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第六話 守護者の見た目
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帰宅した俺たちは、母さんが作ってくれたトマトベースのスープを飲んでいた。
母さんは俺たちの傍の椅子には座らず、奥にあるロッキングチェアに座って編み物をしている。
「今日のスープも美味しいね、セーレ」
「そうですね」
「……」
ちらりと母さんの方を見る。
俺たちの会話など入りたくないかのように編み物に視線を落としていた。
俺が物心ついたときから、母さんはこんな感じでこちらに関心がない。
毎日「おはよう」と「おやすみ」くらいの最低限の会話しかしないし、なんとなくだけど俺たちに怯えているように見える。
俺が悪魔契約者だから、自分が呪われないか怖いのだろう。
父さんは俺にセーレが舞い降りてきたあと、子育てが落ち着いたころに離婚届を出して失踪した。
理由は考えなくてもわかる。呪われるのを防ぐため、もしくは悪魔契約者の俺が生まれて気持ち悪かったためだろう。
「アイヴァン殿下、良い人だったね」
夕食を食べ終わった俺たちは、自分の部屋のソファで寛いだ。
母さんが妖精契約者だから、給与も良くてある程度の部屋を借りることができている。
セーレも俺が寝るときはミニサイズになって、梁のある窓に座って怪しい人が来ないか見張ってくれている。悪魔だから睡眠をとる必要はないのだ。
「そうですか? 十分冷たかったと思いますよ。仕事の話とか」
「で、でもさ、他の人よりは優しくない?」
「……そうですね」
セーレが不機嫌そうに目を逸らして食後のホットミルクを啜る。
殿下は、俺が悪魔契約者だということがわかっていたはずだ。
契約者の見分け方は守護者の見た目でわかる。
妖精は羽根が生えていて、精霊は杖を片手に持っている。
妖精の羽根からはキラキラとした鱗粉、精霊も羽根が生えていて、杖からも眩い光が放たれ、圧倒的なオーラがある。
一方悪魔は、頭に角、尾てい骨に尻尾が生えている。
セーレも頭に黒い角が生えていて、殿下はそれを見ていたはずだ。
――その男は、お前の守護者か?
思えばセーレのことを悪魔呼ばわりしなかった。
気遣いだろうか。それとも、本当に誰と話そうと自分の勝手だと思っているのだろうか……。
殿下と一度しか会っていないのに、脳裏に何度も彼の姿がちらついてしまう。
もう会うことはないだろう。
忘れるようにセーレの角をそっと撫でた。
「な、なんですか」
「いや、うーん……」
殿下の考えていることがわからなくて、セーレの硬い角を撫でたりつついたりして遊ぶ。
セーレは「あの、そんなに触らないでください……!」と困った声を上げていたが、あまり俺の耳には入ってこなかった。
母さんは俺たちの傍の椅子には座らず、奥にあるロッキングチェアに座って編み物をしている。
「今日のスープも美味しいね、セーレ」
「そうですね」
「……」
ちらりと母さんの方を見る。
俺たちの会話など入りたくないかのように編み物に視線を落としていた。
俺が物心ついたときから、母さんはこんな感じでこちらに関心がない。
毎日「おはよう」と「おやすみ」くらいの最低限の会話しかしないし、なんとなくだけど俺たちに怯えているように見える。
俺が悪魔契約者だから、自分が呪われないか怖いのだろう。
父さんは俺にセーレが舞い降りてきたあと、子育てが落ち着いたころに離婚届を出して失踪した。
理由は考えなくてもわかる。呪われるのを防ぐため、もしくは悪魔契約者の俺が生まれて気持ち悪かったためだろう。
「アイヴァン殿下、良い人だったね」
夕食を食べ終わった俺たちは、自分の部屋のソファで寛いだ。
母さんが妖精契約者だから、給与も良くてある程度の部屋を借りることができている。
セーレも俺が寝るときはミニサイズになって、梁のある窓に座って怪しい人が来ないか見張ってくれている。悪魔だから睡眠をとる必要はないのだ。
「そうですか? 十分冷たかったと思いますよ。仕事の話とか」
「で、でもさ、他の人よりは優しくない?」
「……そうですね」
セーレが不機嫌そうに目を逸らして食後のホットミルクを啜る。
殿下は、俺が悪魔契約者だということがわかっていたはずだ。
契約者の見分け方は守護者の見た目でわかる。
妖精は羽根が生えていて、精霊は杖を片手に持っている。
妖精の羽根からはキラキラとした鱗粉、精霊も羽根が生えていて、杖からも眩い光が放たれ、圧倒的なオーラがある。
一方悪魔は、頭に角、尾てい骨に尻尾が生えている。
セーレも頭に黒い角が生えていて、殿下はそれを見ていたはずだ。
――その男は、お前の守護者か?
思えばセーレのことを悪魔呼ばわりしなかった。
気遣いだろうか。それとも、本当に誰と話そうと自分の勝手だと思っているのだろうか……。
殿下と一度しか会っていないのに、脳裏に何度も彼の姿がちらついてしまう。
もう会うことはないだろう。
忘れるようにセーレの角をそっと撫でた。
「な、なんですか」
「いや、うーん……」
殿下の考えていることがわからなくて、セーレの硬い角を撫でたりつついたりして遊ぶ。
セーレは「あの、そんなに触らないでください……!」と困った声を上げていたが、あまり俺の耳には入ってこなかった。
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