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桜の下の天使

共に歩く未来へ

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先生の家で、1ヶ月過ごした。

「やっと、片付け終わった」

「よかったな」

「で、どこにするんだっけ?」

「ここだよ」

俺と倫は、この街から離れて緑が豊かな街に行く事にした。

「スーツケース二つに、よく納めたね。倫」

「我ながら頑張ったよ。」

「じゃあ、明日には出発だね」

「うん」

もう、家の中のものは全て処分していた。

なにもない床に、二人で寝転がった。

「ジョーは、あのロッカーに預けてた荷物だけだよね」

「スーツケースだけ」

「蕪木さんにとってきてもらったの?」

「ああ、入院して一週間目にね。仕事場が借りてるところだったから、すぐに出ていけって言われて。ってか、蕪木のせいで毎回そんなんだったから…。荷物は、少ないんだ。ずっと…。」

倫は、俺を抱き締めてくれた。

「これからは、荷物を少し増やして重たくしない?」

「何だよ。それ」

「何となくだよ」

次の日、倫と住む街に倫の車で向かった。

「ここにしようか」

緑がたくさんある場所の一軒家に俺と倫は、住むことを決めた。

俺と倫は、この街で暮らし始めた。

月日は流れ、ここに来て半年が経った。

「はい、これ。お弁当買ってきたから」

倫は、何故かお弁当屋さんで働きだした。

「俺は、これ買ってきたよ」

俺は、スーパーで働きだした。

「いただきます」

「ジョー、スマホ。買いに行かないの?」

「ああ、忘れてた。」

俺は、スマホをあれから持っていなかった。

「だと思った。はい」

「契約してきてくれたのか?」

「うん、早くあがれたから」

俺は、倫の優しい所が好きだった。

「ありがとな」

「ううん」

体の関係は、いまだにない。

抱き締めたりは、するけど…

キスもない。

「ジョー」

「うん?」

「これ、買ってみたんだ。ネットで」

そう言って、倫はボーイズラブの漫画を差し出してきた。

「これ、なに?」

「男同士が、何するかっての」

俺は、中身を見つめる。

「R-18で買ったのか?」

「だって、46歳だし」

「これ通りにするのか?」

「まだ、したいだろ?ジョーだって」

「悪いけど、俺は、8年はないな。倫は?」

「同じ」

「だったら、いらねーだろ。なくても、生きれる。だろ?」

「でも、好きになったられたいだろ?」

「何だよ、それ。じゃあ、これも、これも、これも、したいのか?」

「見せないでよ。ご飯中だし」

「倫が、買ったんだろ?」

「そうなんだけどさ」

俺は、倫の隣に座った。

倫を抱き締める。

「こうしてるだけで、スゲー幸せなんだよ。多幸感ってやつ。わかるだろ?」

「うん」

「倫を抱き締めるだけで、全部が満たされる。不思議と快感もあってさ。別に膨らんだりとかじゃないんだよ。ここに、快感が走るんだよ。」

「心の中にって事」

「あぁ、変だよな」

「私もわかるよ。何かジョーに抱き締められてるだけで、満たされる。一つに重なる以上の快感と安心感がある。不思議な感覚」

「倫とは、ここがちゃんと繋がってるんだな」

俺は、もっと倫を強く抱き締める。

「ジョー、ごめん。あの漫画」

「やりたいなら、やるよ。」

「ううん、いらないよ。必要ない」

「キスぐらいは、しようか?」

「うん」

俺は、倫の頬にキスをした。

「恥ずかしいね」

「そうだな」

「ゆっくり先に、進んで行きたい」

「うん」

「もし、いつかしたくなったら受け入れてくれる?」

「当たり前だよ」

俺は、また倫を抱き締める。

二人だけの歩幅で、歩いていこう。

付き合うのに、正解も間違いもない。

俺達らしく、進めばいいだけだ。

「愛してる、倫」

「愛してる、ジョー」

俺は、また倫をきつく抱き締めた。

幸福感に包まれながら、おでこを寄せ合って笑い合った。

お揃いの物が、増えてきた日々を愛しく想いながら、俺達は、一日一日を過ごしていくんだ。

あの、桜の下で倫に出会わなかったら今の俺は、存在していなかった。

この先の未来は、全部、全部

倫【ジョー】のものだよ

重なる想いは、二つ

未来へ繋がっていく
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