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悪役令嬢になる前の兄上
兄上の寝込み
しおりを挟むつつがなく、学校へ数日でもしっかりと通うエルヴィス。エルヴィスの豆な性格のお陰で通うと思っていたが、本当に通ってくれる保証もないため胸を撫で下ろして昨夜、就寝したヒナトは日が昇らない時間前に目が覚める。
理由はもちろん……休日だからこそ。確認したい事があったからだ。
「ん、少し眠いですが。見るためです」
そう、ヒナトは兄上が姉上となった状態での寝起きを見たいと思ったのだ。だからこそ行動に移す。
「まだ起きて来ないでしょう」
寝巻きの姿のまま、エルヴィスの寝室までいくと……綺麗に布団を少し歪まし、抱き締める少女の姿で寝ていた。元々身長が伸びにくいと嘆いていたのを思い出しながらベットのへりに座る。
魔力のカンテラを机に置き、光を調整しながら綺麗な桜色の髪をヒナトは触れ、穏やかに寝るエルヴィスを見続けた。起きる気配がない。
「……」
まだ日も上がらない時間に、ただ無音でエルヴィスをヒナトは見続ける。綺麗な長い睫毛や柔らかそうな閉じられた唇など……細部はいつものエルヴィスだと思いながら。ただ静かに一緒に部屋にいる。
「……はぁ」(自室に帰りますか……)
ため息1つ、欲を落ち着かせたヒナトは立ち上がろうとする。すると……
ギシッ
「ん……ヒナト……?」
音がしてしまい。その小さな音でエルヴィスが反応してしまう。ヒナトはその掠れる声にドキッとしながらも、平常を保ち。心に感情に仮面を被り、演じる。
「はい……兄上」
「……ん」
スッ
男らしく答えられたとヒナトは胸を撫で下ろした瞬間だった。服を掴まれて勢いよくベットに引っ張られる。
思いの外に強いちからにヒナトはベットの上で手を押さえ。眠気眼のエルヴィスと目が合う。綺麗な瞳に自身の姿写ったヒナトは心臓は熱くなり、どうにかなりそうだった。
「全く……怖いのだろう……お兄ちゃんが一緒に寝てあげるから安心するといい」
「兄上?」
エルヴィスが強く。ヒナトを抱き締めてぐいとベットに誘う。そのまま頭を撫でたあとに……微かな寝息を立て始める。
「兄上?」
「……」
ヒナトは柔らかい胸に抱かれる中でちからを抜く。懐かしい兄上の匂いと優しさに仮面は外れ。強張った表情が柔らかくなりそのまま目を閉じる。
いつから一緒に寝ることがなくなったのかを記憶の奥から探しながら。
*
「ん……んん。ふぁあああん」
「……」
「……………!?」
早朝、太陽が昇り始め窓に明かりが入ってくる中で起きたエルヴィスは抱き締めている存在に気付く。
「ん……あ、おはようございます。兄上」
「なんで、ヒナトが俺の腕の中に!? いや!! 何に怖がって来たんだ!? 化け物いたのか!?」
「いや、落ち着いてください……兄上の寝顔見たら。兄上に捕まったんです」
「寝顔を見に……おまえ……変なことするな」
「ええ、変ですね。ははは……」
「……よっと」
エルヴィスが手を離しベットから立ち上がる。寝巻きの姿のまま背伸びをし、ヒナトを見る。
「……休日だなぁ。何しようか……ヒナトの用事は?」
「今日も学校です」
「……学校? ああ、優等生だもんな。大変な事だな」
「ええ、ですが。必要な事なのです」
ヒナトも起き上がり背伸びをしたあとエルヴィスを見る。エルヴィスは首を傾げポンっと手を叩く。
「遅刻するんじゃないか!?」
「朝食食べられる時間はありますよ兄上」
「朝練はしないのか?」
「今日の学校でたっぷりできます」
「そうか。俺の思ったより大変なんだな……使用人に言って作って貰おうか?」
「休日休んでます」
「経費削減……仕方ない。やること決まった」
エルヴィスが頭を掻き、ヒナトの手を掴む。
「ほら、ホットケーキ焼いてやるからささっと食べて支度しな」
「………はい」
ヒナトは返事の後は黙り、エルヴィスに言われるまま朝食を食べたのだった。
*
通学路で騎士の鎧を着る二人にヒナトは挨拶をする。
「おはよう、ハルト、セシル」
「めっちゃ元気やな、お前」
「何か良いことでもあったのでしょう。何がありました? ヒナト」
「兄上と寝た」
「「!?」」
「驚く事でもないでしょう?」
「あっいや……えっとな……その」
「……気が早いというか。その」
「……どうして赤くなるのですかね? ただ本当に仲良く寝ただけですよ」
「あってめぇええ!!」
「はぁ、騙されましたよ。行きましょう学校へ」
「ははは、結構二人ともウブですね」
「畜生」
「ええ、そうですね」
通学路で3人は仲良く登校し、学校で令嬢に挨拶をするまで談笑する。そしてエルヴィスは……
*
「おはよう、エルヴィス。買い物いくわよ。エプロン脱ぎなさい」
「母上……帰ってください」
「いいえ、ヒナト退学させるわよ。あなたの行動次第なのはわかってる?」
「くっ……」
実母に捕まっていたのだった。
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