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花びらの舞い散る夜に…
49日
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あれから僕は、ずっと真っ暗闇を手探りで歩いている日々を続けていた。
気づけば、49日がやってきていた。
先生と別れたあの日から、取り憑かれたように週刊誌の記事を漁った。
健斗さんを殺した犯人を殺してやりたい。
気づけば復讐の闇にのまれていた。
ピンポーン
ガチャ…
「はい」
「ちゃんと食ってるか?」
先生の好きは、嘘じゃなくて…
あれから、毎日のようにやってきていた。
「さようなら」
「おいおい、待てよ。冷たいな」
「何のようですか?毎日、毎日」
「49日だろ?お墓どうするんだ?」
「別に、貴方に関係ありませんから…。それと、それ、持って帰ってもらえませんか?冷凍庫にはいりませんから」
扉を閉めようとしたのを先生は、足でとめた。
「悪いけど、もう遠慮しないから」
「ちょ、ちょっと」
無理やり家に入ってきた。
「不法侵入ですよ」
「合意だろ?鍵、開けてくれたし。お邪魔しまーす」
先生は、僕の言葉何か聞かずに上がっていった。
僕も、リビングに行く
「冴草さん、助けられなくてすみませんでした。もう、痛みはないですか?もう、辛くはないですか?やっと、解放されましたか?」
先生は、健斗さんに話しかけていた。
ポタポタと僕の頬を涙が濡らしてきた。
そう言えば、あれから取り憑かれていた僕は、涙なんか流していなかった。
「浜井さん、死んだ人は許す事しかしないって知ってますか?」
「えっ?」
「俺も、昔調べたんですよ。医者になる前に、どうやって殺そう、どうやって、やってやろう、そんな事を探していた時があったんですよ」
「五木結斗さんですか?」
「あぁ、調べましたか?そうです。結斗を亡くしてね。調べたんですよ。どうやってそいつを殺すか…。未成年だったでしょ?もう、出てきてるかな?15年ぐらいでしょうし?どうでしょうか?」
先生は、今でも五木結斗さんが好きなのがわかる。
「先生も、許せていないんですね」
「浜井さん、許せるわけないじゃないですか。未成年と言うだけで、あいつはまた戻ってくる。生きて、この世界にやってくるんです。自由も未来もある。でも、結斗にはもう何もないんだ。浜井さんだって、わかるでしょ?冴草さんは、もう肉体だってないんです。相手は、ご飯を食べて笑って今も生きてるんですよ。もしかしたら、結婚だって子供だっているかもしれないんです。失ったものは、こんなにも苦しんでいるというのに…。」
僕は、先生の言葉が胸に突き刺さって涙が流れ続ける。
「先生」
「それでも、許しなさいって。あの時、調べまくった何かの本に書いてあったんです。それでも、許しなさいって。死んだ人は、許しているから、生きてる人も許しなさいって…。」
先生は、ボロボロと泣き出した。
「先生、大丈夫ですか?」
「あの日、冴草さんを見た時に、事件なんだとわかったんです。だから、どうしても助けてあげたかった。私が、もっと天才だったら助けられました。ただの凡人だった。だから、助けられなかった。申し訳ありません。」
先生は、深々とお辞儀をした。
「やめてください。先生が悪いわけじゃありません。」
「私は、結斗の事を見た日に医者なら助けられると思ったんです。でも、いざ医者になって気づいた。助けられる命は、限られてるって…。私は、神様ではなく、ただの平凡な人間(ひと)であると気付くんですよ。そしたら、何のために医者でい続けるのかわからなくなる。その葛藤で、やめていった人も沢山知ってます。」
「先生は、健斗さんを6月まで生かしてくれたじゃないですか…」
「それは、冴草さんの力で、私の力じゃありませんよ」
今まで、鬱陶しい存在だった先生が、急に傍に居てあげたい人に変わったのを感じた。
「冷凍庫のもの、持って帰ります。もう、お節介はしない方がいいですよね。」
そう言って、先生は涙を拭って立ち上がった。
気づけば、49日がやってきていた。
先生と別れたあの日から、取り憑かれたように週刊誌の記事を漁った。
健斗さんを殺した犯人を殺してやりたい。
気づけば復讐の闇にのまれていた。
ピンポーン
ガチャ…
「はい」
「ちゃんと食ってるか?」
先生の好きは、嘘じゃなくて…
あれから、毎日のようにやってきていた。
「さようなら」
「おいおい、待てよ。冷たいな」
「何のようですか?毎日、毎日」
「49日だろ?お墓どうするんだ?」
「別に、貴方に関係ありませんから…。それと、それ、持って帰ってもらえませんか?冷凍庫にはいりませんから」
扉を閉めようとしたのを先生は、足でとめた。
「悪いけど、もう遠慮しないから」
「ちょ、ちょっと」
無理やり家に入ってきた。
「不法侵入ですよ」
「合意だろ?鍵、開けてくれたし。お邪魔しまーす」
先生は、僕の言葉何か聞かずに上がっていった。
僕も、リビングに行く
「冴草さん、助けられなくてすみませんでした。もう、痛みはないですか?もう、辛くはないですか?やっと、解放されましたか?」
先生は、健斗さんに話しかけていた。
ポタポタと僕の頬を涙が濡らしてきた。
そう言えば、あれから取り憑かれていた僕は、涙なんか流していなかった。
「浜井さん、死んだ人は許す事しかしないって知ってますか?」
「えっ?」
「俺も、昔調べたんですよ。医者になる前に、どうやって殺そう、どうやって、やってやろう、そんな事を探していた時があったんですよ」
「五木結斗さんですか?」
「あぁ、調べましたか?そうです。結斗を亡くしてね。調べたんですよ。どうやってそいつを殺すか…。未成年だったでしょ?もう、出てきてるかな?15年ぐらいでしょうし?どうでしょうか?」
先生は、今でも五木結斗さんが好きなのがわかる。
「先生も、許せていないんですね」
「浜井さん、許せるわけないじゃないですか。未成年と言うだけで、あいつはまた戻ってくる。生きて、この世界にやってくるんです。自由も未来もある。でも、結斗にはもう何もないんだ。浜井さんだって、わかるでしょ?冴草さんは、もう肉体だってないんです。相手は、ご飯を食べて笑って今も生きてるんですよ。もしかしたら、結婚だって子供だっているかもしれないんです。失ったものは、こんなにも苦しんでいるというのに…。」
僕は、先生の言葉が胸に突き刺さって涙が流れ続ける。
「先生」
「それでも、許しなさいって。あの時、調べまくった何かの本に書いてあったんです。それでも、許しなさいって。死んだ人は、許しているから、生きてる人も許しなさいって…。」
先生は、ボロボロと泣き出した。
「先生、大丈夫ですか?」
「あの日、冴草さんを見た時に、事件なんだとわかったんです。だから、どうしても助けてあげたかった。私が、もっと天才だったら助けられました。ただの凡人だった。だから、助けられなかった。申し訳ありません。」
先生は、深々とお辞儀をした。
「やめてください。先生が悪いわけじゃありません。」
「私は、結斗の事を見た日に医者なら助けられると思ったんです。でも、いざ医者になって気づいた。助けられる命は、限られてるって…。私は、神様ではなく、ただの平凡な人間(ひと)であると気付くんですよ。そしたら、何のために医者でい続けるのかわからなくなる。その葛藤で、やめていった人も沢山知ってます。」
「先生は、健斗さんを6月まで生かしてくれたじゃないですか…」
「それは、冴草さんの力で、私の力じゃありませんよ」
今まで、鬱陶しい存在だった先生が、急に傍に居てあげたい人に変わったのを感じた。
「冷凍庫のもの、持って帰ります。もう、お節介はしない方がいいですよね。」
そう言って、先生は涙を拭って立ち上がった。
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