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お腹いっぱい、召し上がれ

自己紹介

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「いただきます。」

彼女は、ケーキを平らげてくれた。

「ありがとう」

嬉しくて、ずっと頬が緩みっぱなしだった。

「俺の名前は、村井美鶴むらいみつる二十歳です。よろしくね」

「私は、荻野美花おぎのみかです。十八歳です。来年から、大学生です。よろしくお願いします」

「敬語はやめてよ。よろしく。一人暮らし?」

「はい、この近くで」

「今度、行っていい?」

「今からでも、どうぞ」

「襲っちゃうよ」

「いいですよ」

俺は、荻野さんの家にその日のうちにやってきた。

「コーヒーいれます」

「はい」

もっと、お家は汚いのかと思っていた。

とても、綺麗だった。

俺のタッパも、流しにいれられた。

「コーヒーどうぞ」

「ありがとう。荻野さん」

「はい」

「付き合うで、いいんだよね?」

「はい、もちろんです」

「よかった。」

俺は、ホッとしていた。

「でも、本当に私なんかでいいんですか?」

「私なんかじゃない。荻野さんだからいいんだよ。美花って呼んでいい?どんな字を書くの?」

彼女は、綺麗な文字で美花と書いた。

「綺麗な名前だね。美花にピッタリだよ」

彼女は、首を横に振った。

「俺と同じ漢字入ってる」

「綺麗な名前ですね。」

「美鶴で、いいよ。」

「美鶴」

「ありがとう」

俺は、コーヒーを飲む。

「あの、その、私。こんな見た目だから、付き合った事もなくて」

「俺も同じだから、気にしないで」

「えっ、そんなわけないですよね」

「決めつけは、よくないよ。」

「そうですよね」

「うん。ご両親は?」

「父は、物心ついた時からいなくて、高校卒業してすぐに母親は妹を連れて出ていきました。こんなデブは、私の子供じゃないって。妹は、ご馳走。私は、レトルトやカップ麺やお弁当ばかりだった。」

「お母さんは、一回も料理を作ってくれなかったの?」

「はい、一度も」

愛されていなかった目をしていた。

俺と同じだった。

「俺も同じだよ。これからは、俺が作ってあげる。仕事終わったら来てもいい?」

「はい、もちろんです。」

「じゃあ、買い物は出来るかな?」

「駅前のスーパーが、12時まで開いてるので、そこに行きます。」

「買ってきて欲しいものは、前日に言うね。じゃあ、明日はカレーの材料を買ってきてくれる?これ、お金。そういえばどうやって、生活してるの?」

「そういうお店で、働いてるわけではないですよ。掃除のお仕事に行ってます。23時までです。」

「そうなんだね。よかった。安心した」

俺は、美花を抱き締めていた。

「腕、回らないですよね」

「関係ないよ。」

「どうして?」

「ヤキモチ妬いてた。おじさん相手にそうしてるのかと思ったりしたら、嫌だったから」

「フフフ、美鶴は可愛いですね」

「そうかな?」

「そうですよ」

「美花も俺をいつか好きになって」

「わかりました」

「約束だよ」

「はい」

美花は、想像通りで可愛い人だった。

「痩せます、頑張ります」

「別に、痩せなくていいよ。俺は、気にしないから」

「痩せられないんです。」

「だったら、無理しないでいいよ。俺は、気にしないから」

「私みたいなの、抱けます?」

「抱けるって、ああ、そっち?全然、いけるよ。俺は。だって、美花が好きだから。美花は、無理だよね?」

美花は、首を横に振った。

「いけるの?」

「当たり前です。こんな、綺麗な人」

「好きな人に褒められるのは、嬉しいよ。ありがとう。美花も可愛いよ。もっと、可愛い姿をみたいって思う。でも、ゆっくり進もう。焦らなくていい。」

「はい」

「前髪は、切るかピンでとめなよ。可愛い目が、見えないのは残念だよ」

「わかりました」

「いや、やっぱり俺にだけ見せて」

「はい、いいですよ」

「俺は、ヤキモチ妬きみたいだね」

「いえ、嬉しいです」

俺は、美花とこの日付き合う事になった。

好きな人と一緒にいるだけで、こんなに幸せな事を初めて知ったんだ。
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