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女王は平凡でない旦那様に溺愛されていますーエピローグー
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「姫様! 後ろですっ」
「王女様、危ない!」
差し迫った危険を知らせてくれる甲高い声が、いくつも同時に城の渡り廊下に響いた。
嫌な予感は察知できなかったのだが、その喚起にシールドを張って構えながら、即、振り向いた。
するとまあ目に飛び込んできたのは、ホウキやフライパン、剪定ばさみなどを振りかざした城のメイド連中ではないか。皆が皆それぞれの武器を掲げて、剣を手にした貴族らしい連中を追いかけ回している。
リナの味方である昔から城に勤めるものには、魔法騎士達と協力して身を守れるぐらいの基礎は教えてある。なので皆構えが、中々様になっている。
だが、相手は曲りなりなりにも、正式な訓練を受けた貴族なのだ。
攻防が長引けば優劣の差は、歴然としてくる。ここまできて大切な仲間を、失う訳にはいかなかった。
とっさに剣を収納扉から取り出し、即座に襲ってきた者たちを牽制してゆく。
「みんな! 危ないから下がって」
その時だった、小さな黒い針が一斉に飛び交った。想定外の反撃に応戦しはじめていた元アイラ一味の残党の動きが、ピタとそこで止まる。動かなくなった全員の影は、地面に縫いとめられていた。
斬りかかろうとした姿勢のまま固まった男達は、メイド達に動けないことを確かめるようにホウキの先で、ツンツンと小突き回されている。
「あっ、シンっ! 本気出しちゃダメよっ」
「……わかった、じゃあせめて、足や腕、腰の一本や二本…」
「ダメ! 自立した生活ができなくなるような、大怪我を負わせるのは!」
振り上げていた大剣を今にも下ろそうとしていた夫に、「そんな暗殺を企むような輩の介護に、かける国家予算はないのよ」と言い聞かせると、「成る程」と頷いて目にも留まらぬ速さで剣を収めてくれた。
「それなら、指を詰めるのはどうだ? 一本や二本、支障なかろう」
「……その程度ならいいわ、ちゃんと裁判に引っ張っていかなきゃね、幸い目撃者も多いし」
新妻にたしなめられて仕方なく妥協案に落ち着いたシンが、渋々といった様子で、おもむろに抜いた剣を無造作にひるがえした。
すると、男達の両手からは物の見事に、たちまち指が何本か消えてなくなっていった。
「あ、オイラ、ちょっと、用事を思い出して…」
…どこか気まずそうな声が、騒ぎに紛れて足元から聞こえてくる。そちらを見ると真っ黒な狼が一匹、忍び足で、そうっと現場を逃れようとしているところだった。
きまりが悪いといった風情のフェンが、一歩後ろに下がった途端、その首根っこは主人にしっかりと捕まえられていた。
「待てこら、今、何を飲み込んだ?」
「ふぐっ」
(あ~あ、遅かったわ……)
フェンは中型犬ぐらいの大きさになって、リナに付き添っていたのだ。
不幸にもこの食いしん坊狼に一番近かった男の片足は、足首から先がばっちりと消えていた。
フェンに足を、パクッと齧られても、そこから先が消えるようになくなってしまうので、男は自分の異常状態にまだ気づいていないらしい。だが、体がゆっくりと傾いていき突然わめき出したのを見ると、ようやくバランスが取れないことに気づいたようだ。
「ああ、うるさいぞ、少し黙っておけ」
低く張りのある美声が響き渡った次の瞬間には、怒鳴り散らしていた男達の騒ぎが、ピタッと収まってしまった。
よく見ると、身体の一部を失って一斉にわめき出した男たちの喉には、鋭い黒い針が一斉に刺さっている。
「シン? 一体何をしたの?」
「ちょっと喉を潰しただけだ。裁判は手記でも出来る」
…と言う事は、この男たちは二度と喋ることが出来ないのだろう。
これから戴冠式に臨む一国の王女へと暗殺を仕掛けたのだから、当然の報いではあるのだが。
「おおー、さすがはシン殿下!」
メイドやコックの、わんやわんやと尊敬するような声と拍手に、夫はなぜか、「そうか?」と照れている。
「もう、シンったら、裁判の時間が長引いちゃうじゃない?」
「リナは寛大な心の持ち主だから、こいつらの命を取りはしないが、俺は違うぞ? 俺の番いに害を為すような輩には、容赦など一切しない」
真剣な紺碧の瞳が、俺は本気だ、と語っていた。
『幽霊王女などちょろいわ』と見え見えの態度で斬りかかってきた男達だったのだが、自分たちのターゲットであった王女に一瞬で返り討ちにあった。その上その夫にこんなあっさり嬲られてしまったのだ。初めは、信じられないといった表情を浮かべていた連中も、シンの冷酷な言葉で、ようやく自分たちの非常にマズイ状況と危ない立場を理解したらしい。
「お前たち、この俺の番いであるリナの広き心に感謝しろよ。お前達のような汚れきった魂でも、『救いがある』とする慈悲深い沙汰なんだぞ。まったく、獲物を前にしても共存主義とやらで食べられない、とぼやくフェンの気持ちが、理解できそうだぞ」
氷の美貌が冷たく言い放ち、その上、紺碧の瞳で、ジロッと睨みつけられると、どの顔も命だけはお助けをといった表情で、震え上がっている。
「そうだろ~、オイラも大人しくしてるんだから、足の一本や二本ぐらいは見逃してくれよ~」
真黒な狼のこのコメントを聞いた連中は、片足を失った仲間を見て、抵抗をするのを一切放棄したようだった。
「条件反射だったんだよ~」と、うな垂れているフェンを見て、思わず深い諦めのため息をつく。
まあ足の一本ぐらいなら、松葉杖での生活程度よね…しょうがないなあ、よしよしとふさふさの毛を元気づけるように撫でてあげた。
叔父やその一派へアイラが施した洗脳効果は、アルの言った通り数週間もすると解けてきたらしい。
それはアイラが突然姿を消してから、数週間経ったある日のことだった。
ある朝、皆で朝食を取っていると、思いがけずその席に叔父が現れて土下座をしてきた。
どうやら自分のした事は覚えているようで、洗脳効果が消えると、ショックのあまり寝込んだそうだ。
『自分は今すぐリタイアする』という叔父に、厳しいけど『逃げないで、後始末を手伝ってください』と頼んだ。記憶にある優しい性質に戻った叔父とは、涙ぐんで仲直りをして、それ以来昔のように仲良く過ごして今日までに至る。
アイラは、どうやら色仕掛けでしょうもない連中に薬を飲ましては、信者を増やしていたようだ。
突然その姿が城から消えても、あの朝部屋に閉じ込められていたローリーの証言などから、きっと浮気が叔父にバレて姿を隠したに違いないと、それ程問題にされなかった。
だが、どこの国にも、己の私利私欲で動く者たちはいる。
洗脳などされなくとも、叔父たちの進める計画に便乗し私服を肥やしていた貴族や役人連中は、叔父に見向きもされなくなり焦っていたようだ。
この数ヶ月、今日の戴冠式を迎えるこの日まで、また何度か大っぴらに襲われたのだが、全員返り討ちにして牢屋行きである。それだけならまだしも、夫であるシンにも度々刺客が送られてきたらしい。
らしい、と言うのは、シンがまったくそのことに触れず、フェンとのおしゃべりでようやく判明したばかりだからだ。夫に問い詰めてみると、「ああ、あの汚れきった魂の者共なら、心配するな」と、アッサリ歯牙にも掛けない様子であった。
どうやら、シンにとっては話す価値もないような些細なことであるらしい。この夫の態度から察するに、かわいそうな刺客達は、天魔界の管轄だと言う地獄に皆送られたのだろう。
そうしていくら刺客を送っても平然としているリナ達に、最後の手段とばかりに戴冠式である今日、黒幕である貴族連中が業を煮やして自ら束になって襲いかかってきたのだ。
彼らの悪行もここまで来て万事休す、だった。この警備も一段と厳しい日に一網打尽で捕まったのは、リナ達の実力をあなどっていた報いなのか、墓穴を掘ったとしか言いようがなかった。
天魔界といえば、あの事件の後、テンは記憶が戻ってからは、カンカンに怒っていた。
「あの、腐れ外道とは、二度と顔も合わせたくありません!」
シンと二人で「まあまあ、そんなに怒らなくても」となだめてみたのだが、ダメであった。
夫によると今度のお怒りは、前回を上回る勢いだそうだ。
娘のように可愛がっていたリナに手を出したとあって、相当キレてしまったようである。
「テン、気持ちはわかるし、私もちょっと複雑だけど、一応彼のお陰でシンがここに残ることはすんなり認められたんだし…」
「あの外道の話はもうしないで下さい」とテンのメフィに対する怒りは、当分収まりそうになかった。
確かに、メフィが魔法で記憶を奪ったことに関しては、結果オーライではあったが途中経過が辛すぎた。
でもお陰で、シンが無事この世界への滞在許可を得たことには、感謝もしている。
そう、記憶を奪われてもお互いにたどり着いたお陰で、二人を結ぶ絆は確固とした永遠のものとなったのだ。
シンは自分にとって二度と離れたくない、いなくてはならない愛しい人だ。
人生には、予期もしない色々なことが、これからもあるのだろうと思えたが、それでも、シンを愛する気持ちは変わらない。
(それに……今回ローリーが婚約破棄をしなければ、多分シンとは結ばれていなかった、という事も……)
シンと、もっと早くに出会えていたら…と、思う一方で、気づいてしまったのだ。
ローリーとの婚約破棄がなければ、シンがいくら好みの男性でも、決してよそ見をすることはなかった…とも。少なくとも、酷い裏切りにあって傷ついていても、今でもローリーが嫌いなわけではなかった。
もちろん、リナが今、一途に愛しているのはシンだけ、だ。
だが多分、ローリにはローリーの良さがあって、婚約者として一緒に過ごせば、それも見えてくるのだと思う。
シンとの出会いは、ある意味全てがタイミングの良さ、だったのだ。
そして、出会って惹かれあったからには、もう他の人の事など絶対に考えられない。
リナは、いくつもの人を同時に愛せる程、器用な性格ではなかった。
(運命って、ほんと不思議なものよね……)
愛する人は一人だけ、そしてその人には、自分の全てを賭けても惜しくない。
