30 / 54
母上に……問う
しおりを挟むウリエルは城に引き込もっている母を見た。目は赤く腫れているがウリエルは長年から見ているため理由を理解し押し黙る。今はその時じゃないとタイミングが悪いと考え……行動は移さなかった。
「ミェースチ様、お話があります」
「……ウリエル。なに? 姫が来ること?」
「ご存知でしたか……」
「もちろん。手紙も噂も全て……そして。まぁ分かりやすい狙いだな。宣戦布告するためだろう」
「ミェースチ様……そうです」
「私が殺らずとも……ここで死ぬな」
ウリエルはまぁ分かりやすいとも思うがそれ以上に王国の分裂が予想出来た。姫側、王子側の両方が喧嘩しているらしい。姫を次期王に王子を次期王にと言う勢力があり。欲で戦う。帝国にもあるが……すでに象徴化している部分もあり。実権を握るには帝国の場合有能でないと許さな。
だからこそ。次期帝国王は誰でもいいとされる。その違いだ。
「………シャルティエ様から手紙です」
ウリエルは油に水を入れるイメージで彼女に手紙を渡す。ミェースチはそれを貰い。少し読んだ後にビリっと破き。窓の外へ捨てる。散らばる破片にミェースチは笑みを浮かべる。
「ふふふ……殺さないでねじゃなく。死なせないでね。私に向けずにウリエルに渡したのはあの女を評価してあげるわ。私なら何もしなかった」
「……ミェースチ様。頼まれたため。今回は裏切らせて貰います」
「裏切るね。いいわよ……でも、聞けば私に会いに来るそうじゃない。お通ししなさい」
「手を出さないことを約束いただけるなら……」
「………さぁ。会ってみないとわからない」
「わかりました。お任せします。開戦準備もしておくのでご安心を……では、失礼しました」
「待ちなさい」
「はい」
「母上言わないの?」
「処分期限内です」
「……期限言ってなかったわね。いいわ、もう終わりよ」
「ありがとうございます。ミェースチ様」
「ふむ……わかった。怒ってるのね」
「そんなまさか……」
「では……母上と呼びなさい」
「ミェースチ女王陛下」
「………怒ってるじゃん」
「怒ってません」
ウリエルは満足した状態でその母上の問いを信じる事にし。扉の外で盗み聞きしている3人に今の話をすることにした。帝国の動きがこれで決まると……そう考えた。
*
場所を移して会議室。鍵を閉めての報告会。盗み聞きしていたために内容は説明せずとも大丈夫だろう。
「と言う事らしい」
「ウリエル。わからないと言ったのか……あの母上がな……」
「大健闘ね。敵に慈悲はなかったのに……ウリエルお兄様も怖くないの凄いわ」
「ガブリエル……君達をどれだけ庇ったか覚えがないかい? どれだけ被ってきたかを」
「「「ごめん」」」
「いいですよ。好きで庇ってます。それよりも………」
ウリエルは考える。
「ラファエル。君が彼女の護衛兼監視と案内役は出来るかね? 番隊長であるが……」
「ウリエル、出来る。魔法隊は平時はただの騎士だからね。騎士の真似事は出来る。それに何人もつけるより……自分一人の方が信頼出来ると言うんだろ? ウリエル」
「その通り……ラファエル。騎士として君を使いたい。一番信用出来る。何十人つけるよりも」
「仰せのままに……兄上」
「ホモくさい……」
「ガブ姉!! それは怒る!!」
「ミカエル!?」
ミカエルがガブリエルをお説教を始め、ラファエルとウリエルはそれをいつもの事と無視して話を進める。
「宿泊は?」
「城の中」
「そうか……でっ謁見も済ませて……一月かな?」
「一応、一月以上冬の間に泊まり雪解けで暖かくなったら帰れるだろう。それよりも……連合がうまく動けてないらしいな」
「動けてない?」
「同盟が少しうまく動けていない……圧倒的に勝てるなら攻めてくる気配が無いことを見るに……反戦意識もあるようだ。それを黙らせる。怒りを持たせる方法が……これだろう。友好的に国交回復を目指すように仕向け姫に謝らせるように動かし」
「メイチェル姫暗殺か……謝ってるのに友好的にと言う言論が全て消える」
「それでやっとまとまるのかもしれない。僕ならそうする。戦うなら……征服より復讐のが戦っても胸を張れるだろう。弱い者苛めではなくなるからね」
「……だから。隣国は攻めず。鎖国してるのだろうな。まぁ何故かゆっくりと帝国に入って属国化してるな……生活豊かだと憧れるから」
「ですね。難民に武器を持たせで革命させる手もありますが……学園がその難民も少し受け入れているのがいいんでしょうね。でっ……卒業後。国を奪って領主で帰って来ると言う」
「そう……だな。まぁ洗脳ではあるが……うまく行っているうちはそのままだな」
「ええ……話が脱線しましたね」
「ああ。そうだね。脱線した……農業用トロッコより真っ直ぐ走らないね」
「二人ともひねくれてるからね。ははは」
「ウリエルがひねくれてるとは思えないけど?」
「ラファエル……見た目だけで評価はしてはならな
いよ」
ウリエルは指を立て静かにと仕草をし、秘密があること示す。ラファエルは……兄の秘密までわからいため。流石ウリエルしか思わなかった。兄に対して盲目になるラファエル。そうこうしているうちにガブリエルがシュンとした状態で謝りだす。
「……ラファエルお兄様、ウリエルお兄様……ごめんなさい」
「まぁいいですよ。ラファエルも大丈夫ですよね? 気にすることも……」
「ガブリエル、私は肯定するから謝らなくていいよ」
「「「!?」」」
「そっちも大丈夫か……知りたくてね。ミカエル」
「ラファエル兄ちゃん!? 冗談だよね!?」
「冗談、ガブリエルも暗器出さない」
「心臓に悪いよ……ラファエル兄ちゃん」
「ふふふ……今はね」
ウリエル、ガブリエル、ミカエルはラファエルに危機感を覚え。あの1件から……ラファエルに壁を作る3人。
「と言うことで話も終わった事です。晩御飯奢るから何処へ行こうか? 鰻行く?」
「……行きましょう」
「行く行く」
「奢りかぁ……しかも鰻……冬で喰えるの?」
「今が旬ですよ。ウリエル、ガブリエルは知っていたでしょうし、ミカエルも小さいころ食べたでしょう?」
「ミカエルが……4才5才のときじゃなかった? 骨があって嫌って」
「うぅ……忘れてるね」
「では……行きますか?」
「「「行く」」」
壁は容易く崩れ去った。
1
お気に入りに追加
272
あなたにおすすめの小説

