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※第十話「発情期」
しおりを挟む急いで臼庭の匂いが濃くなるほうへと向かう。
匂いが蔓延しているということは、学生寮ではなく大学のキャンパス、それも教室以外の場所にいるはずだ。
広いキャンパスを走り回って、臼庭の居場所を探す。
「……臼庭、どこにいるんだ?」
匂いはしているけれど、臼庭が見当たらない。
というより、外にいた大学のみんながわかるほど臼庭の匂いが濃いなんて。
初めて出会ったときも感じていた。
臼庭の匂いはとても濃く、一度でも理性を手放したら奥の奥まで貪りつくしてしまうだろう。
オメガの発情期の匂いには差がある。
すごく濃い人もいれば、ベータの人にはわからない程度の薄い人もいる。
臼庭はすごく濃いタイプだ。
このままだとまずい。
俺は廊下を走って空き部屋を片っ端から入って探した。
「――臼庭!」
臼庭は廊下の一番奥にある、今は使われていない資料室に背中を丸めて座っていた。
急いで扉を閉めて臼庭の近くに駆け寄る。
甘い匂いが俺の思考を埋め尽くし、何も考えられなくさせていく。
「二度と近づくなって……言っただろ……っ」
「そんなの関係ない! 臼庭、抑制剤は飲んだの?」
「効かなくて……たまに、効かないときあるから……」
俺と視線を合わせた臼庭の瞳は潤んでいて、声もいつもより全然覇気がない。
苦しそうで、でも俺はその表情にぞくぞくしてしまう。
発情期は精を吐き出せば匂いが薄くなるとネットの記事で読んだことがある。
発情期自体は収まらないらしいけれど……一時を凌ぐならその方法が一番良いだろう。
臼庭は俺のことが好きじゃない。
それどころか離れてほしいとさえ思ってる。
だけど、今は緊急だから……俺のすることを、許してほしい。
「……っ!? 何して……」
「臼庭、大丈夫。俺が処理するから」
俺は臼庭のズボンを寛げて、下着姿にする。
臼庭は俺に見られることが嫌なのか、俺の髪に手を押しつけていた。
「そ、そんなことしなくていいから。落ち着いたらすぐ寮戻るし……」
「今、外でアルファとベータの人たちがオメガの匂いがするって騒いでるんだ。今匂いを薄くしないと、ここにやってきちゃうよ。そしたら臼庭のバースがバレてしまう。臼庭は、自分のバースを隠して入学したんだろう?」
「……」
臼庭は気まずそうに目を逸らす。
沈黙が続いて、臼庭の吐息の音が聞こえる。
下着越しに見える臼庭のそれは、勃っているのがすぐにわかった。
「……匂い、薄くするだけでいい」
「うん、わかった。……ありがとう」
許可を得てから、臼庭の下着を脱がせる。
臼庭の陰茎からは先走りがとろとろと溢れていて、内ももからも後孔の愛液が垂れていた。
なんていやらしい姿なんだろう。
俺は眼鏡を机の上に置いて、屈んで臼庭のものを舐めた。
「……ぁっ」
臼庭の小さな喘ぎ声が漏れる。
奥から裏筋の部分をそっとなぞるように舐めると、陰茎がふるりと震えた。
唾液を絡め、ゆっくり亀頭部分を咥えていく。
そのまま舌で裏筋を舐めると、臼庭のものがびくりと震えるのを感じた。
「ん……っ、ぁ、だ、だめ」
「何がだめなの?」
「ぜんぶ、咥えないで。気持ちよくなっちゃうから」
両手を顔の前に持っていっている臼庭が、涙を溜めてそう懇願した。
そんなの、反則だ……。
鉄のように硬かった理性の糸が簡単に何本も切れていく。
俺は亀頭の部分を咥えていたけれど、そのまま唾液と一緒に奥まで咥えこんだ。
「んあぁっ! だから、だめって……っ」
「もっと気持ちよくなって。気持ちいいからって、だめだなんてことないんだよ」
「だめっ、むり……っ、はぁ、あっ、ん……!」
奥から亀頭へ、じゅぷじゅぷと往復させる。
亀頭を咥えるときは、裏筋も舐めてそれから奥まで咥える。
臼庭が俺の髪を掴んで、必死に抵抗しようとしていた。
……ああ、可愛い。
抵抗する臼庭も可愛いし、蕩けた顔をする臼庭もなんて愛らしいんだろう。
このまま一つになりたい。
……でもそれは、臼庭から許可を貰っていない。
臼庭と一つになれたら……幸せなんだろうな。
「うすば、きもちいい?」
「……っ、そこで、喋るなぁ……っ!」
臼庭は身体をびくびくと震えさせ、呼吸を浅くする。
イきそうなのかな、と俺は臼庭の花芯を一気に奥まで咥えこんだ。
「あっ、あ……っ、だめ、もう、イく……っ」
「イっていいよ。我慢しないで、出してみて」
「口、離してっ……! ねえ、もう、イっちゃうから、はやく離れて……っ」
「俺の口の中に出して。臼庭の全部、飲みこみたい」
「っ! へ、へんたい……っ!」
臼庭が睨んでいたけれど、いつものあの鋭い瞳じゃなかった。
目尻に涙が浮かんで必死に睨めつけているみたいだけど、俺には可愛い以外の言葉が出てこない。
俺は往復を速めて、臼庭の射精を促した。
「あっ、ん……! はぁっ、イく! も、もう……っ、あっ……あ、イっちゃ……っ!」
俺の口内に臼庭の精が吐き出される。
臼庭の性器が脈打って、少し吸うと残りの精液がぴゅっと出てきた。
そのまま全部飲みこんで、口元を拭う。
臼庭のものも精液も全部甘くて、全部自分のものにしたくなった。
臼庭の浅い息が徐々に落ち着いていく。
臼庭から放たれていたとんでもなく濃い匂いは、今は近づかないとわからないくらいの匂いになっていた。
……でも、恐らくそれも一瞬のことで、また時間が経てば匂いが濃くなってしまうだろう。
「臼庭、立てる?」
「……うん」
臼庭は下着とズボンを履いて、乱れたシャツをきっちり直してから俺と一緒に廊下に出た。
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