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始まりと芦野洋の話。

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高校の時の仲良しメンバーだった俺達は、今シェアハウスに住んでいる。

なぜ、こんな事になったかというと…

~半年前~

俺の名前は、芦野洋あしのよう

28歳になったばかりの、俺は仕事帰りに向島むこうじまに再会した。

向島「洋、元気か?」

通りすぎる瞬間誰かに声をかけられた。

「向島か?」

向島「そう。」

「久しぶりだな、元気にしてるよ!」

向島「なぁー。昔みたいにみんなで集まらない?」

「でも、沙織と亜香里の連絡先は、もうわからないよ。」

向島「大丈夫、大丈夫。洋は、れんだけ呼んでくれたらいいから。住所は」

そう言って、向島は住所を教えてきた。

「いつ?行けばいい?」

向島「今週の日曜って事で。」

「わかった!じゃあ」

そう言って俺達は、別れた。

時計を見ると夜の七時を回ったとこだ!出るかな、れん。

プルルル

れんにかけると、一回目のコールで電話にでた。

れん「はい、もしもし。Juliaです。」

オカマ口調で、話された。

「もしもし、俺」

そう言った瞬間

れん「何だよ。洋かよ」

ガッカリした声が聞こえる。

「今、大丈夫?」

れん「大丈夫だよ。で、何?」

「さっき、向島に会ってさ。今週、日曜日に会おうって。。大丈夫か?」

そう言った俺の脳裏にあの日の二人が浮かぶ。

れん「僕、拝島はいじまさんが好きなんだよ。だから、僕…。もう、向島に会いたくない。会いたくないんだ。」

高校の卒業の日、沙織を振ったれんに俺がキレた。
その時に、れんが俺に言った言葉…。

「嫌なら、いいんだよ。」

そう言った俺にれんが

れん「行くよ。洋も行くなら」

「でもさ。あの人が」

れん「うん…」

しばらく沈黙が続く

れん「みんなにJuliaとして会いたいから」

いつものれんの笑顔が浮かぶ

「わかった。」

れん「じゃあ、また」

「うん、あとでな」

俺は、電話を切った。

あの日以来、れん以外のやつには会っていない。

れんは、卒業してニューハーフとおかまのお店に就職した。

そして、俺はあれかられんの彼氏を演じてる。

就職が決まった日にれんに言われた。

れん「洋、僕と一緒に暮らしてくれない?僕の彼氏になってくれない?」

ビックリしすぎて、お茶を吹き出した俺に

れん「形だけ。」

と笑った。

俳優の西村拓磨に似てるれんの顔はいつ見ても綺麗な横顔だった。

「拜島さんか?」

そう言った俺に、ゆっくりうなずく。

れん「無理でもさ、これから先、あの人以外とどうにかなりたくない」

その気持ちが痛い程、わかった俺はれんの彼氏になった。

れん「洋って結構イケメンだし。」

笑いながら言われた。

れん「俳優の吉爽理世よしさわりよに似てるって言われるでしょ。」

「たしかに、言われた。高校の時、結構」

そう言って笑い合った。

れん、今でも拜島さんが好きなんだな

れんが、頑張るなら俺も頑張って行くよ!

10年ぶりに沙織との再会か…。

家に帰って、うなだれた。

相変わらず苦手な営業職。

でも、冷蔵庫を開けるとれんの手料理がぎっしり

それに癒される。

冷蔵庫の俺達専用のホワイトボードにかわいいれんの文字で

《お疲れ様!今日も頑張ってくるよ!ありがとう!毎日頑張ってくれて!好きなの食べてね!僕は、夜中になります。れん》

それを読む度、頑張っててよかったと思う。

恋愛感情なんてのは、一度もお互いに沸いた事はない。

でも、れんがいるとホッとする。

れんが、笑うとホッとする。

お互い同じ思いを抱えているから…。

わかる、痛み。

励まし合いながら、ここまできた。

手を洗って、服を着替えて、冷蔵庫を開けて物色する。

きんぴらに、筑前煮、唐揚げ発見
ビールをとって!
一人晩酌。

俺の好きなハンバーグ作ってくれてるラッキー。

唐揚げとハンバーグと筑前煮をお皿にもって、レンジでチンする!

毎週日曜日は、温かいものを食べる。

それは、二人の決まり

れんが作る料理を食べる度、れんが本当に食べさせたい人が俺ではない事に気付き胸が苦しくなる。

そして、俺自身も一緒に暮らしたい相手が、れんではない事を強く感じる。

それをわかっているお互いは、何も言わない。

何も聞かない。

ただ、笑ってご飯を食べるだけ。。

そんな事を考えてるとピーピーとレンジがなった。

れんの料理は、まじでうまい。

いただきまーす。部屋に俺の声がこだまする。

れん(どうぞ、食べて食べて)

日曜日に一緒に食べる時のれんの顔が浮かぶ!

ハハッ笑いがでる。

俺、れんが拜島さんと一緒に笑い合って生きていける未来をあの日からずっと想像してるんだ。

れんが俺にしてくれる事を、俺は拜島さんに置き換えて見ている。

拜島さん「坊っちゃんがいつもすみません。」

向島は、大会社の息子だった。

卒業する少し前、神社でお守りを買う時に1円玉五枚とブラックカードを置いていった。

神社の人に怒られるも、後で払いにくるからバイバイと行ってしまった。

見かねたれんが、それをとって500円を払った。

「優しすぎるよ、れんは」

れん「お金持ちは、そんなんでいいんだよ。」

って笑って言った。

神社からの帰りに拜島さんに会った。

拜島さん「坊っちゃんが、いつもすみません。」

そう言って俺達に頭をさげた。

れん「これ、どうぞ。払っときましたから」

拜島さんにブラックカードと1円玉5枚を渡す。
れんの顔は、ほんのりピンクに色づいた。

拜島さん「ありがとう。」

そう言って、拜島さんはれんに500円玉を渡した。

あの日の、500円をれんはお守りにしている。

一緒に暮らしはじめて、まもない頃、おかま口調で女の人の格好をするれんの事を気持ち悪いと言って通りすぎる人がいた。

許せなかった俺に、れんはいいのいいのと笑った。

あの日、拜島さんから500円をもらってほんのりピンクに色づいた頬っぺたのれんの顔が、俺にはとても綺麗に見えたんだ。

れんには、言ってなかったけど。

俺、ずっと前かられんが拜島さんの事を好きな事に気づいてた。

あれは、高校二年の夏休み。

勉強をして遅くなった俺とれんを拜島さんが送ってくれた日。

れんは、後部座席じゃなく助手席に座る。

そして、キラキラした顔で拜島さんに質問をたくさんした。

その時、拜島さんがニコッて笑った

初めてみた笑顔だった。

いつも、真顔ですみませんしか言われてなかったから…。

そしたら、れんのキラキラはさらに増した気がした。

恋してるんだって気づいた。

次の日、沙織に

沙織「洋、れんの好きな人知ってる?」と聞かれたんだ。

「知らないけど、何で?」

沙織「向島より洋の方が、れんといるから知ってると思った。れん、イケメンでしょ?彼女いるのかな?」

「彼女は、いないと思う」

沙織「そっか、ありがとう」

満面の笑みで沙織は教室に戻った。

れん、ごめん。

卒業式の日に、俺酷いこと言って

お前に辛い気持ち打ち明けさせて

もっと前から知ってたのに…。


    
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