愛に関しては、ある意味融通の効かない一本気な気質だからこそ、一夫多妻制のカルドランの王子達の評判がいくらよくても、頑として伴侶選びからは選外だったのだ。
こうして考えて見ると、ローリーから婚約破棄を言い渡されたのは、ラッキーエスケープだったのだ。自分からは決して、破棄などしなかっただろうから。
自由になったリナがシンの胸に飛び込めたのは、身勝手な婚約破棄があってこそなのである。
こんなタイミングで婚約を破棄してくれたローリーには、裏切りに対する怒りは薄れたが、メフィの魔法を破るキッカケをくれた過程を思うと未だに気持ちは複雑だった。
しかしまあ、ローリーへのわだかまりは、今すぐには無理でも近い将来なくなりそうだった。
ところでそのローリーだが、今は実家に帰って辺境伯について家督の勉強をしはじめている。
実家の家督は妹が継ぐことになっているのだが、リナ達から未開だった台地の新しい開拓の話を聞いて、未墾の地にいたく興味を惹かれたらしい。
『リナ、もしよければ、僕にも手伝わせてくれないか?』
という熱意ある申し出があり、なぜかアルに勧められて今は実家で、必要な知識を学んでいる最中であった。もともと花や植物が好きな彼は、実験的に設けられるはずの畑や果樹園に関心を寄せている。
それもどうやら、アイラを見捨てられなかったどこか義理堅く情にもろいらしい悪魔、アルの影響らしい。アルはメフィに連れ去られる前、ローリーに熱心にこれからの開拓に対する手ほどきを施していったようだ。
『いやあ、あんさんにはできの悪いうちのもんが大変な迷惑をかけてしもうた。いいでっか? 新しい商売の基本といえば……』と、アルにその土地独特のユニーク商品開発の大切さを口説かれ、ローリーは開拓が始まれば、実家の辺境伯ではなくその新しい開拓地に赴任を希望している。
さて、そうしてアイラ一派の残党を効率よく処理した、平和?な、ある晴れた日に、女王の戴冠式は何事もなく執り行われた。
式典自体は厳かにつつがなく進行し、無事終了した。
それでいて、リナには想定外のハプニングが起きたのだった。
その日、戴冠式の式典を終えて、国民への挨拶とお披露目も済まし、最後に城のバルコニーに夫であるシンと共に立つと、「女王万歳!」の掛け声と共に、「ご結婚おめでとうございます!」「きゃー、シン殿下ーーっ!」と言ったシンへの声援もたくさん聞こえてきた。
先ほど国民への派手な挨拶を済ませた夫は、その朗々とした美声や堂々とした姿で、既にバルドラン国民のハートを鷲掴みにしてしまったらしい。
何せこの容姿に、この頼もしい態度で、A級冒険者なのだ。
軍神と呼ばれた父王の時代の記憶がまだ色濃く残っている国民にとっては、感動もひとしおだと思われた。
そればかりだけでなく更にこの逞しい夫は、自分が女王一筋だということを国民、貴賓一同の前で隠そうともしなかった。
この華々しい日に集まった国民を前につい先刻、恥ずかしいほど赤裸々に『女王は俺のもの』宣言をされてしまった……
リナは嬉しいやら照れ臭いやらで、表向きは頬が真っ赤に紅潮している程度だったが、式典の最後にバルコニーで国民の声援に手を振るその胸中は、実の所恥じらいで今にも倒れそうだった。
それは、姿雄々しく堂々とバルコニーに立ったシンの挨拶に、リナだけでなく皆が魅せられ聞き入っている時だった。朗々たる美声での挨拶も無事終了して、気がつけば『カトリアーナ陛下』と、シンに名前を優しく呼ばれていた。
後ろに控えてその勇姿を誇らしげに見守っていたのだが、笑顔でこちらに振り向いた夫に、手を何気に取られた。そして気がつくとそのまま、逞しい腕に、ゆっくりと抱き寄せられたいたのだ。
リハーサルにもなかった夫の急な行動に、なんだろう?と、不思議には思った。
けれど、まあ、いいかと、大した疑問も持たずに、そのまま素直に身を委ねてしまったのだ。
すると、なんと次の瞬間には、バルドラン国民が一斉に注目するバルコニーの上で、素早く熱烈に唇を重ねられていた。
(えええーーっ⁈ うっそーー……!)
予想もしていなかった夫の派手な行動に、びっくりするあまり身体は、ピチっと固まった。
そしてリナが抵抗しないのをいいことに、舌まで入れた思いっきり濃厚なキスを、国民や貴族それに他国の使者までが見守る中、バルコミーの上で堂々とお披露目されてしまったのだ。
愛する夫の暴走は、もちろんそれだけでは収まらなかった。
濃厚なキスをたっぷり見せつけた後、あまりのことに、ボーとしたままのリナをしっかりと抱き抱えたまま、シンはご丁寧にも国民一同を上から見渡して、朗々と言い放ったのだ。
『カトリアーナ女王は俺の物だ。手を出してくる者は死を覚悟するがよい。何人たりとも容赦しないから、よく覚えておけ!』
いつの間にか片手に握られていた大剣が、眩しくもキラリーンと光っていた。
そしてそれは脅しと独占欲丸出しの宣言のはずなのに、なぜか国民には「シン殿下歓迎!」ムード全開で熱烈な拍手で応えられた。特に若者や女性達には、その女王への夫の堂々とした溺愛ぶり受けが異常によかったらしい。
その後、『きゃあー、カッコいいーー!』とか『シン殿下バンザーイーーっ!』という黄色い声援が絶えずあちこちから次々に飛んで来たのだ。
もしかしたら、シンが従順に従う飛龍たちを城のバルコニーに呼び寄せて、一匹づつ紹介したのもインパクトがあったのかも知れない。
飛龍を見慣れぬ国民へ、恐れをなさぬように紹介しておこう、と呼び寄せただけなのだが、シンに紹介されて、ペコ、とお辞儀をする飛龍たちに皆、心底驚いていた。
(まあね、各国の使者たちでさえ、シンにはなんか敬服してたし……)
カルドランの代表として貴賓席に控えていたマデレード王女には、『シン殿は相変わらずだな』と呆れた様子で祝福された。
わざわざ遠いキラ国から遠路はるばる来国、代表として挨拶をされた海軍元帥にも、『ふむ、若きことは良きことかな』とやんわりからかわれた。
特に、東大陸のシリンジ国とサビトリ国の使者は、シンを『名だたる冒険者だ』とベタ褒めだった。
そう言えばシンが『鱗を始末してきた』と言っていたから、きっとカルドランやキラ国で経験したような感じで、それぞれの国で感謝されているのだろう。
バルドラン新女王のそんな自慢の夫は、己の功績をひけらかすわけでもなく、今朝も、朝早くから精力的にせっせと国の未来の為に働いてくれていた。
朝食が済むとフェンと一緒に、『その後の未開の台地の開発具合を視察してくる、式典までには戻る』と国の視察に当然のごとく出かけていった。
リナは戴冠式の準備で一杯一杯だったので、頼もしい背中を誇らしげに見送ったのだ。
こんな頼もしい様子を見ていると、『この世界の警備をしている』との言葉通り、きっとリナに出会う前にも、あちこちで色々な問題を解決してきたのであろうことが伺えた。
そうして、今日無事に目が回る様な戴冠式の1日のスケジュールをこなし、先ほどお祝いの舞踏会も無事終えて、ようやく二人は城の部屋に戻って来たばかりだ。
当分は忙しくてハネムーンに行けそうもないリナの為に、シンはフェンを連絡係として部屋に置いておき、夜はシンの家に連れて行ってくれるのだ。
シンの家がある無人島へは二人が再び結ばれて以来、毎晩訪れていた。
人目が多すぎる城ではなかなか二人きりでイチャイチャ出来ないし、この短いエスケープはリナにとっても楽しみであったのだ。
この島には、キラ島のビーチのように少し離れた沖合にサンゴ礁もあった。
外洋に近いこのサンゴ礁の周りには、大人しい大型魔獣もたむろしている。だが、これらはこちらからちょっかいを出さない限り、ただそこにいるものとして存在しているだけだった。
無害な魚型が空を駆けるように海洋で大きなヒレを、ゆったり動かしているその優雅な姿などを観察することができて、見ているだけで楽しくもあったのだ。
こうして、二人でひとしきり海遊デートを楽しむと、ハネムーン宿がわりのシンのログハウスに戻ってくる。
この家にはシンが施した色々な魔道具も取り付けられていて、特に貴重な真水を暖かい水温で水浴びできる、シャワーはリナのお気に入りの魔道具だった。
今日も夜の海を泳いで楽しんだ後、一緒にシャワーを浴びて寝室に入ると、シンが待ちかねた様に一枚の絵を指差してきた。
「リナ、今日はこの衣装だ」
なぜかこの頃、シンはリナの着せ替えに目覚めて凝っているようだった。
これは多分だが、キラ国で打ち明けてくれたこの世界のテキストが原因だと思われた。
リナに出会うまでは、まるまるすっ飛ばして読んでいなかった生活に関する章を、時間が空いた時に読み耽っているらしいのだ。
テキストに図解付きで載っているという、この世界の色々な民族衣装から選んだお気に入りの衣装を、リナに着せては愛でるというパターンが、このところ毎晩続いていた。
こういうことに関しては押しが強い夫の今日のお気に入りは、身体の大部分が透けて見えるような大胆な衣装だった。ドレスとはとても言えない普通でないデザインに、その図解を確認したリナは怯んでよろけて真っ赤になった。
「えっ? これって、本当に民族衣装なの?」
「踊り子の伝統衣装だ、と、テキストには書いてあるぞ?」
(えええ? これってば、ほぼ、というか下着姿そのままなんじゃ……)
問題の衣装は、胸の蕾と下腹部の大事な所以外は、思わせ振りに生地が透けて見える何とも悩殺的な衣装だった。やけに詳しい図解でも、身体の線や素肌が、チラチラと悩ましげに薄っすらと透けている仔細がやたら煽情的だ。
これでは普通の胸当てはつけることが出来ない、というかどう見ても胸当てなしだ。
そして、ページをめくり衣装の後ろの図解を見たリナは、真っ赤になって思わずこの分厚い本を取り落としそうになった。
普通は歩きやすいやすい様にデザインされているドレスの膨らんだスカートの後ろ部分なのだが、薄い透ける様なシルクがひらひらと丸みを覆っているだけのイラストが載っていたのだ。
その為、図解に載っているシースルー衣装のショーツの後ろはこれ見よがしにお尻の割れ目に細い紐が通してあるだけで丸みの部分は衣装をまとっていてもその桃尻の形が丸出しだった。
それに何だか、ドレスの裾丈も太ももの半分ぐらいまでしかないではないか!
(うううっ、一国の女王のはずの私に、こんな衣装を着ろって……)
こんな見たこともない大胆な衣装を載せているこのテキスト書物は、一体天魔界の誰が編集したのだろう。
そう思った途端、なぜかシンの上司、メフィの顔が頭に浮かんでウインクを寄越してきた。
(っていうか、これって本当に、民族衣装なの?)
一体、どこの国の衣装か知らないが、「いや、絶対無理だから」と恥ずかしさでその場に立ち尽くしていると、すかさず「リナ」と優しく名前を呼ばれた。
条件反射で目を上げてしまい、ハッと気がついた時には既に時遅しだった。
期待感と欲情でキラキラ金色に輝いている夫の紺碧の瞳と、今、バッチリ目が合ってしまったのだ!
「あーっ! うっそーっ」
手が勝手に纏っていたドレスに触れて、瞬く間にイラスト通りのあられもない格好になってしまっている。
「シ、ンーーっ! 魅惑魔法は使わないで、とあれほど言ってるのにーーっ!」
「よしよし、じゃあ、俺は酒でも飲むから、そのまま踊りでも披露してくれ」
夫はのんびりと「この衣装は、酒の宴で着飾る為のものらしいからな」とか言いながら、どこやらの国の使者がお祝いの品として贈呈してきたワインを取り出しては飲みだしている。
「ちょっとーっ、聞いてる!?」
「いいな、これ、いい眺めだ。今までの中では、ピカイチだな」
とワインを唇に運ぶ様子は、可愛らしく叫ぶリナの抗議の声など、まるで聞いていないことは明白だった。
わかってはいる。
魅惑魔法は実は自分には、ほとんど効かないことは。
言われた通りに身体が動く、イコール、自分がシンにしてあげたいと思う心がある、のだ。
(だけど、だけど、こんな恥ずかしいのに……)
欲望に忠実な自分の身体が、たまに恨めしくなってくる。
そんなことを思いながら踊りを披露していると、シンが不意に手招きをして来た。
「リナ、こっちに来て、ちょっと手で胸を挟んで俺の前で屈め」
「えっ? あぁ、ちょっと私の身体ってばーー!」
裏切り者の上気した身体は、勝手にワインを手にした夫にしずしずと近づいゆく。
「キャアっ、何するの?」
何やらテキストを片手に傾けたワインを、いきなり胸の間に少しづつ流し込まれた。
「こうやって人肌で温めて、そのまま直接飲む…と、ふむふむ」
手で胸を掬った胸の谷間にできた即席胸カップに、ワインをそっと注がれていく。
(…って、なによ、これぇーーっ!)
「やあん、こんな! ねえ、これ本当にそのテキストに、普段の生活として書いてあるのぉ!?」
目を輝かせたまま夫はそのまま胸元に顔を寄せて、楽しそうに胸から直接ワインを飲みだした。
じゅるじゅる、じゅー。
(やあぁっ、恥ずかし過ぎるっ、こんなの!)
恥ずかしくて恥ずかして、顔から火が出そうだ。
胸元を抑える両手も、プルプルと震えてくる。
「美味い、最高だ!」
一方シンは、愉悦の顔でワインで濡れた口元を拭っている。
興奮を隠そうともせず、背中の漆黒の翼を、バサッと満足そうに羽ばたかせた。
(うわぁ、私ってば、何を見惚れて……)
その恐ろしく綺麗だが、ワイルド感あふれる姿に、身体がゾクゾクしてきた。
漆黒の髪の中からは見事なツノまでがちゃっかりと生えている。
この世界では異質であるこの姿を、リナは怖いと思ったことがない。
むしろシンの本質に近いであろうこの姿を見せられると、身体がどうしようもなく疼いてきてしまって困る。
リナが少しも怖がらない事を知ったシンは、二人きりの夜に興奮すると、時々、こうして本来の姿を垣間見せるようになった。
そんな夜は決まって、一度では解放されず、何度も激しく愛されて抱かれてしまうのが常である。
「リナ、やはり甘いな」
胸元にあったワインは、すべてをとっくに飲み干されてしまって、今は仄かな残り香を追う舌先に、胸を挟んでいる指先までヌルヌルとしゃぶられていた。
「あ…」
暖かい息が濡れた胸元にかかると、シンの紺碧の瞳がこちらを見上げてくる。
唆られるようなシン独特の香りが漂ってきた。
(あ、もう……)
夫の欲望を含んだキラリときらめく金色の光に、また、ゾクゾクッと身体が震えてきた。
ドクンドクンと胸の鼓動が早くなってくる。そんな胸の素肌に、ちゅっと口づけられると……
「あぁっ…ん…」
一瞬、肌に、ピリッと強い刺激が走り抜けていった。
「俺のものだ」
低い声が誇るように呟いている。
激しかった昨夜の痕がまだ色濃く残る肌には、きっとまた、この直情的な新しい痕が残るのだろう。
ドレスを着込んだときに見えない素肌には、すでに恥ずかしい数の噛み跡やシンのいう印とやらが、いたる所につけられている。
メフィの魔法がかけられていたのにもかかわらず、シンに愛された記憶が戻ったのは、肌に突然現れたこのキスマークのお陰であった。
夫にしか許さぬ肌であるなら、どんなに跡を残されようとも、その男らしい独占欲の証はただただ嬉しいだけだ。
「そうよ、すべてあなたのものよ、シン……」
シンに狂おしいほど求められている。
そう感じるこの瞬間を、酔ったように味わってしまう。
愛する想いが重なり、切なく浮かれてしまってその逞しい身体をギュウウと固く抱きしめかえした。
求められる心の喜びは身体にダイレクトに反映されて、夫を迎える為に、ヌルリと足の間が濡れてくる。
硬くなった身体を押しつけられると彼の欲望を直接感じて、だんだんと激しくなる息遣いにも甘さが含まれていった。
「ふ…ぁ…ぁん…っ」
肌に残るワインを、ペロペロと舐め取られてゆき、膝立ちが崩れそうな身体を逞しい腕が軽く持ち上げてくれた。こうなったらもう、衣装を着けていることなど意味をなさない。
(はぅ…んんっ)
生まれたままの姿になった途端に胸が、ヤワヤワと揉みしだかれている。
大きな手は指先がゆっくりとこねるように動いて、柔らかい膨らみを、存分に味わっているらしい。
熱い唇が尖った胸の蕾を、下から噛みつくように舐ってきた。
「んん…あ…や…んっ」
時々、甘噛みもまじる愛撫に、ますます胸の蕾が痛いほど突きでて、ジンジンと感じてくる。
「あぁ、シン、シン、もっと愛して……」
「よしよし、今夜も可愛がってやるから、覚悟しろ」
くるりと後ろから抱きこまれて胸を揉みしだかれながら、背中を熱い舌がなぞってゆく
こんな風に背中を甘やかすように愛されると、身体から力が抜けて、ふるふると快感で震えてくる。
「はぁ…ぁ…」
「ん~、相変わらず良い香りだ」
蕾を指できゅと摘まれると、きゅうんと身体が締まってしまう。
「ふぁぁん…」
「まだだ、もっと快くなれ」
低く唸るような美声が、耳の後ろから囁いてくる。
あっという間にベッドに運ばれて、重なってくる唇を口を開いて受け入れた。
貪るような甘く長い口づけを交わすと、またも胸の蕾を吸われて漆黒の髪を、気持ちいい、と淫らにかき乱した。
ジンジンする胸から、そっと顔を上げると、シンは低く囁いてきた。
「リナ、少しだけ、いいよな?」
「あ…」
「ん、堪らない香りだ」
グイ、と膝を大きく割られて、太ももに腕ががっしり巻きついた途端に、蜜口にシンの唇が吸い付いていた。
「あぁぁ……」
溢れる愛蜜をもったいないとばかりに、ペロペロとあまねく舐めとられる。
そうして周りまでも綺麗に舐めとったあと、蜜口に熱い舌をゆっくり差し込まれた。
「は…ぁ…ぁ……」
身体の奥から暖かい魔力が、敏感な腰の周りをくすぐるように巡って蜜口の方へと流れだす。
「や、ダメ、またくるっ」
「好きなだけイケ」
「ぁ…っ…っ…」
魔力と蜜が身体の中で混ざりあって、うねる波のような快感が身体を次々と襲ってくる。
身体が細かく震えてくると、タラタラと蜜が溢れ漏れるのにもかまわず、かき回されていた蜜口から舌を突如引き抜かれた。
次の瞬間にはふっくら膨らんで色づき疼いてたまらない花芽に、強く吸いつかれていた。
痛痒いような快感に眉を寄せてしまう。
「ダメ、ダメ、そんな…」
呼吸が浅くなりうわごとのように繰り返すが、もちろんシンは攻めるのをやめてはくれない。
反対に、じゅるじゅるると強く吸い込まれて、剥き出しになった花芽にむしゃぶりつかれてしまう。
「あっ…あぁ…あっ」
ぬるぬるとイジられて、たまに勢いで犬歯が軽く擦ってきて、まぶたの裏がチカチカしてきた。
強すぎる快感から逃れようと、無意識に身体をくねらせては強い腕に阻まれてしまう。
腰の奥に行き場のない熱い魔力がだんだん溜まってきている。
シンはわざとそれを吸わずに、溜めているのだ。
そうすると愛蜜と交わっていっそう熟成される、とかなんとか言っていたのを快楽で朦朧としてきた頭が思い出した。
(もう、もう……)
イクーーっと身体を震わせた途端、剥き出しの花芽を、カリっと甘噛みされて吸い上げられた。
ぴりりっと芯が通るような甘美な疼きが身体を駆け巡る。
「んんーーっ!」
感じたエクスタシーで頭が真っ白になった。
身体が、ビクンビクンと大きく震えて止まらない。
そんな中、シンは膨らんだ花芽から魔力を吸い取り続ける。
身体中を快楽の奔流が駆け巡って、息も継げない。
(ぁ…ぁ…や…あぁん…ダメ…もう…)
ちゅう、びっくん、じゅる、びっくん、ちゅううー、びっくん……
熱い流動が敏感な芯を通るたびに、身体が稲妻に打たれるような快感で跳ねてしまう。
蜜口から流れるように、コポコポと溢れ出る愛蜜が太ももを伝って、シーツに流れ出していた。
……つかの間、意識を失っていたらしい。
気がつくと、シンがまだ溢れ出す蜜を美味しそうにごくごくと喉を鳴らして、味わい飲み干していた。
「ハアハアはあ……」
(なにが、少しだけ、よーーっ!!)
朦朧と意識の中で夫に向かって頭は叫ぶのだが、激しい息遣いと弛緩した身体では、なにも出来ず激しい息遣いが喉から漏れるばかりだ。
(あぁ! ウソっ……)
「も…あーーっっ」
そんな敏感になった状態の身体に、灼熱の塊がゆっく挿し入れられる。
深く深く挿入ってくる
力が入らないはずの貪欲な身体は、それでも何だか物足りない気がして、無意識に、そっと腰を揺すっていた。グショグショに濡れて柔らかく蕩けた蜜口は、難なくシンを受け入れている。
「リナ……」
(シン、シン……)
愛する人に優しく名前を囁かれて、ますます心も蕩けてゆく。
先ほど脳裏に浮かんだ文句は、もうカケラさえ思い出せない。
代わりに、「もっと、きて…」と可愛らしい唇は囁きかえしていていた。
軽く腰を揺らされただけでも、甘い痺れが背中を走って全身に広がってゆく。
はじめはいたわるような、ゆっくりとした緩慢な動きだった。
けれども抜き差しで反応した膣中が擦られるたびにうねるように締め付けると、奥まで一気に貫いてきた。
「あっ…んんっ……」
身体の奥を突き上げ抉るように動かれると、ああ、とため息のような喘ぎ声がつい漏れてしまう。
甘い声に促されるように、逞しい腰が足をさらに押し開き、深く奥へと奥へと入ってきた。
膣が蕩けるように柔らかく熱い塊を包み込んでいる。
(シン……)
愛してる…切なく甘い気持ちは波状に増してゆき、腰の奥にキスされるたびに全身で屹立を締め付けてしまう。そんなリナの反応に、我慢できないとばかりに、大きな手で腰骨を掴まれた。
低く何かをつぶやいたシンは、勢いよく突き上げてきた。
「はっ」
「ぁ…~~っ」
ふわふわとした浮遊感で目の前が白くなる。
全身が目眩がするような快感に貫かれている。
寄せては引いていく無数の波に、魂ごとさらわれてしまいそうだった……
激しい動悸で息も絶え絶えに、大波にユラリユラリと揺らされて陶酔感の中を漂うことしかできない。
「あっ…あぁ…んっ~…」
「リナ…リナ…」
力強く際奥を突き上げられる度に、甘い浮遊感が波紋のように広がる。
身体の中心から熱い泉が湧き上がってくる。
じわりじわりと迫りくる、熱い流体が溢れでる感覚から逃れようと、知らず知らず膣内の夫を、きゅうんと絡めとり締めつけている。引き留めるような絡みつきに、シンががビクビクと蠢いてまた熱く大きくなった。ジュク、と足の間が滑って熱を持ってくる。
夫はますます奥へ深くへと、腰を突き入れてきた。
「くっ…リナ…」
耳元に口づけられながら名前を呼ばれると、幸せが溢れて心が、ふるふると震えている。
全身に甘美な痺れが稲妻のように走り抜け、声も出せずに、あぁぁ…とたまらずその快感を足先まで突っ張って受けとめていた。
ついに突き上げがとまって、グリっと腰が密着してきた。
一際、ズンと深く突き入れられると、目の奥で火花が散ってが真っ白になった。
「っ…」
「ああぁ~~ーーっ……」
(暖かい……)
身体の奥深い所が熱い飛沫で濡らされた。
瞼は閉じているのに、一瞬まばゆい閃光が広がる。
熱く濡れた感覚が、身体に喜びとなって広がってゆく。
まるで高みを極めた浮遊感から、突然真っ白な無重力の世界に放り出されたような……
ゆっくりと溶けるように身体の力が抜けてゆくのを感じる。
それでも、身体に強く刻まれた甘い余韻はひいていて、足の先まで痙攣したような、フワフワの幸福感に包まれていた。
同時に、愛しい人に深く愛された喜びが心にこみあがってきて、心地よい酩酊感をもたらしてくれる。
(愛してる、シン……)
薄れてゆく意識の中、リナ…と囁きかけてくるシンの低い声に、口元は綻んでいた。
気だるくて甘いこの独特の感覚を味わっていると、暖かい息が胸の印あたりにくすぐったく吹きかかる。熱い唇が素肌を彷徨っている。
恍惚感に酔って心地よい快楽の波に身を任せていると、低い声がそっと何か囁いてきたような気がした。
「リナ、愛してるよ、俺の天使」
月明かりが差し込む暗い二人きりの部屋の中で、シンに激しく愛されその精を注がれた身体が、ざわざわと反応している。
けれども今も目を閉じているその白い裸身は、まだまだ心地よい陶酔に浸り続けていた。
浅い息を繰り返し横たわるその白い裸身の頭部には、薄い光の輪が浮き出ている。その上優美な線を描いた綺麗な背中はこの暗闇の中でさえも、仄かに真珠のように白く光っていた。
ちょうど肩甲骨のあたりだ。
だが、強すぎる快感の余韻で朦朧としているリナ自身は、身体の異変にはもちろん気づいていない。
そんな姿を愛しそうに指先で撫であげ見下ろす漆黒の姿は、こちらも欲情と興奮で紺碧の瞳が金色に輝いている。
リナのそんな気高い裸身を愛でながら、現れた背中の漆黒の翼を一瞬いっぱいにまで広げると、満足そうに、バサッと閉じてゆくのだった。
完
「王女様、危ない!」
差し迫った危険を知らせてくれる甲高い声が、いくつも同時に城の渡り廊下に響いた。
嫌な予感は察知できなかったのだが、その喚起にシールドを張って構えながら、即、振り向いた。
するとまあ目に飛び込んできたのは、ホウキやフライパン、剪定ばさみなどを振りかざした城のメイド連中ではないか。皆が皆それぞれの武器を掲げて、剣を手にした貴族らしい連中を追いかけ回している。
リナの味方である昔から城に勤めるものには、魔法騎士達と協力して身を守れるぐらいの基礎は教えてある。なので皆構えが、中々様になっている。
だが、相手は曲りなりなりにも、正式な訓練を受けた貴族なのだ。
攻防が長引けば優劣の差は、歴然としてくる。ここまできて大切な仲間を、失う訳にはいかなかった。
とっさに剣を収納扉から取り出し、即座に襲ってきた者たちを牽制してゆく。
「みんな! 危ないから下がって」
その時だった、小さな黒い針が一斉に飛び交った。想定外の反撃に応戦しはじめていた元アイラ一味の残党の動きが、ピタとそこで止まる。動かなくなった全員の影は、地面に縫いとめられていた。
斬りかかろうとした姿勢のまま固まった男達は、メイド達に動けないことを確かめるようにホウキの先で、ツンツンと小突き回されている。
「あっ、シンっ! 本気出しちゃダメよっ」
「……わかった、じゃあせめて、足や腕、腰の一本や二本…」
「ダメ! 自立した生活ができなくなるような、大怪我を負わせるのは!」
振り上げていた大剣を今にも下ろそうとしていた夫に、「そんな暗殺を企むような輩の介護に、かける国家予算はないのよ」と言い聞かせると、「成る程」と頷いて目にも留まらぬ速さで剣を収めてくれた。
「それなら、指を詰めるのはどうだ? 一本や二本、支障なかろう」
「……その程度ならいいわ、ちゃんと裁判に引っ張っていかなきゃね、幸い目撃者も多いし」
新妻にたしなめられて仕方なく妥協案に落ち着いたシンが、渋々といった様子で、おもむろに抜いた剣を無造作にひるがえした。
すると、男達の両手からは物の見事に、たちまち指が何本か消えてなくなっていった。
「あ、オイラ、ちょっと、用事を思い出して…」
…どこか気まずそうな声が、騒ぎに紛れて足元から聞こえてくる。そちらを見ると真っ黒な狼が一匹、忍び足で、そうっと現場を逃れようとしているところだった。
きまりが悪いといった風情のフェンが、一歩後ろに下がった途端、その首根っこは主人にしっかりと捕まえられていた。
「待てこら、今、何を飲み込んだ?」
「ふぐっ」
(あ~あ、遅かったわ……)
フェンは中型犬ぐらいの大きさになって、リナに付き添っていたのだ。
不幸にもこの食いしん坊狼に一番近かった男の片足は、足首から先がばっちりと消えていた。
