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お腹いっぱい、召し上がれ
村井美鶴、荻野美花
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あれは、25年前の出来事だった。
当時、コンビニの深夜バイトをしていた俺。
村井美鶴には、癒しがいた。
「うわぁー。また、出たわ。村井よろしく」
「あー。はい」
先輩の、相沢さんが忌み嫌う女の子。
名も知らぬ女の子。
「いらっしゃいませ」
何も話したりは、しない。
「ありがとうございました」
彼女は、かごいっぱいの商品を購入して帰っていく。
「あれは、百貫でぶだな。見た目もきたねーし。村井は、天使だな。よく、相手出来るわ」
「そうですか?俺は、別に何も思わないですよ」
「あれは、どう見たって100キロはあるぞ。村井って、60キロないよな?」
「まあ、そうですけど。女性の体重って気になりますか?」
「なるよ。ってか、毎日一時にやってくるって事は、デブ専の店で働いてるんだな。マジ、キモいわ。俺、デブと不細工嫌いなの。いつも入ってるシフト、村井でよかったわ。マジで、綺麗だよな。村井。男だけどいけそーだわ」
「男を好きになる趣味はないですよ」
「わかってるって。あー。来週だけ、村井じゃなくて迫さんなのか。まっ、あの人も普通にイケメンだからいっか」
「よかったですね」
俺は、人を見た目で判断する人間が嫌いだ。
【村井君って、何不自由ない暮らししてそうだよね。そういう人無理だから】
初恋の彼女に、そう言われて振られた。
何不自由ない暮らしって、どういう意味?
俺は、物心ついた時から母子家庭
で、母親にはネグレクトをされていた。
働きたくなかった母親は、売春をしていた。
そのお金で、俺を育てた。
中学を卒業すると一人で生きていけと突然捨てられた。
俺は、寮つきの仕事を探した。
俺にとって、人生は夢を追いかけるものじゃなかった。
好きなものを見つける人生なんてないのだ。
働くのは、生きる為
それ以外に理由なんてなかったし
夢なんて、見れる環境にいなかった。
これから先だって、見ないって思ってたのに…。
「また、来たよ。村井、よろしく」
次の日も彼女は、やってきた。
「いらっしゃいませ、温めますか?」
全部、温める。
パスタが好き。
俺は、いつしか彼女にご飯を作ってあげる夢を持ったのだった。
「ありがとうございました」
出会って、3ヶ月。
いつ、声をかけよう。
いつ、デートに誘おう。
そんな事ばかり考えていると、彼女は帰ってしまうのだ。
俺は、恋愛経験も0だった。
恋愛にも、恋人にも、キスにも、その先にも、何の興味もなかった。
何の為に、恋をするのか理解できなかった。
母親が、男に捨てられると俺を追いかけ回した。
綺麗な顔をしてるから、全裸になれと言われた。
小さな頃から、続けられる惨めな行為だった。
かといって、何をされるわけでもなく。
ただ、ニタニタ笑いながら見つめられるだけだ。
母親は、それを見ながらお酒を飲む。
俺は、その視線に気持ち悪さを感じながらも立っているだけだ。
それは、中学卒業するまで続いた。
いったいあれは、何がしたかったのか今でも謎だ。
どうせなら、何かをされている方が胸を張って虐待です。と言えたのかもしれない。
気持ち悪い事を思い出したまま、今日のバイトは終わった。
俺は、家に帰った。
どうしたら、彼女に伝えられるだろうか…。
俺は、他の人にバレてもいいけど彼女は嫌がるはずだ。
俺は、彼女に手紙を書く事にした。
【よかったら、デートしてもらえませんか?明日の午前一時に……公園で待っています。朝まで、待っています。】
彼女は、深夜動きたいのだと思った俺は、休みの日の深夜にした。
来てくれなかったら、忘れよう。
無理でも、何でも忘れよう。
嫌がる相手に、しつこくは出来ないから…。
でも、もし来てくれたら俺は彼女を振り向かせると決めたんだ。
当時、コンビニの深夜バイトをしていた俺。
村井美鶴には、癒しがいた。
「うわぁー。また、出たわ。村井よろしく」
「あー。はい」
先輩の、相沢さんが忌み嫌う女の子。
名も知らぬ女の子。
「いらっしゃいませ」
何も話したりは、しない。
「ありがとうございました」
彼女は、かごいっぱいの商品を購入して帰っていく。
「あれは、百貫でぶだな。見た目もきたねーし。村井は、天使だな。よく、相手出来るわ」
「そうですか?俺は、別に何も思わないですよ」
「あれは、どう見たって100キロはあるぞ。村井って、60キロないよな?」
「まあ、そうですけど。女性の体重って気になりますか?」
「なるよ。ってか、毎日一時にやってくるって事は、デブ専の店で働いてるんだな。マジ、キモいわ。俺、デブと不細工嫌いなの。いつも入ってるシフト、村井でよかったわ。マジで、綺麗だよな。村井。男だけどいけそーだわ」
「男を好きになる趣味はないですよ」
「わかってるって。あー。来週だけ、村井じゃなくて迫さんなのか。まっ、あの人も普通にイケメンだからいっか」
「よかったですね」
俺は、人を見た目で判断する人間が嫌いだ。
【村井君って、何不自由ない暮らししてそうだよね。そういう人無理だから】
初恋の彼女に、そう言われて振られた。
何不自由ない暮らしって、どういう意味?
俺は、物心ついた時から母子家庭
で、母親にはネグレクトをされていた。
働きたくなかった母親は、売春をしていた。
そのお金で、俺を育てた。
中学を卒業すると一人で生きていけと突然捨てられた。
俺は、寮つきの仕事を探した。
俺にとって、人生は夢を追いかけるものじゃなかった。
好きなものを見つける人生なんてないのだ。
働くのは、生きる為
それ以外に理由なんてなかったし
夢なんて、見れる環境にいなかった。
これから先だって、見ないって思ってたのに…。
「また、来たよ。村井、よろしく」
次の日も彼女は、やってきた。
「いらっしゃいませ、温めますか?」
全部、温める。
パスタが好き。
俺は、いつしか彼女にご飯を作ってあげる夢を持ったのだった。
「ありがとうございました」
出会って、3ヶ月。
いつ、声をかけよう。
いつ、デートに誘おう。
そんな事ばかり考えていると、彼女は帰ってしまうのだ。
俺は、恋愛経験も0だった。
恋愛にも、恋人にも、キスにも、その先にも、何の興味もなかった。
何の為に、恋をするのか理解できなかった。
母親が、男に捨てられると俺を追いかけ回した。
綺麗な顔をしてるから、全裸になれと言われた。
小さな頃から、続けられる惨めな行為だった。
かといって、何をされるわけでもなく。
ただ、ニタニタ笑いながら見つめられるだけだ。
母親は、それを見ながらお酒を飲む。
俺は、その視線に気持ち悪さを感じながらも立っているだけだ。
それは、中学卒業するまで続いた。
いったいあれは、何がしたかったのか今でも謎だ。
どうせなら、何かをされている方が胸を張って虐待です。と言えたのかもしれない。
気持ち悪い事を思い出したまま、今日のバイトは終わった。
俺は、家に帰った。
どうしたら、彼女に伝えられるだろうか…。
俺は、他の人にバレてもいいけど彼女は嫌がるはずだ。
俺は、彼女に手紙を書く事にした。
【よかったら、デートしてもらえませんか?明日の午前一時に……公園で待っています。朝まで、待っています。】
彼女は、深夜動きたいのだと思った俺は、休みの日の深夜にした。
来てくれなかったら、忘れよう。
無理でも、何でも忘れよう。
嫌がる相手に、しつこくは出来ないから…。
でも、もし来てくれたら俺は彼女を振り向かせると決めたんだ。
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