魔女な令嬢は抗えない禁断愛にため息をつく

藤谷藍

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二人を繋ぐ誓約 3

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共に礼を執り畏まった臣下たちに国王はただ鷹揚に頷いたが、カリッサ皇女は堅苦しいのは苦手だとばかり手をひらひらと振った。

「楽にしてよい。それよりさっきから聞いておればイグナスよ。そちは少しも乙女心を理解しておらん」

キラキラ目の皇女は、どこか面白がっている節がある。

「いきなりメローズ嬢を花嫁に迎えると言い出した時は、なんの冗談だと信じられなかったが」
「ーー殿下。この件に関しては、口を出さないという約束です」

にっこり笑うイグナスへ、カリッサは思いがけなく苦々しそうに小さく舌打ちした。

「この私まで欺きよって。口うるさいビストルジュ公爵も一枚噛んでおるな。どうしてくれよう」
「お褒めに預かり光栄です。それと、非公式の場とはいえカラート王もおられるのですから、威厳ある振る舞いを心掛けていただきたい」
「お前たちは、親子揃って……そうかそうか、そういう態度なら、こちらにも考えがある」

ふんと鼻を鳴らしたカリッサは悪戯っぽく目を輝かせた。

「ビストルジュ副将軍。シルタニタ帝国第一皇女カリッサの名において命ずる。明日はロバルト特使の補佐につけ。明後日の出発に変更はなしだ」
「……愛しい令嬢を口説き落とす時間を奪う、と。そうおっしゃるのですか」

余裕ある態度とは裏腹に、イグナスの焦りをイザベルははじめて感じ取った。

「今宵、会談の成功を祝う夜会が開かれるのは知っておろう」

皇女の言葉で、はたと思い当たった。カラートが苦心して開催した会談は成功した。予定通りなら、有終の美を飾る今夜の夜会は王都に駐在する諸国の貴賓も招いての大規模な舞踏会だ。

「この催しには多くの主だった国々の代表が顔を揃える。そちはその場でメローズ嬢に礼を尽くすのだ。完璧なエスコートを披露して、マイダスの奴が引き起こしたシルタニアへのイメージダウンを払拭しろ」
「……承知しました」
「終結にあたって注目されているからな。カラートだけでなく、アルバンとも友好を結んだシルタニアは信用に値すると印象付けたい。よいか、このめでたい話題を今夜参加する諸国代表にたっぷり提供するのだぞ」

「楽しませてもらおう」と皇女は上機嫌だ。
察するにどうやら、帝国のダメージコントロールのために社交の場を利用して、話題を麗しの貴公子イグナスの求婚という明るく新しいトピックにすり替えたいらしい。
ああだけどーー今の発言で、どうしてただの子爵令嬢への結婚申し込みにここまで関心が集まるのかが判明した。 
ーーこれは、もしかしなくても絶対断れない縁談なのだわ。
頭を抱えたイザベルを皇女は名指ししてくる。

「だいたいだな、その愛しのメローズ嬢を半泣きにさせているのはどこのどいつだ。ちょうど良いではないか。夜会のエスコートをスマートにこなし、今夜中に見事令嬢の心を射止めてみせよ」

言いたいことだけ言うと、皇女はカラート王や重臣たちとさっさと去っていった。と、思いきや突然振り返る。

「そうそう、メローズ嬢。そなたの罵倒は見事であった。”唐変木”とはまさに言い得て妙、胸がスカッとしたぞ。そなたなら間違いなく、この天下の副将軍の良きパートナーとなるだろう」
「ーーもったいないお言葉をいただきありがとうございます……?」

ーーいつから聞かれていたのっ⁉︎
動揺するあまり語尾が上がったが。それでも勤めて平静な態度を取ろうとするイザベルの手を、イグナスはなぜか嬉しそうにぎゅっと握る。イザベルは皇女の祝福をーー後ろ盾を得たのだ。その様子を見届けたファリラとセシリアも、あっさり挨拶を述べてきた。

「それじゃあ、イジィはもう帰って休んでいいわよ。今夜の夜会は出席ね」
「ビストルジュ卿。今夜またお会いしましょう。イザベル様、メローズ子爵家との養女縁組の手続きはすでに済んでおります。侯爵家へようこそ、”お姉様”」

目を見張ったイザベルを置いて「ごきげんよう」と令嬢たちは去る。再び二人きり……とはいかず、さすがに今は護衛の騎士が部屋の隅に控えていた。
イグナスから申し込まれたのは自分だけ。この真実にまだ戸惑ってはいるけど、心はだいぶ落ち着いてきた。
周りもすでにバッチリ固められて逃げ場はない、この一見追い詰められたGOゴーサイン待ちに胸も高鳴る。
差し出された逞しい腕に、イザベルは今度こそ大人しく自分の腕を絡めた。

「では、行くか」
「……どこへですの?」
「メローズ邸だ。話題を提供しろと仰せつかったからな。ならば相応しい支度を整えようではないか。私の花嫁はカラート一の美姫だからそう難しいことではない。ドレスも選び甲斐がある」

ーーっ何を言い出すの、このひとは。
さらっと人を翻弄させるイグナスの態度に、それでも上気した頬で眉をわずか寄せただけ。そんなイザベルを安心させるように、イグナスは絡めた腕をそっと撫でた。
……じんわりその温もりが伝わってきて、こちらを優しく気遣うその様子に、ひょっとして惚れ薬の類いを飲まされたのでは?などと疑いたくなる。
ーーこの言動は意外すぎるわ。ファリラやカリッサ殿下から要請されたせいかしら? 否、そんなことで態度を変える人ではないわね。

「……もしかして、ドレスや宝石などを贈ってくださったのは……」

ふと思いついて、部屋を出ながらイザベルは問いただしてみた。

「私に決まっている。他に誰がいる」

……ドレスはどれも身体にピッタリだった。3サイズを知っているのは邸のメイドぐらいで、イグナスなら簡単に聞き出せただろう。
迷うほどたくさん贈られてきた数々のドレス。どう見ても家宝ものの数々の宝石類……まさかはじめからここまで計画して……と考え始めたイザベルの思考を読んだように、イグナスはにやっと口端を上げた。

「他国の令嬢と自然と親しくなるきっかけや、その演出が必要だったからな。夜会なら近づきやすい。だがそれ以上に、ベルが美しく着飾った姿を一目見たくてな」

ーーっ! 叫んで逃げ出してしまいたくなる衝動を、イザベルは必死で押し隠した。
華麗なドレスは夜会へのお誘いだ。そう思ったのはハズレではなかったのだ。

「面倒な夜会が初めて楽しみに思えたのに。いっこうに顔を出さないどころか、邸にさえ戻らないとは想像だにしなかったぞ」
「……会談期間は、王宮に部屋を用意していただきましたので」

言えない。イグナスの仕打ちが辛くて邸に戻れなかったなんて、とても言えない。
だってもしもだ。イザベルの予想が当たっているなら、この舞踏会に二人で出席するのも織り込み済みで、何もかも用意されていたのだからその手の込んだ執着心ーーもとい熱意は相当なものだ。

「ああ、そうらしいな。だがそうこうするうちに、厄介にもマイダスが私と踊る令嬢たちに異常な関心を示した。だから苦労して城を抜け出し、夜会には来るなと忠告したのに……誰もが注目するほどの美しさをわざわざ披露しに来よって」

ーーこれはーーなじられているのよね……?
それにしては、かなり糖度が高い愚痴に頬が熱くなる。 

「私の言いつけを最悪なタイミングで無視するばかりか。勝手にさらわれるなど……どこまで跳ねっ返りなんだ。生きた心地がしなかった」

独白のようなそれも声がひどく甘くて、イザベルは無表情を保つのがかなり難しくなってきた。

「……あのメッセージは、すぐに消えてしまったので……すべてが夢だと……」
「私と関わった証拠は残せなかった。魅惑魔法チャームを得意とするあ奴のせいで、人目があるところでは目の前にベルがいてもさわれなかったのだぞ! 我慢も限界だった私をあれだけ煽っておいて、夢だなどと……」

言い淀んだイグナスは、一息つくと「すまなかった」と珍しくばつが悪そうだ。

「その、身体は大丈夫だったか? あんな抱き方をしたから、てっきり怒らせたと……久しぶりで抑えが効かず自分でも乱暴だった自覚はある」
「あ、いえ、そんな。……とてもよかったですわ……」

