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魔女と魔獣 3
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翌朝。目を開いたら、天蓋ベッドに陽が差し込んで随分と明るかった。
でも……まだ起きる気には、なれない。
イザベルがけだるそうに目を閉じるとカチャと音が聞こえて、ゆっくりまた薄目を開く。と、メイドがトレイを運び入れている。
「お嬢様へのお給仕は、いかがいたしましょう?」
「ーー私がする。疲れているようだからな、ゆっくり寝かせるとしよう」
深みある声が静かに答えた。
様子をうかがっていたイザベルは大蛇の返事に気をよくするが、同時に反骨心もむくむく。
ーー誰がこの邸の主人なのと物申したい。朗々とした声の持ち主はアームチェアに巻きついて、その尾で優雅にカップを持ち上げている。
「では。昼食は、いつもの時刻でよろしいですか?」
「少し遅めでよい。今日は天気が良いしな、庭園で取るか」
続いて聞こえた「甘いものでも用意してやってくれ」の指示にメイドたちが下がると、からかうような声が飛んできた。
「起きているだろう? それともあれか、もしや私に起こしてもらうのを待っているのか?」
シュルシュルと床を這う音。大蛇が近づいてくる気配にイザベルはあわてた。
「起きていますわっ」
ここ最近は毎朝、だ。蛇に起こされるなんてダメすぎる。
「それなら、口を開けろ」
待っていたように、蛇の尾に握られたスプーンが目前に差し出されると、美味しそうな作りたての匂いがイザベルの鼻腔に広がった。
……我が邸のシェフは、朝から張り切ったらしい。
味覚をそそる誘惑に、イザベルの口がほんの少し開いた。マリンブルーの目がイタズラっぽく輝いて、あやすようにスプーンで唇をつつかれる。
……ぱく。
「しっかり食べないと、そのうち胸も萎むぞ」
「っ……!」
ーーもう少し、マシな言い方はできないのかしら! デリカシーがないにも程があるわっ。
認めるのも悔しいが、胸以外は少し痩せすぎな自覚はある。腹立たしく思っても魔獣ーーそれも大蛇に乙女心の理解など求める方がどうかしている。タイミングよく差し出される朝食やさっぱりした果汁、シェフ魂のこもったそれらに罪はない。
イザベルは仕方なく差し出されるご馳走をそのまま咀嚼した。
「どんな時も、食事を疎かにしてはならん。基本だ」
ドキッ。
ーー今の説教のどこに、トキメキ要素があったの?
トキめいてなんか、いない。胸がキュンなんてありえない。
ぱくくっ。もぐもぐ……
頬いっぱいに朝食を詰め込んだイザベルは、まるで子リスだ。そして大蛇にそそのかされるまま頬張っているうちに、気がつけば皿はカラになっていた。
ーーあ。やってしまったわ……
心の中で唇を噛んだイザベルは、それでも澄まし顔を保とうとする。あくまで優雅に落ち着き払って、用意された布で口元を拭った。ちらっと見れば満足そうにこちらを見つめる大蛇と目が合う。
っ決して。絶対に。自分は餌付けされたわけではない。
「……図書館での、調べ物はよろしいんですの?」
「今日は休日で休館日だな? それに私だけ外に出れば、討伐される」
……そうだった。けっこうな朝寝坊をしてしまったから、まだ頭が働いていない。
「昨日からずいぶんとむずかるな。もしや、昨夜可愛がっていないからか?」
不思議そうに鎌首を傾ける大蛇は、あきらかに面白がっている。
「なっ、ち、違いますわっ」
とんでもないことを言い出す蛇に、ムキになって否定した。が、自分でも大人げない態度である自覚はあった。
ーーだって。長年の不安の種だった男運のなさを魔物相手にぶちまけて。なのにデリカシーのかけらもないこの蛇の存在にかえって安堵を覚えるなんて。
こんな気持ち、どうかしている。
この頃やけにぼんやりしがちだし、昨日など珍しく仕事で失敗した。
心の揺れを隠しきれず、イザベルは俯いて唇を噛んだ。ところが。
「そうか、その夜着……すまなかったな。気付いてやれなくて」
え?と慌てて見下ろせば、胸部が大胆に開いた薄布は明るい陽光で身体がほとんど透けて見える。
ーー嘘でしょうっ⁉︎ まったく気づかなかった! ほんっとうにいぃっーー我が家のメイドは何を思って、こんな夜着を用意したのっ⁉︎
「これはそのっ、盛大な手違いでーーっ」
どさっ。大蛇がのしかかってきた。あっという間に馬乗りされて、まぬけにもぽかんと口が半開きになる。
「……よく似合っているぞ」
「そっ、なっ……」
強がりもそこまでだった。神秘的なマリンブルーと目が合うと喉まで出かかった声が引っこむ。
「待ちぼうけにさせた分まで、たっぷりよくしてやろう」
ーーダメっ。絶対に感じたりしないんだから。
自分に言い聞かせて無意識に下唇を噛んだら、蛇の尾がするっとなぞってくる。
「意地を張るな。可愛い唇に傷がつく」
大蛇はイザベルを見下ろしつつ尻尾の先で深紅の髪を持ち上げ、さらさらと枕元に落とした。赤みが刺した頬から顎へとやんわり触れ、夜着から溢れる胸元をさする。
ーー拒むのよ。この大蛇にそんな気はないと、今こそ言ってやらねば。
「ふぅ……んっ……」
なのに毎回、どうしてそれができないのかが自分でも分からない。大蛇のマリンブルーの双眸にロックオンされて、どうしようもなく胸がざわつく。
思わせぶりな夜着をすんなり着たのも……きっと隷属契約のせいに違いない。触れてくる大蛇が「可愛い……」なんて低い声で、囁いてくるせいなんかじゃ、絶対ないんだから。
最初は身を捩るイザベルのささいな抵抗など大蛇は気にもかけない。素早い動きで己の長い胴体をイザベルの身体にやんわり巻きつける。そして心得たように柔らかく揉みほぐしはじめた。
「ぁっ、ん~~っ」
ーーどうしてこんなに悦いの……? あ、だめ、流されてはーー……
そう思うのに、この痒いところに手が届く全身マッサージはとんでもないくせものだ。身体中がリラックスしはじめ、少しひんやりした蛇の胴体もすぐ人肌の温もりに馴染む。艶々した蛇皮と自分の肌が擦れ合う心地よさに、口を閉じても鼻にかかった甘え声が漏れた。
「ここもーーそろそろ触って欲しいか」
イザベルの変化に敏感な大蛇は、薄い生地越しにピンと尖ってきた胸の蕾を鼻先でコスった。艶やかな吐息が甘えるように赤い唇から漏れると、長い舌を伸ばし芯の通ったしこりを舌先で転がす。途端、甘い疼きがイザベルの身体を走り抜けた。
ああっ、この感じーーとっても悦い。
魔獣に弄られてこんな風になるなんて、イケナイことだと分かっている。
だけど毎晩、大蛇が優しく触れてくるから……イザベルの快感の萌芽はすくすくと育ってしまって、こうされると頭の芯まで痺れてくる。
「んふぅっ……」
鼻から抜け出るような喘ぎに目を細めた大蛇が、胸元の生地をずるっとずり下げた。
かすかな吐息と共に上下する白磁の膨らみの中心ーーそれが一段と濃いピンクに染まっているのを見て舌舐めずりする。
「美味しそうに熟れている」
その低い呟きだけでイザベルの背筋が甘い予感でぞくぅと震えた。
大蛇は胸の蕾が好物だ。尻にある契約紋もだが、見るといじりたくなるらしい。
そしてイザベルは、この大蛇の舌にとても弱い。
二つに分かれた爬虫類の舌先で、ピンク色の胸の先端を摘み食いするように何度も舐められ、くすぐられ引っ張られたりするとなんとも言えない愉悦に囚われる。
「ン、あ……あぁ、っ……んん……」
ーーたま……らない…………
疼く蕾を突かれる甘美な攻めに耐えられず、イザベルはなまめかしく悶えた。じんわり吹き出す汗で肌も滑ってくる。素肌と太い大蛇の胴が擦れる感触に我慢できず、腕を回して大蛇の蛇頭を抱え込む。
人外の魔物だ。なのに強くすがるように胸を突き出し、艶っぽい吐息で続きをねだった。
悦楽に浸りはじめたイザベルに大蛇が目を細めると、鋭い牙が口元から覗いた。素直な反応を味わうように、伸ばした舌で差し出された蕾をちゅるちゅると音を立ててしゃぶり尽くす。
「ああっ……あ、アんっ……ぁっぁっ……あぁぁ~~っ」
じんじんクる。切ない……頭の芯まで痺れる恍惚感に揺さぶられるーーーー……
背徳感あふれる大蛇の淫らな陵辱は長く続き、細い身体が嬌声を漏らしビックンと震え極まるまで止まらなかった。
「ーー明るい寝所で、というのもまた違った趣があるな……」
こんなことされて、とても恥ずかしいのに……気持ち良いって……
イザベルは火照る自分の顔をさりげなく腕を上げて隠した。
ーーほんとうに、どうすればいいのだろう。毎日のように弄られるから、だんだんすべてが変わってきている。甘い余韻でうまく動かない身体は収まりきらない熱でいまだ燻っているし。
ましてやもっと触れて欲しいだなんて……ほんとうにダメ…………
大蛇相手に本気で欲情している自分が信じられなくて、イザベルは心の中で頭を抱え悶絶した。そんな葛藤など知りもしない大蛇は、まるで愛しい恋人を労わるように乱れた真紅の髪にジャレつき、汗ばんだ額を長い舌で舐める。
「今日はゆっくり休め。久しぶりの休日だろう?」
寝台を這い下り椅子の間をするりとすり抜けると、そのままドアへと向かった。
「あ、あの……」
思わず呼び止めたものの、何を言えばいいかわからずイザベルは口篭った。
「……私は書斎にいる。何かあれば呼べ」
大蛇は起き上がった半裸の肢体を目に焼き付けるように一瞬じっと見つめた後、パタンとドアを尾で閉めた。イザベルは部屋から出て行ったその姿を目で追ったまま、しばらく動けなかった。
でも……まだ起きる気には、なれない。
イザベルがけだるそうに目を閉じるとカチャと音が聞こえて、ゆっくりまた薄目を開く。と、メイドがトレイを運び入れている。
「お嬢様へのお給仕は、いかがいたしましょう?」
「ーー私がする。疲れているようだからな、ゆっくり寝かせるとしよう」
深みある声が静かに答えた。
様子をうかがっていたイザベルは大蛇の返事に気をよくするが、同時に反骨心もむくむく。
ーー誰がこの邸の主人なのと物申したい。朗々とした声の持ち主はアームチェアに巻きついて、その尾で優雅にカップを持ち上げている。
「では。昼食は、いつもの時刻でよろしいですか?」
「少し遅めでよい。今日は天気が良いしな、庭園で取るか」
続いて聞こえた「甘いものでも用意してやってくれ」の指示にメイドたちが下がると、からかうような声が飛んできた。
「起きているだろう? それともあれか、もしや私に起こしてもらうのを待っているのか?」
シュルシュルと床を這う音。大蛇が近づいてくる気配にイザベルはあわてた。
「起きていますわっ」
ここ最近は毎朝、だ。蛇に起こされるなんてダメすぎる。
「それなら、口を開けろ」
待っていたように、蛇の尾に握られたスプーンが目前に差し出されると、美味しそうな作りたての匂いがイザベルの鼻腔に広がった。
……我が邸のシェフは、朝から張り切ったらしい。
味覚をそそる誘惑に、イザベルの口がほんの少し開いた。マリンブルーの目がイタズラっぽく輝いて、あやすようにスプーンで唇をつつかれる。
……ぱく。
「しっかり食べないと、そのうち胸も萎むぞ」
「っ……!」
ーーもう少し、マシな言い方はできないのかしら! デリカシーがないにも程があるわっ。
認めるのも悔しいが、胸以外は少し痩せすぎな自覚はある。腹立たしく思っても魔獣ーーそれも大蛇に乙女心の理解など求める方がどうかしている。タイミングよく差し出される朝食やさっぱりした果汁、シェフ魂のこもったそれらに罪はない。
イザベルは仕方なく差し出されるご馳走をそのまま咀嚼した。
「どんな時も、食事を疎かにしてはならん。基本だ」
ドキッ。
ーー今の説教のどこに、トキメキ要素があったの?
トキめいてなんか、いない。胸がキュンなんてありえない。
ぱくくっ。もぐもぐ……
頬いっぱいに朝食を詰め込んだイザベルは、まるで子リスだ。そして大蛇にそそのかされるまま頬張っているうちに、気がつけば皿はカラになっていた。
ーーあ。やってしまったわ……
心の中で唇を噛んだイザベルは、それでも澄まし顔を保とうとする。あくまで優雅に落ち着き払って、用意された布で口元を拭った。ちらっと見れば満足そうにこちらを見つめる大蛇と目が合う。
っ決して。絶対に。自分は餌付けされたわけではない。
「……図書館での、調べ物はよろしいんですの?」
「今日は休日で休館日だな? それに私だけ外に出れば、討伐される」
……そうだった。けっこうな朝寝坊をしてしまったから、まだ頭が働いていない。
「昨日からずいぶんとむずかるな。もしや、昨夜可愛がっていないからか?」
不思議そうに鎌首を傾ける大蛇は、あきらかに面白がっている。
「なっ、ち、違いますわっ」
とんでもないことを言い出す蛇に、ムキになって否定した。が、自分でも大人げない態度である自覚はあった。
ーーだって。長年の不安の種だった男運のなさを魔物相手にぶちまけて。なのにデリカシーのかけらもないこの蛇の存在にかえって安堵を覚えるなんて。
こんな気持ち、どうかしている。
この頃やけにぼんやりしがちだし、昨日など珍しく仕事で失敗した。
心の揺れを隠しきれず、イザベルは俯いて唇を噛んだ。ところが。
「そうか、その夜着……すまなかったな。気付いてやれなくて」
え?と慌てて見下ろせば、胸部が大胆に開いた薄布は明るい陽光で身体がほとんど透けて見える。
ーー嘘でしょうっ⁉︎ まったく気づかなかった! ほんっとうにいぃっーー我が家のメイドは何を思って、こんな夜着を用意したのっ⁉︎
「これはそのっ、盛大な手違いでーーっ」
どさっ。大蛇がのしかかってきた。あっという間に馬乗りされて、まぬけにもぽかんと口が半開きになる。
「……よく似合っているぞ」
「そっ、なっ……」
強がりもそこまでだった。神秘的なマリンブルーと目が合うと喉まで出かかった声が引っこむ。
「待ちぼうけにさせた分まで、たっぷりよくしてやろう」
ーーダメっ。絶対に感じたりしないんだから。
自分に言い聞かせて無意識に下唇を噛んだら、蛇の尾がするっとなぞってくる。
「意地を張るな。可愛い唇に傷がつく」
大蛇はイザベルを見下ろしつつ尻尾の先で深紅の髪を持ち上げ、さらさらと枕元に落とした。赤みが刺した頬から顎へとやんわり触れ、夜着から溢れる胸元をさする。
ーー拒むのよ。この大蛇にそんな気はないと、今こそ言ってやらねば。
「ふぅ……んっ……」
なのに毎回、どうしてそれができないのかが自分でも分からない。大蛇のマリンブルーの双眸にロックオンされて、どうしようもなく胸がざわつく。
思わせぶりな夜着をすんなり着たのも……きっと隷属契約のせいに違いない。触れてくる大蛇が「可愛い……」なんて低い声で、囁いてくるせいなんかじゃ、絶対ないんだから。
最初は身を捩るイザベルのささいな抵抗など大蛇は気にもかけない。素早い動きで己の長い胴体をイザベルの身体にやんわり巻きつける。そして心得たように柔らかく揉みほぐしはじめた。
「ぁっ、ん~~っ」
ーーどうしてこんなに悦いの……? あ、だめ、流されてはーー……
そう思うのに、この痒いところに手が届く全身マッサージはとんでもないくせものだ。身体中がリラックスしはじめ、少しひんやりした蛇の胴体もすぐ人肌の温もりに馴染む。艶々した蛇皮と自分の肌が擦れ合う心地よさに、口を閉じても鼻にかかった甘え声が漏れた。
「ここもーーそろそろ触って欲しいか」
イザベルの変化に敏感な大蛇は、薄い生地越しにピンと尖ってきた胸の蕾を鼻先でコスった。艶やかな吐息が甘えるように赤い唇から漏れると、長い舌を伸ばし芯の通ったしこりを舌先で転がす。途端、甘い疼きがイザベルの身体を走り抜けた。
ああっ、この感じーーとっても悦い。
魔獣に弄られてこんな風になるなんて、イケナイことだと分かっている。
だけど毎晩、大蛇が優しく触れてくるから……イザベルの快感の萌芽はすくすくと育ってしまって、こうされると頭の芯まで痺れてくる。
「んふぅっ……」
鼻から抜け出るような喘ぎに目を細めた大蛇が、胸元の生地をずるっとずり下げた。
かすかな吐息と共に上下する白磁の膨らみの中心ーーそれが一段と濃いピンクに染まっているのを見て舌舐めずりする。
「美味しそうに熟れている」
その低い呟きだけでイザベルの背筋が甘い予感でぞくぅと震えた。
大蛇は胸の蕾が好物だ。尻にある契約紋もだが、見るといじりたくなるらしい。
そしてイザベルは、この大蛇の舌にとても弱い。
二つに分かれた爬虫類の舌先で、ピンク色の胸の先端を摘み食いするように何度も舐められ、くすぐられ引っ張られたりするとなんとも言えない愉悦に囚われる。
「ン、あ……あぁ、っ……んん……」
ーーたま……らない…………
疼く蕾を突かれる甘美な攻めに耐えられず、イザベルはなまめかしく悶えた。じんわり吹き出す汗で肌も滑ってくる。素肌と太い大蛇の胴が擦れる感触に我慢できず、腕を回して大蛇の蛇頭を抱え込む。
人外の魔物だ。なのに強くすがるように胸を突き出し、艶っぽい吐息で続きをねだった。
悦楽に浸りはじめたイザベルに大蛇が目を細めると、鋭い牙が口元から覗いた。素直な反応を味わうように、伸ばした舌で差し出された蕾をちゅるちゅると音を立ててしゃぶり尽くす。
「ああっ……あ、アんっ……ぁっぁっ……あぁぁ~~っ」
じんじんクる。切ない……頭の芯まで痺れる恍惚感に揺さぶられるーーーー……
背徳感あふれる大蛇の淫らな陵辱は長く続き、細い身体が嬌声を漏らしビックンと震え極まるまで止まらなかった。
「ーー明るい寝所で、というのもまた違った趣があるな……」
こんなことされて、とても恥ずかしいのに……気持ち良いって……
イザベルは火照る自分の顔をさりげなく腕を上げて隠した。
ーーほんとうに、どうすればいいのだろう。毎日のように弄られるから、だんだんすべてが変わってきている。甘い余韻でうまく動かない身体は収まりきらない熱でいまだ燻っているし。
ましてやもっと触れて欲しいだなんて……ほんとうにダメ…………
大蛇相手に本気で欲情している自分が信じられなくて、イザベルは心の中で頭を抱え悶絶した。そんな葛藤など知りもしない大蛇は、まるで愛しい恋人を労わるように乱れた真紅の髪にジャレつき、汗ばんだ額を長い舌で舐める。
「今日はゆっくり休め。久しぶりの休日だろう?」
寝台を這い下り椅子の間をするりとすり抜けると、そのままドアへと向かった。
「あ、あの……」
思わず呼び止めたものの、何を言えばいいかわからずイザベルは口篭った。
「……私は書斎にいる。何かあれば呼べ」
大蛇は起き上がった半裸の肢体を目に焼き付けるように一瞬じっと見つめた後、パタンとドアを尾で閉めた。イザベルは部屋から出て行ったその姿を目で追ったまま、しばらく動けなかった。
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