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こんな人いました8 そこに愛はあるんか?

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 3か所の図書室のシフトは小島さんが作っていた。小島さんは自分が休みたい時に休んで、自分が出勤したい時に出勤するシフト(勤務時間割)を常に作っていた。我田引水というワードが浮かぶ。
 シフトをワンホールのケーキに例えれば、小島さんが、自分の好きな所を好きなだけ切り取ったあとの残りを、他の人で分けている感じだった。かなりのシフトを小島さんが独占し、小島さんと職場が同じだった時、私は不満だった。
 けれど、母親と同年代の司書資格のないこの人は、相手の言い分は聞かず、常に自分の主張を押し通していた。小島さんは背が高いほうで、かなり痩せているが、体は丈夫で我が強がった。



 私が令和図書室で働くようになり、小島さんからシフトを取られることがなくなった。
 その後、令和図書室のある公民館が、建て替えになった。それまでは、布由ふゆちゃんと日替わりで8時間勤務だったが、新しい図書室は、早番と遅番のシフト制になり、新しい未経験者が2人雇われ、4人でシフトを分けることになった。 
 小島さんが「オープン直後は人出が多いから、一週間は2人体制にしたほうがいい」と言うので、新人と経験者の2人体制のシフトを作った。ところが小島さんは、自分から言っておきながら、2人体制がたった一日だけのシフトを作ってよこした。
 新人がそれだけで、いきなりワンオペになることに不安を漏らすと、「やるしかないでしょう」と突き放す。実務経験がない新人が「一通り教わっただけ」でのワンオペはきつい。思いやりに欠ける。
 オープンの日程に間に合うよう、引越し作業、新人の研修、その他やることが盛りだくさんだった。私は忙しい日々が続いた。

「あたしも月に1回、入ることにしたから」
 小島さんが新しくできた令和図書室に勤務すると言ってきた。引越しがすんだタイミングで乗り込んできた。なんで部外者の小島さんがシフトに入るのか、意味が分からない。特権意識とともに境界を侵害してきた。
 自分も新しい図書室で働いてみたいのだろう。新しい図書室は、おいしそうなケーキのようなもの。4人で分けるようにと渡されたシフトという名のワンホールのケーキを、「おれにもよこせ」と言うようなものだ。
 
 棚から牡丹餅ぼたもちということわざがあるが、今、小島さんがやっているのは、人が大変な思いをしてやっと牡丹餅を作り終えたタイミングでやって来て、いいとこ取りするようなものだ。
 しかも、人のやった仕事に口出しをして、ケチをつけてきた。人が作った牡丹餅を食べて、ケチをつけるようなものだ。「私がいないとダメね」とアピールしたいのだろう。

 小島さんが入ることで、新人の橋本さんのシフトが減らされた。職場に慣れてほしいから、むしろ増やしたいくらいなのにだ。それでも強引に人のシフトを奪った。
 まるでジャイアンだ。体型は全く似ても似つかないひとだけど、「おれのものは、おれのもの。人のものも、おれのもの」と思っているようだ。
 不本意だったけれど、月に1回我慢した。ところが、3ヵ月目、月に2回入るシフトを組んできた。自分で「月に1回」と言っておきながら、更に自分の取り分を増やしてきた。
「葉山さんのシフトが少なくなるから、月に2回は困ります」と言ったが、意味不明なことを言って、結局葉山さんからシフトを取り上げてしまった。
 
 

 小島さんは曽根図書室で働いているし、60歳から年金を満額もらっているのだから、そんなに働く必要はないだろう。それなのに令和図書室にも出勤する。
 そのために他の人のシフトが減る。惜しみなくシフトを奪っている。そこに愛はあるんか?
 あるとは思えない。他の人の収入を得る機会を横取りしているのに、罪悪感もない。



 その日、令和図書室に早番で出勤していた小島さん。
 たまたま勤務していた小島さんが、行事で公民館を利用していた団体から、5㎏入りの新米をもらった。
 人のシフトを奪って、令和図書室に出勤したことで、いい思いができた。