ぽっと頬を染めたイザベルを見たイグナスは目を細めた。

「そうか。万一のこともある、これ以上は無茶をするな。労わってくれ」

本当に……なんて眩しい、眩しすぎる。
こんな熱を含んだ眼差しで見られたら、慣れない心臓はそのうち止まってしまう……

「邸の壊れたモノは修復したが、途中でセバスに見つかってな。女性はもっと優しく丁寧に扱えと耳の痛い説教を喰らった」
「っ⁉︎ セ、セバスに……ですの?」

ーー嘘だと言って欲しい。そんな様子はまったく見せなかったのに。

「そうだ。あの家令はまったくあなどれん」

ぶつぶつと愚痴らしきものをこぼしながら、イグナスはコルトが御者を務める馬車にも当然とばかり乗り込んでくる。黙って好きにさせると、向かい席ではなく、わざわざ隣に座って身体に寄りかからせるのだからイザベルは文句を言う気も失せた。
ーーああ、何だかーー色んなことがいっぺんに頭に入ってきて……
イグナスの体温を感じながら久しぶりの我が邸への道をカタコト馬車に揺られていると、夜会で御者コルトが漏らした言葉がふと頭に浮かんだ。いい機会だとさりげなくイグナスへカマをかけてみる。

「御者は解雇したと思ったのですが」
「ああ、コルトは影と呼ばれる私の侍従だ。珍しくベルを気に入っているな」
「は? あの、それはどういう意味ですの?」

やはりコルトはイグナスから命を受けていた。でも好かれているなど思ってもいなかった。

「影はな、己が認めた者にしか従わない。命令すれば暗殺も難なくこなすが、私の場合、護衛は必要ないから奴の仕事はもっぱら密偵だがな」
「あの、そんな話ははじめて耳にしますわ」

そんな物騒な人物に気に入られても……

「そう邪険にしてやるな。主人と決めたら勝手についてくる。そういう性だ。皇族にしか従わない優秀な一族の一員だぞ」

ーーそんな実力者が一介の宮廷魔導士を気に入った? ……謎だわ。風魔法で馬車から追い出してしまったのに、根に持ってないかしら?
イグナスのお付きなのだから、嫌われるより好かれるのは嬉しいけど。一筋縄でいかない人ばかりに好かれる体質なだけに、コルトも癖がありそうだ。
イグナスに身体を預けたまま窓の外に視線を向けると、厚い雲がかかった空は本来の青空が見えない。

「……ベル。誰が何と言おうと……」

ぽつんと聞こえた。イグナスのどこか苦しそうな声音にイザベルはハッとした。マリンブルーの瞳が切なそうに揺れている。

「うんと頷け。私の花嫁になると」
「……なら、どうして。あんな態度を……?」

答えは分かっている。けど、イグナスの口から真実を釈明して欲しい。
すると低い声が、はっきり答えた。

「ーー失いたくなかった、ベルだけは」
「ぁ……あの……」

思わず二度、三度と瞬きをした。

「”魅了”は意のままに相手から情報を引き出せる。ベルだって例外ではないと思っていた。だがどうやら、カラートの貴族はそんなに甘くないようだな」

言葉に詰まるとマリンブルーの瞳の含み笑いが返ってきて、思わず見惚れた。

「しかしマイダスの息は誰にかかっているか判らない。そんな状況では、うかつな行動は取れなかった」
「……私はイグナス様の弱み、なのですか」

本音を語ってくれるのは嬉しい。だけどその言葉で示される真実は一つ。絆されるものかとイグナスをキッと睨んだ。

「……敵の手に落ちたらと思うと……想像するのも、許せないほどにな」

そう。誤解が解けた今、分かっているつもりだ。彼の言いたい事は。
ーーけれども、私は。

「教えてください。こんなに急いでシルタニアに戻る理由を」

小声で尋ねると、麗しい顔がフッと横を向いた。

「何かあるのですね? 誓って他言は致しませんわ」
「……勅命が下った。第一ルカシェンコ皇子を支持する貴族たちが集めた私設軍が国境へ近づいている。議会も通さないこの動きは、シルタニア皇帝陛下の意に添うものではない。むしろ反する」

