上 下
6 / 24

禁断の恋は、トロけるように甘くて… 1

しおりを挟む
ここしばらく、イザベルの日常は一見単調そのものだった。
魔獣の大蛇と暮らす。ーーこれは普通ではないけど、朝になると大蛇に起こされ、その胴体を身体に巻きつけて出仕する。図書館まで大蛇を送った後、研究所に向かい、職務を終えるとカラんでくるやつらを衛兵に引き渡して帰宅した。
たそがれ時、庭園へ出て魔獣の皮を淡々と加工しているイザベルに、大蛇が鼻にしわを寄せることも珍しくない。

「それはもしや……大ミミズの魔獣か?」
「ええ、そうですわ。大地の恵みの魔力で育つ魔獣ですので、状態異常の影響を受けにくいのです」
「……そんなモノで、手袋を作っているのか……」
「呪われた剣や魔石などを手に取って調べる時など、重宝しますわ」

茶色い薄皮を手にしたイザベルを、大蛇は何とも言えない不可解な目で見てくる。
今は好きなように放っておいてくれるが、汚れが目立たない真っ黒なローブを頭から被って、いざ加工とイザベルが大鎌を手にした時は気でも触れたかと口論になったりもした。


けれども。夜になると事情はまったく違った。
凶悪な魔獣だから従わなければ、食べられてしまう。隷属魔法が効いている。ーーそんな言い訳が馬鹿馬鹿しくなるほど、肌を齧られるどころではない痴情をイザベルは大蛇と繰り広げている。
細長い舌で嬲られその尻尾で撫でられると、イザベルは頬を染めて眉を寄せつつ身を震わせる。
大蛇には感じている顔をもう隠せない。
どんな風に乱れるかを睦言のように囁かれては、人形のように無表情でいられない。
感情が読み取れない普段からは想像もできない艶麗えんれいな夜の顔を見せるようになったイザベルに、大蛇が触れてくる時間もだんだん長くなり。もっと触れて欲しいーーそんな欲求が強くなる悶々とした日が続いた。

そしてある夕刻。いつもよりずっと早く務めを終えたイザベルは、帰路もまっすぐ帰宅した。その日は、折しも祭日の前夜だった。

「明日からは女神祭だそうだな。休息日だろう? 今夜はずいぶんと、時間に余裕がある」

上機嫌な大蛇は、当然の権利とばかり長い胴体をイザベルの身体に巻きつける。そのままひょいと抱え上げると寝台へ横たえた。

「存分に可愛がってやろう」

マリンブルーの双眼に覗き込まれたイザベルは、そのささやきだけで背筋がぞくりと震えた。思わず両手を伸ばし、大蛇の頭を引き寄せる。

「待ちきれないか……ふっ。いつにも増して旨そうだ」

つと目を逸らしたものの無言で甘えるようなイザベルの仕草に、大蛇は胴体をくねらし白い身体を柔らかくほぐしていく。赤い唇から気持ちよさそうな甘い吐息が漏れ始めると、肩からズレた夜着をさらに下げた。

「桃色に染まって……頬まで上気しているな」
「ふ、う……」

月光で輝く白い肌はほんのり色づいてぬめり、ピンクの乳頭はピンと立っている。

生娘おとめなのに、敏感で妖艶で…………」

鋭い牙先が硬くなった胸の蕾をかすった。

「っんんぅーー」
「素直で淫らな身体だ」

胸から頭まで突き抜けていった激しい快感ーー。それに耐えるようにイザベルは眉を寄せた。
今、動いたら……牙が胸に食い込む。プツっと肌を刺す痛みを覚悟して小刻みに震えたピンクの蕾を、蛇の舌が捉えチロチロと嬲りはじめた。

「はぁ、っあ、っあ」
「……どれだけ味わっても、飽きない……」

予想した鋭い痛みではなく、代わりに与えられる優しい刺激にうずきはじんじん強くなるばかり。身体に力が入らない。
太い胴体に支えられるまま胸をいじられ続けて、甘い痺れが身体中に広がる。切ない吐息を漏らし悦楽を甘受するイザベルの身体を大蛇は一定のリズムでゆすりあげた。ふっくりした柔な肉がじんわり濡れてくる芳香を、満足そうに顔を近づけて吸い込む。
……そんなことをされると、イザベラは欲しい欲求がつのるばかりだ。

「ふ……あっ、ん~~……」
「せっかくだから、もっとこう……ああ! こうすればよいな」

祭り前夜の浮かれた空気に当たったのか、大蛇はイザベルを一度イかせるぐらいで解放する気はないようだった。切なげな吐息をこぼす手足に、器用にもシーツを柔らかく巻きつける。
そうこうする内にベッドの四隅の支柱に大の字に括り付けられて、されるままだったイザベルもさすがに不安を覚えた。とっさに手足を動かしたけど、その動きは弱々しい。黙ってこんなまねを許してしまって、とは思うのに。
イザベルの両足の間から、とぐろをまいた大蛇が至極満悦顔で見下ろしてくる。

「その……この格好は、いったい……」
「心配するな。趣向を変えて可愛がるだけだ」

夜着がかろうじて身体に引っかかっているとは言え、あますなく開け切ったあられもない格好にブワッと赤くなる。
これまでずいぶん身体をまさぐられてきた。けどこれは……
ーー巻きつかれた胴体で、身体中を淫らに探られる程度で……済むの? 
このままだとシャレにならない域に踏み込んでしまう。そう肌で感じ取ったイザベルの心はなぜか甘くうずいた。
喘ぐように胸を大きく上下させるそのしどけない姿に、大蛇は明らかに欲情した雄の鋭い眼を向ける。
絡みつく視線が足首からふくらはぎ、太ももや腹へと移動して、唾液で濡れて光る胸元にふっと息がかかった。イザベルの足の間がじわりと潤む。
逆らう言葉は自然と喉元から消え、観念したように睫毛を伏せた。

「愛い奴だ」

大蛇がその頭をイザベルに柔らかく擦り付けると同時に、ヌメる蛇皮が動けない全身を覆いつくした。
ゾクッぅっーー。

虫唾どころか、なんとも言えない愉悦がイザベルの背筋を走って、意図せずヨガリ声が漏れる。

「っあふ、ん~~~~」

これはもう、情事と呼ばれる行為じゃあないだろうか……? 
長い胴体に身体を包まれると、耳を塞ぎたくなるようなイヤらしい声が次々と漏れる。顎や喉元、髪や額……大蛇が愛おしそうにその頭をぐりぐりと擦り付けてくるから、身体中がわなないて腰の奥が熱い。
開かれた足の間はじわりじわり濡れて、しっとりどころかウルウルに潤んでしまっている。背筋を走る甘い痺れに目尻もじんわりしてきた……

「あ、ぁ、ぁっ、ぁん、んっ~~……」

手足を拘束されたままの無理やり陵辱プレイ。それも相手は大蛇なのに、切ないほど甘酸っぱい想いに胸も腰の奥もキュウんと締まる。押し流されそうな感情に逆らうようにイザベルが頭を小さく振ると、真紅の髪がますます乱れた。

夜着これは簡単に剥けるな」

胸元の紐を噛んだ大蛇がぐいっとそれを引っ張った。
ーーあっ、うそっ……
かろうじて結ばれていた紐があっという間に解ける。「まって」も「やめて」も口にする時間さえなかった。
「不要だ」の一言で下着も消え、すべてが晒される。今さらと言われてもどうしても恥ずかしい。
今まではどんなに夜着をズラされても、真っ裸にされたことはなかった。

「こうしてじっくり眺めるのは、実にいい」

初めて裸身を晒すどころか、足を大に開かされた秘所丸出しの醜態に頭はパニック。なのにこんなことってあるだろうか。身体はさらに熱くなり胸は大きく上下する。目も何もかもが熱くって、みるみる潤んでくる。

「触れてもないのに、珊瑚色に濡れて……美しい」

ぽとり。
足の間から温かい愛蜜が流れ出ては太ももを伝い落ちる。それをいやにじっくり見られてる。あけすけな大蛇の視線にイザベルは悶え喘いだ。
シーツが濡れていく感触とゆっくり過ぎる時間に身の置きどころがない。

ーーーーダメぇ。もうやだ。泣いてしまいそうだわ。
恥ずかし過ぎて身体がワナワナと大きく震えてきた。こんな不埒を強いる大蛇も、それを許してしまう自分もーーーー。

「や……いやぁ…………」

あられもない秘所をゆったりのぞきこんでいた大蛇は、涙ぐんだその声音に何かを感じたらしい。涙腺が緩んでぼやけたイザベルの視界に、困ったような大蛇が映った。

「嫌……なのか……?」
「い、嫌ですわ……こんな格好っ!」
「これが本来の姿だろう? 可愛がっているのに何が不満だ」
「だ、だって、キスも……初キスもまだなのにぃ……」

あ。
ーーああぁっっ! どうしてっ⁉︎ こんなくだらないことを口にしてしまったのぉぉーーーーっ?

「……ーーーーキス、だと……?」

最悪だ。
……シーーーーーン…………………………
音を立てるのを恐れるように、周りのすべてが静まり返った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[R18] 18禁ゲームの世界に御招待! 王子とヤらなきゃゲームが進まない。そんなのお断りします。

ピエール
恋愛
R18 がっつりエロです。ご注意下さい えーー!! 転生したら、いきなり推しと リアルセッ○スの真っ最中!!! ここって、もしかしたら??? 18禁PCゲーム ラブキャッスル[愛と欲望の宮廷]の世界 私って悪役令嬢のカトリーヌに転生しちゃってるの??? カトリーヌって•••、あの、淫乱の••• マズイ、非常にマズイ、貞操の危機だ!!! 私、確か、彼氏とドライブ中に事故に遭い•••• 異世界転生って事は、絶対彼氏も転生しているはず! だって[ラノベ]ではそれがお約束! 彼を探して、一緒に こんな世界から逃げ出してやる! カトリーヌの身体に、男達のイヤラシイ魔の手が伸びる。 果たして、主人公は、数々のエロイベントを乗り切る事が出来るのか? ゲームはエンディングを迎える事が出来るのか? そして、彼氏の行方は••• 攻略対象別 オムニバスエロです。 完結しておりますので最後までお楽しみいただけます。 (攻略対象に変態もいます。ご注意下さい)   

騎士団長様、ぐちゃぐちゃに汚れて落ちてきて

豆丸
恋愛
  騎士団長が媚薬を盛られて苦しんでいるので、騎士団の文官ソフィアが頼まれて、抜いてあげているうちに楽しくなっちゃう話。 

【R18】助けてもらった虎獣人にマーキングされちゃう話

象の居る
恋愛
異世界転移したとたん、魔獣に狙われたユキを助けてくれたムキムキ虎獣人のアラン。襲われた恐怖でアランに縋り、家においてもらったあともズルズル関係している。このまま一緒にいたいけどアランはどう思ってる? セフレなのか悩みつつも関係が壊れるのが怖くて聞けない。飽きられたときのために一人暮らしの住宅事情を調べてたらアランの様子がおかしくなって……。 ベッドの上ではちょっと意地悪なのに肝心なとこはヘタレな虎獣人と、普段はハッキリ言うのに怖がりな人間がお互いの気持ちを確かめ合って結ばれる話です。 ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。

【R-18】喪女ですが、魔王の息子×2の花嫁になるため異世界に召喚されました

indi子/金色魚々子
恋愛
――優しげな王子と強引な王子、世継ぎを残すために、今宵も二人の王子に淫らに愛されます。 逢坂美咲(おうさか みさき)は、恋愛経験が一切ないもてない女=喪女。 一人で過ごす事が決定しているクリスマスの夜、バイト先の本屋で万引き犯を追いかけている時に階段で足を滑らせて落ちていってしまう。 しかし、気が付いた時……美咲がいたのは、なんと異世界の魔王城!? そこで、魔王の息子である二人の王子の『花嫁』として召喚されたと告げられて……? 元の世界に帰るためには、その二人の王子、ミハイルとアレクセイどちらかの子どもを産むことが交換条件に! もてない女ミサキの、甘くとろける淫らな魔王城ライフ、無事?開幕! 

迷い込んだ先で獣人公爵の愛玩動物になりました(R18)

るーろ
恋愛
気がついたら知らない場所にた早川なつほ。異世界人として捕えられ愛玩動物として売られるところを公爵家のエレナ・メルストに買われた。 エレナは兄であるノアへのプレゼンとして_ 発情/甘々?/若干無理矢理/

冷酷無比な国王陛下に愛されすぎっ! 絶倫すぎっ! ピンチかもしれませんっ!

仙崎ひとみ
恋愛
子爵家のひとり娘ソレイユは、三年前悪漢に襲われて以降、男性から劣情の目で見られないようにと、女らしいことを一切排除する生活を送ってきた。 18歳になったある日。デビュタントパーティに出るよう命じられる。 噂では、冷酷無悲な独裁王と称されるエルネスト国王が、結婚相手を探しているとか。 「はあ? 結婚相手? 冗談じゃない、お断り」 しかし両親に頼み込まれ、ソレイユはしぶしぶ出席する。 途中抜け出して城庭で休んでいると、酔った男に絡まれてしまった。 危機一髪のところを助けてくれたのが、何かと噂の国王エルネスト。 エルネストはソレイユを気に入り、なんとかベッドに引きずりこもうと企む。 そんなとき、三年前ソレイユを助けてくれた救世主に似た男性が現れる。 エルネストの弟、ジェレミーだ。 ジェレミーは思いやりがあり、とても優しくて、紳士の鏡みたいに高潔な男性。 心はジェレミーに引っ張られていくが、身体はエルネストが虎視眈々と狙っていて――――

【R18】いくらチートな魔法騎士様だからって、時間停止中に××するのは反則です!

おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
 寡黙で無愛想だと思いきや実はヤンデレな幼馴染?帝国魔法騎士団団長オズワルドに、女上司から嫌がらせを受けていた落ちこぼれ魔術師文官エリーが秘書官に抜擢されたかと思いきや、時間停止の魔法をかけられて、タイムストップ中にエッチなことをされたりする話。 ※ムーンライトノベルズで1万字数で完結の作品。 ※ヒーローについて、時間停止中の自慰行為があったり、本人の合意なく暴走するので、無理な人はブラウザバック推奨。

【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!

臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。 そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。 ※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています ※表紙はニジジャーニーで生成しました

処理中です...