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花びらの舞い散る夜に…
病院と先生
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お昼過ぎ、病院に行った。
「昨夜は、眠れましたか?」
健斗さんの担当医がいた。
「はい、気づいたら。あのご両親に連絡しましたが、息子ではないと言われました。」
「そうですか」
「はい、すみません」
「いえ」
「もう、これ以上話せませんでした。申し訳ありません。」
「私からも、かけさせていただいてもよろしいですか?」
「はい」
僕は、先生に連絡先を渡した。
「やっぱり、同性だと難しいですね。女性だったら、内縁になったでしょうね」
「書類上の話ですから、お気になさらないで下さい。浜井さんでしたよね?」
「はい」
「こちらから、かけても無理な場合でしたら、浜井さんが保証人になっていただけますか?」
「もちろんです。僕は、冴草さんにプロポーズされてる恋人ですから。」
「よかったです」
僕は、先生に失礼な事を尋ねる事にした。
「あの、先生」
「何でしょうか?」
「先生は、僕と同じ人間ですよね?」
「それは、同性愛者ですかって意味でよろしいですか?」
「はい」
「そうですよ。同じです。ここのスタッフは、皆知ってます。」
「そうでしたか」
「はい。では、失礼します」
「はい」
僕は、先生に頭を下げた。
ICUに入って、健斗さんを見つめていた。
あの父親から、この人がって想像できないな。
僕は、健斗さんの手を握りしめた。
力はなくても、温もりがある。
確かに、生きてる。
それだけで、いいんだ。
出来るだけ、一緒にいて家に帰った。
冷蔵庫に、健斗さんが作ってくれた料理がタッパに入っていた。
あっ!!そうだった。
僕は、TVの横の棚からノートを取り出した。
「二人で生きてくなら、レシピ残しておかないか?」
「うん」
同棲してすぐに健斗さんが言った。
「考えたくないけどさ、凌平の傍に一生いれないのはわかってるから…。それでも、味覚は忘れたくないだろ?傍にいれなくても、味だけは傍にいたいから」
健斗さんは、そう言って笑った。
僕は、それを机の上に置いた。
健斗さんが、生きてる事にホッとしたらお腹がすいてきた。
タッパごと電子レンジで温める。
健斗さんが作ってくれてたのは、肉じゃがだった。
ピー、ピー
春を嫌いになりたくなかった。
僕は、タッパでそれを食べる。
リリリーン
「はい」
『……病院の上條ですが』
その名前に、胸がドキドキする。
「健斗さんに何かあったんですか?」
『いえ、違います』
その言葉に、安堵した。
「よかったです」
『こちらからも、かけてみたのですが…。やはり、駄目でしたので…。次に来られる時は、浜井さんの、印鑑持ってきてもらえますか?』
「はい、わかりました」
『よろしくお願いいたします。』
「こちらこそ、冴草さんをよろしくお願いいたします」
『はい、失礼いたします』
そう言って、電話が切れた。
最悪な事は、考えたくなかったけれど…。
それも、考えなければならなかった。
僕は、健斗さんの作る肉じゃがをまた食べる。
僕達は、もっとそういう話をしなければならなかったんだよね。
いや、探してみる
僕は、食べ終わったタッパを流しに置いた。
健斗さんの部屋に入った。
部屋のものを漁るなんて事は、今までなかった。
3LDKの部屋を借りていた。
寝るだけの部屋で、二人で寝ていた。
プライベートを確保するために部屋は、別々で…
よっぽどの事がない限りお互いの部屋には、入らなかった。
やましい事も隠し事もなかった。
僕は、引き出しを開けていく。
何か、残していないだろうか?
