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魔の湖の湿地帯
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その日の夕方、魔の森の湖の北端では、来た時の航路を変更して小舟を北東に向け、魔の森の湖と普通の湖の境界線にあたる大きな湿地帯を渡るティアとレイの姿があった。
「ティア、そっちはどうだ?」
「今のところ雑魚ばっかりよ。」
「噛まれるなよ!」
この湿地帯は、人肉を喰らう魚がウヨウヨ泳いでいる為、普通は誰もここに近づかない。
まして葦が密集したそこを二人だけで小さな小舟で渡るなんて、どう考えても一般的には自殺行為だった。
魔物の好物の魔素は魔の森の空気だけでなく、大霊山脈から流れてくる水にも多分に含まれており、この湿地帯に生えてる葦やその他の植物によって中和されるが、その為か、ここに自生している葦は一般の葦より大きく茎が硬い。
しかしながらこの難所を越えるのは、陸路を通るより、魔の森から王都や王国一の港町イファラには遥かに近道で、それらに続く街道沿いの大森林の中にある青湖と呼ばれる湖へとこの湿地帯は直接繋がっている。
くねくねとハテまで続く細い陸路の街道でも街道街のミドルへ二週間はかかるところを、上手くいけば二日で湖を渡り森を抜けてミドル近くまで出られる、と、聞いて、レイは無理を承知で今朝出発する前、ティアに頼み込んだのだ。
「頼む、もし可能なら一刻も早くファラドンに戻りたい。この滝からの一番の近道はどんな感じだ?」
「そうねえ、私もここから直接街道に行ったことがないから、多分だけど・・・」
ティアは三つの可能性のある行程を提案した。
一つは一番安全な行程で、湖を元来た航路で逆戻りし、湖のほとりから村に戻らず街道に直接出る。
この道のりは魔の森から直接街道に行ったことはなくても、ティアは村の周りの森を知り尽くしてるので安全に案内することが出来る。ただ日程の方は一日強行軍で夜まで掛かって街道に直接出たとしても、そこからまだ街道沿いに歩いて近くの街まで二日かかるし、街からミドルまでは馬車でも一週間近くはかかる。街道街ミドルとハテの間の街道の地形が山越えや谷越えで入り組んでいて、まっすぐ直線でないからだ。
その辺は海路でハテまで来たレイにも事情は分かった。
二つ目は魔の湖に戻らず、このまま北に湖のほとりに沿って北上し、湿地帯を避けて森を抜け、普通の湖に出たところで、レイと一緒に舟を森の木を切り倒して作り、それで湖を一気に渡る。これだと、魔の森を強行軍で四、五日かけて抜けたとしても、一週間程度で街道まで出られるかもしれない。
最後は全く無謀だが、このまま湖まで戻り小舟で湿地帯まで行ってそこから湿地帯を抜け普通の湖に入ったところで、風の魔法を使って一気に湖を渡り、舟を街道近くの森まで持っていく。
着いた先は普通の森だし、次の日には街道に出てなんとかミドルにたどり着けるかもしれない。
ただし、湿地帯を渡ったものは今まで誰もいないので、どの程度ここで時間が取られるか、予測がつかなかった・・・
それに青湖から街道までの大森林はティアも入ったことが無く、行き当たりばったりで運を天に任せる事になる可能性大だ。
「魔の湖を風の魔法で一気に渡れんのか?」
「最初に、私が水の精霊達に頼んだでしょ、湖の主を起こさず静かな航路を、って。湖には主が居て、あまり魔法を使うと起きて機嫌が悪くなるのよ。」
「ああ、そういえば、大亀の類が住んでいると聞いたことがあるな。」
「そう、だから魔の湖では水の精霊達に導いて貰って主を起こさない静かな航路を通っているのよ。ファイアボールみたいな爆発系の魔法は使ってないでしょ。」
「どっちにしろ、俺は3番目の行程で行きたい。ティアには無理をさせるが、その分礼はキッチリする。」
「ふ~、う~ん・・・・」
結局レイに押し切られ、ティアは舟を湿地帯に向けた。
途中、電撃大ナマズのヒゲにうっかり引っかかりそうになったり、どこからか歌声が聞こえてきてウタウタ寝そうになったりしながら、なんとかここまでは水の精の導きで上手く来れた。
けれど、湿地帯は不確定要素が多すぎて楽観できない。
ここの人喰い魚はちっちゃくてもさすが魔物だ。水中から無謀にも飛び跳ねて自分たちに向かって噛みつこうとする。防御バリヤで舟の外へ跳ね除けるものの、その数やとんでもなかった。
そして、今度は目の前に葦の密集地、舟が前に進めない。
水の精霊でもこの巨大な葦の密集地を導く事はできず、船の周りを飛び交うばかりだ。困ったティアに、レイが手前に出て葦を航路から退ける、と言った。そしてレイが何か話かけると、葦の密集が二手に分かれて航路を示したのだ。
「へ?」
「今のうちだ、長くは持たん、一気に風の魔法で舟を抜けさせる。ここまでくれば湖の主も目を覚ます事はないだろ。そのまま防御していてくれ。何が出るかわからん。」
ティアが二人を防御バリアで守り、レイが二手に分かれた葦の間を慎重に風の魔法で舟を進める。
舟が通り過ぎると葦は自然に元に戻り、ふと後ろを振り返れば、自分たちは巨大な葦の群生に囲まれている。
どこにいるのか位置関係もよくわからず、沈みゆく太陽が唯一ティア達が正しい方向に進んでいることを示していた。
辺りが徐々に暗くなり始め、もう少しで抜けそうだ、と二人で一安心し始めた頃、葦のトンネルの遥か前方に、黒い影が突然現れた。
「なんだ? 洞窟のような・・・」
ティアも目を凝らしてよく見ると、暗い洞窟の周りを囲む氷柱状の鍾乳石の岩や石筍は、岩ではなくやけに鋭く尖っている・・・・・
キラリンと光る、どこか見覚えのある尖った先端に、目を見張ったティア。
・・・まさかあれって、もしかして・・・・・
洞窟擬き不気味で巨大な口が、あーん、と大きく開いて、二人をそのまま飲み込もうと待ち受けている!