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました
かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中!
そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……?
可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです!
そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!?
イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!!
毎日17時と19時に更新します。
全12話完結+番外編
「小説家になろう」でも掲載しています。

気だるげの公爵令息が変わった理由。
三月べに
恋愛
乙女ゲーの悪役令嬢に転生したリーンティア。王子の婚約者にはまだなっていない。避けたいけれど、貴族の義務だから縁談は避けきれないと、一応見合いのお茶会に参加し続けた。乙女ゲーのシナリオでは、その見合いお茶会の中で、王子に恋をしたから父に強くお願いして、王家も承諾して成立した婚約だったはず。
王子以外に婚約者を選ぶかどうかはさておき、他の見合い相手を見極めておこう。相性次第でしょ。
そう思っていた私の本日の見合い相手は、気だるげの公爵令息。面倒くさがり屋の無気力なキャラクターは、子どもの頃からもう気だるげだったのか。
「生きる楽しみを教えてくれ」
ドンと言い放つ少年に、何があったかと尋ねたくなった。別に暗い過去なかったよね、このキャラ。
「あなたのことは知らないので、私が楽しいと思った日々のことを挙げてみますね」
つらつらと楽しみを挙げたら、ぐったりした様子の公爵令息は、目を輝かせた。
そんな彼と、婚約が確定。彼も、変わった。私の隣に立てば、生き生きした笑みを浮かべる。
学園に入って、乙女ゲーのヒロインが立ちはだかった。
「アンタも転生者でしょ! ゲームシナリオを崩壊させてサイテー!! アンタが王子の婚約者じゃないから、フラグも立たないじゃない!!」
知っちゃこっちゃない。スルーしたが、腕を掴まれた。
「無視してんじゃないわよ!」
「頭をおかしくしたように喚く知らない人を見て見ぬふりしたいのは当然では」
「なんですって!? 推しだか何だか知らないけど! なんで無気力公爵令息があんなに変わっちゃったのよ!! どうでもいいから婚約破棄して、王子の婚約者になりなさい!! 軌道修正して!!」
そんなことで今更軌道修正するわけがなかろう……頭おかしい人だな、怖い。
「婚約破棄? ふざけるな。王子の婚約者になれって言うのも不敬罪だ」
ふわっと抱き上げてくれたのは、婚約者の公爵令息イサークだった。
(なろうにも、掲載)

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい
三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。
そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい
宇水涼麻
恋愛
ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。
「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。
王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。
その意味することとは?
慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?
なぜこのような状況になったのだろうか?
ご指摘いただき一部変更いたしました。
みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。
今後ともよろしくお願いします。
たくさんのお気に入り嬉しいです!
大変励みになります。
ありがとうございます。
おかげさまで160万pt達成!
↓これよりネタバレあらすじ
第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。
親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。
ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる