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第五十話「蒼馬の匂い」

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「ホテルは……この路地曲がって右だな」

 スマホでマップを開きながら蒼馬と歩いて、ホテルに辿り着く。
 テーマパークのすぐ近くにあるラグジュアリーホテルで、着いたらその高級感ある見た目に蒼馬がびっくりして口を開けていた。

「こ、こんなとこ泊まるの!?」
「うん。部屋は普通のとこだけど」
「タワマン並みに大きいじゃないか……湊、予約してくれてありがとう」

 手を繋いで受付のロビーへと進み、鍵と朝食券を受け取る。
 ロビーで待っている間に軽食が通されて、待っているだけで料理を振舞ってくれるのかって俺もそれには驚いてしまった。

 エレベーターで二十三階へと上がる。
 着いた部屋はごく普通のホテルのようで、ダブルルームで大きなベッドと奥に机と椅子があるだけだった。

「な、普通の部屋だろ――っ!?」

 部屋に行った途端振り返る間もなく蒼馬に押し倒され、俺はベッドに転がった。
 そのままちゅ、ちゅと蒼馬に小鳥みたいにキスされて、思考が追いつかない。

「ん……っ」

 押し返そうとしても手首を両手で掴まれて、抵抗できない。
 だんだん快感が唇から下半身に落ちてきて、中心が膨らんでくる。
 薄く目を開けると蒼馬の睫毛に自分の睫毛があたってしまって、蒼馬も目を開け、ようやく口を離した。

「い、いきなりキスするなよ……」
「テーマパークにいたときからずっと湊にキスしたかったんだよ。許して?」

 遊んでたときから欲情してたのか……と蒼馬の性欲に呆れたけど、犬が耳を垂れさせているときみたいな目で見られて、まあ男だし仕方ないかなんて思ってしまう。
 自分の恋人に甘いのは、恋人同士では当たり前のことなのだろうか。

「ちょっとまってっ、今日は発情期じゃないだろ。準備とかいろいろあるから、まずは風呂に入らせてよ」
「……うん、わかった。その後俺もお風呂に入ってもいい?」

 俺が頷くと、覆いかぶさっていた蒼馬はすぐにどいてくれた。
 起き上がって風呂で諸々の処理を済ませて上がったら、蒼馬も風呂に入っていった。
 一人で残されて、シャワーの音を聞きながらベッドにうずくまる。

「あ、これ……蒼馬の」

 蒼馬の黒色のコートがベッドに置かれていた。ハンガーにかけずに置いてきてしまったらしい。
 コートの他にもマフラーや手袋が置いてあって、俺はそれらを自分の身体に寄せる。

「……甘い匂いがする」

 コートやマフラー、手袋から蒼馬のあのバニラみたいな甘い匂いがふわっと香ってきて、思わずすんすん嗅いだ。
 もっと蒼馬の匂いが欲しい。
 蒼馬が背負っていたリュックも持ってきて、自分の周りに囲む。

 ……良い匂い。番のアルファの香りに安心する。
 もっと欲しい、もっと……。

「……湊?」

 蒼馬が風呂から上がってきて、俺の光景に目を瞠っていた。
 俺の周りには蒼馬のものがたくさん散らばっていて、しかも無意識に部屋着の中に手を入れ、後孔のナカを弄ってしまっていた。
 いつのまにか俺は、発情してしまっている。
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