ロンサールからはカラート王侯貴族を傀儡にするというマイダスたちの計画は聞いていたが、彼は帝国内の計画はまったく知らされていなかった。私軍を提供した貴族たちだけで戦利品カラートを分け合えば、一気に帝国の勢力図が塗り替えられる。第一皇子の勝利だ。
安心させるようにイグナスの大きな手がぎゅっと握ってくる。

「反逆者たちはマイダスに送らせた偽情報を受けて、私軍を使ってカラートへと一気に畳み掛けるつもりだ。同時にカラートでも傭兵を使って邪魔な貴族を消し去るという計画だったらしいが。カラート王宮を無力化すれば王国の制圧は難しくないと考えたのだな」

……ロンサール邸に集められた傭兵は、そういうことか。精神を支配する傀儡ポーションがすべての貴族に効くとは限らないから保険をかけたが、イザベルがその担保を衛兵に突き出して削っていたのだ。
ーー”傭兵狩りの魔女”と呼ばれたのもだからなのね。

「陛下はカリッサ皇女殿下の掴んだ動かぬ証拠で、決断を下した。身勝手に動く貴族たちを一網打尽にする。帝国を害する芽を一気に刈り取る」

皇帝が粛清に動く。帝国軍を指揮する立場のイグナスだから召集に応じるのは当たり前だ。
ーーだったら、また同じようなことがまた起こるかもしれないわ。

「ーーイグナス様、はっきりおっしゃってください。私は貴方にとってお荷物なのですか?」
「そんなわけはない!」

猛然と言い返す顔がとても愛しくて。目尻が濡れてくる。

「でも、この先もずっと守られるだけ。そんなのは絶対に嫌ですわっ!」

昂る気持ちで頬が熱い。イグナスに分かってほしくて、イザベルは目を逸らさず訴えた。

「何も言わずにっ、突然勝手に去られて! あげくに再会しても無視され続けたのですよっ! 傷ついたどころではありませんわっ。あんな思いは2度とごめんです!」

大粒の涙をこぼしたイザベルを見て、イグナスの顔が罪悪感と後悔で歪んだ。

「ーー悪かった。許してくれ。心から謝る。奴らにベルの存在を知られるわけにはいかなかった。気持ちは通じているとーーベルの気持ちを慢心して、私の身勝手で深く傷つけてしまったな」
「ぜんっぜん、まったくっ、分かってないっ! このっ、わからずやのおたんこなすーーっ‼︎」

っ思わず、その胸ぐらを掴んで揺さぶった。
ーーっどうか、どうか伝わってーーーー‼︎

「私は! イグナス様が大蛇でもかまわなかったわっ。魔獣でも好きだったその気持ちに変わりはありませんっ! それくらい愛してるのっ‼︎ どうしても好きなのーーーーっ!」

こんなみっともなく叫ぶつもりはないのに止まらない。けど、見苦しくても不快に思われても構わない。だってこれが本音だからーーーー

「だからこそっ、貴方の隣に対等に立ちたい! 背負っている負担を減らしたい。肝心な時に何も知らされず、何もかも蚊帳の外で庇ってもらうだけなんてっ、まっぴらごめんですわっ!」
「ーーベルっ、私のベル……愛してる。誰よりも。私の花嫁はベルしかいない」

ーーだからなのに何でっ! 嬉しそうに目を輝かせて手を握ってくるのぉーーー?

「そ、ですからっ、今のままじゃあ嫌だって言ってるでしょうーー! このっ、唐変木ぅんーーっんっ、んんん~~」

無理やり唇を奪ってくるイグナスをイザベルは押し除けようとするが、反対に押し倒されてしまった。

「ーーだめだ。キスだけでは収まらん」
「ちょ、ちょっと待って……」
「聞けない、今すぐ抱かせろっ」
「ふっ……うっ、んっ~~っぅ」

ぐいぐい押さえ込んでくる力は圧倒的で、押し切られてしまう。半開きだった唇を塞がれ、のしかかってくる体重で息苦しいのに、腰の奥が疼いて自然と彼のために太ももが開いた。イグナスの陽だまりのような匂いに頭がクラクラする……
ーーだめっ。ここで流されたら、うやむやになるわ!
覆い被さってくる逞しい身体を、イザベルは思い切って魔力でドンと押し戻した。
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