甘く謳う二重奏~氷の天才ヴァイオリニストは執着アルファに溺愛される~

翡翠蓮

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※第三十八話「『運命の番』」

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「はぁ……」

 ベッドに倒れて、早急にジーンズを脱ぐ。
 アルファの匂いにやられて中心も後ろもぐずぐずで、気づけば自分のものを布団に擦りつけていた。

「湊、今戻ったよ」

 コンコンとドアをノックされ、インターホンも鳴らずに蒼馬の声だけが聞こえた。
 俺はオートロックを外し、ガチャ、という音だけで入っても良いことを告げる。

 しばらく経つと蒼馬が入ってきて、ドアが閉まった瞬間俺ははしたない格好をしているのにも関わらず蒼馬に抱きついた。

「み、湊!?」
「蒼馬……蒼馬……っ」

 これだ、この匂いだ。
 抱きしめてすんすんと匂いを嗅いでいるうちに、涙ぐんでくる。
 俺はこの匂いじゃないと絶対に嫌だ。今もこれからも蒼馬だけじゃないと、身体も心も狂ってしまう。

「蒼馬じゃないと嫌だ……っ。俺は、蒼馬がいいのに……!」

 我を失ったように「蒼馬、蒼馬」と呼んでいると、蒼馬が優しく俺の背中を撫でてきた。
 そして、俺と同じくらいの頻度で「ごめん」と言ってくる。
 ……蒼馬って俺に謝ってばかりだな、なんてこんなときに考えてしまった。

「ごめん、俺が番になるのはもう少し先にしようって、言ったから……」
「蒼馬が謝ることじゃない。全部、あいつが悪いから」

 今でも恐怖で手が震える。
 オメガだけどずっと隠して生きていたから、高校での留学ぶりにオメガのせいであんな目に遭ってしまった。
 オメガはこういう経験を何度もしているのだろうかと、不躾なアルファたちに苛立ってくる。
 蒼馬は俺をさすったあと、少し距離を置いて俺の肩を掴み、視線をしっかり合わせた。

「湊。番になろう」
「え……っ」
「もうこの先、湊を怖い目に遭わせたくない。湊の匂いを、誰にもわからせたくない。湊が番になる覚悟ができてるのなら……俺は、番になりたい」

 真っ直ぐ言葉をぶつけてくる蒼馬は、自分はもう覚悟ができている、と訴えていた。
 蒼馬と番になる。
 それは、蒼馬を誰よりも信頼し、蒼馬と一生を添い遂げる覚悟があるということ。

「……そんなの、決まってる」

 俺は後ろを向いて、剥き出しのうなじを見せた。

「蒼馬と番になりたい。……お願い、噛んで」

 番は、オメガの発情期中ならいつでもできる。
 挿入している最中でもできるが、こうして何もしていないときでも匂いを感じ取れていれば番になれるのだ。
 ずっと蒼馬にうなじを晒しているけれど……うなじに吐息がかかる感触も、傍に近寄る感じもない。
 いつまで経っても噛まれず、不思議に思って振り向こうとしたら……。

「あ……っ!?」

 下着を脱がされ、指を三本一気に入れられた。
 ぐずぐずだったソコは、三本の指も容易に受け入れ快楽に変換されていく。

「どうせなら繋がってるときに、番になりたい。……だめ?」

 甘ったるい声で蒼馬が囁いてくる。
 振り向くと蒼馬は既に前を寛げていて、はちきれそうなほど膨れ上がった欲を持て余していた。
 バラバラの指が一本一本良いところを擦り上げ、このままだと倒れそうだったから壁に手をつく。

「どうなの? 湊」
「だめじゃ、ない……! あっ、あぁ……っ!」

 指を引き抜かれ、背面立位の姿勢でとろとろのナカに蒼馬のものが突き刺さった。
 指よりも太くて硬くて大きなものが後孔を貫き、目の前がチカチカしてしまう。

「湊の中、とろとろ……。ごめんね、あまり前戯もせずに繋がっちゃって。湊の匂い嗅いでたら、我慢できなくて……」
「別に、気にしなくて、いい……っ、んっ、あ……!」

 優しくゆっくりピストンされ、物足りなさに媚肉がひくひくと蠢く。
 前戯をあまりしなかったから気を遣って激しくしていないのだろうが、返って中途半端な快感に自ら腰を動かしたくなってしまう。
 でもそんなことしたら、ただの淫乱だろう。
 蒼馬に引かれたくない。

「湊、東条さんにどこ触られた?」

 そんなことを悶々と考えていたら、蒼馬に変なことを聞かれた。
 どこ触られたか答えるのなんて、恥ずかしくて言えない。
 俺は可能な限り後ろを向いて、蒼馬をキッと睨んだ。

「ど、どこ触られたって、いい、だろ……!」
「教えて」
「えっ、あ、んあぁっ!」

 ギリギリまで引き抜かれたあと、すごい速さでずん、と奥を突かれて軽く達した。
 仕置きをされているみたいで、今すぐ答えないと再びこのピストンがやってくるのがよく考えなくてもわかる。
 俺は涙ぐみながら、掠れた声で答えた。

「ち、乳首とか、腹とか……そこらへんだけ」
「本当に? そこだけ?」
「んっ、ぁっ」

 片手で右の乳首を強く摘ままれ、その快感に思わずナカを締めつけてしまった。
 蒼馬のもう片方の手は腹の辺りをまさぐられて、東条のときとは違って嬉しい快さがこみあげてくる。
 締めつけたら蒼馬のものをさっきよりもっと感じ取れてしまって、がくがく腰が震えてしまう。

「あっ、ん……っ、そ、いえば、手にキスされた……。い……っ!?」

 俺が思い出したことを言ったら、蒼馬が手を掴んで手の甲を噛んだ。
 痛みすらも快感に走り抜けて、頭がぼうっとしてくる。
 蒼馬が嫉妬してくれたのだろう。
 そんな風に俺を独占したくなってくれたのなら、いくらでも噛んでくれていい。

「もう誰にも触らせない。俺だけの湊でいて」
「うん……っ、俺は、蒼馬だけのだから……っ!」

 ずんずん奥を突かれて、快楽の波が徐々に大きくなっていく。
 蒼馬に俺の手首を掴まれて、引っ張られる。
 律動がさっきとは嘘みたいに激しくなっていって、逃げることも許されず、口からただただ甘い声が零れた。

「好きだよ、湊」
「あっあ……っ、俺も、好き……っ。俺が好きなのは、蒼馬、だけだ……!」
「うん。どこにも行かないで。俺も、湊と一緒にいるから」

 全身がびくびく震えて、大きな波がやってくるのがわかる。
 下腹部が熱くなって、先走りがとろとろ溢れ、後孔からの愛液がぽたりと床に落ちる。
 もう、だめだ。イってしまう。

「は……っ、あっ、そろそろ、イく……っ!」
「……本当に、番になっていいんだね?」
「うんっ、蒼馬、お願い、番になって……!」

 その瞬間、蒼馬がうなじを思い切り噛んだ。

「っ……ああぁぁぁっ!」

 全身が雷に打たれたみたいに、電流が走る。
 身体の中の細胞という細胞が悦び、蒼馬だけのオメガに作り変えられていくのが、感覚でわかった。
 目がちかちかして、目の前が白くなっていく。

 いつの間にか中心から白濁を零していた。
 びくびく身体が震えて、蒼馬と番になれたことに全身が歓喜しているのがわかる。

 ナカが収縮して、イったときよりも、強烈な熱が俺を支配した。
 息を整えることすらできず、浅く呼吸してそのまま蒼馬のほうを振り向き、焦点が合わなかったけれど蒼馬を見つめた。

「……湊。これからずっと、俺は湊のアルファだよ」

 蒼馬から今までで一番優しいキスを落とされる。
 蒼馬の声が、だんだん聞こえなくなっていく。
 意識が遠くなって、ふっと勝手に目が閉じられ、そのままベッドに身を預けた。
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