27 / 54
【我らの】ウリエル【苛めたい人】
しおりを挟む決闘場に逃げず現れたウリエル。それにラファエルが語りかける。
「ウリエル……鎧を着てどうしたんだい? ボロスのように」
「ラファエル。君が僕に何やらただらぬ想いを抱いていると聞きました」
「そうです。だから……母上から聞いているでしょう?」
「ええ、お聞きしました。ボロスも差し向けたようですね。彼女は親友であり……僕の代わりに君を止めようとしたのでしょう。ありがとうございます。ボロス」
「………ふふ。おそいわよ」
(((ボロスは泣いていい)))
ラファエルに観客席についたミカエルと元々いたガブリエルがボロスを哀れんだ。しかし……誰も言わない。その想いは自分で言ってこそだと信じているからだ。だからこそ……
「ウリエル……いいえ。兄貴」
「……なんでしょうか? ラファエル?」
「ウルルン令嬢になる気はないか?」
「真っ直ぐ言いましたね……ラファエル」
「……私は真面目に問う。ボロスに勝ったからな。目に焼きついて取れないんだ。あの姿が」
「わかりました。では……お断りします。これで意見が食い違いました。決着つけましょう」
「決着……ウリエル兄貴……今回は魔法も使っていきますよ?」
「わかっています。だから……僕も……同じように使っていきます」
「「「「!?」」」」
ウリエルが魔法をと皆が大きく驚く中で弟に対し言葉を投げつける。
「ラファエル……君が本気を出せないのは僕が魔法を使わないからだと思っていた。そして……それは間違いであり卑怯だと考えている事をあの日に知りました」
「う、ウリエル!? つ、使えるのか!?」
「使えます。使えるようにね頑張りました!!」
ウリエルが模擬剣を目の前に掲げ、撫でるように手を刃をなぞる。なぞった場所が光を伴う。
「悔しいでしたでしょう。手加減されては兄としても騎士としても、僕は手加減されているとも思うのです。だから……魔法を使ってもいいように鍛えた」
光を発する模擬剣を振る。軌跡が残り光の粒子を撒き散らす。
「特訓しましたよ……ラファエル!! 君の全てを受け!! それでも越えて見せましょう!! 兄として!! ラファエルのたった一人の兄として!! 令嬢の姿が目に焼きついているなら!! その上から兄である僕の姿を焼けつけてあげましょう!!」
ウリエルが叫び剣を再度構え直す。その勇敢な姿に皆が心を震わした。
これこそが帝国の皇子騎士。【我らの】ウリエルなのだと。
*
ドシャ……
「ぐえ……」「うぐ……」
「ありがとう。引いていいですよ」
城のミェースチの寝室にグルグルに縛られたボロスとラファエルが他の騎士によって運ばれる。ミェースチはコーヒーを飲んでいたのを驚きながらカップを皿に置いた。思った以上に面白い結果が生まれたのだろうとミェースチは思う。
そう……ラファエルはやりきった顔をしていたのだ。母親としてなら……良かったねと声をかけるだろう。
「ふむ。ウリエル。これは?」
「罰です。許可なく決闘場を使い結果、壊した……多くの騎士に迷惑をかけた二人と僕に処分をと」
「………」「………」
「……何があったか聞こうかしらね。ガブリエル」
スタッ!!
「はい、お母様」
上からガブリエルが降って沸き、ミェースチに説明をする。最初は彼女は静かに聞いていたが。ミェースチは少しづつ少しづつ口元が歪められ。大きく大きく笑い出す。そして、劇場を見終わったらように手を叩き。感想を述べた。
「最高にいい劇でした」
その感想にウリエルは憤りを覚えず。よかったですねと小さく答えた。
「では……無為に決闘を行った事の処分を言い渡しましょう。ミェースチ・バルバロッサの名で。ボロス!!」
「……はい」
「先ず、決闘や申請なしに使用した事も約束破りで処分は下さん………それよりも!! ラファエルに負けたことのが処分が重いと思え!! 私の半身と言われるのならば勝つことが全てである。1月ウリエルを使用する事は禁ずる。元はと言えばお前が令嬢として連れ出したのが原因であり!! ウリエルに甘えが見える!! 騎士団を継ぐものがそれでいいのか!! ボロス!!」
「い、いいえ!!」
「ならば!! ウリエルに頼るな!! ボロス……お前はウリエルを越えて主席だった。その肩の使命は重いぞ。では……去れ。今日から一月ウリエル禁止だ」
「はい……その処分を重く受けとります」
紐を解かれ、ウリエルにおじきをし……寝室から出ていく。その背中は……非常に寂しさが具現化しているほど暗い。
ウリエルはその時に思う。処分軽いなと。
「ラファエル……」
「はい。母上」
「薬はどうした?」
「ウリエルにお渡ししました」
「ふむ。ウリエル返せ」
「はい」
ミェースチは小瓶を受け取り。中を開け飲み干す。二人は驚きながら様子をうかがっていると……憎たらしい顔を向けた。
「わかったか?」
「………はい母上。騙されたのですね……私は……」
「そうだ。ラファエル!! お前の兄に対する執着。楽しかったが!! ボロスの代わりに申請せず決闘した事をつぐなえ」
「はい……お受けします」
「よし。お受けしますと言ったな!! ラファエル……今度の休日に反省分を書き。その中でウリエルの素晴らしい所を10分。家族全員の前で演説を行え。それも愛しい兄上のウリエルの目の前でな」
「……………」
「返事は?」
「………はい」
ウリエルは戦慄し震える。予想よりも酷く重い処分と流れ玉が自身に当たることに。ウリエルも処分を受けるつもりだったが。ラファエルの処分の巻き添えを喰らうことが決定する。
「では、ラファエル。去れ」
「………はい。ごめんよウリエル」
「大丈夫です。頑張ってください」
「………」
ウリエルは穴があったら入りたいと思う事が決定する。ラファエルも重たい足取りで寝室から出る。ガブリエルも同じように去り。ウリエルだけが最後に残った。
「はぁ……ウリエル。処分は決めればよかったのに」
「いえ……やはり母上がお決めになることが一番だと考えました。楽しめたでしょう」
「うん!! めっちゃ楽しい!!」
皮肉を込めて子供のような無邪気に笑い。それにウリエルは……素直に喜ぶ。よかったと。
「だが……まぁ。ウリエルにもわかるような処分を決めよう。不公平だ」
「覚悟してます」
「それは最後にして……少し世間話をしよう……実は性転換の薬本当にある」
「…………えっ?」
ウリエルはミェースチが楽しむために嘘をついたのかと考え、ラファエルはそう信じてしまっている。だが……それも嘘だと言う。
「まぁ、細かく語りたい。聞いてよウリエル」
「は、はい」
「最初はシャルティエを男にし幻滅や、人生を滅茶苦茶にしてやろうと開発を考えてたの。依頼を出してね。でも途中……それはシャルティエを殺して別人にしてしまう気がして依頼を取り止めて数本試作品が残ったわ。女のシャルティエに復讐したいのね」
「僕は商人が性転換させられたと聞いてましたけど?」
「嘘は真実と混ぜるの。商人はそのまま奴隷として売ったわ。それは真実。そして……性転換の薬は真実だけど。飲んだら性転換するとは言ってないわ」
「……使い方が違うのですか?」
「そうよ。風呂桶に入れつける。ネズミで実験したわ。そしたら……変化する痛みか悶えて絶命し、解剖して子宮などの両性を確認。結果、欠陥品とわかった。苦しんで殺して。死んだあとに犯させ、豚の餌も考えたけど。それじゃぁ1回でシャルティエは遊べなくなるわ。そんな御都合主義な薬なんてないのよ。簡単に騙されてからに」
ウリエルはあまりの残酷な考えに震え、そして騙されたと気付かされる。 母上の異常性が心にある事を思い出させたから簡単に言葉に乗せられたのだ。
母上ならやりかねないと。
「ふふ……本当に語るの楽しいわ~騙したのもね……まぁウリエル。秘密にしていてね。薬はあるけど危ないからダメよと」
「言える訳がないでしょう。母上」
「ふふふひふ!! 人なんて私は大丈夫と思って飲むものよ。私みたいにね」
「………!?」
「気付いた? 一応飲めば毒よ」
ウリエルは……震える体に……流石母上と感心し笑みを見せるのだった。
「あっ……処分決めた。ウリエルあなたの処分は~」
ミェースチの子供っぽいイタズラ声に癒されながら。ウリエルは処分を聴き。結果………心が割れそうになるのだった。
*
次の日。帰って来たミェースチにソファーの上でウリエルは迫られる。
「ウリエル~」
「………」
「ウリエル。答えなさい」
家族全員は何があったのかを見つつ。成り行きを見ていた。そして……
「ウリエル。私はだーれ?」
「……ママ上」
「もう一度」
「……………ママ上」
「よくできまちゅたねー……ふふふ!! はははは!!」
「ぷっ」「くっ!!」「ぷふっ」「クク」「……んぐ。ワシ……我慢できん。がははははは」
「くっ……ころ!!」
ウリエルの母をママと言わないといけない処分にウリエル以外の家族全員指を差して笑うのだった。
0
お気に入りに追加
272
あなたにおすすめの小説

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない
曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが──
「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」
戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。
そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……?
──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。
★小説家になろうさまでも公開中

気だるげの公爵令息が変わった理由。
三月べに
恋愛
乙女ゲーの悪役令嬢に転生したリーンティア。王子の婚約者にはまだなっていない。避けたいけれど、貴族の義務だから縁談は避けきれないと、一応見合いのお茶会に参加し続けた。乙女ゲーのシナリオでは、その見合いお茶会の中で、王子に恋をしたから父に強くお願いして、王家も承諾して成立した婚約だったはず。
王子以外に婚約者を選ぶかどうかはさておき、他の見合い相手を見極めておこう。相性次第でしょ。
そう思っていた私の本日の見合い相手は、気だるげの公爵令息。面倒くさがり屋の無気力なキャラクターは、子どもの頃からもう気だるげだったのか。
「生きる楽しみを教えてくれ」
ドンと言い放つ少年に、何があったかと尋ねたくなった。別に暗い過去なかったよね、このキャラ。
「あなたのことは知らないので、私が楽しいと思った日々のことを挙げてみますね」
つらつらと楽しみを挙げたら、ぐったりした様子の公爵令息は、目を輝かせた。
そんな彼と、婚約が確定。彼も、変わった。私の隣に立てば、生き生きした笑みを浮かべる。
学園に入って、乙女ゲーのヒロインが立ちはだかった。
「アンタも転生者でしょ! ゲームシナリオを崩壊させてサイテー!! アンタが王子の婚約者じゃないから、フラグも立たないじゃない!!」
知っちゃこっちゃない。スルーしたが、腕を掴まれた。
「無視してんじゃないわよ!」
「頭をおかしくしたように喚く知らない人を見て見ぬふりしたいのは当然では」
「なんですって!? 推しだか何だか知らないけど! なんで無気力公爵令息があんなに変わっちゃったのよ!! どうでもいいから婚約破棄して、王子の婚約者になりなさい!! 軌道修正して!!」
そんなことで今更軌道修正するわけがなかろう……頭おかしい人だな、怖い。
「婚約破棄? ふざけるな。王子の婚約者になれって言うのも不敬罪だ」
ふわっと抱き上げてくれたのは、婚約者の公爵令息イサークだった。
(なろうにも、掲載)

【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました
かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中!
そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……?
可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです!
そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!?
イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!!
毎日17時と19時に更新します。
全12話完結+番外編
「小説家になろう」でも掲載しています。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい
三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。
そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる