桜髪の乙女は元兄上様、魔女で絶対な悪役令嬢へと堕落す。弟を奪うために

書くこと大好きな水銀党員

文字の大きさ
上 下
65 / 71
極悪令嬢に堕ちる

弟と兄上と悪役令嬢

しおりを挟む

 兄上ことエルヴィス嬢は一人、学園を一人で歩く。私の目の前で教員用の教典を持ちながら。昔に見た幼い日の兄上の姿が思い浮かぶ。

 昔から兄上は教えは上手い。才能がありながらも、相手に対してどのようにすればわかるかを伝えられる。根本原理を理解出来る。魔法使いとして才能だった。

 そして……その才能を生かる場合。何処までなるかを私は初めてこの目で見ている。私は背中に声をかける。

「エルヴィス嬢、どちらへ?」

「ん……あら。いいのですか? エーデンベルグ様」

 兄上は止まってくれる。私に都合のいい場所に止まったと思う。個室部屋が近くにある。

「妹君の事でしょうか? 妹はシルバーライト本家にお呼ばれしておりますので監視はないです。エルヴィス嬢もこんな場所で油を売るべきではないと思います」

「ふふ、お優しい。残念なのか、私は翼をもがれました。出る杭は打たれたのです」

「本当の所は……違うでしょう」

「ええ、私が出る幕ではないです。『学園生活を楽しみなさい』と命令されてますのでね。商売も上場です。私のかわいい妹たちが使うのでいい広報になります」

「何も怖くないと言うことですか?」

「何も怖くないわけではないわ。あなたを失うほどより怖くないだけよ。死ぬよりも……私の血を分けた大切な弟ですから」

「兄上……」

「……姉上です。元凶」

「いいえ、兄上です」

 私は兄上に近付き、肩を掴んでゆっくりと壁に押し付ける。綺麗な澄んだ瞳に驚く声をあげた。

「兄上、その目は?」

「何かしら? わからない」

「両目がオッドアイ……色違いになってます」

「……魔法の影響かしらね。悪魔になった証よ」

「そこまで……どこまで私ために」

「いいえ、これはあなたのためじゃない。私のためよ……好きな子を奪いたい。ワガママ理由」

「いい理由です。すごくいい。お陰で監視の目さえ忙しい状況になった」

「そう、ねぇそろそろ肩を離してもらっても……」

ドンッ!!

 私は壁に手を置く。今さっきから、私は完璧ですと言う高慢な令嬢の兄上がいとおしく。そして、今の瞳が揺らぐ瞬間がいとおしい。

「……ヒナト?」

 俺は名前に答えず。唇を奪った。





 私は……弟を勘違いしていたのかもしれない。抑圧された獣と言うのは酷く暴れる。だから抑圧する。躾をする。大人しくなるまで、身を美しきさせるまで。

「……ヒナト。聞くけど……バレたらどうなるかわからないよ」

「兄上がここまで魅せてくれたんです。弟として……恥のないように、私も魅せます。悪い悪い兄弟としてね」

「……」

「兄上、そんな悲しい顔をしないでください」

 私の顎をヒナトが掴み、じろじろと顔を見つめてくる。値踏みするように、不安がる私の表情を楽しむように。

「兄上が私にしてくだった躾は非常に大切です。それを捨てるなんてことはしません。騎士として」

「……なら、何故そんなに悪い笑みなの」

「兄上も悪い笑みをするでしょう。私もそうします。ただし、私は私の方法で行います。エルヴィス・ヴェニス」

「………」

 私は少し、やりすぎたのかもしれない。厳し過ぎたのかもしれない。その反発がくるのかもしれない。そう、私はヒナトに強要しすぎたのかもしれない。

「兄上、いい声でこれからもよろしくお願いします」

 彼のお願いに私は答える事はしなかった。


 





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

淡泊早漏王子と嫁き遅れ姫

梅乃なごみ
恋愛
小国の姫・リリィは婚約者の王子が超淡泊で早漏であることに悩んでいた。 それは好きでもない自分を義務感から抱いているからだと気付いたリリィは『超強力な精力剤』を王子に飲ませることに。 飲ませることには成功したものの、思っていたより効果がでてしまって……!? ※この作品は『すなもり共通プロット企画』参加作品であり、提供されたプロットで創作した作品です。 ★他サイトからの転載てす★

片想いの相手と二人、深夜、狭い部屋。何も起きないはずはなく

おりの まるる
恋愛
ユディットは片想いしている室長が、再婚すると言う噂を聞いて、情緒不安定な日々を過ごしていた。 そんなある日、怖い噂話が尽きない古い教会を改装して使っている書庫で、仕事を終えるとすっかり夜になっていた。 夕方からの大雨で研究棟へ帰れなくなり、途方に暮れていた。 そんな彼女を室長が迎えに来てくれたのだが、トラブルに見舞われ、二人っきりで夜を過ごすことになる。 全4話です。

処理中です...