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テンはおかんむり、です
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心臓がさっきから、バックバクと高鳴っている。
紺碧の瞳は笑いかけてくれるのに、目の前の逞しい身体を、うわあ、シンの身体だ…とものすごく意識してしまって、気持ちが舞い上がって恥ずかしくってまともに見れない……
それはもちろん、生まれて初めて男性の裸を間近で見る恥ずかしさもあるのだけれど、それ以上に……
(この手でこの人に触れて、感じてみたい……)
彼の温もり、逞しさ、そして優しさすべてを身体で感じたい、と思ってしまう欲望で目尻まで真っ赤に染まった。
そんな熱い気持ちが溢れてくる中でも、本当にこれでいいの…?と、小さな小さな理性の呼びかけが頭をかすめてゆく。いつでも自分に付いて回るこの客観的な理性は、王女の立場では当然だとは思う。
だがそんな声は即刻、彼のすべてを知りたい…そんな秘めた想いの大きな流れに、ゆるりと押し流されて消え去った。
こんな風に、その身体に触れたい、それに私にも触って欲しい、と思える人は初めてだった。
人の気持ちとは本当に不思議だ。王女だから、と言う自覚は常にあるのに、シンの前だといつもただの乙女になってしまう。
その上さらに、普段の自分なら決して軽く扱わない事柄が、些細なことに思えてしまうのだから困ったものだ。
(ねえ、あなたはどこから来たの? 先ほどサインした紙は何だったの? そして一体何者なの?)
愛おしそうに見つめてきて身体を抱き寄せてくれるこの黒髪の男は、未だに謎が多い人だ。
…なのにそんな疑問が湧きあがる度に、だけどそれ以上にシンは信じられるわ、と強く感じる。
それ以外の諸事情は、その信頼感に比べれば取るに足らない事であった。
(シンを信じる自分を信じる、何が起ころうと後悔しないわ…)
そんな気持ちが強すぎて、「どんな答えでも、受け入れるわ」と思えてしまう。
王女という責任ある立場の自分と、幸せを求める一人の女性、どちらの自分もこの人になら安心して委ねられる。こんな風に思える人と出会えるとは思ってもいなかった……
愛しい人は優しく大丈夫だと笑って、その長い指で壊れ物を扱うように頬と唇に、そうっと触れてくる。
(あぁ、やっぱりこの人だ、きっとすべて上手くゆく……)
その指先で素肌を柔らかく撫でられると、心が強くそう感じた。
蒼白い月光に照らされたその男らしい顔はまさに氷の美貌で、艶のある黒髪、紺碧の瞳も冷たい冷気を連想させるものがある。
それでいてシンの割とざっくばらんな性格を知っている今は、そのアンバランスさが妙に魅力的、でもあった。
そう、シンは見た目は割と冷めた外見をしているのに、中身はホンワカあったかい人、なのだ。
そしていざとなればとても頼りになり、包容力もたっぷりで、優しく逞しい男性だ。
天狼族のフェンもその主人のシンも、割と食いしん坊さんで、そんなところも今ではシンの微笑ましい一面だ、とさえ思えるようになっていた。
それにだ、普段の戦闘服姿を見ていても逞しい肩や胸板、長い腕から繰り出される動作はとてもしなやかで、その身体つきは優美とさえいえるものだった。その優雅な腕で魔獣や大の男を簡単に投げ飛ばしてしまうとは、信じられないほどだ。
この人には見慣れた腕の立つ魔法騎士達や隆々とした冒険者達にはない、気品さえ感じられる。
だが、この上背もある優美な姿は、服を脱げばしなやかで均整の取れた筋肉が十分付いていて、その見かけより何倍も力強い彼の力量を、チラリと伺わせるものがあった。
ハリのある肌に思わず目を奪われて、惹かれるように触れたい、とそうっと手を伸ばした。
逞しい肩、上腕と思うまま感じるままに、見事に引き締まった筋肉をゆっくり撫で上げて、その感触を指先で味わっては、ウットリしてしまう。
愛しい人の肌に直接触れている、そう意識すると心は、ほわあと温まり陶然とした気分になってくる。
「気に入ったか?」
「凄い…弾力があってしなやかなのに、なんて逞しいの? 私と、全然違う…」
「そりゃまあ、俺は男だからな。俺は、リナのスベスベで陶器みたいな肌触りが大好きだぞ。柔らかくて暖かいしな」
抗わないのが分かっているからなのか、シンは頬から首筋、そして滑らかな鎖骨へと遠慮なく長い指を滑らして胸の丸みを、そうっとなぞってくる。
触れ合う肌が、フワっと泡立つような感覚が、気持ち良いようなくすぐったいような……
その大きな手で嫋やかな胸の丸みを包みこまれ、ゆっくりふんわり揉まれては、鎖骨を味わうように舐められた。
「ん…ぁん…」
「リナは、どこもかしこも柔らかくて甘い」
低い美声でそんな感想を言われると、それまでにも増して鼓動が跳ね上がってしまった。
つられるように思わず大きな背中に手を回して、そのしっとりした感触を指先で感じてみる。
(シンの肌も、しなやかで張りがある……)
そのまま逞しい肩を指で掴んで、ペロ、と目の前にあったそれを舌で味わってみる。
「ん…」
(暖かくて不思議な舌触りだわ、けっこう好きかも……)
思ったよりクセになりそうなその感触に、もうちょっと、とまた舌を出して、ペロンと舐めあげた。
「くすぐったいな、それ」
そう言った唇がそのまま下がってきて、反対に顔を上げた唇が捕らえられると、お互いの唇を舐めあうことに夢中になった。
誘うように差し出された舌をこちらも舌を出して熱く絡めあって吸い上げると、シンも応えるように、フッと笑って軽く甘噛みしてくる。
少し緊張している背中が、迷いのない大きな手に、やんわりと撫でさすられるとそのままスムーズに押し倒されてしまった。身体がベッドの上で、ホワンと弾むと、続いて軋む音が微かに聞こえた。
キスをしたまま、そうっと目を見開くと、目を開いたままの紺碧の瞳と出会う。
深い夜空の様な瞳孔の中で、虹彩が星のようにしばし金色に光ったように見えて、綺麗、と思わず見惚れた。
(シンの瞳って、まるで星を散りばめた夜空を映し出したようだわ……)
そこに映った小さな小宇宙に魅入られたように、身体の魔力が久し振りに、ザワザワとざわめている。
そうっと唇を離したシンは、そのまま火照った頬に唇を寄せてきた。
薔薇色に染まった肌に熱い息を感じると、柔らかい肌を優しくじゃれるように齧られてしまう。
ふふ、くすぐったい、と笑ったら、唇はすぐに離れて今度は胸の膨らみにキスが落とされた。
あ…と小さく声をあげた時には、シンの唇が胸のピンク色の頂きに、柔らかく、ちゅうと吸い付いていた。
一瞬、身体がビクウ、と反射的に縮まったが、それはすぐにゾクゾクする悦楽に取って代わる。身体だけでなく恋心を含んだ感情までが過熱してきて、あん、と甘い声が喉からつい漏れだした。
そして以前に胸から魔力を吸い取られた時とは違い、シンはいつまでも胸から離れなかった。
濡れた舌で、ジンジン疼く頂きを味見をするようにペロリと舐め上げられ、硬くなったピンクの蕾を口内で転がされ嬲られ、強弱をつけて吸い込まれてゆく。
その心地好い感覚につい好奇心にかられて、その様子を顎を引いて、ちら、と眺めると、シンの執着に心から満足してまった。
(ふふ…これは必要に応じて、じゃなくて、シンが私にしたい振る舞いなのね……)
これまでも強引に触れられて、本気で嫌だ、と思ったことはない。
だけどもこの時程、喜びが不意に、じわんと湧き上がってきて、ふわぁ嬉しい~!と心が満たされ有頂天になったこともなかった。
気がつくともう一つの胸も、長い指に尖ったピンク色の頂きを摘ままれて、弄られている。
左右同時に、じわじわと広がる快感に逆らえず、シンの頭をやんわり抱え込むと、感じるまま甘い艶めかしい声が喉から漏れはじめた。
「は…んん…ぁ…」
魔力は吸い取られていないのに、身体が熱くて堪らない……
ジンジン疼く頂きに強い刺激を与えられる度に、そこは、もっと、もっと敏感になってくる。
「や…ダメ…そんな…ばっかり…」
何度も何度もピンクの蕾を吸い上げられ、ついには熱い舌先を、チョン、と当てられるだけで、ビクン、と疼くぐらい胸が敏感になってしまった。
(これ以上弄られたら…耐えられな…い……)
追い詰められた焦燥感に駆られて、絶えだえの息をしながら、ジンジン疼く胸をとうとう両手で覆って隠してしまった。足の間はなんだか温かく湿り気を帯びて、ヌルヌルしてくるし、その上、腰の奥から熱が湧き上がってくるような感覚を感じてしまって……
(イヤン、何なのこれ?)
