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救えなかった恋

五木君

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次の日から俺は、休み時間になると五木君に会いに行った。

「上條君、おはよう」

「おはようございます。」

「五木君は、そっち」

先生は、そう言って笑った。

俺は、カーテンの場所に行く。

「おはよう」

「おはよう」

「体調は、大丈夫?」

「ああ、問題ないよ」

「ねぇー。五木君は、何故ここにいるの?」

「上條君が、知る必要はないよ」

「そっか、でも、ゆっくりでもいいから教えてよ」

「いつかね」

「もう、行くね」

「うん」

俺は、ベッドから出る。

「五木、いる?迎えに来たけど」

「まだ、寝てるのよ」

「えー。またかよ」

「先生には、伝えとくから」

「サボりだろ?毎日、毎日」

その人は、怒りながら保健室を出て行った。

俺は、後ろを歩きながら教室に戻った。

それから、俺は凄く楽しくて…。

「上條」

「伊納」

「おはよ」

「おはよ」

「これ、面白かったよ」

「へぇー。読んでみよう」

「うんうん」

伊納は、よく物語の本を貸してくれていた。

5歳からの幼馴染みだ。

「また、行くの?」

「うん、じゃあね」

俺は、伊納に借りた物語の本を持って五木君の所に行った。

「失礼します」

昼休みは、長いから好きだ。

「五木君、元気?」

「元気だよ」

「今日の給食、食べた?」

「食べたよ」

「美味しかった?」

「美味しかったよ」

「それ、何?」

「これ、物語の本なんだ」

「へぇー。僕も読みたいな」

「次、貸してあげようか?」

「うん」

俺の世界を天使が入ってくる事が嬉しかった。

それから、何ヵ月が経ったある日

俺が、通ってるのがバレた。

「おーい、一年」

「はい」

「お前さあー。五木の女?」

「何ですか、急に」

「あいつさ。そっちって知ってる?」

「そっちって、何ですか?」

「だから、あいつ。ホモなんだって」

「な、何?言ってるんですか」

俺は、そいつらにトイレに連れて行かれた。

「離せよ」

「五木が、何で保健室にいるか知ってるか?」

「知らない」

「ホモがバレて、みんなに気持ち悪いって言われてるからだよ。お前も、通い続けるならホモっていってやろうか?」

「ふざけんな」

「あいつ、誰にでもするんだぜ」

「は?」

「なんだよ、その口の聞き方は」

「離せよ」

「あいつ、意外と上手いんだぜ。お前もやってもらいてーんだろ?」

「気持ち悪い事言うな。離せ」

俺は、そいつ等から逃げた。

次の日から、五木君のとこに行こうとすると追いかけられるようになった。

「お前、五木が好きなんだろ?」

それは、同じ学年の奴にも広まった。

物語の本を渡したかった。

「伊納、ごめん。これ、よろしく。はぁ、はぁ、はぁ」

俺は、学校中を逃げていた。

「わかった。」

その日から、伊納が届けてくれるようになった。

「これ、預かったよ」

「ありがとう」

それは、デートのお誘いだった。

「上條、嬉しそうだね」

「えっ、駄目かな?」

「いや、いいんじゃない」

「ありがとう」

俺は、五木君との夏休みに出来るデートを楽しみに過ごした。

あれは、明日から夏休みを迎える日の出来事だった。

「だから、テメー。五木が好きなんだろ?」

保健室近くの階段で掴まった。

「離せよ」

「テメーも、そっちだろ?」

「お、お、俺は、ホモなんかじゃねー。」

言い放った先に、五木君が立っていた。

「あっ」

天使が、泣いてるのがわかった。

「そうか、そうか。悪かったよ」

わざとなのが、わかった。

「あっ」

「テメーは、ホモじゃねーんだろ?一年生」

「離せよ」

俺は、悔しさと悲しさと歯がゆさで、走って家に帰った。

俺は、嘘つきだった。

五木君のあの目が、忘れられなかった。
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