 数年前の年末に、1月4日に曽根図書室に代わりに入ってほしいと、小島さんに言われたことがあった。私は休みになる日だったので、ゆっくりできると思っていたので残念だったが、引き受けた。
 4日は仕事始めで、本の配送の日とも重なった。よその図書館や図書室から借りた本、返された本が届いた。その処理がたくさんあった。休み明けをまちかまえていた利用者も殺到し多忙だった。しかも、配送本に傷があった件の確認で、市立図書館や他の図書室と電話で何回もやり取りもあった。
 曽根図書室では、勤務時間内に配架しきれない返却本は、ブックトラックに並べて翌日配架することがあった。残業代は出ないのでそうしていた。
 なので引継いでもらうことにした。ところが数日後、仕事を残したことを小島さんに責められた。「仕事が遅いのは、普通じゃない」とまで言われた。
 代わりに入ったのに文句を言われたんじゃ割に合わなかった。どれだけ忙しかったかも知らずに。
 いや、仕事始めの日が忙しいのは分かっていたはずだ。分かっていて私に押しつけたのだ。私に面倒なことを押しつけて、自分はのんびり正月休みを楽しんだのだ。
 配架の残しはいつも小島さんがやっていたことだった。私がまだ曽根図書室にいた時は、よく小島さんから引き継いで配架していた。

 また、市が主催の音楽コンサートの入場整理券を、小島さんの図書室で配布することになっていた頃のこと。配布開始前に、小島さんは一番いい席の整理券を自分のものにしていた。
 自分のことは棚に上げ、人に厳しい人だった。自分がやるのはいいけど、人がやるのは許せないタイプ。

 私は一度、数分遅刻したことがあった。図書室を開けるまで1時間前のことではあるが、その時はきつく責められた。
 それからほどなく、今度は小島さんが遅刻してきた。その時は、へらへら言い訳していた。

 曽根図書室の新刊購入は小島さんの独断。それで予算をオーバーしてもケロッとしていた。人に厳しく、自分に甘く、うっかりミスの多い人だった。
「忘れちゃった(やらなかった)」「わけ分かんなくなって(できなかった)」「やっちゃった(ミスを)。ま、いいか」と言い訳。言い訳して反省がないから、改善もない。しょっちゅう、忘れちゃったり、やっちゃってる。
だから、「言い訳しない、自分を正当化しない」と言っことがあった。そうしたら逆ギレされた。




 これも私がまだ曽根図書室にいた頃の話だが、いろんなところに出かける小島さんは、よく土日を休みにしていた。私が休みたい日と、小島さんが休みたい日が重なったことがあった。結局小島さんが休みになった。
 小島さんがごり押しして休みを取ったのは、アウトドアのイベントに参加するためだった。
「日曜日に休みたいって言ってたわよね。その日あたし出るからあなた休んでいいわよ。その代り、木曜日と交換して」
 当日の悪天候が確実になった時点で、そう言われた。
 今さらそんなことを言われても困る。その日だけ上演の観に行きたかったミュージカルのチケットは既に完売して、もう休む必要がなかった。それに日曜日の8時間のシフトを、木曜日の4時間のシフトを交換してほしいなんて、割に合わない。
 本当に、自分が休みたい日に休んで、出たい時は人のシフトを奪ってでも出たい人だった。




 小島さんが令和図書室のシフトを奪っていたのは、最初の半年で終っていた。
 それからしばらくして橋本さんが家の都合で仕事を辞めることになった。
 これからは3人でシフトを組んで仕事をしてほしいと、派遣元から言われた。
 それなのに、小島さんがまた令和図書室に入ると言い始めた。
 なので、一人補充することにした。それでも、自分がシフトに入りたいがゆえ、新しく入った人を「仕事ができない人」呼ばわりしてシフトを奪い、令和図書室に出勤するようになった。



 その日も行事で公民館を団体が利用する日なので、小島さんは自分が令和図書室に入ることにした。また、おいしい思いができる。そう思って私にシフトを変更させた。
 別に休みたくなかった私は面白くなかった。だが、出かけることにした。そこで思いがけずラッキーなことがあった。
 そして私のシフトを奪ってまで出勤した小島さんは、その日はいいことがなかったばかりか、やっかいな利用者が来たり、面倒な本の調査をちゃんとできず怒られたり、やることなすこと裏目に出て、さんざんだったらしい。
 しかも本来出勤ではなかった小島さんは、微妙な交通違反を警察官に目撃され、違反切符を切られ、罰金を払うことになってしまったのだった。

 人のシフトを奪ったことが、皮肉な結果となった。それでも、小島さんは懲りなかった。相変わらず、人のシフトを奪うのだった。


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