なのに大きな手で即座に手首を捕まれると、やんわりとだがあっさり胸から引き離されてしまった。
顔の横に持ってこられた手首が、シーツに容赦なく押し付けられる。
「ダメだ、一回イっておけ」
低い美声が告げると紺碧の瞳を悪戯っぽく煌めかせ、またもや超敏感になっているピンクの蕾を、見せつけるようにゆっくり口に含んでいった。
「ああっっ…ぁっ…ぁっ…」
下腹部にシンが伸し掛かっているので、上半身だけが勝手に捩れてヨガリ声が漏れてしまう。
何度も左右の胸を交互に可愛がられて、連続して与えられる快感に、内股がふるふると震えてきた。
(や…もう…強引、なん…あぁっ…)
そうしていつとなく胸に盛大に、カプ、と齧りつかれ、敏感なピンク色をジュウ、と痛いほど大きく吸い上げられると、あ…もう、ダメ……襲いかかってくる快感に逆らえない。
「いやぁぁ……」
知らずに上げた小さな叫びと共に、身体の奥から熱い愛蜜が、じわりじわりと湧き上がってくる。それは慌ててお腹に力を入れても、なぜか止まってくれない。
身体は甘く痺れて、勢い余って背中を大きく仰け反らすと、びくんびくんと痙攣がはしっていく。
溢れた熱い蜜が、トローリと太ももや周辺を濡らしていった……
「やあ、こんなっーー!」
「しー、リナ、落ち着け。これはごく普通の事だ。リナの身体が感じた証拠だ」
(えっ?)
恥ずかしい、と捩りかけた身体をシンが宥めるように硬く抱きしめてくれて、頭や肩が優しくさすられる。
「ほら、大丈夫だ」
大きな手が、きっちり閉じようとする太ももをやんわりと開かせて、トロリとした愛液をその指にすくい取った。そのまま濡れた指から無味無臭な透明な液を、舌を伸ばして、ペロリと舐めあげる。
(や! あ、でも確かに匂いがしない……?)
でもでも、そんなとこから溢れた愛蜜を目の前で、「甘いな」と含み笑いをしながら舐められると、やっぱり恥ずかしいーっ!と、頬が真っ赤に染まっていく。
キラキラした瞳でそんな様子を見ていたシンは、それなら、と手を掴んできた。
そうしてなるべく目を泳がせて注視しないようにしていた、その昂ぶりへと掴んだ手を徐々に導いていく。
(ひゃあ、そんな…)
シンの意図を察っして、顔はますます燃えるように赤くなる。
恥ずかしいとは思うものの、やはり好奇心と、触って見たい、という欲情した誘惑に勝てない。
覚悟を決めたように逆らわず、誘われるまま、そおっと指の先端を伸ばすと案外滑らかな先っぽを、ピトと触ってみた。
「ほら、俺もリナと同じ状態だろう?」
「う、うん…」
思ったよりずっと熱いシンに手が触れると、それは見る間に大きく硬く成長していく。
そして触り心地の良いツルッとした先っぽの方から、プツリと、と透明な雫が出てきた。
「凄い…熱くて硬くて…」
大きい…と思わず小さく呟いてしまった。
時々、息づくようにビクンと蠢くそれは奇妙な形をしているのに、おっかなびっくりさわさわっと触れてみるたび、シンの息が荒くなるのを感じる。
あ、シンが感じてくれてる…そう思うと、手の中にあるそれも無性に愛しく思えてしまった。
「嫌じゃなければ、そのまま握ってくれるか?」
「え? わ、わかったわ」
恐る恐るやんわり握ると、「もっと強くていい」とシンは自分の手を上から重ねてきて、一緒にギュウと握りこんだ。
(きゃあっ…え? 大丈夫なのかしら、こんなに強く握って)
小さい頃からの護身術で急所を蹴り上げると相手が動けなくなる、と教えられてきた身としては、そこは男性にとってとてもデリケートな場所だということがなんとなく分かる。
「あの、こんなに強く握って、その、大丈夫なの?」
「今ぐらいまでならな、噛んだり、握り潰すのは勘弁してくれ」
シンは笑って髪にそっとキスをしてくる。
(ふうむ…それはもちろん貴方次第よ?)
「怒らせるような事をしなければ、そんな真似はしないわよ」
「怖いなあ、頼むから手加減してくれよ」
そういって、ちょっと心配そうに見つめてくる。
その顔がなんとも普段の凛々しい顔とも違って、思わず、うわあ、可愛い、と思ってしまった。
(ふふ、シンってこんな顔もするんだ……)
そう思った途端、ハッと気付いた。
(これはもしかして、今、主導権を握っているのは私よね?)
一緒に握り込んだ手の動きが早くなると、耐えるような顔をしてきたシンに、やっぱり、と確信した。
「これって、気持ちいいの?」
「すごくいいな」
「…他にはどうやったら、気持ちいい?」
「そうだな、口に含んで舐めてもらうとか? 要するにこいつが物凄く敏感なんだ、男は」
何となくだけど分かった。
だから、蹴り上げたり、握りつぶしたら動けないのか……
口調はいつもと変わりないが、どこか違うシンの受け答えに、内心やっぱりとニンマリした。
(ようし、なら早速…)
突然動きを止めると、シンは不思議そうに見下ろしてくる。
「どうした、嫌になったか?」
「違うの、この体勢じゃ手が上手く動かせなくて」
どうすればもっと? と考えて、逞しく覆いかぶさっている身体を、そうっと押し戻すと上半身を起こしてみる。
シンは面白そうに一緒にベッドに起き上がって見つめてくる。
そのまま、また彼を握って手を動かし始めると愉悦の表情で紺碧の瞳をゆっくり閉じた。どうやら好きにさせる事にしたらしい。
(えっと、後は……)
リズムにのってきた手の動きをまた止めたリナが、顔を近づけている気配を感じたのか、シンは閉じた目を見開いてジッと見つめてきた。
いやん、ちょっと恥ずかしい、と睫毛を伏せる。
「ん…」
手に持った不思議な形の熱い塊がビクンと脈打つと、なんとも言えない愛おしさがこみ上げてくる。衝動に駆られて試しに舌で、ペロンと舐めてみた。
(ん…少し、苦さがあるかな?)