僕よりも健斗さんは、どちらかがいなくなる事を常に考えていた。
一番最後の引き出しに、黒いノートがあった。
中を開く。
【凌平と交際。気持ちを受け止めてくれた。嬉しすぎる。】
【ちゃんと書いておけば、有効。遺言書を作成。俺がいなくなった後、凌平が困らないようにする為】
そう、書かれていた。
僕は、そのノートを捲る。
ちゃんと未来を考えていた。
「昨夜は、眠れましたか?」
健斗さんの担当医がいた。
「はい、気づいたら。あのご両親に連絡しましたが、息子ではないと言われました。」
「そうですか」
「はい、すみません」
「いえ」
「もう、これ以上話せませんでした。申し訳ありません。」
「私からも、かけさせていただいてもよろしいですか?」
「はい」
僕は、先生に連絡先を渡した。
「やっぱり、同性だと難しいですね。女性だったら、内縁になったでしょうね」
「書類上の話ですから、お気になさらないで下さい。浜井さんでしたよね?」
「はい」
「こちらから、かけても無理な場合でしたら、浜井さんが保証人になっていただけますか?」
「もちろんです。僕は、冴草さんにプロポーズされてる恋人ですから。」
「よかったです」
僕は、先生に失礼な事を尋ねる事にした。
「あの、先生」
「何でしょうか?」
「先生は、僕と同じ人間ですよね?」
「それは、同性愛者ですかって意味でよろしいですか?」
「はい」
「そうですよ。同じです。ここのスタッフは、皆知ってます。」
「そうでしたか」
「はい。では、失礼します」
「はい」
僕は、先生に頭を下げた。
ICUに入って、健斗さんを見つめていた。
あの父親から、この人がって想像できないな。
僕は、健斗さんの手を握りしめた。
力はなくても、温もりがある。
確かに、生きてる。
それだけで、いいんだ。
出来るだけ、一緒にいて家に帰った。
冷蔵庫に、健斗さんが作ってくれた料理がタッパに入っていた。
あっ!!そうだった。
僕は、TVの横の棚からノートを取り出した。
「二人で生きてくなら、レシピ残しておかないか?」
「うん」
同棲してすぐに健斗さんが言った。
「考えたくないけどさ、凌平の傍に一生いれないのはわかってるから…。それでも、味覚は忘れたくないだろ?傍にいれなくても、味だけは傍にいたいから」
健斗さんは、そう言って笑った。
僕は、それを机の上に置いた。
健斗さんが、生きてる事にホッとしたらお腹がすいてきた。
タッパごと電子レンジで温める。
健斗さんが作ってくれてたのは、肉じゃがだった。
ピー、ピー
春を嫌いになりたくなかった。
僕は、タッパでそれを食べる。
リリリーン
「はい」
『……病院の上條ですが』
その名前に、胸がドキドキする。
「健斗さんに何かあったんですか?」
『いえ、違います』
その言葉に、安堵した。
「よかったです」
『こちらからも、かけてみたのですが…。やはり、駄目でしたので…。次に来られる時は、浜井さんの、印鑑持ってきてもらえますか?』
「はい、わかりました」
『よろしくお願いいたします。』
「こちらこそ、冴草さんをよろしくお願いいたします」
『はい、失礼いたします』
そう言って、電話が切れた。
最悪な事は、考えたくなかったけれど…。
それも、考えなければならなかった。
僕は、健斗さんの作る肉じゃがをまた食べる。
僕達は、もっとそういう話をしなければならなかったんだよね。
いや、探してみる
僕は、食べ終わったタッパを流しに置いた。
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やましい事も隠し事もなかった。
僕は、引き出しを開けていく。
何か、残していないだろうか?
僕よりも健斗さんは、どちらかがいなくなる事を常に考えていた。
一番最後の引き出しに、黒いノートがあった。
中を開く。
【凌平と交際。気持ちを受け止めてくれた。嬉しすぎる。】
【ちゃんと書いておけば、有効。遺言書を作成。俺がいなくなった後、凌平が困らないようにする為】
そう、書かれていた。
僕は、そのノートを捲る。
ちゃんと未来を考えていた。
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