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※第十一話「欲情」
しおりを挟むいつもとは違う人気が少ない裏道を通って、学生寮へと向かう。
臼庭の部屋に着いて、俺は臼庭にベッドに座って休むよう促した。
「臼庭は、教授たちにはオメガであることは伝えてるの?」
「理事長だけ知ってる。発情期で休むとき協力してくれるみたいだから、大丈夫。後で連絡しておく」
臼庭はベッドに寝転がる。
寮の部屋は『透明香水』が撒かれていない。
だんだん臼庭の匂いが濃くなってきて、俺の理性の糸がまたどんどん細くなっていく。
……だめだ、蒼馬。
臼庭は俺のことが好きじゃない。
俺がもしここで臼庭と繋がったりなんかしたら……絶対軽蔑されるだろう。
「じゃあ……俺、もう自分の部屋に戻るね」
「……うん」
俺の理性の糸が太くて良かった。
俺は臼庭がベッドで眠ろうとしているのを確認してから、自分の部屋に戻った。
部屋に着いた瞬間、俺はズボン越しからでもわかる滾った自分のものに触れる。
そのままズボンと下着を下ろして、性急にベッドに座った。
「……臼庭……っ」
自分でも最低なことをしているとはわかっていながらも、己を上下に扱いていく。
正直あんな匂いにあてられて、よく我慢できたと思う。
本能が叫んでいた。
臼庭と繋がりたいと。
でも繋がったら絶対に軽蔑される。
そしたら臼庭ともういられなくなる。
「あ……でも、二度と近づくなって言われちゃったんだよな……」
動かしていた手が止まる。
二度と近づくなって言われたけれど……でも、どうしても臼庭の傍にいたかった。
臼庭と繋がりたい。自分の手が臼庭の中だったら良かったのに。
そう思いながら愚息を扱き上げ、先走りを零していく。
臼庭が俺のもので乱れたらどうなるだろう。
何も考えられないほどに、ぐちゃぐちゃにして、溶かしたい。
そしてうなじを噛んで、番になりたい――。
「……っ」
臼庭には絶対に言えないけれど、臼庭のことを想像してそのままティッシュに吐き出してしまった。
精液を漏れないように丸めて、そのままゴミ箱に投げ入れる。
「……はぁ」
やってきた賢者タイムに俺は頭を抱える。
……臼庭で抜いてしまった。
最悪だ。
絶対臼庭には知られたくない。
臼庭ごめん。本当にごめん。
俺の部屋には臼庭の雑誌やCDが置いてあって、こんなことしなければよかったと本当に申し訳なくなってきた。
「……ごめん」
臼庭が表紙に載っている雑誌に一言謝ったけれど、罪悪感は深い。
俺は食堂で夕食を食べているときも、お風呂に入っているときも自分がしたことを後悔して過ごし、そのまま忘れるようにベッドに入って眠った。
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