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4人の王子会議前編
しおりを挟む金曜日の夜。必ず、行われる会議がある。それは他の人は家族会議と言い、王子たちの腹の探りあいとも言われ。帝国では何を話されているかで憶測が飛び交い。酒の肴にもなっている事象だった。
虚報が飛び交う中で、いつものように王子と姫は集まる。
カチャ
念入りに鍵を閉め、誰も入らないようにされた密室でそれは行われるのだ。
「……おほん。ラファエル、ガブリエル、ミカエル。しっかり、今日も来たね」
「来るしかないでしょ‼ ウリエル兄さま!!」
「来るしかないね。ウリエル」
「来るしかないよなー兄ちゃん」
「はい。そうですね皆さん……では議題を……ガブリエル」
机と椅子に座り、4人が面と向かって深刻な顔をする。
「はい……私から。母親に旅行を誘われました。ミカエルもでしょ?」
「もちろん。護衛で」
旅行をと言うのは外遊である。皆の母親は皇帝の妻として権力を持ち。辺境に遊び出掛けてお金を落とす事で発展を助けるという面があった。だが………今回は……自領土ではない。
「行き先はもちろん」
「噂通りです。ウリエルお兄様。王国へ向かいます」
「「「はぁぁ~…………はぁ~」」」
3人が深い溜め息を吐いた。王国は隣国であり、一応は外交官も出入りしている。昔は不干渉地や国を一つ挟んでいたが王国が騎士を動かし国を取ろうとし、母親も動き、支援をして1~2年の戦争の末に王国の土地となった。
そのせいで王国と帝国は領土が隣り合わせになり、緊張が生まれる。なお、帝国側は支援の理由をしっかりと公表していたため。なんとも言えない情況なのだ。王国からは1、2年も費やされたのだから……母親はもちろん帝国も嫌われているだろう。
「護衛依頼は? ウリエル」
「ラファエルは無いのだな。こっちも無い。話を聞くとガブリエルとミカエルの個人騎士のみだ」
個人騎士とは……冒険者や傭兵など。フリーで活躍する騎士の事である。学園卒業し、騎士団に入らない人がそう呼ばれる。しかし、教育を受けた騎士であり成功者も多い。騎士の身分は保証されているためだ。
「個人の警護。今の情勢を見ると……帝国の暗殺者は? ガブリエル」
「ウリエル兄さま。知らないわ。ミカエルは?」
「動きがない。理由は帝国からは暗殺者は出ない」
ウリエルはそれを聞き。帝国内の母上の評価に満足しながら……質問を自分に投げる。
「母上なら……どうする……考えろ。僕なら……」
ウリエルは頭を押さえ悩み、恐ろしい事を考えた。ふと……母上の泣き顔を思い出す。たまにだが……
「母上は王国で死ぬつもりだ」
「やはりか……」
「見届け人はミカエルか私ね……」
「本来は自害なんて貴族は富や名声を捨てるような物。しかし……母上の大前提は」
「「「「復讐」」」」
4人がハモる。同じ事を思い付いたようだ。
「母上が王国で暗殺された場合。父上はもちろん。薔薇騎士団員や帝国から国と認められた者たちが蜂起するだろうね。薔薇騎士団長はもちろんボロス。彼女は母上を崇拝しているから……死力を尽くすだろう」
「ウリエルの話からすると。シナリオは……母上の暗殺は王国によってとされ、帝国内の世論を王国との戦争となり。全面戦争を始める。結果、我々が勝ち。王国は無くなり……復讐は完成するか……」
「私たちが勝てる見込みがあるから……今、なんでしょうね。ラファエル、ウリエル兄さま方。勝算は?」
「絶対はない。しかし、絶対に近い所まで目指すのが我々だ」
「ウリエルと同じですね。やってみないとわからない部分は多いですが……王国は都市連合の猛攻を防いだので何とも言い難いです」
「………」
「ん? ミカエルは黙ってどうしたの?」
「名だたる名将……【皇后の半身】ボロス。【蒼い魔導騎士】ラファエル。【我らの】ウリエル。【不敗】バルカス。【大陸最強騎兵】ネクター。【生まれを違えた皇帝】ロイド。【四方騎士の栄光】ガヴゥ……もっとあるかな?」
ミカエルが色んな名だたる騎士の二つ名と名前を名乗った。何を話しているのかと皆が思うなかで……最後に締める。
「王国側に大陸で名を響かせる騎士は居ますでしょうか? 兄さんたち」
「……」「……」「……」
「中には王国から……活躍求めての人が一人二人はいますね。そういう事です。まぁ王国も気が付き、お金や優遇で引き抜きは減りましたが。一期生のバルカスさんやネクターさん。ガヴゥーさんは皆……王国側下級貴族からですね。まぁ……こんな中でやっぱり【皇后の半身】ボロス姉さんは化け物ですけどね」
ウリエルが頷く。
「…………ミカエル。確かに……今、攻めずしていつ攻めるかと問われるな。帝国軍は異常なほど若返った。悲しいが母上が求める復讐の槍が整ったと言うべきなのだな」
「兄ちゃんたちは慎重だ。過大評価せず……故に強い。逆に僕は王国はそこまで愚かでもないとも思う。あの母上を出し抜き、勝った者が王だ。実は暗殺者は出て来ないとも思う。敵からの話では戦うべきではない」
「なるほど。ミカエルの言う通りだな……でも反乱や不満。王国が潰れれば幸せになれると思うものもいる。戦争で利益が出る商人もいる。そう言った者はやはり……手を出すだろう」
「……ウリエルの言うとおり楽観的だ。敵は自分たちより愚かな場合もある。常識に捕らわれてはいけない」
「知ってる。だからこそ……母上は……今の王国を測りに行くのではないかと僕は考えた」
「………ミカエル!? やはり素晴らしい」「ミカエル!? そうか……」「……流石ミカエル」
「いきなりの絶賛されてビックリだ」
「いや……あの母上なら……やりかねんと思ったのだ」
皆がミカエルの敵情視察と言うのも考えた。本来はそんなスパイは殺されても何も言えない行為。だが……母上なら。喜んで飛び込み。あわよくば殺される事も想定しながら。王国を今の時期に測りに行くので納得出来る。そう……胸を張って女王で入ればいいだけなのだ。
皆が上を見る。母上のおぞましい高笑いに剥き出す歯が想像できた。狂言と狂作戦。劇場の演技よりも醜悪で復讐に囚われた悪役令嬢の姿に。
「……はぁ。まぁ覚悟はしましょう」
「ウリエル、そうですね。あれでも素晴らしい母上ですし……完璧でもない所が人間らしいです」
「そうですわね。ミカエル……もし戦争なったらどうする?」
「偵察任務等。危険な任務をつくよ」
「ミカエル……だめよ」
「姉さん。それで死んだら俺はそこまでの人間だっただけさ。誰もやりたがらないことをして兄さんたちに負けない名声を得るよ」
「わかった。私もミカエルと同じ事をするわ」
「……まぁどうなるかわかりませんが。同行する二人に任せます。以上で話し合い終わりです」
パンッ!!
ウリエルが時計を見て手を叩く。その合図に皆が時計を確認後にスイッチを切り替えた。
「今日はウリエルが持ってきたのですよね? 今日は何処産のを?」
「ラファエル。ボロス家のワインを騎士団から抜き取った。いや……ボロスからいただいた」
「親友が共犯ですか。いや……実家のワインを騎士団に入れるのもどうかと」
「実家だけではないけどね。大量に仕入れるから農家は嬉しいと聞く。赤ワインです。味は芳醇で……よく色んな騎士団に持っていっております。あと……なんと一本は15年前の逸品です」
「「「おお……」」」
ウリエルがなれた手つきでワインの入った箱を空け、温度を吸っていた魔石を抜き取り。テーブルに置く。ガブリエルがワイングラスに注ぐ。そして……ワイングラスを皆が持ち。
「「「「お疲れさまでした!!」」」」
カン!!
グラスを当てる。四人以外が想像する王子だけの会議……………それは……小さな報告会と何も気兼ねなく誰の目線も感じることもない。ただの飲み会がメインだった。
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