フェンに足を、パクッと齧られても、そこから先が消えるようになくなってしまうので、男は自分の異常状態にまだ気づいていないらしい。だが、体がゆっくりと傾いていき突然わめき出したのを見ると、ようやくバランスが取れないことに気づいたようだ。
「ああ、うるさいぞ、少し黙っておけ」
低く張りのある美声が響き渡った次の瞬間には、怒鳴り散らしていた男達の騒ぎが、ピタッと収まってしまった。
よく見ると、身体の一部を失って一斉にわめき出した男たちの喉には、鋭い黒い針が一斉に刺さっている。
「シン? 一体何をしたの?」
「ちょっと喉を潰しただけだ。裁判は手記でも出来る」
…と言う事は、この男たちは二度と喋ることが出来ないのだろう。
これから戴冠式に臨む一国の王女へと暗殺を仕掛けたのだから、当然の報いではあるのだが。
「おおー、さすがはシン殿下!」
メイドやコックの、わんやわんやと尊敬するような声と拍手に、夫はなぜか、「そうか?」と照れている。
「もう、シンったら、裁判の時間が長引いちゃうじゃない?」
「リナは寛大な心の持ち主だから、こいつらの命を取りはしないが、俺は違うぞ? 俺の番いに害を為すような輩には、容赦など一切しない」
真剣な紺碧の瞳が、俺は本気だ、と語っていた。
『幽霊王女などちょろいわ』と見え見えの態度で斬りかかってきた男達だったのだが、自分たちのターゲットであった王女に一瞬で返り討ちにあった。その上その夫にこんなあっさり嬲られてしまったのだ。初めは、信じられないといった表情を浮かべていた連中も、シンの冷酷な言葉で、ようやく自分たちの非常にマズイ状況と危ない立場を理解したらしい。
「お前たち、この俺の番いであるリナの広き心に感謝しろよ。お前達のような汚れきった魂でも、『救いがある』とする慈悲深い沙汰なんだぞ。まったく、獲物を前にしても共存主義とやらで食べられない、とぼやくフェンの気持ちが、理解できそうだぞ」
氷の美貌が冷たく言い放ち、その上、紺碧の瞳で、ジロッと睨みつけられると、どの顔も命だけはお助けをといった表情で、震え上がっている。
「そうだろ~、オイラも大人しくしてるんだから、足の一本や二本ぐらいは見逃してくれよ~」
真黒な狼のこのコメントを聞いた連中は、片足を失った仲間を見て、抵抗をするのを一切放棄したようだった。
「条件反射だったんだよ~」と、うな垂れているフェンを見て、思わず深い諦めのため息をつく。
まあ足の一本ぐらいなら、松葉杖での生活程度よね…しょうがないなあ、よしよしとふさふさの毛を元気づけるように撫でてあげた。
叔父やその一派へアイラが施した洗脳効果は、アルの言った通り数週間もすると解けてきたらしい。
それはアイラが突然姿を消してから、数週間経ったある日のことだった。
ある朝、皆で朝食を取っていると、思いがけずその席に叔父が現れて土下座をしてきた。
どうやら自分のした事は覚えているようで、洗脳効果が消えると、ショックのあまり寝込んだそうだ。
『自分は今すぐリタイアする』という叔父に、厳しいけど『逃げないで、後始末を手伝ってください』と頼んだ。記憶にある優しい性質に戻った叔父とは、涙ぐんで仲直りをして、それ以来昔のように仲良く過ごして今日までに至る。
アイラは、どうやら色仕掛けでしょうもない連中に薬を飲ましては、信者を増やしていたようだ。
突然その姿が城から消えても、あの朝部屋に閉じ込められていたローリーの証言などから、きっと浮気が叔父にバレて姿を隠したに違いないと、それ程問題にされなかった。
だが、どこの国にも、己の私利私欲で動く者たちはいる。
洗脳などされなくとも、叔父たちの進める計画に便乗し私服を肥やしていた貴族や役人連中は、叔父に見向きもされなくなり焦っていたようだ。
この数ヶ月、今日の戴冠式を迎えるこの日まで、また何度か大っぴらに襲われたのだが、全員返り討ちにして牢屋行きである。それだけならまだしも、夫であるシンにも度々刺客が送られてきたらしい。
らしい、と言うのは、シンがまったくそのことに触れず、フェンとのおしゃべりでようやく判明したばかりだからだ。夫に問い詰めてみると、「ああ、あの汚れきった魂の者共なら、心配するな」と、アッサリ歯牙にも掛けない様子であった。
どうやら、シンにとっては話す価値もないような些細なことであるらしい。この夫の態度から察するに、かわいそうな刺客達は、天魔界の管轄だと言う地獄に皆送られたのだろう。
そうしていくら刺客を送っても平然としているリナ達に、最後の手段とばかりに戴冠式である今日、黒幕である貴族連中が業を煮やして自ら束になって襲いかかってきたのだ。
彼らの悪行もここまで来て万事休す、だった。この警備も一段と厳しい日に一網打尽で捕まったのは、リナ達の実力をあなどっていた報いなのか、墓穴を掘ったとしか言いようがなかった。
天魔界といえば、あの事件の後、テンは記憶が戻ってからは、カンカンに怒っていた。
「あの、腐れ外道とは、二度と顔も合わせたくありません!」
シンと二人で「まあまあ、そんなに怒らなくても」となだめてみたのだが、ダメであった。
夫によると今度のお怒りは、前回を上回る勢いだそうだ。
娘のように可愛がっていたリナに手を出したとあって、相当キレてしまったようである。
「テン、気持ちはわかるし、私もちょっと複雑だけど、一応彼のお陰でシンがここに残ることはすんなり認められたんだし…」
「あの外道の話はもうしないで下さい」とテンのメフィに対する怒りは、当分収まりそうになかった。
確かに、メフィが魔法で記憶を奪ったことに関しては、結果オーライではあったが途中経過が辛すぎた。
でもお陰で、シンが無事この世界への滞在許可を得たことには、感謝もしている。
そう、記憶を奪われてもお互いにたどり着いたお陰で、二人を結ぶ絆は確固とした永遠のものとなったのだ。
シンは自分にとって二度と離れたくない、いなくてはならない愛しい人だ。
人生には、予期もしない色々なことが、これからもあるのだろうと思えたが、それでも、シンを愛する気持ちは変わらない。
(それに……今回ローリーが婚約破棄をしなければ、多分シンとは結ばれていなかった、という事も……)
シンと、もっと早くに出会えていたら…と、思う一方で、気づいてしまったのだ。
ローリーとの婚約破棄がなければ、シンがいくら好みの男性でも、決してよそ見をすることはなかった…とも。少なくとも、酷い裏切りにあって傷ついていても、今でもローリーが嫌いなわけではなかった。
もちろん、リナが今、一途に愛しているのはシンだけ、だ。
だが多分、ローリにはローリーの良さがあって、婚約者として一緒に過ごせば、それも見えてくるのだと思う。
シンとの出会いは、ある意味全てがタイミングの良さ、だったのだ。
そして、出会って惹かれあったからには、もう他の人の事など絶対に考えられない。
リナは、いくつもの人を同時に愛せる程、器用な性格ではなかった。
(運命って、ほんと不思議なものよね……)
愛する人は一人だけ、そしてその人には、自分の全てを賭けても惜しくない。
愛に関しては、ある意味融通の効かない一本気な気質だからこそ、一夫多妻制のカルドランの王子達の評判がいくらよくても、頑として伴侶選びからは選外だったのだ。
こうして考えて見ると、ローリーから婚約破棄を言い渡されたのは、ラッキーエスケープだったのだ。自分からは決して、破棄などしなかっただろうから。
自由になったリナがシンの胸に飛び込めたのは、身勝手な婚約破棄があってこそなのである。
こんなタイミングで婚約を破棄してくれたローリーには、裏切りに対する怒りは薄れたが、メフィの魔法を破るキッカケをくれた過程を思うと未だに気持ちは複雑だった。
しかしまあ、ローリーへのわだかまりは、今すぐには無理でも近い将来なくなりそうだった。
ところでそのローリーだが、今は実家に帰って辺境伯について家督の勉強をしはじめている。
実家の家督は妹が継ぐことになっているのだが、リナ達から未開だった台地の新しい開拓の話を聞いて、未墾の地にいたく興味を惹かれたらしい。
『リナ、もしよければ、僕にも手伝わせてくれないか?』
という熱意ある申し出があり、なぜかアルに勧められて今は実家で、必要な知識を学んでいる最中であった。もともと花や植物が好きな彼は、実験的に設けられるはずの畑や果樹園に関心を寄せている。
それもどうやら、アイラを見捨てられなかったどこか義理堅く情にもろいらしい悪魔、アルの影響らしい。アルはメフィに連れ去られる前、ローリーに熱心にこれからの開拓に対する手ほどきを施していったようだ。
『いやあ、あんさんにはできの悪いうちのもんが大変な迷惑をかけてしもうた。いいでっか? 新しい商売の基本といえば……』と、アルにその土地独特のユニーク商品開発の大切さを口説かれ、ローリーは開拓が始まれば、実家の辺境伯ではなくその新しい開拓地に赴任を希望している。
さて、そうしてアイラ一派の残党を効率よく処理した、平和?な、ある晴れた日に、女王の戴冠式は何事もなく執り行われた。
式典自体は厳かにつつがなく進行し、無事終了した。
それでいて、リナには想定外のハプニングが起きたのだった。
その日、戴冠式の式典を終えて、国民への挨拶とお披露目も済まし、最後に城のバルコニーに夫であるシンと共に立つと、「女王万歳!」の掛け声と共に、「ご結婚おめでとうございます!」「きゃー、シン殿下ーーっ!」と言ったシンへの声援もたくさん聞こえてきた。
先ほど国民への派手な挨拶を済ませた夫は、その朗々とした美声や堂々とした姿で、既にバルドラン国民のハートを鷲掴みにしてしまったらしい。
何せこの容姿に、この頼もしい態度で、A級冒険者なのだ。
軍神と呼ばれた父王の時代の記憶がまだ色濃く残っている国民にとっては、感動もひとしおだと思われた。
そればかりだけでなく更にこの逞しい夫は、自分が女王一筋だということを国民、貴賓一同の前で隠そうともしなかった。
この華々しい日に集まった国民を前につい先刻、恥ずかしいほど赤裸々に『女王は俺のもの』宣言をされてしまった……
リナは嬉しいやら照れ臭いやらで、表向きは頬が真っ赤に紅潮している程度だったが、式典の最後にバルコニーで国民の声援に手を振るその胸中は、実の所恥じらいで今にも倒れそうだった。
それは、姿雄々しく堂々とバルコニーに立ったシンの挨拶に、リナだけでなく皆が魅せられ聞き入っている時だった。朗々たる美声での挨拶も無事終了して、気がつけば『カトリアーナ陛下』と、シンに名前を優しく呼ばれていた。
後ろに控えてその勇姿を誇らしげに見守っていたのだが、笑顔でこちらに振り向いた夫に、手を何気に取られた。そして気がつくとそのまま、逞しい腕に、ゆっくりと抱き寄せられたいたのだ。
リハーサルにもなかった夫の急な行動に、なんだろう?と、不思議には思った。
けれど、まあ、いいかと、大した疑問も持たずに、そのまま素直に身を委ねてしまったのだ。
すると、なんと次の瞬間には、バルドラン国民が一斉に注目するバルコニーの上で、素早く熱烈に唇を重ねられていた。
(えええーーっ⁈ うっそーー……!)
予想もしていなかった夫の派手な行動に、びっくりするあまり身体は、ピチっと固まった。
そしてリナが抵抗しないのをいいことに、舌まで入れた思いっきり濃厚なキスを、国民や貴族それに他国の使者までが見守る中、バルコミーの上で堂々とお披露目されてしまったのだ。
愛する夫の暴走は、もちろんそれだけでは収まらなかった。
濃厚なキスをたっぷり見せつけた後、あまりのことに、ボーとしたままのリナをしっかりと抱き抱えたまま、シンはご丁寧にも国民一同を上から見渡して、朗々と言い放ったのだ。
『カトリアーナ女王は俺の物だ。手を出してくる者は死を覚悟するがよい。何人たりとも容赦しないから、よく覚えておけ!』
いつの間にか片手に握られていた大剣が、眩しくもキラリーンと光っていた。
そしてそれは脅しと独占欲丸出しの宣言のはずなのに、なぜか国民には「シン殿下歓迎!」ムード全開で熱烈な拍手で応えられた。特に若者や女性達には、その女王への夫の堂々とした溺愛ぶり受けが異常によかったらしい。
その後、『きゃあー、カッコいいーー!』とか『シン殿下バンザーイーーっ!』という黄色い声援が絶えずあちこちから次々に飛んで来たのだ。
もしかしたら、シンが従順に従う飛龍たちを城のバルコニーに呼び寄せて、一匹づつ紹介したのもインパクトがあったのかも知れない。
飛龍を見慣れぬ国民へ、恐れをなさぬように紹介しておこう、と呼び寄せただけなのだが、シンに紹介されて、ペコ、とお辞儀をする飛龍たちに皆、心底驚いていた。
(まあね、各国の使者たちでさえ、シンにはなんか敬服してたし……)
カルドランの代表として貴賓席に控えていたマデレード王女には、『シン殿は相変わらずだな』と呆れた様子で祝福された。
わざわざ遠いキラ国から遠路はるばる来国、代表として挨拶をされた海軍元帥にも、『ふむ、若きことは良きことかな』とやんわりからかわれた。
特に、東大陸のシリンジ国とサビトリ国の使者は、シンを『名だたる冒険者だ』とベタ褒めだった。
そう言えばシンが『鱗を始末してきた』と言っていたから、きっとカルドランやキラ国で経験したような感じで、それぞれの国で感謝されているのだろう。
バルドラン新女王のそんな自慢の夫は、己の功績をひけらかすわけでもなく、今朝も、朝早くから精力的にせっせと国の未来の為に働いてくれていた。
朝食が済むとフェンと一緒に、『その後の未開の台地の開発具合を視察してくる、式典までには戻る』と国の視察に当然のごとく出かけていった。
リナは戴冠式の準備で一杯一杯だったので、頼もしい背中を誇らしげに見送ったのだ。
こんな頼もしい様子を見ていると、『この世界の警備をしている』との言葉通り、きっとリナに出会う前にも、あちこちで色々な問題を解決してきたのであろうことが伺えた。
そうして、今日無事に目が回る様な戴冠式の1日のスケジュールをこなし、先ほどお祝いの舞踏会も無事終えて、ようやく二人は城の部屋に戻って来たばかりだ。
当分は忙しくてハネムーンに行けそうもないリナの為に、シンはフェンを連絡係として部屋に置いておき、夜はシンの家に連れて行ってくれるのだ。
シンの家がある無人島へは二人が再び結ばれて以来、毎晩訪れていた。
人目が多すぎる城ではなかなか二人きりでイチャイチャ出来ないし、この短いエスケープはリナにとっても楽しみであったのだ。
この島には、キラ島のビーチのように少し離れた沖合にサンゴ礁もあった。
外洋に近いこのサンゴ礁の周りには、大人しい大型魔獣もたむろしている。だが、これらはこちらからちょっかいを出さない限り、ただそこにいるものとして存在しているだけだった。
無害な魚型が空を駆けるように海洋で大きなヒレを、ゆったり動かしているその優雅な姿などを観察することができて、見ているだけで楽しくもあったのだ。
こうして、二人でひとしきり海遊デートを楽しむと、ハネムーン宿がわりのシンのログハウスに戻ってくる。
この家にはシンが施した色々な魔道具も取り付けられていて、特に貴重な真水を暖かい水温で水浴びできる、シャワーはリナのお気に入りの魔道具だった。
今日も夜の海を泳いで楽しんだ後、一緒にシャワーを浴びて寝室に入ると、シンが待ちかねた様に一枚の絵を指差してきた。
「リナ、今日はこの衣装だ」
なぜかこの頃、シンはリナの着せ替えに目覚めて凝っているようだった。
これは多分だが、キラ国で打ち明けてくれたこの世界のテキストが原因だと思われた。
リナに出会うまでは、まるまるすっ飛ばして読んでいなかった生活に関する章を、時間が空いた時に読み耽っているらしいのだ。
テキストに図解付きで載っているという、この世界の色々な民族衣装から選んだお気に入りの衣装を、リナに着せては愛でるというパターンが、このところ毎晩続いていた。
こういうことに関しては押しが強い夫の今日のお気に入りは、身体の大部分が透けて見えるような大胆な衣装だった。ドレスとはとても言えない普通でないデザインに、その図解を確認したリナは怯んでよろけて真っ赤になった。
「えっ? これって、本当に民族衣装なの?」
「踊り子の伝統衣装だ、と、テキストには書いてあるぞ?」
(えええ? これってば、ほぼ、というか下着姿そのままなんじゃ……)
問題の衣装は、胸の蕾と下腹部の大事な所以外は、思わせ振りに生地が透けて見える何とも悩殺的な衣装だった。やけに詳しい図解でも、身体の線や素肌が、チラチラと悩ましげに薄っすらと透けている仔細がやたら煽情的だ。
これでは普通の胸当てはつけることが出来ない、というかどう見ても胸当てなしだ。
そして、ページをめくり衣装の後ろの図解を見たリナは、真っ赤になって思わずこの分厚い本を取り落としそうになった。
普通は歩きやすいやすい様にデザインされているドレスの膨らんだスカートの後ろ部分なのだが、薄い透ける様なシルクがひらひらと丸みを覆っているだけのイラストが載っていたのだ。
その為、図解に載っているシースルー衣装のショーツの後ろはこれ見よがしにお尻の割れ目に細い紐が通してあるだけで丸みの部分は衣装をまとっていてもその桃尻の形が丸出しだった。
それに何だか、ドレスの裾丈も太ももの半分ぐらいまでしかないではないか!
(うううっ、一国の女王のはずの私に、こんな衣装を着ろって……)
こんな見たこともない大胆な衣装を載せているこのテキスト書物は、一体天魔界の誰が編集したのだろう。
そう思った途端、なぜかシンの上司、メフィの顔が頭に浮かんでウインクを寄越してきた。
(っていうか、これって本当に、民族衣装なの?)
一体、どこの国の衣装か知らないが、「いや、絶対無理だから」と恥ずかしさでその場に立ち尽くしていると、すかさず「リナ」と優しく名前を呼ばれた。
条件反射で目を上げてしまい、ハッと気がついた時には既に時遅しだった。
期待感と欲情でキラキラ金色に輝いている夫の紺碧の瞳と、今、バッチリ目が合ってしまったのだ!
「あーっ! うっそーっ」
手が勝手に纏っていたドレスに触れて、瞬く間にイラスト通りのあられもない格好になってしまっている。
「シ、ンーーっ! 魅惑魔法は使わないで、とあれほど言ってるのにーーっ!」
「よしよし、じゃあ、俺は酒でも飲むから、そのまま踊りでも披露してくれ」
夫はのんびりと「この衣装は、酒の宴で着飾る為のものらしいからな」とか言いながら、どこやらの国の使者がお祝いの品として贈呈してきたワインを取り出しては飲みだしている。
「ちょっとーっ、聞いてる!?」
「いいな、これ、いい眺めだ。今までの中では、ピカイチだな」
とワインを唇に運ぶ様子は、可愛らしく叫ぶリナの抗議の声など、まるで聞いていないことは明白だった。
わかってはいる。
魅惑魔法は実は自分には、ほとんど効かないことは。
言われた通りに身体が動く、イコール、自分がシンにしてあげたいと思う心がある、のだ。
(だけど、だけど、こんな恥ずかしいのに……)
欲望に忠実な自分の身体が、たまに恨めしくなってくる。
そんなことを思いながら踊りを披露していると、シンが不意に手招きをして来た。
「リナ、こっちに来て、ちょっと手で胸を挟んで俺の前で屈め」
「えっ? あぁ、ちょっと私の身体ってばーー!」
裏切り者の上気した身体は、勝手にワインを手にした夫にしずしずと近づいゆく。
「キャアっ、何するの?」
何やらテキストを片手に傾けたワインを、いきなり胸の間に少しづつ流し込まれた。
「こうやって人肌で温めて、そのまま直接飲む…と、ふむふむ」
手で胸を掬った胸の谷間にできた即席胸カップに、ワインをそっと注がれていく。
(…って、なによ、これぇーーっ!)
「やあん、こんな! ねえ、これ本当にそのテキストに、普段の生活として書いてあるのぉ!?」
目を輝かせたまま夫はそのまま胸元に顔を寄せて、楽しそうに胸から直接ワインを飲みだした。
じゅるじゅる、じゅー。
(やあぁっ、恥ずかし過ぎるっ、こんなの!)
恥ずかしくて恥ずかして、顔から火が出そうだ。
胸元を抑える両手も、プルプルと震えてくる。
「美味い、最高だ!」
一方シンは、愉悦の顔でワインで濡れた口元を拭っている。
興奮を隠そうともせず、背中の漆黒の翼を、バサッと満足そうに羽ばたかせた。
(うわぁ、私ってば、何を見惚れて……)
その恐ろしく綺麗だが、ワイルド感あふれる姿に、身体がゾクゾクしてきた。
漆黒の髪の中からは見事なツノまでがちゃっかりと生えている。
この世界では異質であるこの姿を、リナは怖いと思ったことがない。
むしろシンの本質に近いであろうこの姿を見せられると、身体がどうしようもなく疼いてきてしまって困る。
リナが少しも怖がらない事を知ったシンは、二人きりの夜に興奮すると、時々、こうして本来の姿を垣間見せるようになった。
そんな夜は決まって、一度では解放されず、何度も激しく愛されて抱かれてしまうのが常である。
「リナ、やはり甘いな」
胸元にあったワインは、すべてをとっくに飲み干されてしまって、今は仄かな残り香を追う舌先に、胸を挟んでいる指先までヌルヌルとしゃぶられていた。
「あ…」
暖かい息が濡れた胸元にかかると、シンの紺碧の瞳がこちらを見上げてくる。
唆られるようなシン独特の香りが漂ってきた。
(あ、もう……)
夫の欲望を含んだキラリときらめく金色の光に、また、ゾクゾクッと身体が震えてきた。
ドクンドクンと胸の鼓動が早くなってくる。そんな胸の素肌に、ちゅっと口づけられると……
「あぁっ…ん…」
一瞬、肌に、ピリッと強い刺激が走り抜けていった。
「俺のものだ」
低い声が誇るように呟いている。
激しかった昨夜の痕がまだ色濃く残る肌には、きっとまた、この直情的な新しい痕が残るのだろう。
ドレスを着込んだときに見えない素肌には、すでに恥ずかしい数の噛み跡やシンのいう印とやらが、いたる所につけられている。
メフィの魔法がかけられていたのにもかかわらず、シンに愛された記憶が戻ったのは、肌に突然現れたこのキスマークのお陰であった。
夫にしか許さぬ肌であるなら、どんなに跡を残されようとも、その男らしい独占欲の証はただただ嬉しいだけだ。
「そうよ、すべてあなたのものよ、シン……」
シンに狂おしいほど求められている。
そう感じるこの瞬間を、酔ったように味わってしまう。
愛する想いが重なり、切なく浮かれてしまってその逞しい身体をギュウウと固く抱きしめかえした。
求められる心の喜びは身体にダイレクトに反映されて、夫を迎える為に、ヌルリと足の間が濡れてくる。
硬くなった身体を押しつけられると彼の欲望を直接感じて、だんだんと激しくなる息遣いにも甘さが含まれていった。
「ふ…ぁ…ぁん…っ」
肌に残るワインを、ペロペロと舐め取られてゆき、膝立ちが崩れそうな身体を逞しい腕が軽く持ち上げてくれた。こうなったらもう、衣装を着けていることなど意味をなさない。
(はぅ…んんっ)
生まれたままの姿になった途端に胸が、ヤワヤワと揉みしだかれている。
大きな手は指先がゆっくりとこねるように動いて、柔らかい膨らみを、存分に味わっているらしい。
熱い唇が尖った胸の蕾を、下から噛みつくように舐ってきた。
「んん…あ…や…んっ」
時々、甘噛みもまじる愛撫に、ますます胸の蕾が痛いほど突きでて、ジンジンと感じてくる。
「あぁ、シン、シン、もっと愛して……」
「よしよし、今夜も可愛がってやるから、覚悟しろ」
くるりと後ろから抱きこまれて胸を揉みしだかれながら、背中を熱い舌がなぞってゆく
こんな風に背中を甘やかすように愛されると、身体から力が抜けて、ふるふると快感で震えてくる。
「はぁ…ぁ…」
「ん~、相変わらず良い香りだ」
蕾を指できゅと摘まれると、きゅうんと身体が締まってしまう。
「ふぁぁん…」
「まだだ、もっと快くなれ」
低く唸るような美声が、耳の後ろから囁いてくる。
あっという間にベッドに運ばれて、重なってくる唇を口を開いて受け入れた。
貪るような甘く長い口づけを交わすと、またも胸の蕾を吸われて漆黒の髪を、気持ちいい、と淫らにかき乱した。
ジンジンする胸から、そっと顔を上げると、シンは低く囁いてきた。
「リナ、少しだけ、いいよな?」
「あ…」
「ん、堪らない香りだ」
グイ、と膝を大きく割られて、太ももに腕ががっしり巻きついた途端に、蜜口にシンの唇が吸い付いていた。
「あぁぁ……」
溢れる愛蜜をもったいないとばかりに、ペロペロとあまねく舐めとられる。
そうして周りまでも綺麗に舐めとったあと、蜜口に熱い舌をゆっくり差し込まれた。
「は…ぁ…ぁ……」
身体の奥から暖かい魔力が、敏感な腰の周りをくすぐるように巡って蜜口の方へと流れだす。
「や、ダメ、またくるっ」
「好きなだけイケ」
「ぁ…っ…っ…」
魔力と蜜が身体の中で混ざりあって、うねる波のような快感が身体を次々と襲ってくる。
身体が細かく震えてくると、タラタラと蜜が溢れ漏れるのにもかまわず、かき回されていた蜜口から舌を突如引き抜かれた。
