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お腹いっぱい、召し上がれ
繋がり合う愛
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「円香、ラザニア」
「ありがとう」
円香と出会ってから、13年を迎えた。
「これだよ。これ」
どちらかが、そうしようって決めたわけじゃないのに、俺達は気づけば傍にいて、気づけば付き合っていて、気づけば同棲をしていた。
「よかった」
「うん、美味しいよ。美鶴」
「ありがとう」
俺は、引っ越してすぐに円香に99本の包丁を見せた。
初めて、美花の物も処分出来た。
「これ、何?」
「人を殺そうと思っていた。10年前に」
「これを使って?」
「ああ、駄目だよな」
俺の言葉に、円香は泣きながら抱き締めてくれた。
「こんなに、暗闇にいたのに誰にも気づいてもらえなかったんだね?美鶴、今までよく頑張ったね」
「わぁぁぁぁぁ。美花ーー」
俺は、情けない程に円香の前で泣いたんだ。
「いいよ、美鶴。美花さんだと、思っていいんだよ。」
「円香」
ドロドロに、泣いた顔の鼻水や涙をタオルで拭ってくれながら円香は笑った。
「俺も、円香の彼の代わりに使ってくれていいから…。」
「うん」
俺達は、お互いの相手の代用品になる事を決めたんだ。
でも、不思議と悲しくも辛くもなかった。
きっと、円香も同じなんだと思った。
「友作さん」
酔うと円香は、そうやって抱きついてきた。
「なに?円香」
「美花さんでしょ?」
円香は、優しく俺の頬に手を当ててくれる。
今日は、円香がやっと手紙を開けれた日だった。
「美花」
「愛してるよ、美鶴」
「そこは、友作さんじゃないのか?」
「美鶴だよ。愛してるの。ちゃんと愛してるんだよ。美鶴」
「円香、何でそんな事。初めてだろ?」
「美鶴を愛してる気持ちは、ずっとあったんだよ。先生の代わりじゃないんだよ。美鶴の全てがいつの間にか好きだった。同じ傷を持ってる所も好き」
円香は、俺の左胸に手を当ててる。
「俺も、気づいたら円香でいっぱいだったんだよ。いつの間にか、円香が好きだった。円香に出会ってなかったら俺は、殺人鬼になってた」
「美鶴が、人を殺さなくてよかった。美花さんは、きっと美鶴をとめたかったんだね。」
「そうだと思ってる。俺は、今だって美花をいじめてたやつが許せない」
「こんなに、素敵な人だからみんないじめたくなったんじゃない?太ってるなんて、いじめたい理由の一つにつけただけだよ。本当は、美花さんが幸せそうだからいじめたかったんだよ」
俺と美花のアルバムの写真を見ながら円香は言った。
「円香、桜の木のおまじないだっけ?それのせいじゃないよ。先生が亡くなったのは…。きっと、大人になっていく円香に自分が必要じゃなくなっていく事が怖かったんだよ。」
俺は、円香を後ろから抱き締めた。
「美鶴、私ね。美鶴と死ぬまでいたいよ。他に何もいらない。美鶴がいればそれでいいの。美鶴が作ってくれる料理食べて、美鶴に触れて。ただ、それだけでいいんだよ」
「円香、俺も円香と死ぬまでいたいよ。円香に、触れて。円香が俺の料理を食べて笑ってくれる。それだけで、いいんだ。それだけで、いい。」
「うん、わかってる。私達ずっと同じ気持ちだったね」
「そうだな」
俺は、円香が俺の料理を口にするだけで身体中が幸福感と快楽に包まれる。
円香にその話をしたら、円香は俺にマッサージをしている時にそうなると話した。
多幸感に包まれた。
円香知ってる?
光を少しでも感じると闇に戻れないって事
幸せを少しでも感じると不幸せだった頃にもどれないって事
二人でいる事を知ったら、一人だった頃にはもどれない事
愛されてる事を知ったら、愛されない時にもどれない事
俺は、美花と円香に教えられた。
「円香、愛してるよ」
「美鶴、私も愛してるよ」
俺と円香は、少しずつ前に進んでいく。
愛した人を、ゆっくりと思い出にかえていきながら…。
「ありがとう」
円香と出会ってから、13年を迎えた。
「これだよ。これ」
どちらかが、そうしようって決めたわけじゃないのに、俺達は気づけば傍にいて、気づけば付き合っていて、気づけば同棲をしていた。
「よかった」
「うん、美味しいよ。美鶴」
「ありがとう」
俺は、引っ越してすぐに円香に99本の包丁を見せた。
初めて、美花の物も処分出来た。
「これ、何?」
「人を殺そうと思っていた。10年前に」
「これを使って?」
「ああ、駄目だよな」
俺の言葉に、円香は泣きながら抱き締めてくれた。
「こんなに、暗闇にいたのに誰にも気づいてもらえなかったんだね?美鶴、今までよく頑張ったね」
「わぁぁぁぁぁ。美花ーー」
俺は、情けない程に円香の前で泣いたんだ。
「いいよ、美鶴。美花さんだと、思っていいんだよ。」
「円香」
ドロドロに、泣いた顔の鼻水や涙をタオルで拭ってくれながら円香は笑った。
「俺も、円香の彼の代わりに使ってくれていいから…。」
「うん」
俺達は、お互いの相手の代用品になる事を決めたんだ。
でも、不思議と悲しくも辛くもなかった。
きっと、円香も同じなんだと思った。
「友作さん」
酔うと円香は、そうやって抱きついてきた。
「なに?円香」
「美花さんでしょ?」
円香は、優しく俺の頬に手を当ててくれる。
今日は、円香がやっと手紙を開けれた日だった。
「美花」
「愛してるよ、美鶴」
「そこは、友作さんじゃないのか?」
「美鶴だよ。愛してるの。ちゃんと愛してるんだよ。美鶴」
「円香、何でそんな事。初めてだろ?」
「美鶴を愛してる気持ちは、ずっとあったんだよ。先生の代わりじゃないんだよ。美鶴の全てがいつの間にか好きだった。同じ傷を持ってる所も好き」
円香は、俺の左胸に手を当ててる。
「俺も、気づいたら円香でいっぱいだったんだよ。いつの間にか、円香が好きだった。円香に出会ってなかったら俺は、殺人鬼になってた」
「美鶴が、人を殺さなくてよかった。美花さんは、きっと美鶴をとめたかったんだね。」
「そうだと思ってる。俺は、今だって美花をいじめてたやつが許せない」
「こんなに、素敵な人だからみんないじめたくなったんじゃない?太ってるなんて、いじめたい理由の一つにつけただけだよ。本当は、美花さんが幸せそうだからいじめたかったんだよ」
俺と美花のアルバムの写真を見ながら円香は言った。
「円香、桜の木のおまじないだっけ?それのせいじゃないよ。先生が亡くなったのは…。きっと、大人になっていく円香に自分が必要じゃなくなっていく事が怖かったんだよ。」
俺は、円香を後ろから抱き締めた。
「美鶴、私ね。美鶴と死ぬまでいたいよ。他に何もいらない。美鶴がいればそれでいいの。美鶴が作ってくれる料理食べて、美鶴に触れて。ただ、それだけでいいんだよ」
「円香、俺も円香と死ぬまでいたいよ。円香に、触れて。円香が俺の料理を食べて笑ってくれる。それだけで、いいんだ。それだけで、いい。」
「うん、わかってる。私達ずっと同じ気持ちだったね」
「そうだな」
俺は、円香が俺の料理を口にするだけで身体中が幸福感と快楽に包まれる。
円香にその話をしたら、円香は俺にマッサージをしている時にそうなると話した。
多幸感に包まれた。
円香知ってる?
光を少しでも感じると闇に戻れないって事
幸せを少しでも感じると不幸せだった頃にもどれないって事
二人でいる事を知ったら、一人だった頃にはもどれない事
愛されてる事を知ったら、愛されない時にもどれない事
俺は、美花と円香に教えられた。
「円香、愛してるよ」
「美鶴、私も愛してるよ」
俺と円香は、少しずつ前に進んでいく。
愛した人を、ゆっくりと思い出にかえていきながら…。
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