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【魔王】あんがいアイツもいいやつだ【勇者】

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「くっそ。近付くな」



「近付いているつもりはないのだけど?」



「2メートル離れろ。魔法行使の邪魔だ」



「むやみやたらと音が大きい魔法を使わないでくれ。他の魔物が寄ってくる。それに君は後衛だろ?」



「バカめ、後衛も前衛出来て当たり前だ」



「黙って後ろに居て欲しい。逃げることも考えてな」



「なっ!? バカにするのか!!」



「ああ!! 信用できないからな」



「なら!! ここで信用を勝ち取る!!」



「フラム?」



「あっ……いや……べ、別に勇者に信用して貰おうと頑張る訳じゃないんだぞ!! くっそ!! なんだその笑み!!」



「いや……なんでもない。任せた魔王!!」



「……ふん……後で追求だ!! 右からいく!!」



 大きな野生のドラゴンとの対峙。恐ろしい強敵の前に二人は示し会わせたように左右から攻撃をし、ヘイトを稼ぐ。そして……仲間の攻撃を頼りに動き。なんとか倒せるのだった。



「やった!! ソル君」



「やったな!! ソル!!」



「ああ、やりましたね!! ソルさん」



 女のパーティーメンバーがここぞとばかりに自分の活躍を褒めて貰おうとした瞬間。



「フラム……無事だったか?」



「ふむ……大丈夫だ。流石、野生の頂点……ドラゴン種。炎も得意なワシをてこずらせやがって」



「右手を隠すな……見せろ」



「大丈夫だと言っている」



「なら……見せてみろ。結構酷いじゃないか!? 皮膚が炭化している……」



「気にするな。弱いワシがいけない。鈍ったようだ……回復呪文をかけてる。時期に治るさ。ワシに構わず他の仲間に駆け寄るといい」



「……わかった」



「全く……魔族は無駄に頑丈で回復しやすいというのに」



「「「……」」」



 ソルがそのまま皆の元へ行くが冷たい視線で迎えられ困惑するのだった。











 その夜の夜営。こそこそとトイレで3人が離れる。



「どう言うことだ? ソルが最近……仲がいい。どう思う? アクア、ウィンド」



「……そうですね。なんか無駄に距離が近いような? そんな気がしますねフレイム」



「処す?」



 ウィンドが腰から毒付きのナイフを取り出す。魔法使いではあるが身を護るための護身用とその技術をウィンドは持っていた。



「お前が殺してくれるなら……」



「私たちがあなたの分まで幸せになります」



「おい……裏切るのだな」



「一人の犠牲で助かるなら」



「……神は言っている魔王はやれと」



「やめたやめた……二人を助けることになる」



「では……どうする? 皆」



「……私は一人一人でソルさんの相手をし、フラムさんから離し。い、色仕掛けを仕掛ければ大丈夫と思います」



「それ……やったけど。お前たちが決められた時間以上に二人っきりになるからダメだろう」



「抜け駆けチャンスですから」



「そういうのがいけないんだ!! しっかりと足並み揃えろ!!」



「そう言うけど……」



「……ねぇ……」



「お前ら、今は緊急時だ」



「わかってるけど……あなたもライバルよ」



「くっ!! お前ら!! 今もこうしてる間に二人っきりなんだぞ!! 邪魔しに行くぞ!!」



「……行きたくねぇ。怖くないか?」



「何が!! ウィンド!!」



「………もし、あれだったらどうする? 二人きりだった場合……何事もなく」



「「……」」



 3人は言い争い。そして……何も決められなかったのだった。











 3人がトイレと言うなの女子会に耽っている間に残された魔王ちゃんと勇者は野宿の準備を済まし薪を焚き会話をする。



「……あのさ、フラム。相談乗ってくれないか?」



「なんだ? ワシ程度でいいならなんでもなんでも聞こう」



「ありがとう。勇者が魔王に相談するなんて変だな……」



「元だがな。はよ、話せ」



「実は今の仲間についてなんだ。あの3人は非常に仲がいい。女の子同士だからだろう……それに何処かソワソワしている。俺はそれに対してどういった態度でいればいいだろうか?」



