怒られて、帰宅し適当に風呂に入って、コンビニで適当に買ったカップラーメンを啜る。
こんな日々があと何十年も続くのかもしれないと思うと、次第に吐き気がしてきてしまう。
だから考えないようにしている。心を無にして働くのだ。
ああ、この鬱憤をどこかにぶつけたい。
同僚も俺に仕事を押し付けてくるし、友人は結婚したり出世して忙しい奴らばかりだ。愚痴を言える相手がいない。
帰り道をとぼとぼと歩くと、お腹が大きく鳴ってしまった。
コンビニに寄ってカップラーメンでも買って帰ろうと、横断歩道を渡ろうとしたとき。
疲れからだろうか。赤信号の歩道を渡っていることに気づかなかった。
そして、俺は大きなクラクションの音を聞いて――意識が途切れた。
目が覚めたら、巨大なベッドに寝転がっていた。
腕を伸ばしても全然広いくらいのベッドで、多分キングサイズはあると思う。
天蓋つきのベッドで、金色のカーテンが窓から入る風に吹かれて揺れていた。
周りには、高級そうな瓶や壺、燭台などの調度品が置かれている。
病院のベッド……にしては、華やかすぎないだろうか。
「お目覚めですか、殿下」
誰かがカーテンを開けて俺の顔を覗きこんできた。
柔らかそうな黒髪は二の腕あたりまであって、一つに横流ししている。
通った鼻梁に、唇は薄く、肌も透るように滑らかだ。
瞳の色は薔薇のように赤い。
着ている真っ黒の燕尾服は皺ひとつない。
イケメン……すぎない?
それより、今、なんて言った? 殿下?
「殿下? 私の言葉がわかりますか?」
「え、えっと……殿下って、俺?」
「何を仰るんですか。記憶が混乱しているのでしょうか、自分の名前はわかりますか?」
名前……久実崎蒼じゃないのか?
意味がわからず黙っていたら、男が口を開いた。
「本当に記憶が混乱しているんですね。貴方の名前はアルマ・フェリードですよ」
あ、アルマ・フェリード? 誰だ、そんな奴。俺は知らないぞ。
しかも、殿下というのは俺で間違いないようだ。
男は部屋を出て医者を呼びに行ってしまい、一人ベッドに残された。
男がいなくなってすぐに、また扉がノックされて開いた。
「殿下! 大丈夫ですか?」
次にバン! とドアを開けて焦ったように俺の前に姿を現した人は、白い騎士服を着たガタイの良い人だった。
袖口からちらりと覗く手首は太く、背も高い。
肌は少し日焼けしていて、蜜色になっている。
唇は厚く、碧色の目も切れ長。
髪は金髪で、少々くせ毛だ。
この人も、イケメンすぎる。
それより、俺は死んだんじゃなかったのだろうか。
でも、こんな外国人のような人、しかも騎士のような服を着た人が医者なわけがない。
「目覚めたと聞いて、飛んできました。もうすぐ医者が来るので、待っていてくださいね」
俺はこくりと頷く。
そしてふと、サイドチェストに置かれている金縁の鏡を取った。
そこに映っていた俺の姿は……。
「……え?」
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