次の瞬間にはふっくら膨らんで色づき疼いてたまらない花芽に、強く吸いつかれていた。
痛痒いような快感に眉を寄せてしまう。
「ダメ、ダメ、そんな…」
呼吸が浅くなりうわごとのように繰り返すが、もちろんシンは攻めるのをやめてはくれない。
反対に、じゅるじゅるると強く吸い込まれて、剥き出しになった花芽にむしゃぶりつかれてしまう。
「あっ…あぁ…あっ」
ぬるぬるとイジられて、たまに勢いで犬歯が軽く擦ってきて、まぶたの裏がチカチカしてきた。
強すぎる快感から逃れようと、無意識に身体をくねらせては強い腕に阻まれてしまう。
腰の奥に行き場のない熱い魔力がだんだん溜まってきている。
シンはわざとそれを吸わずに、溜めているのだ。
そうすると愛蜜と交わっていっそう熟成される、とかなんとか言っていたのを快楽で朦朧としてきた頭が思い出した。
(もう、もう……)
イクーーっと身体を震わせた途端、剥き出しの花芽を、カリっと甘噛みされて吸い上げられた。
ぴりりっと芯が通るような甘美な疼きが身体を駆け巡る。
「んんーーっ!」
感じたエクスタシーで頭が真っ白になった。
身体が、ビクンビクンと大きく震えて止まらない。
そんな中、シンは膨らんだ花芽から魔力を吸い取り続ける。
身体中を快楽の奔流が駆け巡って、息も継げない。
(ぁ…ぁ…や…あぁん…ダメ…もう…)
ちゅう、びっくん、じゅる、びっくん、ちゅううー、びっくん……
熱い流動が敏感な芯を通るたびに、身体が稲妻に打たれるような快感で跳ねてしまう。
蜜口から流れるように、コポコポと溢れ出る愛蜜が太ももを伝って、シーツに流れ出していた。
……つかの間、意識を失っていたらしい。
気がつくと、シンがまだ溢れ出す蜜を美味しそうにごくごくと喉を鳴らして、味わい飲み干していた。
「ハアハアはあ……」
(なにが、少しだけ、よーーっ!!)
朦朧と意識の中で夫に向かって頭は叫ぶのだが、激しい息遣いと弛緩した身体では、なにも出来ず激しい息遣いが喉から漏れるばかりだ。
(あぁ! ウソっ……)
「も…あーーっっ」
そんな敏感になった状態の身体に、灼熱の塊がゆっく挿し入れられる。
深く深く挿入ってくる
力が入らないはずの貪欲な身体は、それでも何だか物足りない気がして、無意識に、そっと腰を揺すっていた。グショグショに濡れて柔らかく蕩けた蜜口は、難なくシンを受け入れている。
「リナ……」
(シン、シン……)
愛する人に優しく名前を囁かれて、ますます心も蕩けてゆく。
先ほど脳裏に浮かんだ文句は、もうカケラさえ思い出せない。
代わりに、「もっと、きて…」と可愛らしい唇は囁きかえしていていた。
軽く腰を揺らされただけでも、甘い痺れが背中を走って全身に広がってゆく。
はじめはいたわるような、ゆっくりとした緩慢な動きだった。
けれども抜き差しで反応した膣中が擦られるたびにうねるように締め付けると、奥まで一気に貫いてきた。
「あっ…んんっ……」
身体の奥を突き上げ抉るように動かれると、ああ、とため息のような喘ぎ声がつい漏れてしまう。
甘い声に促されるように、逞しい腰が足をさらに押し開き、深く奥へと奥へと入ってきた。
膣が蕩けるように柔らかく熱い塊を包み込んでいる。
(シン……)
愛してる…切なく甘い気持ちは波状に増してゆき、腰の奥にキスされるたびに全身で屹立を締め付けてしまう。そんなリナの反応に、我慢できないとばかりに、大きな手で腰骨を掴まれた。
低く何かをつぶやいたシンは、勢いよく突き上げてきた。
「はっ」
「ぁ…~~っ」
ふわふわとした浮遊感で目の前が白くなる。
全身が目眩がするような快感に貫かれている。
寄せては引いていく無数の波に、魂ごとさらわれてしまいそうだった……
激しい動悸で息も絶え絶えに、大波にユラリユラリと揺らされて陶酔感の中を漂うことしかできない。
「あっ…あぁ…んっ~…」
「リナ…リナ…」
力強く際奥を突き上げられる度に、甘い浮遊感が波紋のように広がる。
身体の中心から熱い泉が湧き上がってくる。
じわりじわりと迫りくる、熱い流体が溢れでる感覚から逃れようと、知らず知らず膣内の夫を、きゅうんと絡めとり締めつけている。引き留めるような絡みつきに、シンががビクビクと蠢いてまた熱く大きくなった。ジュク、と足の間が滑って熱を持ってくる。
夫はますます奥へ深くへと、腰を突き入れてきた。
「くっ…リナ…」
耳元に口づけられながら名前を呼ばれると、幸せが溢れて心が、ふるふると震えている。
全身に甘美な痺れが稲妻のように走り抜け、声も出せずに、あぁぁ…とたまらずその快感を足先まで突っ張って受けとめていた。
ついに突き上げがとまって、グリっと腰が密着してきた。
一際、ズンと深く突き入れられると、目の奥で火花が散ってが真っ白になった。
「っ…」
「ああぁ~~ーーっ……」
(暖かい……)
身体の奥深い所が熱い飛沫で濡らされた。
瞼は閉じているのに、一瞬まばゆい閃光が広がる。
熱く濡れた感覚が、身体に喜びとなって広がってゆく。
まるで高みを極めた浮遊感から、突然真っ白な無重力の世界に放り出されたような……
ゆっくりと溶けるように身体の力が抜けてゆくのを感じる。
それでも、身体に強く刻まれた甘い余韻はひいていて、足の先まで痙攣したような、フワフワの幸福感に包まれていた。
同時に、愛しい人に深く愛された喜びが心にこみあがってきて、心地よい酩酊感をもたらしてくれる。
(愛してる、シン……)
薄れてゆく意識の中、リナ…と囁きかけてくるシンの低い声に、口元は綻んでいた。
気だるくて甘いこの独特の感覚を味わっていると、暖かい息が胸の印あたりにくすぐったく吹きかかる。熱い唇が素肌を彷徨っている。
恍惚感に酔って心地よい快楽の波に身を任せていると、低い声がそっと何か囁いてきたような気がした。
「リナ、愛してるよ、俺の天使」
月明かりが差し込む暗い二人きりの部屋の中で、シンに激しく愛されその精を注がれた身体が、ざわざわと反応している。
けれども今も目を閉じているその白い裸身は、まだまだ心地よい陶酔に浸り続けていた。
浅い息を繰り返し横たわるその白い裸身の頭部には、薄い光の輪が浮き出ている。その上優美な線を描いた綺麗な背中はこの暗闇の中でさえも、仄かに真珠のように白く光っていた。
ちょうど肩甲骨のあたりだ。
だが、強すぎる快感の余韻で朦朧としているリナ自身は、身体の異変にはもちろん気づいていない。
そんな姿を愛しそうに指先で撫であげ見下ろす漆黒の姿は、こちらも欲情と興奮で紺碧の瞳が金色に輝いている。
リナのそんな気高い裸身を愛でながら、現れた背中の漆黒の翼を一瞬いっぱいにまで広げると、満足そうに、バサッと閉じてゆくのだった。
完
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こんばんは、
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良かったです。
設定がイマイチ?
アホな私には、うん?でしたので、、、
また、読み返したいと思います。
\(//∇//)\
本当に良かったでーす。
╰(*´︶`*)╯♡
素敵な感想をいつもありがとうございます。
読み返して頂けるのも嬉しいです。
ジャンルの違う作品まで読んで頂けるのはほんと感激です。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
感想ありがとうございます。
楽しんでいただけたようで、とても嬉しいです。
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