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(※)第十三話「お世話」
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臼庭は急遽別の地域にコンサートの件で出張することになった、と噂が回っていた。
恐らく理事長が裏で画策してくれていたのだろう。
臼庭はこの大学や学生寮にはいないことになっている。
「はあっ!? 身体なんか自分で拭ける! お前が拭くな!」
理事長室で話を聞いたあとの夜。
俺は臼庭の部屋に行ってタオルを濡らし、彼の身体を拭こうとしている最中だった。
寮の部屋はオートロックだからインターホンを押して相手に許可を貰わないと入れない。
最初は臼庭も俺の姿をインターホン越しに見て渋っていたけど「早く開けてくれないと、臼庭が寮にいることバレちゃうよ」とちょっと申し訳ないけど半ば脅したら開けてくれたのだ。
「でも、理事長に頼まれたことだから我慢して。ほら、ばんざーい」
「……馬鹿にしてんのかお前」
と言いつつ、素直にばんざいして部屋着を脱がせてくれた。
俺は昼に総菜パンと紙パックのジュースを持って、臼庭の部屋に入った。
そのときに理事長に発情期中の世話を頼まれたことを話すと、臼庭は渋々納得する形で、俺が面倒を見てもいいと許可してくれたのだ。
確かに臼庭はいつもの抵抗力はない。
身体を拭いているときも全然反抗しなくて、弱々しい。
……守ってあげたいと、本能的に思う。
発情期の甘い匂いを我慢するために、俺は昼休みにコンビニに走って発情期のフェロモンを約八十パーセントカットするマスクを何枚か手に入れた。
これはバース性研究者が開発したマスクで、政府が差別をなくすためにアルファの人のみ無料で手に入れられるように施策したものだ。
他にも政府はオメガの発情抑制剤の値下げの政策を実施し、今では発情抑制剤が十年前の半額になっている。
「臼庭、下も脱いで」
「下はいい、自分でやるから。お前はもう帰れ」
「だめだめ。ほら、脱いで」
「うわ、ちょっと……!」
寝転がっている臼庭の腰を浮かせて、下着ごと脱がせる。
そこにあった臼庭の中心は……濡れそぼっていて、とても淫らな姿になっていた。
ごくりと唾を飲みこむ。
マスク越しにそこから甘い香りが入りこんで、鼓動がどきどきとうるさく鳴ってしまう。
「発情期中は、いつもこうなっちゃうの?」
「そうだよ……っ! だから見られたくなかったのに!」
臼庭が腕を顔の前に持って泣きそうな声を出す。
俺は臼庭の色素の薄い髪を撫でて、さらりと梳かした。
「……大丈夫。臼庭のは綺麗だよ」
「は、何言ってるんだ。そんなとこ、綺麗なわけないだろ」
「綺麗だよ。臼庭は身体も顔も、心も綺麗だ」
「……」
それ以来、臼庭は諦めたのか何も言わなかった。
先程体温を計ったときに高かったからか、顔が赤い。
臼庭の身体をくまなく拭いて、俺はおやすみの挨拶をしてから部屋に戻った。
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