そのまま頭を動かしてスベスベした先端と下の方まで舌を出して舐めてみて、大丈夫、と大きく口を開いた。
逞しいシンの味が舌に広がる。
んん…と喉をならして、口にゆっくり、飲み込むように含んでいく。
「リナ…」
愛しそうに名前を呼ばれると、ますますシンにも感じてもらいたい、と思ってしまう。
気持ち良さそうな溜息が、ふう~と頭上で聞こえ、口に含んだシンがいよいよ、グンッと大きく脈打って質量が増した。
大きすぎてこれ以上は、無理、でも、もう少しだけ…そう思って味わっていると、シンが突然動いた。
そのまま腰をゆっくり動かして含んだ口の中に出し入れをはじめる。
「最高だ、リナ…」
「ふう…んん」
さっきの激しい手の動きと違って、それは口内をゆったり堪能するような緩慢な動きだ。
「リナ、そのまま吸い上げるようにしてくれ」
低い美声が少し上擦っている。
(あの、常に落ち着いた態度のシンが、私の拙い愛撫で間違いなく感じてくれている!)
もう、主導権がどうの、という意識は頭になかった。
思いきって勇気を出してよかった、とお互いが気持ちよくなれる事が分かった結果に、とっても満足だ。
そしてリクエスト通りに手を添えて吸い上げると、シンが身体を引き抜こうと動いた。
「出る、離してくれ」
(だめ、さっきシンは離してくれなかった)
自分の感じた快感と同じような感覚なのだろう、そう思えたので、そのまま、いや、と頭を振って更に強く舌を絡みつけて思い切り吸い上げる。
「っ…」
一気に熱い奔流が口一杯に広がった。
「ん…ごほっ…」
「リナ、大丈夫か? ほら、出せ、苦しいだろう?」
粘つく液体が口から溢れて、思わずむせてしまった。
けれども一瞬苦い、と思ったそれは、すぐに舌触りもとろけるような熟成したワインの味になる。
うっわあ、美味しい……と喉に絡まるそれは、飲み込んでしまった方が簡単な気がして、ゴックンと大きく喉を鳴らした。
「リナ…こら、そんなに煽るな」
シンの言ったことが理解できなくて、え?と聞き返そうとする。
だが、途端に頭に痺れるような酩酊感があっという間に広がり、身体中がポカポカと暖かくなってきた。
ホンワカした気分に、たちまち飲み込まれてゆく。
そんな異変がリナの身体に訪れていることに、シンはまだ気づいていない。
「まったく、今のは凄く、きた」と掠れ声がすると同時に、また身体が押し倒されてしまっていた。
「シンも~、気持ちよかった?」
まだ喉が本調子でない自分の声は、まるで喘ぎ声のようだ。
「ああ、勿論だ。悪いがこれで、一生放してやれなくなった」
はてな?という顔をしたリナに、シンはニヤリと笑って低い美声で告げた。
「今リナがした行為は、俺たちの一族では番同士しか、しない」
長い手で抱き寄せられ、「こんなに早く受け入れてくれるとはな」と囁くシンの嬉しそうな美声が頭に響き、気がつけば顔中に優しいキスが降っていた。
(番…つがい…つ、が、い、って確か…伴侶ってことだったかしらん~?)
頭の一部がシンが言った事を半分ぐらいは理解したものの、身体がホンワカ、頭もボーっとしてきてしまって、いい気持ち~、と程よく酔ったような気分で、にっこりと笑う。呂律の回らない舌が勝手に動いている。
「そうなんだ~、シンっ~優しいし強いし大好き~!」
「そうか! じゃあ、俺と番いになるか?」
「魅惑魔法とか平気で使ってくるし~、狼だけど~」
「おい、リナ? どうしたんだ?」
力なくヘロヘロになった身体を押し付けてきて首に抱きついて離れないリナを、シンもさすがに様子がおかしい?と思ったらしい。
「う~ん、もっと抱いて~」
舌足らずの言葉でしなだれかかってくる身体に、シンは困惑顔だ。
「リナ? なんだ? どうして、こんな酔っ払ったような…まさか……?」
「し~んっ、モっとよこせ~」
シンをギュっと抱きしめて熱い息を吐くリナを、ペリッと身体から引き剥がして目を見開く。
「嘘だろ、リナ…君はもしかして…?」
「シ…ン…フニャ…」
「待て待て待て、こら、リナ」
トロンとした瞳でウットリとシンを見上げ、次の瞬間には、「お願い、我慢できないの」とウルウルと潤む瞳で見つめて、大胆にも手をまだ硬いものに伸ばしてくる。
その手首をやんわり握って、シンは戸惑いの溜息をついた。
そしてゆっくり、心を落ち着けるようにうつむいて、口の中でブツブツボヤきはじめた。
「参ったな、こんな状態のリナを抱くのは、俺の意に反するし…」
「シ~ン、もっと触って~」
「…かと言って、このままじゃあ生殺しだ」
シンの大きな手を掴んで胸に導くと、膨らみにわざと当ててくるリナを困った顔が見つめている。
潤んだブルーグレイの瞳は、長い睫毛を半ば伏せて「好きにして…」と誘うように流し目を送った。
そのままリナは大胆にも自分の手をシンの手に重ねて、膨らみを捏ねるように手を動かしはじめた。
「……やっぱり、味見ぐらいはさせてもらおう」
唸り声を上げると、シンは胸をしゃぶるように貪り始めた。
「はあ…ん…ぁ…ぁっ…」
ピンクの頂きが交互に口に含まれると、身体に甘美な痺れが走りぬける。
リナは恍惚状態となって、あぁっと喜悦のヨガリ声を小さくあげ始めた。
やがてシンの身体が下腹部へ移動していき、柔らかい太ももを優しく大きく広げられた。
酔っていなければ、恥ずかしい、と身悶えしたであろうリナは、「ふ…ん」と甘く鼻声を漏らしただけで、シンの為により一層大胆に足を広げている。
「…さすがに腰にくるな、俺もギリギリだ、リナ…」
「あぁっ…ぁ…」
濡れた中心を手で軽くさすっただけで、陶然となりいやらしい声が喉から漏れたのをみて、シンは、「エロいな、まったく、酔っていなければ…」と重い溜息をついて顔を近づけた。
(ぁーーっ…)
フワフワ状態の頭の中で刹那鋭い嬌声が上がった。
シンの頭が動く度、クチュ、チュル、と濡れた音がそこから聞こえてくる。
そのリズム感のある快感はどんどん身体中に広がっていき、急速に増していった……
意識が朦朧としてきて、その妖しい意識も途切れ途切れの中、シンの低い声が耳に残る。
「信じられないほど甘いな、もう少しだけ」
濡れた口元を手の甲で拭ったシンは、誘われるようにまた顔を屈めた。
温かい蜜が身体の奥から絶え間なく湧きでている。溢れた蜜と疼く中心を、またもや何か温かくて柔らかいものが、ピチャピチャ、クチュウと弄ぐっている。
(…ぁん…もう…ダメーーっ……)
連続して襲ってくる快感に、声も上げられない。ただひたすら身を任せる忘我状態になってしまった。
酩酊した身体をうまく動かせなくて、びく、びくと小刻みに震えていたが、やがて背筋を大きく震わすと、リナの意識が、フッと途切れた。
「…リナっ? シンーーっ! あなた達は一体ーーーーーーっっ!?」
(え? テン? …もう朝なの?)
ボンヤリする頭で目を開けば、豪華な天井が目に入ってきた。
少し首を動かすと、窓の外は青白い空が夜明けの綺麗な薄いピンクに染まっている。
身体を抱きしめてくれていた暖かい人肌が、瞬く間に薄い布で覆われたのをリナは肌で感じた。
(なんか、空気がひんやりしてる?)
ボーとしながらもテンの怒鳴り声でなぜか、あ、不味い、という思いが頭を遮ぎった。
大急ぎで魔道具服を呼び出し、全裸らしい自分の身体にドレスを身につける。
ホッとしたところに、テンの雷が、どどーんと落ちてきた。
「一体どう言う事ですかーーっっ! ほんっとあなた達の一族ときたらっ、ちょっと顔がいいのをいいことにっ、皆揃いも揃ってその手が早い事と言ったらーーっ!!」
テンは真っ赤になって怒鳴りながら、両手をシンの方にかざした。
「一度あなた達のその魂、完璧に浄化させてその煩悩だらけの性質を取り払って差し上げましょうっ!」
「いや、待て、落ち着け!」
(うわあ、これって、信じられないくらい濃厚な聖属性魔法だわ!)
「なあにちょっと、一回ぐらい輪廻しても、あなた達なら戻ってきますって」と目が据わったテンは諭すように告げると、ゆっくり徐々に魔法の威力を上げだした。
肌で感じる上級魔法に、シンは珍しく焦っている。
「待てっっ、誤解だっ! リナと俺は合意だ! それにヤってない、挿入てないっ!」
「何を今更、そんな格好で言い訳なぞ、みっともないですよっ!」
「本当だ!」
「あの、テン、ごめんなさい、私もよく覚えてないんだけど、合意なのは確かよ」
(どうしてこんなに怒っているの? シンのことは結構気に入った様子だったのに?)
困惑しながらも事実を述べてみる。
沸騰した頭にリナの言葉が届いたのか、目を見開いたテンはちょっと戸惑った様子だ。
「……だとしても、手を出そうとしたことは明らかですっ、可愛いリナをあなた方の毒牙にかけてなるものですかっ、この節操なしーーっ!」
一回引っ込めた魔法陣が更にパワーアップして空中に門の形が形成されてくる。
「違うっ! 誤解だと言ってるだろう、同意済みだ。ほら、これをみろ」
昨夜リナが血判を押した紙がいきなり空中に、ポンと、と光り輝いて現れる。
「なーーっ! シ、ンーっ、貴方ってばまさか、何も知らないリナと等価交換の契約を交わしたんですかっ? だからあなた達一族は、未だに噂のネタに…!」
「違うと言ってるだろう、よく見ろ、契約書ではない、誓約書だっ!」
「は?……誓約書?」
シンは落ち着いてはいるが、口調は必死だ。
ちょっと怯んだテンは、空中に現れた紙を恐る恐るといった様子で読み進んだ。
最後まで目を通したテンは、今度は驚いた様子で目を見開いている。
「この誓約書の内容を、リナは?」
「言ってない、フェアじゃないからな」
「…私が言うのも何ですが、よくもまあこのリナに、契りも交わさず内容も知らせず、血判を押す、などという無謀な真似を承知させましたね」
リナは見た目は一見清楚で慎ましい姫だが、嫌なことには絶対頷かない頑固な性格を知っているテンは、呆れた様子だ。
嫌がっていれば芯の強い本質を発揮して、この部屋が荒れるどころか、部屋が真っ二つに割れていてもおかしくない、くらいの実力はある。
「もちろんわかっているだろうが魅惑魔法効果でもないぞ」
テンは綺麗に片付いた豪華な部屋を見回した。
ベッドのシーツが昨夜の二人の情熱の激しさを語るようにやたらと乱れまくっている以外は、家具もランプも壊れていない。
ふむ、とちょっと落ち着いた様子で、テンはずいと向き直ると、今度はこちらに矛先を向けて来た。
腰に両手をついて、お小言モードに突入だ。
「リナ! サインをする時には、必ず内容を確認してから、と口酸っぱく私が言ったはずですが?」
「だって、これにサインをすれば、シンとずっと一緒に居られる、っていうから」
「…リナはシンとずっと一緒に居たいのですか?」
「ええ、シンは信用できる人柄の人だし、腕っ節も魔法もすごいし、頼りになるし…」
モジっとしながら上目遣いにテンを見て、それでもきっぱり言い切った。
ちらりとシンの方を盗み見ては顔を赤らめるリナをみて、テンは大きく諦めの溜息をついた。
「いや、まあ確かに、新しい血を王家に取り込むのは、良い事だとは思いましたが…」
「まさかの展開です…」と暫くは何かを考えていたテン。
やがてシンに向き直ると、確認するように疑問をぶつける。
「あなたがたの方では、これは受け入れられるのですか?」
「誓約書での誓いは絶対だ。四角四面のお役所堅気だからな」
シンは大きく頷き言葉を続けた。
「特に当今出生率は落ちるばかりだし、どうにも若い者が結婚しにくい職場だ、と上も頭を痛めている」
「どこも事情は、変わりませんねえ」
テンは同意の深い溜息をつくと、「まあ、それならいいでしょう」とシンに大きく頷いた。
どうやら、平和的合意に至ったらしい。部屋の中でやたら眩しく光り輝いていた門がいつの間にか消えている。
「分かりました。意外ではありますがこれに関しては、リナと貴方の間で交わされたもの、私の関与するところではありません」
「じゃあ」
「ですが、あなた達一族は実力はともかく、女たらしで、身持ちが悪い、と悪評なのもわかっていますよね?」
「あ~、それに関しては、まあ一部の者が該当するが、俺たち全部を一括りにされては困るぞ」
「ふむ、確かに貴方からはそんな印象を受けなかったからこそ、リナの側においても、と安心していたのですが」
「だから、誓約書を見せたんだろう、貴女はきっとあの件で、いい印象を持っていない、と思ったからなあ」
「なっ! それとこれとでは話は別です。リナが嫌がらない限り、お好きにどうぞ」
「その寛大な心に、感謝する」
「…さあ、二人とも着替えて、サッサと身支度をするのです。もう直ぐ、朝食の時間のはずです」
(…なんで、こんな朝早く? と思ったら、朝食を食べに帰ってきたのね……)
朝食にふさわしいドレスに素早く衣装を替えながら、なんとなくソワソワしているテンを、チラリと盗み見してみる。
昨夜の夕食も、美味しい、とシンと同じように目を輝かせ、幸せそうに食べていたテンの姿を思い出し、妙に納得したリナだった。
紺碧の瞳は笑いかけてくれるのに、目の前の逞しい身体を、うわあ、シンの身体だ…とものすごく意識してしまって、気持ちが舞い上がって恥ずかしくってまともに見れない……
それはもちろん、生まれて初めて男性の裸を間近で見る恥ずかしさもあるのだけれど、それ以上に……
(この手でこの人に触れて、感じてみたい……)
彼の温もり、逞しさ、そして優しさすべてを身体で感じたい、と思ってしまう欲望で目尻まで真っ赤に染まった。
そんな熱い気持ちが溢れてくる中でも、本当にこれでいいの…?と、小さな小さな理性の呼びかけが頭をかすめてゆく。いつでも自分に付いて回るこの客観的な理性は、王女の立場では当然だとは思う。
だがそんな声は即刻、彼のすべてを知りたい…そんな秘めた想いの大きな流れに、ゆるりと押し流されて消え去った。
こんな風に、その身体に触れたい、それに私にも触って欲しい、と思える人は初めてだった。
人の気持ちとは本当に不思議だ。王女だから、と言う自覚は常にあるのに、シンの前だといつもただの乙女になってしまう。
その上さらに、普段の自分なら決して軽く扱わない事柄が、些細なことに思えてしまうのだから困ったものだ。
(ねえ、あなたはどこから来たの? 先ほどサインした紙は何だったの? そして一体何者なの?)
愛おしそうに見つめてきて身体を抱き寄せてくれるこの黒髪の男は、未だに謎が多い人だ。
…なのにそんな疑問が湧きあがる度に、だけどそれ以上にシンは信じられるわ、と強く感じる。
それ以外の諸事情は、その信頼感に比べれば取るに足らない事であった。
(シンを信じる自分を信じる、何が起ころうと後悔しないわ…)
そんな気持ちが強すぎて、「どんな答えでも、受け入れるわ」と思えてしまう。
王女という責任ある立場の自分と、幸せを求める一人の女性、どちらの自分もこの人になら安心して委ねられる。こんな風に思える人と出会えるとは思ってもいなかった……
愛しい人は優しく大丈夫だと笑って、その長い指で壊れ物を扱うように頬と唇に、そうっと触れてくる。
(あぁ、やっぱりこの人だ、きっとすべて上手くゆく……)
その指先で素肌を柔らかく撫でられると、心が強くそう感じた。
蒼白い月光に照らされたその男らしい顔はまさに氷の美貌で、艶のある黒髪、紺碧の瞳も冷たい冷気を連想させるものがある。
それでいてシンの割とざっくばらんな性格を知っている今は、そのアンバランスさが妙に魅力的、でもあった。
そう、シンは見た目は割と冷めた外見をしているのに、中身はホンワカあったかい人、なのだ。
そしていざとなればとても頼りになり、包容力もたっぷりで、優しく逞しい男性だ。
天狼族のフェンもその主人のシンも、割と食いしん坊さんで、そんなところも今ではシンの微笑ましい一面だ、とさえ思えるようになっていた。
それにだ、普段の戦闘服姿を見ていても逞しい肩や胸板、長い腕から繰り出される動作はとてもしなやかで、その身体つきは優美とさえいえるものだった。その優雅な腕で魔獣や大の男を簡単に投げ飛ばしてしまうとは、信じられないほどだ。
この人には見慣れた腕の立つ魔法騎士達や隆々とした冒険者達にはない、気品さえ感じられる。
だが、この上背もある優美な姿は、服を脱げばしなやかで均整の取れた筋肉が十分付いていて、その見かけより何倍も力強い彼の力量を、チラリと伺わせるものがあった。
ハリのある肌に思わず目を奪われて、惹かれるように触れたい、とそうっと手を伸ばした。
逞しい肩、上腕と思うまま感じるままに、見事に引き締まった筋肉をゆっくり撫で上げて、その感触を指先で味わっては、ウットリしてしまう。
愛しい人の肌に直接触れている、そう意識すると心は、ほわあと温まり陶然とした気分になってくる。
「気に入ったか?」
「凄い…弾力があってしなやかなのに、なんて逞しいの? 私と、全然違う…」
「そりゃまあ、俺は男だからな。俺は、リナのスベスベで陶器みたいな肌触りが大好きだぞ。柔らかくて暖かいしな」
抗わないのが分かっているからなのか、シンは頬から首筋、そして滑らかな鎖骨へと遠慮なく長い指を滑らして胸の丸みを、そうっとなぞってくる。
触れ合う肌が、フワっと泡立つような感覚が、気持ち良いようなくすぐったいような……
その大きな手で嫋やかな胸の丸みを包みこまれ、ゆっくりふんわり揉まれては、鎖骨を味わうように舐められた。
「ん…ぁん…」
「リナは、どこもかしこも柔らかくて甘い」
低い美声でそんな感想を言われると、それまでにも増して鼓動が跳ね上がってしまった。
つられるように思わず大きな背中に手を回して、そのしっとりした感触を指先で感じてみる。
(シンの肌も、しなやかで張りがある……)
そのまま逞しい肩を指で掴んで、ペロ、と目の前にあったそれを舌で味わってみる。
「ん…」
(暖かくて不思議な舌触りだわ、けっこう好きかも……)
思ったよりクセになりそうなその感触に、もうちょっと、とまた舌を出して、ペロンと舐めあげた。
「くすぐったいな、それ」
そう言った唇がそのまま下がってきて、反対に顔を上げた唇が捕らえられると、お互いの唇を舐めあうことに夢中になった。
誘うように差し出された舌をこちらも舌を出して熱く絡めあって吸い上げると、シンも応えるように、フッと笑って軽く甘噛みしてくる。
少し緊張している背中が、迷いのない大きな手に、やんわりと撫でさすられるとそのままスムーズに押し倒されてしまった。身体がベッドの上で、ホワンと弾むと、続いて軋む音が微かに聞こえた。
キスをしたまま、そうっと目を見開くと、目を開いたままの紺碧の瞳と出会う。
深い夜空の様な瞳孔の中で、虹彩が星のようにしばし金色に光ったように見えて、綺麗、と思わず見惚れた。
(シンの瞳って、まるで星を散りばめた夜空を映し出したようだわ……)
そこに映った小さな小宇宙に魅入られたように、身体の魔力が久し振りに、ザワザワとざわめている。
そうっと唇を離したシンは、そのまま火照った頬に唇を寄せてきた。
薔薇色に染まった肌に熱い息を感じると、柔らかい肌を優しくじゃれるように齧られてしまう。
ふふ、くすぐったい、と笑ったら、唇はすぐに離れて今度は胸の膨らみにキスが落とされた。
あ…と小さく声をあげた時には、シンの唇が胸のピンク色の頂きに、柔らかく、ちゅうと吸い付いていた。
一瞬、身体がビクウ、と反射的に縮まったが、それはすぐにゾクゾクする悦楽に取って代わる。身体だけでなく恋心を含んだ感情までが過熱してきて、あん、と甘い声が喉からつい漏れだした。
そして以前に胸から魔力を吸い取られた時とは違い、シンはいつまでも胸から離れなかった。
濡れた舌で、ジンジン疼く頂きを味見をするようにペロリと舐め上げられ、硬くなったピンクの蕾を口内で転がされ嬲られ、強弱をつけて吸い込まれてゆく。
その心地好い感覚につい好奇心にかられて、その様子を顎を引いて、ちら、と眺めると、シンの執着に心から満足してまった。
(ふふ…これは必要に応じて、じゃなくて、シンが私にしたい振る舞いなのね……)
これまでも強引に触れられて、本気で嫌だ、と思ったことはない。
だけどもこの時程、喜びが不意に、じわんと湧き上がってきて、ふわぁ嬉しい~!と心が満たされ有頂天になったこともなかった。
気がつくともう一つの胸も、長い指に尖ったピンク色の頂きを摘ままれて、弄られている。
左右同時に、じわじわと広がる快感に逆らえず、シンの頭をやんわり抱え込むと、感じるまま甘い艶めかしい声が喉から漏れはじめた。
「は…んん…ぁ…」
魔力は吸い取られていないのに、身体が熱くて堪らない……
ジンジン疼く頂きに強い刺激を与えられる度に、そこは、もっと、もっと敏感になってくる。
「や…ダメ…そんな…ばっかり…」
何度も何度もピンクの蕾を吸い上げられ、ついには熱い舌先を、チョン、と当てられるだけで、ビクン、と疼くぐらい胸が敏感になってしまった。
(これ以上弄られたら…耐えられな…い……)
追い詰められた焦燥感に駆られて、絶えだえの息をしながら、ジンジン疼く胸をとうとう両手で覆って隠してしまった。足の間はなんだか温かく湿り気を帯びて、ヌルヌルしてくるし、その上、腰の奥から熱が湧き上がってくるような感覚を感じてしまって……
(イヤン、何なのこれ?)
なのに大きな手で即座に手首を捕まれると、やんわりとだがあっさり胸から引き離されてしまった。
顔の横に持ってこられた手首が、シーツに容赦なく押し付けられる。
「ダメだ、一回イっておけ」
低い美声が告げると紺碧の瞳を悪戯っぽく煌めかせ、またもや超敏感になっているピンクの蕾を、見せつけるようにゆっくり口に含んでいった。
「ああっっ…ぁっ…ぁっ…」
下腹部にシンが伸し掛かっているので、上半身だけが勝手に捩れてヨガリ声が漏れてしまう。
何度も左右の胸を交互に可愛がられて、連続して与えられる快感に、内股がふるふると震えてきた。
(や…もう…強引、なん…あぁっ…)
そうしていつとなく胸に盛大に、カプ、と齧りつかれ、敏感なピンク色をジュウ、と痛いほど大きく吸い上げられると、あ…もう、ダメ……襲いかかってくる快感に逆らえない。
「いやぁぁ……」
知らずに上げた小さな叫びと共に、身体の奥から熱い愛蜜が、じわりじわりと湧き上がってくる。それは慌ててお腹に力を入れても、なぜか止まってくれない。
身体は甘く痺れて、勢い余って背中を大きく仰け反らすと、びくんびくんと痙攣がはしっていく。
溢れた熱い蜜が、トローリと太ももや周辺を濡らしていった……
「やあ、こんなっーー!」
「しー、リナ、落ち着け。これはごく普通の事だ。リナの身体が感じた証拠だ」
(えっ?)
恥ずかしい、と捩りかけた身体をシンが宥めるように硬く抱きしめてくれて、頭や肩が優しくさすられる。
「ほら、大丈夫だ」
大きな手が、きっちり閉じようとする太ももをやんわりと開かせて、トロリとした愛液をその指にすくい取った。そのまま濡れた指から無味無臭な透明な液を、舌を伸ばして、ペロリと舐めあげる。
(や! あ、でも確かに匂いがしない……?)
でもでも、そんなとこから溢れた愛蜜を目の前で、「甘いな」と含み笑いをしながら舐められると、やっぱり恥ずかしいーっ!と、頬が真っ赤に染まっていく。
キラキラした瞳でそんな様子を見ていたシンは、それなら、と手を掴んできた。
そうしてなるべく目を泳がせて注視しないようにしていた、その昂ぶりへと掴んだ手を徐々に導いていく。
(ひゃあ、そんな…)
シンの意図を察っして、顔はますます燃えるように赤くなる。
恥ずかしいとは思うものの、やはり好奇心と、触って見たい、という欲情した誘惑に勝てない。
覚悟を決めたように逆らわず、誘われるまま、そおっと指の先端を伸ばすと案外滑らかな先っぽを、ピトと触ってみた。
「ほら、俺もリナと同じ状態だろう?」
「う、うん…」
思ったよりずっと熱いシンに手が触れると、それは見る間に大きく硬く成長していく。
そして触り心地の良いツルッとした先っぽの方から、プツリと、と透明な雫が出てきた。
「凄い…熱くて硬くて…」
大きい…と思わず小さく呟いてしまった。
時々、息づくようにビクンと蠢くそれは奇妙な形をしているのに、おっかなびっくりさわさわっと触れてみるたび、シンの息が荒くなるのを感じる。
あ、シンが感じてくれてる…そう思うと、手の中にあるそれも無性に愛しく思えてしまった。
「嫌じゃなければ、そのまま握ってくれるか?」
「え? わ、わかったわ」
恐る恐るやんわり握ると、「もっと強くていい」とシンは自分の手を上から重ねてきて、一緒にギュウと握りこんだ。
(きゃあっ…え? 大丈夫なのかしら、こんなに強く握って)
小さい頃からの護身術で急所を蹴り上げると相手が動けなくなる、と教えられてきた身としては、そこは男性にとってとてもデリケートな場所だということがなんとなく分かる。
「あの、こんなに強く握って、その、大丈夫なの?」
「今ぐらいまでならな、噛んだり、握り潰すのは勘弁してくれ」
シンは笑って髪にそっとキスをしてくる。
(ふうむ…それはもちろん貴方次第よ?)
「怒らせるような事をしなければ、そんな真似はしないわよ」
「怖いなあ、頼むから手加減してくれよ」
そういって、ちょっと心配そうに見つめてくる。
その顔がなんとも普段の凛々しい顔とも違って、思わず、うわあ、可愛い、と思ってしまった。
(ふふ、シンってこんな顔もするんだ……)
そう思った途端、ハッと気付いた。
(これはもしかして、今、主導権を握っているのは私よね?)
一緒に握り込んだ手の動きが早くなると、耐えるような顔をしてきたシンに、やっぱり、と確信した。
「これって、気持ちいいの?」
「すごくいいな」
「…他にはどうやったら、気持ちいい?」
「そうだな、口に含んで舐めてもらうとか? 要するにこいつが物凄く敏感なんだ、男は」
何となくだけど分かった。
だから、蹴り上げたり、握りつぶしたら動けないのか……
口調はいつもと変わりないが、どこか違うシンの受け答えに、内心やっぱりとニンマリした。
(ようし、なら早速…)
突然動きを止めると、シンは不思議そうに見下ろしてくる。
「どうした、嫌になったか?」
「違うの、この体勢じゃ手が上手く動かせなくて」
どうすればもっと? と考えて、逞しく覆いかぶさっている身体を、そうっと押し戻すと上半身を起こしてみる。
シンは面白そうに一緒にベッドに起き上がって見つめてくる。
そのまま、また彼を握って手を動かし始めると愉悦の表情で紺碧の瞳をゆっくり閉じた。どうやら好きにさせる事にしたらしい。
(えっと、後は……)
リズムにのってきた手の動きをまた止めたリナが、顔を近づけている気配を感じたのか、シンは閉じた目を見開いてジッと見つめてきた。
いやん、ちょっと恥ずかしい、と睫毛を伏せる。
「ん…」
手に持った不思議な形の熱い塊がビクンと脈打つと、なんとも言えない愛おしさがこみ上げてくる。衝動に駆られて試しに舌で、ペロンと舐めてみた。
(ん…少し、苦さがあるかな?)
そのまま頭を動かしてスベスベした先端と下の方まで舌を出して舐めてみて、大丈夫、と大きく口を開いた。
逞しいシンの味が舌に広がる。
んん…と喉をならして、口にゆっくり、飲み込むように含んでいく。
「リナ…」
愛しそうに名前を呼ばれると、ますますシンにも感じてもらいたい、と思ってしまう。
気持ち良さそうな溜息が、ふう~と頭上で聞こえ、口に含んだシンがいよいよ、グンッと大きく脈打って質量が増した。
大きすぎてこれ以上は、無理、でも、もう少しだけ…そう思って味わっていると、シンが突然動いた。
そのまま腰をゆっくり動かして含んだ口の中に出し入れをはじめる。
「最高だ、リナ…」
「ふう…んん」
さっきの激しい手の動きと違って、それは口内をゆったり堪能するような緩慢な動きだ。
「リナ、そのまま吸い上げるようにしてくれ」
低い美声が少し上擦っている。
(あの、常に落ち着いた態度のシンが、私の拙い愛撫で間違いなく感じてくれている!)
もう、主導権がどうの、という意識は頭になかった。
思いきって勇気を出してよかった、とお互いが気持ちよくなれる事が分かった結果に、とっても満足だ。
そしてリクエスト通りに手を添えて吸い上げると、シンが身体を引き抜こうと動いた。
「出る、離してくれ」
(だめ、さっきシンは離してくれなかった)
自分の感じた快感と同じような感覚なのだろう、そう思えたので、そのまま、いや、と頭を振って更に強く舌を絡みつけて思い切り吸い上げる。
「っ…」
一気に熱い奔流が口一杯に広がった。
「ん…ごほっ…」
「リナ、大丈夫か? ほら、出せ、苦しいだろう?」
粘つく液体が口から溢れて、思わずむせてしまった。
けれども一瞬苦い、と思ったそれは、すぐに舌触りもとろけるような熟成したワインの味になる。
うっわあ、美味しい……と喉に絡まるそれは、飲み込んでしまった方が簡単な気がして、ゴックンと大きく喉を鳴らした。
「リナ…こら、そんなに煽るな」
シンの言ったことが理解できなくて、え?と聞き返そうとする。
だが、途端に頭に痺れるような酩酊感があっという間に広がり、身体中がポカポカと暖かくなってきた。
ホンワカした気分に、たちまち飲み込まれてゆく。
そんな異変がリナの身体に訪れていることに、シンはまだ気づいていない。
「まったく、今のは凄く、きた」と掠れ声がすると同時に、また身体が押し倒されてしまっていた。
「シンも~、気持ちよかった?」
まだ喉が本調子でない自分の声は、まるで喘ぎ声のようだ。
「ああ、勿論だ。悪いがこれで、一生放してやれなくなった」
はてな?という顔をしたリナに、シンはニヤリと笑って低い美声で告げた。
「今リナがした行為は、俺たちの一族では番同士しか、しない」
長い手で抱き寄せられ、「こんなに早く受け入れてくれるとはな」と囁くシンの嬉しそうな美声が頭に響き、気がつけば顔中に優しいキスが降っていた。
(番…つがい…つ、が、い、って確か…伴侶ってことだったかしらん~?)
頭の一部がシンが言った事を半分ぐらいは理解したものの、身体がホンワカ、頭もボーっとしてきてしまって、いい気持ち~、と程よく酔ったような気分で、にっこりと笑う。呂律の回らない舌が勝手に動いている。
「そうなんだ~、シンっ~優しいし強いし大好き~!」
「そうか! じゃあ、俺と番いになるか?」
「魅惑魔法とか平気で使ってくるし~、狼だけど~」
「おい、リナ? どうしたんだ?」
力なくヘロヘロになった身体を押し付けてきて首に抱きついて離れないリナを、シンもさすがに様子がおかしい?と思ったらしい。
「う~ん、もっと抱いて~」
舌足らずの言葉でしなだれかかってくる身体に、シンは困惑顔だ。
「リナ? なんだ? どうして、こんな酔っ払ったような…まさか……?」
「し~んっ、モっとよこせ~」
シンをギュっと抱きしめて熱い息を吐くリナを、ペリッと身体から引き剥がして目を見開く。
「嘘だろ、リナ…君はもしかして…?」
「シ…ン…フニャ…」
「待て待て待て、こら、リナ」
トロンとした瞳でウットリとシンを見上げ、次の瞬間には、「お願い、我慢できないの」とウルウルと潤む瞳で見つめて、大胆にも手をまだ硬いものに伸ばしてくる。
その手首をやんわり握って、シンは戸惑いの溜息をついた。
そしてゆっくり、心を落ち着けるようにうつむいて、口の中でブツブツボヤきはじめた。
「参ったな、こんな状態のリナを抱くのは、俺の意に反するし…」
「シ~ン、もっと触って~」
「…かと言って、このままじゃあ生殺しだ」
シンの大きな手を掴んで胸に導くと、膨らみにわざと当ててくるリナを困った顔が見つめている。
潤んだブルーグレイの瞳は、長い睫毛を半ば伏せて「好きにして…」と誘うように流し目を送った。
そのままリナは大胆にも自分の手をシンの手に重ねて、膨らみを捏ねるように手を動かしはじめた。
「……やっぱり、味見ぐらいはさせてもらおう」
唸り声を上げると、シンは胸をしゃぶるように貪り始めた。
「はあ…ん…ぁ…ぁっ…」
ピンクの頂きが交互に口に含まれると、身体に甘美な痺れが走りぬける。
リナは恍惚状態となって、あぁっと喜悦のヨガリ声を小さくあげ始めた。
やがてシンの身体が下腹部へ移動していき、柔らかい太ももを優しく大きく広げられた。
酔っていなければ、恥ずかしい、と身悶えしたであろうリナは、「ふ…ん」と甘く鼻声を漏らしただけで、シンの為により一層大胆に足を広げている。
「…さすがに腰にくるな、俺もギリギリだ、リナ…」
「あぁっ…ぁ…」
濡れた中心を手で軽くさすっただけで、陶然となりいやらしい声が喉から漏れたのをみて、シンは、「エロいな、まったく、酔っていなければ…」と重い溜息をついて顔を近づけた。
(ぁーーっ…)
フワフワ状態の頭の中で刹那鋭い嬌声が上がった。
シンの頭が動く度、クチュ、チュル、と濡れた音がそこから聞こえてくる。
そのリズム感のある快感はどんどん身体中に広がっていき、急速に増していった……
意識が朦朧としてきて、その妖しい意識も途切れ途切れの中、シンの低い声が耳に残る。
「信じられないほど甘いな、もう少しだけ」
濡れた口元を手の甲で拭ったシンは、誘われるようにまた顔を屈めた。
温かい蜜が身体の奥から絶え間なく湧きでている。溢れた蜜と疼く中心を、またもや何か温かくて柔らかいものが、ピチャピチャ、クチュウと弄ぐっている。
(…ぁん…もう…ダメーーっ……)
連続して襲ってくる快感に、声も上げられない。ただひたすら身を任せる忘我状態になってしまった。
酩酊した身体をうまく動かせなくて、びく、びくと小刻みに震えていたが、やがて背筋を大きく震わすと、リナの意識が、フッと途切れた。
「…リナっ? シンーーっ! あなた達は一体ーーーーーーっっ!?」
(え? テン? …もう朝なの?)
ボンヤリする頭で目を開けば、豪華な天井が目に入ってきた。
少し首を動かすと、窓の外は青白い空が夜明けの綺麗な薄いピンクに染まっている。
身体を抱きしめてくれていた暖かい人肌が、瞬く間に薄い布で覆われたのをリナは肌で感じた。
(なんか、空気がひんやりしてる?)
ボーとしながらもテンの怒鳴り声でなぜか、あ、不味い、という思いが頭を遮ぎった。
大急ぎで魔道具服を呼び出し、全裸らしい自分の身体にドレスを身につける。
ホッとしたところに、テンの雷が、どどーんと落ちてきた。
「一体どう言う事ですかーーっっ! ほんっとあなた達の一族ときたらっ、ちょっと顔がいいのをいいことにっ、皆揃いも揃ってその手が早い事と言ったらーーっ!!」
テンは真っ赤になって怒鳴りながら、両手をシンの方にかざした。
「一度あなた達のその魂、完璧に浄化させてその煩悩だらけの性質を取り払って差し上げましょうっ!」
「いや、待て、落ち着け!」
(うわあ、これって、信じられないくらい濃厚な聖属性魔法だわ!)
「なあにちょっと、一回ぐらい輪廻しても、あなた達なら戻ってきますって」と目が据わったテンは諭すように告げると、ゆっくり徐々に魔法の威力を上げだした。
肌で感じる上級魔法に、シンは珍しく焦っている。
「待てっっ、誤解だっ! リナと俺は合意だ! それにヤってない、挿入てないっ!」
「何を今更、そんな格好で言い訳なぞ、みっともないですよっ!」
「本当だ!」
「あの、テン、ごめんなさい、私もよく覚えてないんだけど、合意なのは確かよ」
(どうしてこんなに怒っているの? シンのことは結構気に入った様子だったのに?)
困惑しながらも事実を述べてみる。
沸騰した頭にリナの言葉が届いたのか、目を見開いたテンはちょっと戸惑った様子だ。
「……だとしても、手を出そうとしたことは明らかですっ、可愛いリナをあなた方の毒牙にかけてなるものですかっ、この節操なしーーっ!」
一回引っ込めた魔法陣が更にパワーアップして空中に門の形が形成されてくる。
「違うっ! 誤解だと言ってるだろう、同意済みだ。ほら、これをみろ」
昨夜リナが血判を押した紙がいきなり空中に、ポンと、と光り輝いて現れる。
「なーーっ! シ、ンーっ、貴方ってばまさか、何も知らないリナと等価交換の契約を交わしたんですかっ? だからあなた達一族は、未だに噂のネタに…!」
「違うと言ってるだろう、よく見ろ、契約書ではない、誓約書だっ!」
「は?……誓約書?」
シンは落ち着いてはいるが、口調は必死だ。
ちょっと怯んだテンは、空中に現れた紙を恐る恐るといった様子で読み進んだ。
最後まで目を通したテンは、今度は驚いた様子で目を見開いている。
「この誓約書の内容を、リナは?」
「言ってない、フェアじゃないからな」
「…私が言うのも何ですが、よくもまあこのリナに、契りも交わさず内容も知らせず、血判を押す、などという無謀な真似を承知させましたね」
リナは見た目は一見清楚で慎ましい姫だが、嫌なことには絶対頷かない頑固な性格を知っているテンは、呆れた様子だ。
嫌がっていれば芯の強い本質を発揮して、この部屋が荒れるどころか、部屋が真っ二つに割れていてもおかしくない、くらいの実力はある。
「もちろんわかっているだろうが魅惑魔法効果でもないぞ」
テンは綺麗に片付いた豪華な部屋を見回した。
ベッドのシーツが昨夜の二人の情熱の激しさを語るようにやたらと乱れまくっている以外は、家具もランプも壊れていない。
ふむ、とちょっと落ち着いた様子で、テンはずいと向き直ると、今度はこちらに矛先を向けて来た。
腰に両手をついて、お小言モードに突入だ。
「リナ! サインをする時には、必ず内容を確認してから、と口酸っぱく私が言ったはずですが?」
「だって、これにサインをすれば、シンとずっと一緒に居られる、っていうから」
「…リナはシンとずっと一緒に居たいのですか?」
「ええ、シンは信用できる人柄の人だし、腕っ節も魔法もすごいし、頼りになるし…」
モジっとしながら上目遣いにテンを見て、それでもきっぱり言い切った。
ちらりとシンの方を盗み見ては顔を赤らめるリナをみて、テンは大きく諦めの溜息をついた。
「いや、まあ確かに、新しい血を王家に取り込むのは、良い事だとは思いましたが…」
「まさかの展開です…」と暫くは何かを考えていたテン。
やがてシンに向き直ると、確認するように疑問をぶつける。
「あなたがたの方では、これは受け入れられるのですか?」
「誓約書での誓いは絶対だ。四角四面のお役所堅気だからな」
シンは大きく頷き言葉を続けた。
「特に当今出生率は落ちるばかりだし、どうにも若い者が結婚しにくい職場だ、と上も頭を痛めている」
「どこも事情は、変わりませんねえ」
テンは同意の深い溜息をつくと、「まあ、それならいいでしょう」とシンに大きく頷いた。
どうやら、平和的合意に至ったらしい。部屋の中でやたら眩しく光り輝いていた門がいつの間にか消えている。
「分かりました。意外ではありますがこれに関しては、リナと貴方の間で交わされたもの、私の関与するところではありません」
「じゃあ」
「ですが、あなた達一族は実力はともかく、女たらしで、身持ちが悪い、と悪評なのもわかっていますよね?」
「あ~、それに関しては、まあ一部の者が該当するが、俺たち全部を一括りにされては困るぞ」
「ふむ、確かに貴方からはそんな印象を受けなかったからこそ、リナの側においても、と安心していたのですが」
「だから、誓約書を見せたんだろう、貴女はきっとあの件で、いい印象を持っていない、と思ったからなあ」
「なっ! それとこれとでは話は別です。リナが嫌がらない限り、お好きにどうぞ」
「その寛大な心に、感謝する」
「…さあ、二人とも着替えて、サッサと身支度をするのです。もう直ぐ、朝食の時間のはずです」
(…なんで、こんな朝早く? と思ったら、朝食を食べに帰ってきたのね……)
朝食にふさわしいドレスに素早く衣装を替えながら、なんとなくソワソワしているテンを、チラリと盗み見してみる。
昨夜の夕食も、美味しい、とシンと同じように目を輝かせ、幸せそうに食べていたテンの姿を思い出し、妙に納得したリナだった。
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エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
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