「ぎゃー! 大口クロコ! あいつ固いわよ、火の魔法はダメよ、葦に火がついて私たちまで黒焦げローストになっちゃう! それに葦は大事な資源なのよ、こんなことで殲滅するわけにはいかないわ。」
「水魔法はどうだ?」
「試してみてもいいけど、多分効かないわ。」
物は試し、レイが何十個もの強力なウオーターカッターで斬りつけるが、傷口は開くものの大口クロコの巨大な身体を攻略する前に、ティアとレイが餌になること確実だ・・・
「・・・レイ、気配を探って拘束できる?」
「ちょっと待て、・・・だめだ、周りに葦が密集し過ぎている、魚の数も多過ぎて気配が探れん。」
「・・・こうなったら、接近戦ね、剣で行くわよ!」
「よし、二人で斬りつけよう。」
トンネルの出口のような口しか見えず、全身の大きさも分からないので、縄もダメ、体を氷で凍結することも出来ない。
舟ごと飲み込んでしまいそうな、縦も横も大人二人が余裕で入る大きさの大口が待ち構え、後ろにも周りにも逃げ場はない。
レイが正眼で剣を構える。その凛とした姿の隣で、ティアもレイピアを腰から慎重に引き抜く。
二人で前方に瞳を見据え身構えると、突然、二人の剣が微かに震えて共鳴を始めた。
「な、何?一体?」
「剣が共鳴している! この魔力の感じは・・・・・もしや、伝説の通り魔法を放てるのか?」
「へ? 何のこと?」
「いいから、魔力を剣に送れ、合図で剣から魔法を放つぞ!!」
「えー?! ちょっと待って! 媒体を通して魔法を放つなんて、私、やったことない!」
「手をかざすのと同じだ、そのまま奴を狙って放て!」
レイと同じく魔力のうねりを剣から感じ取り、ティアは急いで剣に魔力を送り始めた。レイの合図で訳も分からずとりあえず解放、と強く念じる。
「行くぞ!」
「えーい、行けー!」
剣を中心に、辺りが明るくなる程複雑な二重の魔法陣が重なって出現すると、二人の剣から突然稲妻のような光が放たれた。まっすぐ大口クロコに向かって光が飛んでいく。前方の大口クロコに稲光が命中し、当たった途端、どおーん、と物凄い音が鳴り響き、あたりに霧のようなもやが散らばった。
えっ、消えた?
大口クロコが、まるで始めからそこにいなかったように、存在した痕跡も塵も残さず消え去った・・・・
デスバードのようにサラサラとその姿が消えるのでもない、全く影形が突如なくなったのだ。
あっけにとられた二人を乗せた小舟は、そのまま大口クロコが消え去った靄の後を通り抜け、滑走してやがて広い湖に勢いで飛び出す。
「きゃあ!」
ぱっと靄から顔を庇い、バシャンと大きく船が揺れそうなところを水の精がとっさに波を抑え、船はそのまま滑るように滑走を続けた。
しばらくしてようやくティアが呆然と呟く。
「ねえ、レイ、一体何が起こったの? あんな魔法、見たことないんだけど・・・」
「俺も、初めてだ・・・この剣は元々魔法剣だった、らしい。長い間誰も使い方が分からず、古代遺跡の文献の解析で判明したのだが。どうやら、ティアのそのレイピアも同じらしいな。だが、正直言って俺にもよくわからん。」
「代々家に伝わってきた剣だとは聞いたけど・・・まさか、魔法剣だったなんて・・・」
「柄のところに俺の剣と同じマークがある。意味は分からんが。」
レイに指摘されて、暗い中を目を凝らして柄を見てみると確かに三叉のような模様が入っていた。
何の印だろう?・・・でも、朧げながらどこかで見たような・・・いくら考えても、思い出せない。
「何にせよ、迂闊にこの剣の魔法は使えんな。あんな強力な力、使い方を誤れば大変な事になる。」
「・・・そうね。大型の大口クロコは全長が原始の木の大木と匹敵すると聞いたことがあるわ。それだけの大きさの物をチリ一つ残さず、消滅させてしまえるなんて・・・」
「とりあえず、この事は俺たちだけの間で留めておこう。魔法が発動する原理も、力も解らない、不安定すぎる武器は混乱を招くだけだ。」
「わかったわ。」
「ん、ところで、舟の進行方向は合っているのか?勝手に惰性で動いているようだが。」
「大丈夫よ、水の精がちゃんと目的地に導いてくれてるわ。」
「そうか、ありがとう。」
「どういたしまして。」
大きく頷くティアに安心した様子のレイ。
ふと、レイがここまで急ぐのはもしかして今回の任務に関わりがあるのか? と気がついた。
(任務の内容はルナデドロップの採集だけど、万能薬草が至急必要な病人がもしかして、待っているのかしら?)
それならば、一刻を争うのも無理はない。
「レイ、もしかして誰か病気なの? それでルナデドロップが必要なの?」
「ああ、あらゆる手を尽くしたが、もうこれしか残っていない。」
「どんな病気なの?」
「それが原因不明なんだ。突然倒れて目を覚まさない。多分だが普通の病気ではなく、呪詛系の何かでは、と推察されている。」
あー、なるほど。それなら普通の薬は効かないわね・・・病気や怪我なら薬で治るが、呪詛、となれば、仕掛けた本人を捕まえて解呪させるか、ルナデドロップのような魔草で呪いを撥ねつける、しかない。
呪詛なら、私の持ってるスウの作ったポーションで治すことが出来る・・・けど、スウの作ったこれ、強力過ぎるんだよね、確か・・・
ティアにもしものことがあった時の為、と渡されたポーションは、飲むとあらゆる病気、毒、呪詛を含む病に効くが、呪詛だった場合、呪った本人に跳ね返る。ティアの暗殺を企てる輩に無慈悲なスウの、強力なポーションだ。
どうしよう、場合によっては譲ってあげても・・・と口を開きかけたティアに、レイは聞いてきた。
「ティア、風の魔法で舟の速度を速めていいか? この湖は普通の湖だと言っていたよな。彼女が心配だ、一刻も早く帰りたい。」
「!! も、もちろん大丈夫よ。ここは普通の湖よ・・。」
(彼女?・・・て、まさか・・・)
恋人なのだろうか?
その時、突然レイの風を受けて舟が一気にスピードをあげ、一瞬ぐらっと大きく揺れて、ボーとしていたティアは舟の中で転けてしまった。
「きゃあ!」
「すまん! ちょっと力を入れすぎた。」
レイは手を差し出すが、凄い勢いで進む舟は追い風を受けて目も満足に開けられない。風除けにとっさに防御のバリアを張ったティアは、大丈夫だ、とレイに手を上げてバリアの中から叫ぶ。
「大丈夫よ、ちょっとびっくりしただけ、突然動くから。それに、これがないと目も開けられないわ。」
「・・・そうか。」
差し出させれた手を拒み、自分で立ち上がったティアは進行方向に目を向ける。
大丈夫、なんか悲しいけど・・・第一、レイのようなカッコイイ男に恋人がいないわけない・・・ガッカリ思う方がどうかしている・・・・・
って言うか、まさか、もう結婚して奥さんがいるんじゃ・・・
貴族の結婚は早い、家柄が良ければ小さい時から許嫁がいたりする。その事実に今更気づいたティアは青くなった。
まさか、私、奥さんのいる人とあんな事・・・
真っ青になったティアは前を向いたまま震える声で聞いた。
ハッキリさせないと、いるならもう二度とあんなことしちゃいけない・・・
「レイ、ねえ、その人ってまさか奥さん? それとも恋人?」
「ん、なんだティア、気になるのか?」
「当たり前でしょ、あんなこと今朝しといて!」
「ティア、バリアを解いてこっちを向け。」
「いや! レイなんか嫌い。」
「しょうがないな。」
