上 下
81 / 94
喜与恵と宝珠の視点

ちょっとは…

しおりを挟む
湊は、涙を拭って笑った。

「何か、スッキリしたわ!珠理にゆうても、あんなサバサバゆわれるからさ!何か、引っ掛かりがとれたわ。ありがとうな!きよちゃん、宝珠」

湊は、喜与恵の頭を撫でてる。

「ほんなら、着替えてくるわな!」

「そこ、右側がお風呂場!」

「おう、行ってくるわ」

湊は、お風呂場に向かった。

「喜与恵、大丈夫?」

「うん。」

「何か、考えてたんだろ?」

「みなちゃんが、同じ考えだとは思わなくて…。ほら、私も絶望に始まって絶望で1日が終わるから…。宝珠といる間は、忘れようと思ってるんだけどね。」

「子孫繁栄を組み込まれてるから、苦しんでるんだよな?」

「そうだね。そうじゃなかったら、苦しむ必要はないから」

私は、喜与恵の頬に手を当てる。

男や女じゃない。子孫繁栄を組み込まれてる生き物としての本能。

それが、出来ないものの苦しみ。

同性愛者である、湊と喜与恵にとって、その苦しみは計り知れない。

割りきれるわけなどないのだ。

「喜与恵、私が女性だったら苦しまなかったね。」

「何で、そうなるの……」

「生き物としての本能に、抗わずに生きたかっただろう?」

「宝珠…。それは、無理だから」

「わかってる。それでも喜与恵の苦しみが消えて欲しい。」

「宝珠…無理だから。きっと、無理なんだよ。」

「それでも、私は喜与恵を守るから。」

「うん」

喜与恵は、笑って泣いていた。

「できたで!どうや」

「スーツがめちゃくちゃ似合うね。やっぱり、湊は!」

「おおきに」

「あのさ」

「うん?」

「私達が、百合ちゃんに会いに行くよ。二条さんは、神社から出れないから無理だけど…。私と喜与恵はいけるから!」

「ホンマか!めっちゃ喜ぶわ!百合」

「うん」

百合ちゃんは、あの日泣く事もなく帰宅してきた。

「百合は、俺なんかより強い!あの日、二条ちゃんが見せたビジョンも鮮明でめちゃくちゃ冷静やったらしい。俺は、見れんかったけど…。おとんが、言ってたわ!それが、おもろなかったからエスカレートしたんやろって話しやった。」

「そうか!やっぱり、能力者だね。百合ちゃんも…。」

「ちゃんとわかってるねん。妖艶さコントロールせなアカンって、満月はゆわれとったから!俺も、何回も痴漢にあった事あるし。豊澄も、襲われそうになった事もある。糸埜の運命の女やった人もおるやろ?」

「うん」

「あの子も、痴漢に何回もおうたんやで!広大君も、満月に嫁いでから襲われそうになった事あるから!満月の妖艶さは、ちゃんとコントロールせなアカンって!ずっーとゆわれて育ったから!せやから、百合も自分がコントロール出来んかったからってわかっとったらしいわ。おとんが、そうやってゆっとった。能力なんかもたんかったら、百合は辛い思いせんかったのにな」

「みなちゃん」

「湿っぽいのは、やめよーや!今から、未来の彼氏になる人に会いに行くんやから!百合の事は、ちょっとだけ忘れるわ!その方が百合も喜ぶしな!」

湊の強さも感じる。

満月の人は、心が強い。

歪みを強制させられる満月は、辛さ、悲しみ、痛みを誰よりも感じさせられる。

それが、満月家だった。

「そしたら、行こうか!」

「おう!行こうや!成木さんに会いにな!きよちゃん、宝珠。湿っぽい顔せんでくれよ。俺は、彼氏作れるかどうかやねんからな」

「うん」

私達は、家から出る。

「成木さんの家に迎えに行くの?」

「うん、まだあそこに住んでるみたいでね」

「ほんなら、行こうや」

私は、車を発進した。

「つきました。」

私は、成木さんに連絡をした。

「すぐ、降りてくるみたい。」

「どんな人、イケメンなん?イケメンやなくてもええけど。優しい?」

「二の腕にタトゥーが入ってる」

「タトゥー?なんや!それだけ。」

「魂は、綺麗だよ」

「それなら、ええかな」

湊は、そう言いながら笑っている。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

五年目の浮気、七年目の破局。その後のわたし。

あとさん♪
恋愛
大恋愛での結婚後、まるまる七年経った某日。 夫は愛人を連れて帰宅した。(その愛人は妊娠中) 笑顔で愛人をわたしに紹介する夫。 え。この人、こんな人だったの(愕然) やだやだ、気持ち悪い。離婚一択! ※全15話。完結保証。 ※『愚かな夫とそれを見限る妻』というコンセプトで書いた第四弾。 今回の夫婦は子無し。騎士爵(ほぼ平民)。 第一弾『妻の死を人伝てに聞きました。』 第二弾『そういうとこだぞ』 第三弾『妻の死で思い知らされました。』 それぞれ因果関係のない独立したお話です。合わせてお楽しみくださると一興かと。 ※この話は小説家になろうにも投稿しています。 ※2024.03.28 15話冒頭部分を加筆修正しました。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる

兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。

料理を作って異世界改革

高坂ナツキ
ファンタジー
「ふむ名前は狭間真人か。喜べ、お前は神に選ばれた」 目が覚めると謎の白い空間で人型の発行体にそう語りかけられた。 「まあ、お前にやってもらいたいのは簡単だ。異世界で料理の技術をばらまいてほしいのさ」 記憶のない俺に神を名乗る謎の発行体はそう続ける。 いやいや、記憶もないのにどうやって料理の技術を広めるのか? まあ、でもやることもないし、困ってる人がいるならやってみてもいいか。 そう決めたものの、ゼロから料理の技術を広めるのは大変で……。 善人でも悪人でもないという理由で神様に転生させられてしまった主人公。 神様からいろいろとチートをもらったものの、転生した世界は料理という概念自体が存在しない世界。 しかも、神様からもらったチートは調味料はいくらでも手に入るが食材が無限に手に入るわけではなく……。 現地で出会った少年少女と協力して様々な料理を作っていくが、果たして神様に依頼されたようにこの世界に料理の知識を広げることは可能なのか。

異世界のんびり冒険日記

リリィ903
ファンタジー
牧野伸晃(マキノ ノブアキ)は30歳童貞のサラリーマン。 精神を病んでしまい、会社を休職して病院に通いながら日々を過ごしていた。 とある晴れた日、気分転換にと外に出て自宅近くのコンビニに寄った帰りに雷に撃たれて… ================================ 初投稿です! 最近、異世界転生モノにはまってるので自分で書いてみようと思いました。 皆さん、どうか暖かく見守ってくださいm(._.)m 感想もお待ちしております!

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

処理中です...