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第十五話「俺、嫌われてるのかな」

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◇◇◇

「もう発情期終わったから、俺に関わるなよ」

 臼庭の体調を見て一週間。
 臼庭は元気になって、そういう反抗の心を俺に見せるようになった。
 いつもの臼庭に戻ってくれて、くすりと笑ってしまう。

「……何笑ってんの」
「ううん。良かった、元気になってくれて」

 学生寮のラウンジで、臼庭が『帰ってきた』ことにみんな喜んでいた。

 いつ帰って来たのか気になる人もいたけれど、臼庭は「夜行バスで深夜に帰ってきた」と言えば、みんな納得してくれていた。

「じゃあ、俺はそろそろ食堂に行くね」
「あ、待って」

 食堂に向かおうとする俺を、臼庭が引きとめる。
 俺の腕を掴んで、何か言いたげに口を開閉させていた。
 言いづらいことなのか、腕を掴んだまま何も言わない。

「臼庭?」
「あ、えっと……め、面倒みてくれて、ありがと。じゃあな」

 それだけ言うと、臼庭は俺の腕から手を離して急いで走って行ってしまった。
 一瞬だけ俺と目を合わせた臼庭の顔は、恥ずかしそうに赤らんでいて。
 俺はその場にしゃがんで額に手をつけてしまう。

「……可愛い……」

 こんな可愛い行動をする人に出会ったことなんてない。

 ああ、やっぱり俺は臼庭のことが大好きだ。
 番になりたい。

 何度好きと伝えれば、臼庭はうんと頷いてくれるだろう。
 俺はふらふらと立ち上がって食堂に向かった。


「じゃあ、あの甘い匂いは臼庭が発情を迎えてたからだったんだな」
「うん、そう。誰にも言わないでね」
「言わねーよ。俺、蒼馬のこと割と好きだし」

 食堂で、巡に定期演奏会のことや一週間俺と食事を摂らなかったことを問いただされ、絶対に内密にするという形で臼庭のことを教えてしまった。

 巡はかなり信用できる存在だし、俺の恋も応援してくれている唯一の味方だ。

 理事長に臼庭のことを協力してもらっていることも告げると、「じゃあ俺がバラしたら即退学だな」と冗談混じりに笑っていた。

「発情期に付き合った後も、関わるなって言われちゃったんだ。……俺、やっぱり嫌われてるのかな」
「うーん……ああいうタイプって、本当に嫌いなら全部無視するんじゃないか?」

 それもそうかもしれない。
 巡に言われたら、嫌われているのか嫌われていないのかわからなくなってきた。
 悩んでいると巡がバシバシと俺の肩を叩いてくる。

「蒼馬、諦めるな。大丈夫、俺はお前の恋、絶対成就するって思ってるから」
「あ……ありがとう」
「まずは、そうだな……臼庭のことをもっと知ったらどうだ? いろいろさ。それで距離を縮めていくんだ。どう?」

 ……確かに、俺はあまり臼庭のことをよく知らない。
 臼庭と仲良くなるためにも、もっと知っていったほうがいいだろう。

「わかった。臼庭のこと、よく知ろうと思う」
「おう! 頑張れ、応援してるぞ!」
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