「ふむ。3人の仲がいい。女の子だからな、ソワソワするのも理由があり。ソル、貴様は今の感じは嫌だと言いたいのか?」



「あっ……いや。どこまで突っ込むべきか……悩むんだ。男とは違うし……こう。その」



「童貞乙、女性との距離感が分からないのだろう。そういうのは多い。男社会でもよくある事だ。だがな……お前は私を連れ去っただろう。あの時の勇気を出せばいい」



「あの時は……い、いや。まぁ。言葉を濁させて貰うけど目立ったから」



「まぁそれでも。あれは今では本当に感謝している。そうだなぁ……女性との距離感に悩むのは練習が足りないからだ。少しでも自信がつけばいいから場数を踏むんだ。ワシで練習するか? 一応訓練した経験がある」



 フラムは女になってからの特訓の日々を思い出す。女性社会。メイドたちの世界に無理矢理飛び込んだ。下ネタ大好きとか結構男が思っている以上にスゴいヤバイ世界もあった。中々綺麗な花園は幻想であり。なんとも言えない。



「訓練した? えっ? 魔王である君が?」



「元をつけろ……魔王だからと努力しない訳じゃないんだぞ。お前だって槍を練習する。それにな……」



 フラムはクククと笑い。正直に打ち明ける。



「ワシは元々、男だったが魔王連にはめられ女にされてしまったんだ。騙された日々を過ごしたよ」



「そんなバカな……君は何処から見ても……その綺麗な女性にしか見えない……」



「おい!! 恥ずかしい事を言ってジロジロと見るな!! い、一応、見られるのは……やっぱり恥ずかしいだぞ……」



「あっ……ごめん」



 ソルが紅くなりながら背を向ける。魔王ちゃんも旅人のマントで身を隠し、沈黙が訪れる。



「……あの」「……おい」



「「つぅ……」」



 同時に声をかけてしまい余計に気恥ずかしくなった二人。しかし、そこは魔王ちゃん。その沈黙を破った。



「まぁ……あれだ……ワシもこの姿になるまで女性との距離感は難しかった。大丈夫……皆に好かれているお前ならな」



「……好かれているのかな? 嫌われてる気がしますね……どちらかと言いますと」



 切り口を見つけ会話を続ける事ができた。魔王連は悶絶から慌てて復帰する。



「本当にそう思うのか? ソル……他言無用でいいなら聞いてくれ」



「はい、口固い」



「まぁ……そのな、あいつらの共通点はお前に好意を持ってる事なんだ。ワシにはわかる。こう……女同士のドロドロとした空気を思い出した。何故かと調べたら。ワシにソルに好意はないかと探りに来ている。これは当たりだと思ったな」



「……すこしいいか? 黙っていて欲しい」



「なんだ?」



「本当に申し訳ないんだけど…実は知ってるんだ」



「なに!? 鈍感糞男だと思っておったぞ!!」



「……そういう振りはしている。だから……距離感が分からないんだ。本当にどうしたらいいんだろうか? 今は恋愛をしている暇がないというのに」



「悩みはそこか……はぁ……ワシは経験ないがお前の好きなやつを選び。そしてそいつを護り切れば勝ちでいいじゃないか? 結局自分が満足いく答えじゃないと追々後悔する」



「わかった。胆に命じとく。にしても本当に話がしやすいな」



「元魔王だからか?」



「……それで全て解決しようとしてないか?」



「そう、元魔王だからな」



「2+1」



「元魔王……ちゃう!! 3!!」



「ククク」



「……フフフ」



「人懐っこいって言われた事ないか?」



「あるな。魔王らしくもないとも」



 二人でいい雰囲気のまま夜は耽るのだった。











「仲がいいな。修羅場があると思ったのですが……上手く行きすぎるのもつまらんby魔王」



「元々好意があるみたいですね。私は微笑ましいです。懐かしい……そんな気分ですby魔王」



「……勇者、ポテチとって~ええ、だめなの~by魔王」



「うーん。ちょっと台本変えてみますか? by魔王」



「どのように? by魔王」



「それはこのようにするのはどうだろうか? by魔王」



「「「採用by魔王」」」



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