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極悪令嬢に堕ちる
頭のおかしい学園生活
しおりを挟む兄上が学園に顔を出さなくなって時間が立った。あまりにも変わった姿に困惑する令嬢の方々。そして、たまに顔を出したと思えば……皆が距離を取る。そして……
「あらあら、今日も綺麗なお人形さん。ご機嫌麗しゅう」
「エルヴィスさんもご機嫌麗しゅうございます」
そう、真っ赤なドレスと扇子を持って。白い髪はドレスの色を吸い出したように桜色を見せており悪口の種となる。実際は……本当に血なまぐさい世界を生きているようだ。エミーリアも負けじと睨み返すがそれを遮るように私は前に出る。
「エルヴィス嬢、少し挑発がすぎるのではないですか?」
兄上はムッとした表情を見せる。庇う事にどうやら嫉妬に近い念を持っているようだ。周りは一触即発の空気を醸し出すが。私の目からは駄々をこねるかわいらしい兄上にか見えなかった。露骨な感情表現にほくそ笑むが首を振り、顔を引き締めた。
「何かしら? 聖女の騎士様」
「エルヴィス嬢。周りの目もございます。そんな醜い笑みを向けずともよいではないでしょうか?」
通訳、今日はもうお帰りください。
「……」
兄上は扇子で顔を隠すが、露骨に目線は下がり。ショックを受けているのがわかった。周りの令嬢も溜飲が下がっただろう。だが……私も困った。ショックうけてるのが分かりすぎてしまう。
「はぁ、エルヴィス嬢。お帰りください」
「……そうする。ハルト君に会いたいと伝えておいて」
素直。兄上はそのまま背中を向けて去り。隣の聖女は勝ち誇った表情をしており。私はため息を吐いた。
兄上は変わったと思ったが。感情を隠さなくなったことだけのようだ。本当に年相応の女性であった。
*
「……エルヴィス嬢から俺に?」
「ええ、兄上から会いたいとね」
「……婚約破棄についてかな? 僕のように」
「でしょうね。兄上はやっと落ち着いたと言うのでしょうね。兄上だけが」
3人だけで部屋に集まり、聖女から距離を取って話をする。兄上の激変を知るセシルは最近、大人びており落ち着きがあった。そして……エルヴィス兄さんの魔法に非常に興味を持ち調べている。最初は非常に暗い顔だったが、エルヴィスの悪名が広まる中でスッキリした顔になる。心の中で整理がついたようだ。
「エルヴィスだけがなんてなにを知っている?」
「表だっての活躍は特別先生就任。令嬢の集まり勢力拡大ぐらいですね。お店に服を卸し、資金繰り。裏では裏組織殲滅後にそのまま後釜に座り。3人の悪女たちが暗躍中。裏で殺し合いもあるだろう。なお、特別特権持ちです」
「……」
ハルトは腕を組み、唸る。
「数ヶ月……何も俺に言わないから何をしてるかと思えば……令嬢なんて甘い物じゃない。目的はなんだ?」
「それはハルト君自信で確かめてください。兄上は……兄上のままです。ただ……今まで我慢していたのをしなくなっただけです」
「……ヒナト君。僕は恐ろしいと共に何か歪んで見えるよ。だけど……変わらないと言うことは演じている面があるんですね」
「演じてますね。ただ、演じてない部分もありますよ。根は全く変わらなかったんですよ」
「……わかった。ヒナト。俺は自分の目で愛した女性の変化を見る。剣を向けようが問題ないな」
「脅しで屈するかどうかも確認してください。そして……魔法を認めてください。ハルト君」
「ヒナト……魔法使いになれば近付けるんだな」
「魔法使いじゃないと話せない事があるんです」
私はハルトに言えない事を伝える。セシルには言えるのだが、特権持ちの件である。『聖女』も教会の特権持ちとも言えるので対になっているような物である。逆に狙ったわけではない。誰の差し金かを見定めるべきだ。きっと、あの商人が手を引いているだろう。信用がある相手でよかった。
「……」
「ヒナト、物思いに耽ってどうした?」
「すいません。少し考えてました」
「……ヒナト君はエルヴィス嬢が話で考える事が多くなったね」
「ええ……皆が思ってるほど。甘くない話なんです。王権に振れている部分さえあり。出る杭として打たれる筈です」
「確定みたいな言い方だな」
「確定ですよ。すでに……動きがある」
私は予想をするが……今の四面楚歌の状況はそういう事だろ。だが兄上は突き進むだろう。王権の一部を手に入れるために。対抗馬……聖女の力を越えるために。
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