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花びらの舞い散る夜に…

突然の連絡

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僕は、野上先輩に話して次の日も休みにしてもらっていた。

家で、ボッーとしていた。

リリリーン

ビックリしてスマホを見る。

「僕のじゃない」

健斗さんのスマホを見る。

知らない番号だった。

「はい」

『もしもし、…ペットショップですが』

「えっ?」

『昨日の夜、お引き取りに来られる予定だったのですが、まだ来られていなかったので』

「えっと、今から行きます」

僕は、服を着替えてペットショップにやってきた。

「すみません。浜井です。冴草の引き取りの電話を受けまして」

「あっ、お待ちしておりました。」

そう言って、店員さんは小さな猫を連れてやってきた。

「誕生日が、同じだから飼いたいって言ってました。一緒に住んでる恋人は怒るだろうけどって話していたんですよ。」

「そうなんですね」

「冴草さんは?」

「実は、入院をしていまして」

「そうなんですね」

「なので、僕が引き取りにきてくれと頼まれました。」

「かしこまりました。」

店員さんに説明をして、紙に名前を書き込んで、猫の飼い方などの説明を受けた。

僕は、家に小さなモフモフを連れて帰ってきた。

「トイレをセットして、水がいるか、名前はなんなんだ?」

僕は、小さなモフモフの誕生日を見た。

それは、運命ですね。

12月8日…。健斗さんの誕生日だ。

僕は、健斗さんの財布を開けた。

ペットショップの紙が入っていた。

小さく折り畳んだ紙がある。

【凌平に怒られても、この子を飼う。運命だと思った。同じ誕生日。名前は、凌平に決めさせる。女の子だから、可愛い名前がいいな。二人の子供として育てたい。】

「バァーカ」

僕は、指輪の箱の下に置いた。

そうだ。

ゲージを買わなきゃなんないんだった。

僕は、段ボールの箱に小さなモフモフをいれた。

「すぐ帰ってくる」

車で、さっきのペットショップに行って、ゲージを買って帰宅した。

組み立てて、完成した。

寝る時と仕事の時は、ここだな。

名前、名前…何にしようかな

僕は、健斗さんの部屋から黒いノートを持ってきた。

遺言書は、引き出しにしまった。

【凌平が、春が嫌いだと言った。俺は、凌平に春を好きになって欲しい。】

【凌平と初めてをした。今までだってした事あったのに、数千倍、いや数億倍恥ずかしかった。凌平が受け入れてくれて嬉しかった。あー。恥ずかしい。今までで一番だった。凌平の中が一番好きだ。恥ずかしい事かけるのは、誰にも見られないからだ】

見てるよ。健斗さん

【消えていてよかった。凌平に告白を決めたのは、2月に癌かもって言われるものが見つかったからだった。今回の検診で、消えていた。凌平、春はいい季節だよ】

【この先、何十年も凌平といれるのが確定した。マジで嬉しい。マジで、幸せ。よかった。凌平を愛してよかった。】

【今日、悲惨なニュースを見た。凌平に何かあったらどうする?絶対、俺といる時に殺されそうになったら意地でも凌平を守る。俺が、盾になる。死んだって守ってやる。そう決めた。】

これは、婦女暴行事件のニュースがあった時だろうか?あの事件のニュースに、健斗さんは泣いていたから…。

【凌平が、死ぬのだけは辛い。俺が、先がいい。凌平の後に死にたくない。】

ペラペラとノートを捲る。

【凌平から、漂う香りが好きだ。凌平が作るイチゴジャムが世界で一番好きだ。イチゴ好きになったの、凌平のおかげ。めちゃくちゃ、うますぎて。ビックリした。イチゴ好き】

僕は、パタリとノートを閉じた。

「イチゴー」

【にゃ~】

「決定だな。今日から、君はイチゴだ」

【ニャー】

ノートの最後を見つめた。

【猫を飼ってしまった。凌平は、怒るかな?名前は、ミルクやイチゴやメロンかな?凌平に決めさせよう。凌平に似てるから即決しちゃった。誕生日が俺と同じで見た目が凌平だ。めっちゃ、可愛いすぎる。俺は、凌平がめっちゃ好きだ。頭の中、毎日凌平の事ばかり考えてる。働いてても凌平を抱く事考えてるし。駄目だな、俺。凌平、中毒だ。】

「バァーカ」

僕は、ノートを閉じて笑いながら泣いた。

「どんだけ僕の事好きなんだよ。
僕だって、健斗さんが死ぬほど好きだってーの」

【ニャー】

「ハハハ、わかるか、イチゴ」

【ニャー】

もう、一人じゃなかった。

守らなきゃいけない命を作られてしまった。

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