レイが片手を上げると、ティアのバリアは呆気なくパチンと消える、そのまま涙目のティアに近づくと、嫌がるティアを無理矢理抱きしめ、吹き上げる風の中、風になびく髪に頬を押し付け耳元で答えた。
「任務だと言っただろ。彼女はもう若くないし、体力も昔ほどではない。気が強い女性だが、呪詛に負けてしまうのでは、と心配なだけだ。」
「えっ?」
やっと顔を上げたティアの顎を持ち上げ、瞳を見つめながらレイはハッキリ告げる。
「悪いが任務に関しては、これ以上は言えない。君の質問の答えになるかはわからないが、俺には奥さんはいないし、恋人もいない。」
「嘘!」
「嘘ではない。だが、この頃周りがうるさくてな。婚約者候補なら確か、10人はいたな。」
「はあ!?」
「安心しろ、この国は一夫多妻制ではない。特に王族や貴族は跡継ぎ問題にも関わるからな、娶る妻は一人だけだ。」
婚約者候補が10人はいる、と聞いて、思わず後退り始めたティアをレイはガシッと掴んで離すものか、と急いで言い足す。
まだ、疑わしそう、に見ているティアにレイは重いため息をつく。
「ティア、俺だって、顔もろくに覚えてもいない貴族の娘たちの中から選べ、と言われて困ってるんだ。」
「へえ~。本当に?」
「ティアだって、絶対話が合わなさそうな何人もの男達の中から夫を選べ、と言われたら、困るだろ?」
うっ、まあ、それは確かにそうだ。特に自分はそうなる可能性がとてつもなく高い。
父のマリス元大公はもともと民衆の支持が高く、いまは戦線が拡大して、内戦の元凶である隣のイリス国をも巻き込んで勢力が年々増している。内戦が終結して元の地位に返り咲けば、政略結婚は避けられないだろう。
黙り込んでしまったティアに、レイは優しく言い聞かせる。
「俺の立場もちょっとは理解したか? まあ、追い追いわかってくれればいい。」
そう言って、そのまま、ティアを抱きしめ、ゆっくりティアに口づける。
「ん・・・んっ」
もう、またこんな事して・・とは思うのだが、どうも自分はレイのキスに弱い。
ついつい甘く口づけを返してしまい、ああ、自分、こんな時になにやってるんだろ、とレイの逞しい大きな胸に抱かれて思ってしまう。
そのまま二人で長い長いキスを交わして、ティアは頭がボーとしてきた。
レイがキスの仕方なんか教えるから、やめられないじゃない・・・てか、もっとちゃんとしてほしい・・・
チュッと、長いが案外あっさり終えたキスに、レイに決まった人がいないと聞いて嬉しくなったティアはちょっと物足りなさを感じて、思わず頭に浮かんだ文句に慌てて自分で否定する。
チッガーウ、そうじゃなくて、やたらとキスなんかしちゃ・・・あれ? レイ、恋人も奥さんもいない、って言ったんだっけ?
じゃあ、別に私にキスしても、誰にも迷惑かけてないわけだ・・・・
婚約者候補たちは憤慨するだろうが、レイにその気はないみたいだし・・・
なびく風で乱れた前髪を大きな手で搔き上げるレイ。
その仕草一つで、その大きな手、長い指で優しくティアに触れた二人で過ごした滝での濃密な時間が思い返され、ティアの感覚を刺激してくる。
・・・・やっぱり何だか物足りない・・・・
「ティア、前方に何か見えてきた。」
「はぃ? あ、ああ、多分森が近づいてきたんじゃないかな。でもまだけっこう距離あるわよ。水の精も騒いでないし、もう少しこのままの速さで進んで大丈夫。」
「了解だ。」
真っ暗な湖の前方に、闇に慣れた目を凝らせば、星も瞬く夜空の向こうに暗い森の影が確かに見える。
・・・レイって目がいいのね、こんな暗い中、気がつくなんて・・・
夜風に髪をなびかせ、夜の湖を滑るように舟を走らせる。
やがて、かなり時が経つと、暗闇の視界前方にぼんやり岸が見え始めた。
ティアはレイに、速度を下げて、と頼んで慣性でそのまま静かに舟は、すーと湖のほとりに着いた。
はあ~、やっと着いた・・・
無事岸に上がったティアは、さすがに疲れて岸に座り込んだ。
「そのまま休んでろ。俺が火をおこして飯を用意する。」
「ありがと~、レイ。あっ、これ、よかったら、焼いてステーキにでもして・・・」
ありがたいレイの申し出に、まだ、たっぷり残っていた熊肉や調味料を差し出し、ついでに毛布も出して、ゴロンんと横になる。
あ~疲れたぁ、でも、無事、目的地まで来れてよかった・・・・・
レイってば、あれだけ魔法を続けて使って、まだ疲れてないんだ・・・凄いな・・・
ティアも、湿地帯を渡るのは初めての体験。
レイと一緒なら、きっと・・・自分とレイの力を信じての、思いきった挑戦だった。
絶対の信頼を置く、スウとジン以外の人に自分の命を預けたも同然の決断。
だけど、躊躇いを感じたのは未知の湿地帯へ赴く事に対してであって、決してレイに背中を預ける事に、ではなかった。
やっぱり、レイと二人だと、命懸けの今日の冒険もどこかワクワクして楽しめた・・・・・
今夜の夜空は、薄い雲が掛かってる・・・段々重くなっていく瞼に、ティアの意識が一旦そこで途切れた。
「ティア、そっちはどうだ?」
「今のところ雑魚ばっかりよ。」
「噛まれるなよ!」
この湿地帯は、人肉を喰らう魚がウヨウヨ泳いでいる為、普通は誰もここに近づかない。
まして葦が密集したそこを二人だけで小さな小舟で渡るなんて、どう考えても一般的には自殺行為だった。
魔物の好物の魔素は魔の森の空気だけでなく、大霊山脈から流れてくる水にも多分に含まれており、この湿地帯に生えてる葦やその他の植物によって中和されるが、その為か、ここに自生している葦は一般の葦より大きく茎が硬い。
しかしながらこの難所を越えるのは、陸路を通るより、魔の森から王都や王国一の港町イファラには遥かに近道で、それらに続く街道沿いの大森林の中にある青湖と呼ばれる湖へとこの湿地帯は直接繋がっている。
くねくねとハテまで続く細い陸路の街道でも街道街のミドルへ二週間はかかるところを、上手くいけば二日で湖を渡り森を抜けてミドル近くまで出られる、と、聞いて、レイは無理を承知で今朝出発する前、ティアに頼み込んだのだ。
「頼む、もし可能なら一刻も早くファラドンに戻りたい。この滝からの一番の近道はどんな感じだ?」
「そうねえ、私もここから直接街道に行ったことがないから、多分だけど・・・」
ティアは三つの可能性のある行程を提案した。
一つは一番安全な行程で、湖を元来た航路で逆戻りし、湖のほとりから村に戻らず街道に直接出る。
この道のりは魔の森から直接街道に行ったことはなくても、ティアは村の周りの森を知り尽くしてるので安全に案内することが出来る。ただ日程の方は一日強行軍で夜まで掛かって街道に直接出たとしても、そこからまだ街道沿いに歩いて近くの街まで二日かかるし、街からミドルまでは馬車でも一週間近くはかかる。街道街ミドルとハテの間の街道の地形が山越えや谷越えで入り組んでいて、まっすぐ直線でないからだ。
その辺は海路でハテまで来たレイにも事情は分かった。
二つ目は魔の湖に戻らず、このまま北に湖のほとりに沿って北上し、湿地帯を避けて森を抜け、普通の湖に出たところで、レイと一緒に舟を森の木を切り倒して作り、それで湖を一気に渡る。これだと、魔の森を強行軍で四、五日かけて抜けたとしても、一週間程度で街道まで出られるかもしれない。
最後は全く無謀だが、このまま湖まで戻り小舟で湿地帯まで行ってそこから湿地帯を抜け普通の湖に入ったところで、風の魔法を使って一気に湖を渡り、舟を街道近くの森まで持っていく。
着いた先は普通の森だし、次の日には街道に出てなんとかミドルにたどり着けるかもしれない。
ただし、湿地帯を渡ったものは今まで誰もいないので、どの程度ここで時間が取られるか、予測がつかなかった・・・
それに青湖から街道までの大森林はティアも入ったことが無く、行き当たりばったりで運を天に任せる事になる可能性大だ。
「魔の湖を風の魔法で一気に渡れんのか?」
「最初に、私が水の精霊達に頼んだでしょ、湖の主を起こさず静かな航路を、って。湖には主が居て、あまり魔法を使うと起きて機嫌が悪くなるのよ。」
「ああ、そういえば、大亀の類が住んでいると聞いたことがあるな。」
「そう、だから魔の湖では水の精霊達に導いて貰って主を起こさない静かな航路を通っているのよ。ファイアボールみたいな爆発系の魔法は使ってないでしょ。」
「どっちにしろ、俺は3番目の行程で行きたい。ティアには無理をさせるが、その分礼はキッチリする。」
「ふ~、う~ん・・・・」
結局レイに押し切られ、ティアは舟を湿地帯に向けた。
途中、電撃大ナマズのヒゲにうっかり引っかかりそうになったり、どこからか歌声が聞こえてきてウタウタ寝そうになったりしながら、なんとかここまでは水の精の導きで上手く来れた。
けれど、湿地帯は不確定要素が多すぎて楽観できない。
ここの人喰い魚はちっちゃくてもさすが魔物だ。水中から無謀にも飛び跳ねて自分たちに向かって噛みつこうとする。防御バリヤで舟の外へ跳ね除けるものの、その数やとんでもなかった。
そして、今度は目の前に葦の密集地、舟が前に進めない。
水の精霊でもこの巨大な葦の密集地を導く事はできず、船の周りを飛び交うばかりだ。困ったティアに、レイが手前に出て葦を航路から退ける、と言った。そしてレイが何か話かけると、葦の密集が二手に分かれて航路を示したのだ。
「へ?」
「今のうちだ、長くは持たん、一気に風の魔法で舟を抜けさせる。ここまでくれば湖の主も目を覚ます事はないだろ。そのまま防御していてくれ。何が出るかわからん。」
ティアが二人を防御バリアで守り、レイが二手に分かれた葦の間を慎重に風の魔法で舟を進める。
舟が通り過ぎると葦は自然に元に戻り、ふと後ろを振り返れば、自分たちは巨大な葦の群生に囲まれている。
どこにいるのか位置関係もよくわからず、沈みゆく太陽が唯一ティア達が正しい方向に進んでいることを示していた。
辺りが徐々に暗くなり始め、もう少しで抜けそうだ、と二人で一安心し始めた頃、葦のトンネルの遥か前方に、黒い影が突然現れた。
「なんだ? 洞窟のような・・・」
ティアも目を凝らしてよく見ると、暗い洞窟の周りを囲む氷柱状の鍾乳石の岩や石筍は、岩ではなくやけに鋭く尖っている・・・・・
キラリンと光る、どこか見覚えのある尖った先端に、目を見張ったティア。
・・・まさかあれって、もしかして・・・・・
洞窟擬き不気味で巨大な口が、あーん、と大きく開いて、二人をそのまま飲み込もうと待ち受けている!
「ぎゃー! 大口クロコ! あいつ固いわよ、火の魔法はダメよ、葦に火がついて私たちまで黒焦げローストになっちゃう! それに葦は大事な資源なのよ、こんなことで殲滅するわけにはいかないわ。」
「水魔法はどうだ?」
「試してみてもいいけど、多分効かないわ。」
物は試し、レイが何十個もの強力なウオーターカッターで斬りつけるが、傷口は開くものの大口クロコの巨大な身体を攻略する前に、ティアとレイが餌になること確実だ・・・
「・・・レイ、気配を探って拘束できる?」
「ちょっと待て、・・・だめだ、周りに葦が密集し過ぎている、魚の数も多過ぎて気配が探れん。」
「・・・こうなったら、接近戦ね、剣で行くわよ!」
「よし、二人で斬りつけよう。」
トンネルの出口のような口しか見えず、全身の大きさも分からないので、縄もダメ、体を氷で凍結することも出来ない。
舟ごと飲み込んでしまいそうな、縦も横も大人二人が余裕で入る大きさの大口が待ち構え、後ろにも周りにも逃げ場はない。
レイが正眼で剣を構える。その凛とした姿の隣で、ティアもレイピアを腰から慎重に引き抜く。
二人で前方に瞳を見据え身構えると、突然、二人の剣が微かに震えて共鳴を始めた。
「な、何?一体?」
「剣が共鳴している! この魔力の感じは・・・・・もしや、伝説の通り魔法を放てるのか?」
「へ? 何のこと?」
「いいから、魔力を剣に送れ、合図で剣から魔法を放つぞ!!」
「えー?! ちょっと待って! 媒体を通して魔法を放つなんて、私、やったことない!」
「手をかざすのと同じだ、そのまま奴を狙って放て!」
レイと同じく魔力のうねりを剣から感じ取り、ティアは急いで剣に魔力を送り始めた。レイの合図で訳も分からずとりあえず解放、と強く念じる。
「行くぞ!」
「えーい、行けー!」
剣を中心に、辺りが明るくなる程複雑な二重の魔法陣が重なって出現すると、二人の剣から突然稲妻のような光が放たれた。まっすぐ大口クロコに向かって光が飛んでいく。前方の大口クロコに稲光が命中し、当たった途端、どおーん、と物凄い音が鳴り響き、あたりに霧のようなもやが散らばった。
えっ、消えた?
大口クロコが、まるで始めからそこにいなかったように、存在した痕跡も塵も残さず消え去った・・・・
デスバードのようにサラサラとその姿が消えるのでもない、全く影形が突如なくなったのだ。
あっけにとられた二人を乗せた小舟は、そのまま大口クロコが消え去った靄の後を通り抜け、滑走してやがて広い湖に勢いで飛び出す。
「きゃあ!」
ぱっと靄から顔を庇い、バシャンと大きく船が揺れそうなところを水の精がとっさに波を抑え、船はそのまま滑るように滑走を続けた。
しばらくしてようやくティアが呆然と呟く。
「ねえ、レイ、一体何が起こったの? あんな魔法、見たことないんだけど・・・」
「俺も、初めてだ・・・この剣は元々魔法剣だった、らしい。長い間誰も使い方が分からず、古代遺跡の文献の解析で判明したのだが。どうやら、ティアのそのレイピアも同じらしいな。だが、正直言って俺にもよくわからん。」
「代々家に伝わってきた剣だとは聞いたけど・・・まさか、魔法剣だったなんて・・・」
「柄のところに俺の剣と同じマークがある。意味は分からんが。」
レイに指摘されて、暗い中を目を凝らして柄を見てみると確かに三叉のような模様が入っていた。
何の印だろう?・・・でも、朧げながらどこかで見たような・・・いくら考えても、思い出せない。
「何にせよ、迂闊にこの剣の魔法は使えんな。あんな強力な力、使い方を誤れば大変な事になる。」
「・・・そうね。大型の大口クロコは全長が原始の木の大木と匹敵すると聞いたことがあるわ。それだけの大きさの物をチリ一つ残さず、消滅させてしまえるなんて・・・」
「とりあえず、この事は俺たちだけの間で留めておこう。魔法が発動する原理も、力も解らない、不安定すぎる武器は混乱を招くだけだ。」
「わかったわ。」
「ん、ところで、舟の進行方向は合っているのか?勝手に惰性で動いているようだが。」
「大丈夫よ、水の精がちゃんと目的地に導いてくれてるわ。」
「そうか、ありがとう。」
「どういたしまして。」
大きく頷くティアに安心した様子のレイ。
ふと、レイがここまで急ぐのはもしかして今回の任務に関わりがあるのか? と気がついた。
(任務の内容はルナデドロップの採集だけど、万能薬草が至急必要な病人がもしかして、待っているのかしら?)
それならば、一刻を争うのも無理はない。
「レイ、もしかして誰か病気なの? それでルナデドロップが必要なの?」
「ああ、あらゆる手を尽くしたが、もうこれしか残っていない。」
「どんな病気なの?」
「それが原因不明なんだ。突然倒れて目を覚まさない。多分だが普通の病気ではなく、呪詛系の何かでは、と推察されている。」
あー、なるほど。それなら普通の薬は効かないわね・・・病気や怪我なら薬で治るが、呪詛、となれば、仕掛けた本人を捕まえて解呪させるか、ルナデドロップのような魔草で呪いを撥ねつける、しかない。
呪詛なら、私の持ってるスウの作ったポーションで治すことが出来る・・・けど、スウの作ったこれ、強力過ぎるんだよね、確か・・・
ティアにもしものことがあった時の為、と渡されたポーションは、飲むとあらゆる病気、毒、呪詛を含む病に効くが、呪詛だった場合、呪った本人に跳ね返る。ティアの暗殺を企てる輩に無慈悲なスウの、強力なポーションだ。
どうしよう、場合によっては譲ってあげても・・・と口を開きかけたティアに、レイは聞いてきた。
「ティア、風の魔法で舟の速度を速めていいか? この湖は普通の湖だと言っていたよな。彼女が心配だ、一刻も早く帰りたい。」
「!! も、もちろん大丈夫よ。ここは普通の湖よ・・。」
(彼女?・・・て、まさか・・・)
恋人なのだろうか?
その時、突然レイの風を受けて舟が一気にスピードをあげ、一瞬ぐらっと大きく揺れて、ボーとしていたティアは舟の中で転けてしまった。
「きゃあ!」
「すまん! ちょっと力を入れすぎた。」
レイは手を差し出すが、凄い勢いで進む舟は追い風を受けて目も満足に開けられない。風除けにとっさに防御のバリアを張ったティアは、大丈夫だ、とレイに手を上げてバリアの中から叫ぶ。
「大丈夫よ、ちょっとびっくりしただけ、突然動くから。それに、これがないと目も開けられないわ。」
「・・・そうか。」
差し出させれた手を拒み、自分で立ち上がったティアは進行方向に目を向ける。
大丈夫、なんか悲しいけど・・・第一、レイのようなカッコイイ男に恋人がいないわけない・・・ガッカリ思う方がどうかしている・・・・・
って言うか、まさか、もう結婚して奥さんがいるんじゃ・・・
貴族の結婚は早い、家柄が良ければ小さい時から許嫁がいたりする。その事実に今更気づいたティアは青くなった。
まさか、私、奥さんのいる人とあんな事・・・
真っ青になったティアは前を向いたまま震える声で聞いた。
ハッキリさせないと、いるならもう二度とあんなことしちゃいけない・・・
「レイ、ねえ、その人ってまさか奥さん? それとも恋人?」
「ん、なんだティア、気になるのか?」
「当たり前でしょ、あんなこと今朝しといて!」
「ティア、バリアを解いてこっちを向け。」
「いや! レイなんか嫌い。」
「しょうがないな。」
レイが片手を上げると、ティアのバリアは呆気なくパチンと消える、そのまま涙目のティアに近づくと、嫌がるティアを無理矢理抱きしめ、吹き上げる風の中、風になびく髪に頬を押し付け耳元で答えた。
「任務だと言っただろ。彼女はもう若くないし、体力も昔ほどではない。気が強い女性だが、呪詛に負けてしまうのでは、と心配なだけだ。」
「えっ?」
やっと顔を上げたティアの顎を持ち上げ、瞳を見つめながらレイはハッキリ告げる。
「悪いが任務に関しては、これ以上は言えない。君の質問の答えになるかはわからないが、俺には奥さんはいないし、恋人もいない。」
「嘘!」
「嘘ではない。だが、この頃周りがうるさくてな。婚約者候補なら確か、10人はいたな。」
「はあ!?」
「安心しろ、この国は一夫多妻制ではない。特に王族や貴族は跡継ぎ問題にも関わるからな、娶る妻は一人だけだ。」
婚約者候補が10人はいる、と聞いて、思わず後退り始めたティアをレイはガシッと掴んで離すものか、と急いで言い足す。
まだ、疑わしそう、に見ているティアにレイは重いため息をつく。
「ティア、俺だって、顔もろくに覚えてもいない貴族の娘たちの中から選べ、と言われて困ってるんだ。」
「へえ~。本当に?」
「ティアだって、絶対話が合わなさそうな何人もの男達の中から夫を選べ、と言われたら、困るだろ?」
うっ、まあ、それは確かにそうだ。特に自分はそうなる可能性がとてつもなく高い。
父のマリス元大公はもともと民衆の支持が高く、いまは戦線が拡大して、内戦の元凶である隣のイリス国をも巻き込んで勢力が年々増している。内戦が終結して元の地位に返り咲けば、政略結婚は避けられないだろう。
黙り込んでしまったティアに、レイは優しく言い聞かせる。
「俺の立場もちょっとは理解したか? まあ、追い追いわかってくれればいい。」
そう言って、そのまま、ティアを抱きしめ、ゆっくりティアに口づける。
「ん・・・んっ」
もう、またこんな事して・・とは思うのだが、どうも自分はレイのキスに弱い。
ついつい甘く口づけを返してしまい、ああ、自分、こんな時になにやってるんだろ、とレイの逞しい大きな胸に抱かれて思ってしまう。
そのまま二人で長い長いキスを交わして、ティアは頭がボーとしてきた。
レイがキスの仕方なんか教えるから、やめられないじゃない・・・てか、もっとちゃんとしてほしい・・・
チュッと、長いが案外あっさり終えたキスに、レイに決まった人がいないと聞いて嬉しくなったティアはちょっと物足りなさを感じて、思わず頭に浮かんだ文句に慌てて自分で否定する。
チッガーウ、そうじゃなくて、やたらとキスなんかしちゃ・・・あれ? レイ、恋人も奥さんもいない、って言ったんだっけ?
じゃあ、別に私にキスしても、誰にも迷惑かけてないわけだ・・・・
婚約者候補たちは憤慨するだろうが、レイにその気はないみたいだし・・・
なびく風で乱れた前髪を大きな手で搔き上げるレイ。
その仕草一つで、その大きな手、長い指で優しくティアに触れた二人で過ごした滝での濃密な時間が思い返され、ティアの感覚を刺激してくる。
・・・・やっぱり何だか物足りない・・・・
「ティア、前方に何か見えてきた。」
「はぃ? あ、ああ、多分森が近づいてきたんじゃないかな。でもまだけっこう距離あるわよ。水の精も騒いでないし、もう少しこのままの速さで進んで大丈夫。」
「了解だ。」
真っ暗な湖の前方に、闇に慣れた目を凝らせば、星も瞬く夜空の向こうに暗い森の影が確かに見える。
・・・レイって目がいいのね、こんな暗い中、気がつくなんて・・・
夜風に髪をなびかせ、夜の湖を滑るように舟を走らせる。
やがて、かなり時が経つと、暗闇の視界前方にぼんやり岸が見え始めた。
ティアはレイに、速度を下げて、と頼んで慣性でそのまま静かに舟は、すーと湖のほとりに着いた。
はあ~、やっと着いた・・・
無事岸に上がったティアは、さすがに疲れて岸に座り込んだ。
「そのまま休んでろ。俺が火をおこして飯を用意する。」
「ありがと~、レイ。あっ、これ、よかったら、焼いてステーキにでもして・・・」
ありがたいレイの申し出に、まだ、たっぷり残っていた熊肉や調味料を差し出し、ついでに毛布も出して、ゴロンんと横になる。
あ~疲れたぁ、でも、無事、目的地まで来れてよかった・・・・・
レイってば、あれだけ魔法を続けて使って、まだ疲れてないんだ・・・凄いな・・・
ティアも、湿地帯を渡るのは初めての体験。
レイと一緒なら、きっと・・・自分とレイの力を信じての、思いきった挑戦だった。
絶対の信頼を置く、スウとジン以外の人に自分の命を預けたも同然の決断。
だけど、躊躇いを感じたのは未知の湿地帯へ赴く事に対してであって、決してレイに背中を預ける事に、ではなかった。
やっぱり、レイと二人だと、命懸けの今日の冒険もどこかワクワクして楽しめた・・・・・
今夜の夜空は、薄い雲が掛かってる・・・段々重くなっていく瞼に、ティアの意識が一旦そこで途切れた。
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