2 / 54
絶対悪役令嬢だった母(今も)
しおりを挟む負けたと言う事がわかったのは……憎い田舎娘に婚約者の王子を取られた事よりも断罪されているこの状況に陥った時のことで理解した。若くても理解できる。
田舎娘とバカにし、弱々しい彼女にヘドが出た。そんな彼女を苛めていた。そんな苛める私と対照的に金髪の王子は私を差し置いて仲良くしている。
彼女を庇い私を指差して。行ってきた悪事を全て暴露されていた。
そう……政略としての婚約者として終わりを迎えている。王子と政略で戦い……そのくそったれのアマを中心に戦い……負けたのだ。
多くの大衆に私は晒され罵倒され。そして……怒りに震え取り押さえられるのがわかった。
そこからは……堕ちるに堕ちた。
華やかな令嬢ではない。家族や親族に腫れ物扱いされいつしか私は捨てられる。
そう……捨てられるのだ。
婚約者としての恩情はない。死よりも非道を選ばれた。国に捨てられ。身分剥奪。そして……帝国への売り渡し。
転落した人生。しかし、私は……あのアマに許しを乞わない。復讐してやると心に決めて胸を燃やすのだった。
*
口に詰め物を詰められ。手足を縛られ、目の前を布で隠された状態で私はある場所に連れてこられた。どうせ娼婦か、肉奴隷と思っている。自分の容姿に自信はあった。しかし、あの女にか弱さで負けたのだ。それを思い出すだけで……別に娼婦ぐらいと思うほどに怒りが沸き上がる。
ドンッ!!
「ぐっ……」
地面に投げ出され……何処かわからない場所に捨てられたのだろう。スルスルと目隠しを取り。口も自由になる。
「優しく扱っていただきありがとうございます!!」
皮肉たっぷりに使用人の女性にキバを剥く。
「ククク……元気がいい奴じゃないか」
「ん?」
「陛下……失礼します」
ガチャ……カチッ
使用人がそそくさと逃げるように扉を閉め鍵をかけた。陛下と言っていたため……私は目の前のおじさんを見る。老けているのかわからないが鋭い目付きの男だ。
「やぁやぁ……ここが何処だかわかるかな? メアリー」
「……わかるわけないわ。ずっと何も言われず連れてこられたのですものね。屋敷監禁からずっと目隠しよ。まぁーなーんか食べさせられてたけどね」
「ふむ。では……俺の名を知ったら驚くだろう。バルバロッサ。ロイド・バルバロッサだ」
「それはそれは……赤い髭に赤い髪。大きな体に燃えるような男ですこと」
私は驚いたがそれを表に出さずに相手を見つめる。とにかく赤い中年男はバルバロッサと名乗った。部屋は豪華な内装なため……貴族だろうとは思っていたが……皇帝陛下とは思ってもいなかった。動揺しているのだろう……赤い髪を見てピンっと来ないのだから。やはり……疲れている。
「抜け目のない目をしている。バルバロッサと聞いた者は皆……許しを乞うのだがな」
「赤帝………征服王、虐殺王と言われていますからね」
「そうか知っているのだな!!」
「北東方から諸外国を食い散らかす帝国の名は私の元にも届いております。ええ、国境を面しておらずまだ何も言われずにおりましたが日に日にその赤帝国は名を示していましたからね」
「そうだろう、そうだろう。いつしか喰ってくれる」
「…………」
私はどうやら。王国から帝国に国外追放。それも何もかも正反対の国に売られたらしい。国境さえ面しておらず完全に縁を切ると言う意思が見てとれた。
グイッ!!
「クク……顔は幼さが残るが素晴らしく整っているな」
近付き顎を持ち上げる。中年の強面が迫る。有名な色情狂としてこの人は有名だ。何故なら………
「どうだ? これからの生活は?」
「………噂は噂でしょう?」
「いいや……2人殺ったぞ、それも最近な」
「へぇ~」
孕ました姫を男を産めば母を。女を産めば子と母を殺すと明言しているのだ。それも……他国を攻めて手に入れた姫をだ。ただの姫でもダメである。綺麗なと噂される姫のみが対象だ。だからこそ……周辺国の姫は影武者は不細工に……生まれる姫は捨てられる場合もあり。
そう……女一つで国が滅ぶほどに色情狂として有名であり。王国ではそれを避難していた。
「……泣かないな?」
「悔し泣きなら渇れ、残ったのは怨恨のみ」
「婚約者を奪われたのだったな。ぜーんぶ知っている。知っているからこそ興味がわいた」
「興味がわくことありました?」
「若いからこそ。無邪気に分別がつかない苛めはさも激しかったのだろう?」
「……ええ。嫌いな奴が悲しむ姿は心が踊りました。メソメソしい姿を嫌いながらもね」
王子に近付き、王子が心酔し、愛を見せる弱々しい姿に苛立ちを覚えて苛め。弱々しい姿にさせるように苛めた。そしてまた苛立ちを覚えた。その無限のループに辟易しながらも苛め続け。最後は断罪。死刑は家柄のため回避出来たが……死刑同然の所まで堕ちた。
「まぁ、負けたのは私の力不足でしたから……彼女は人柄がいいので味方が多かったですね。そう考えますと………負けて当然かしら?」
「自分が悪いとは思わないのか?」
「力強くなければ令嬢ではない。その意思を曲げるほど……教育は捨ててませんわ。劣等感もある」
「クククク!! ハハハハハハ!! 面白い面白い。同じ赤い髪同士。仲良くしようじゃないか!!」
大柄な男が笑いながら私の拘束を解く。そして、抱き抱えてベットに連れ込んだ。
「どんな気分だ? 格好いいあの若い王子とまぐわえる日の約束を破られ。知らない中年に犯される気分は!!」
「知ってますわよ? 孕ませて殺すんでしょう? まぁ負けたのですから当然。死にたくなければ戦わなければいい。覚悟してましたわ。それに泣き叫び嫌がる方が好きなら……申し訳ないですが。そこら辺のメイドを捕まえてください」
「死が恐くないのか?」
「王子と彼女を巡って死刑になるのは普通と考えてました。そこまで嫌ってこそでしょう。いいえ……何でかそこまで大嫌いでした」
「では……その女が今のお前を笑っていると考えると?」
「むぐぐぐぐ」
下唇を噛む。
「いい表情だ。お前のこの境遇はアイツのせいだ……恨めよ刻んでやる。クククク」
「………ちっ」
私は初めての痛みを体に刻まれる。あの、アマの笑みを想像し悔しげに悔しげ痛みを覚えたのだった。
*
「俺から言わせるとお前が悪い」
「父上と同じく、僕もそう思います」
「ウリエルと同じ」
「ミカエルと同じ」
「母さん、その納得いかない顔をするけど。それただの弱いもの苛めと自分に持ってない才能の劣等感での苛めと王子を奪われた敗北感から来る苛めと若いから無邪気の手加減を知らないだけの子供だよ」
「………そうね。若かったの」
((((認めた!?))))
「まぁ復讐するけど」
((((ダメだった))))
1
お気に入りに追加
272
あなたにおすすめの小説

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない
曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが──
「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」
戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。
そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……?
──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。
★小説家になろうさまでも公開中

【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました
かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中!
そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……?
可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです!
そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!?
イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!!
毎日17時と19時に更新します。
全12話完結+番外編
「小説家になろう」でも掲載しています。

気だるげの公爵令息が変わった理由。
三月べに
恋愛
乙女ゲーの悪役令嬢に転生したリーンティア。王子の婚約者にはまだなっていない。避けたいけれど、貴族の義務だから縁談は避けきれないと、一応見合いのお茶会に参加し続けた。乙女ゲーのシナリオでは、その見合いお茶会の中で、王子に恋をしたから父に強くお願いして、王家も承諾して成立した婚約だったはず。
王子以外に婚約者を選ぶかどうかはさておき、他の見合い相手を見極めておこう。相性次第でしょ。
そう思っていた私の本日の見合い相手は、気だるげの公爵令息。面倒くさがり屋の無気力なキャラクターは、子どもの頃からもう気だるげだったのか。
「生きる楽しみを教えてくれ」
ドンと言い放つ少年に、何があったかと尋ねたくなった。別に暗い過去なかったよね、このキャラ。
「あなたのことは知らないので、私が楽しいと思った日々のことを挙げてみますね」
つらつらと楽しみを挙げたら、ぐったりした様子の公爵令息は、目を輝かせた。
そんな彼と、婚約が確定。彼も、変わった。私の隣に立てば、生き生きした笑みを浮かべる。
学園に入って、乙女ゲーのヒロインが立ちはだかった。
「アンタも転生者でしょ! ゲームシナリオを崩壊させてサイテー!! アンタが王子の婚約者じゃないから、フラグも立たないじゃない!!」
知っちゃこっちゃない。スルーしたが、腕を掴まれた。
「無視してんじゃないわよ!」
「頭をおかしくしたように喚く知らない人を見て見ぬふりしたいのは当然では」
「なんですって!? 推しだか何だか知らないけど! なんで無気力公爵令息があんなに変わっちゃったのよ!! どうでもいいから婚約破棄して、王子の婚約者になりなさい!! 軌道修正して!!」
そんなことで今更軌道修正するわけがなかろう……頭おかしい人だな、怖い。
「婚約破棄? ふざけるな。王子の婚約者になれって言うのも不敬罪だ」
ふわっと抱き上げてくれたのは、婚約者の公爵令息イサークだった。
(なろうにも、掲載)
【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい
三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。
そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ
曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。
婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。
美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。
そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……?
――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる