上 下
76 / 94
喜与恵と宝珠の視点

なんか、違う

しおりを挟む
喜与恵は、ずっと慌てている。

「久しぶりだね」

「ホンマやで!電話でしか話してなかったから、記憶戻ってよかったわ」

「ってか、彼氏いなかった?」

喜与恵の言葉に、寂しい顔をした。

「20年やで!一緒におったん。何や、親に孫見せたいとか言ってな!若い子と結婚したわ!ほんで、人工受精して見事妊娠したから不倫相手になってやと!しょーもない奴と20年もおったわ」

「酷いね。いつ、別れたの?」

「去年の夏、ほんで、今年の春に不倫相手になってーやって!気心しれてるし、あっちの相性バッチリやからやって!」

「最低だな!」

「せやろ?わかってくれるん、宝珠だけやから!」

彼は、満月湊(まんげつみなと)、満月家(まんげつけ)長男でありながらゲイ。

成木さんに、誰かいないかと相談したら自分が会うと言ってきたのだ!

湊は、喜与恵と同じ歳だ!

見た目は、30代で通るけれど…。

「まさか!成木さんに、みなちゃんを紹介するの?」

「そのまさかだよ!私が、誰かいないかって聞いたんだよ。」

「傷心には、新しい恋やんか!きよちゃんわかってないなぁー。」

「新しいって、そんなすぐに忘れられるの?20年でしょ?」

「忘れられんでも、恋するんや!」

「とりあえず、車に行こうか」

「はいよ」

私は、湊と喜与恵を連れていく。

「20年って、相手も同じ歳だよね?」

「せやで!53歳やん!今さら、子供ってな!アホやろ」

「人工受精って事は、ゲイって」

「ゆうてへんで!あいつ、もう不倫相手見つけよったわ!きしょいな!」

湊は、そう言って笑ってる。

車に乗り込んで、発進する。

「泊まる所は?」

「あー。どっかホテルでええよ」

「家は、駄目かな?喜与恵」

「構わないよ」

怒っていながら、喜与恵はそう言うところは優しかった。

「そしたら、荷物置きに帰ろうか?」

「ええのに、別に!そっか、スーツ着替えなアカンのか」

「持ってきてるの?」

「うん、万珠さんに手合わせにいくつもりやから、持っとるよ。着替えるわ!」

そう言って、湊は笑ってる。

「ゲイでも子供欲しいのん。俺かってわかるで!百合の友達のゲイカップルが、百合の友達のレズカップルに子供産ませとったしな!せやけど、俺はそれを何かちゃうって思ってまうんよな!頭固いやろ?せやから、捨てられたんよな!」

「なんか、わかるよ。私も…」

「きよちゃんは、わかってくれんの?」

「私は、宝珠と私の遺伝子の入った存在が欲しいから…。そこに違う人がはいったら、それは違うから…。」

「せやろ?でもな、別れる前に、彼は、友達のレズカップルに頼んで産んでもらいたい言うてな!ほんで、一緒に育てようって!それは、何かちゃうゆうてもわかってくれんかったわ。何か、自分が惨めに感じたんや!お前には、無理やってゆわれてるみたいで…。しんどかったんや。」

「凄くわかるよ。みなちゃん」

喜与恵は、湊にそう言っていた。

「わかってくれる人がおってよかったわ!百合もわかるってゆうてくれてん。せやけど、そうする人もいるのはわかってんねん。別に、俺はそれがアカンとかは思ってないねん。ただ、俺はそれは違うってだけやから…。俺にとって、それは不正解やねん。」

バックミラーで、ちらりと見た湊は泣いていた。

20年も一緒に居た相手から、突然子供が欲しいと言われ、別の人間との間でもいいと言われた寂しさを考えると胸が締め付けられる。

「みなちゃん、辛かったね」

喜与恵の言葉に、湊は笑ってるようだった。

「アカンな!50回ったら湿っぽくなるわ。せやけど、何か…。お前は、アカンってゆわれたみたいで…。ホンマに辛かったわ!やっぱり、子供はいらん。嘘やでって!笑って帰って来てくれると思っとったのに!湊、嫁が妊娠したから、不倫相手としていようなって笑ってゆわれた時に、もっと惨めになったんや。」

家について、車を停めた。

湊の目からは、涙が流れてきていた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

五年目の浮気、七年目の破局。その後のわたし。

あとさん♪
恋愛
大恋愛での結婚後、まるまる七年経った某日。 夫は愛人を連れて帰宅した。(その愛人は妊娠中) 笑顔で愛人をわたしに紹介する夫。 え。この人、こんな人だったの(愕然) やだやだ、気持ち悪い。離婚一択! ※全15話。完結保証。 ※『愚かな夫とそれを見限る妻』というコンセプトで書いた第四弾。 今回の夫婦は子無し。騎士爵(ほぼ平民)。 第一弾『妻の死を人伝てに聞きました。』 第二弾『そういうとこだぞ』 第三弾『妻の死で思い知らされました。』 それぞれ因果関係のない独立したお話です。合わせてお楽しみくださると一興かと。 ※この話は小説家になろうにも投稿しています。 ※2024.03.28 15話冒頭部分を加筆修正しました。

父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる

兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。

気ままに陰陽師!

海月大和
ファンタジー
彼は“一応”陰陽師。 重要な使命や目的がある、ということもなく。 妖怪『鎌鼬』をお供に従えて、妖絡みのトラブルを解決するのが彼の日常。 ある日、彼はクラスメイトの相談を受けて狐憑きらしき少女の家に向かうことに。漂う不穏な空気。果たして彼は無事に問題を解決できるのか?

拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~

ぽん
ファンタジー
⭐︎コミカライズ化決定⭐︎    2024年8月6日より配信開始  コミカライズならではを是非お楽しみ下さい。 ⭐︎書籍化決定⭐︎  第1巻:2023年12月〜  第2巻:2024年5月〜  番外編を新たに投稿しております。  そちらの方でも書籍化の情報をお伝えしています。  書籍化に伴い[106話]まで引き下げ、レンタル版と差し替えさせて頂きます。ご了承下さい。    改稿を入れて読みやすくなっております。  可愛い表紙と挿絵はTAPI岡先生が担当して下さいました。  書籍版『拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜』を是非ご覧下さい♪ ================== 1人ぼっちだった相沢庵は住んでいた村の為に猟師として生きていた。 いつもと同じ山、いつもと同じ仕事。それなのにこの日は違った。 山で出会った真っ白な狼を助けて命を落とした男が、神に愛され転移先の世界で狼と自由に生きるお話。 初めての投稿です。書きたい事がまとまりません。よく見る異世界ものを書きたいと始めました。異世界に行くまでが長いです。 気長なお付き合いを願います。 よろしくお願いします。 ※念の為R15をつけました ※本作品は2020年12月3日に完結しておりますが、2021年4月14日より誤字脱字の直し作業をしております。  作品としての変更はございませんが、修正がございます。  ご了承ください。 ※修正作業をしておりましたが2021年5月13日に終了致しました。  依然として誤字脱字が存在する場合がございますが、ご愛嬌とお許しいただければ幸いです。

【毎日更新】元魔王様の2度目の人生

ゆーとちん
ファンタジー
 人族によって滅亡を辿る運命だった魔族を神々からの指名として救った魔王ジークルード・フィーデン。 しかし神々に与えられた恩恵が強力過ぎて神に近しい存在にまでなってしまった。  膨大に膨れ上がる魔力は自分が救った魔族まで傷付けてしまう恐れがあった。 なので魔王は魔力が漏れない様に自身が張った結界の中で一人過ごす事になったのだが、暇潰しに色々やっても尽きる気配の無い寿命を前にすると焼け石に水であった。  暇に耐えられなくなった魔王はその魔王生を終わらせるべく自分を殺そうと召喚魔法によって神を下界に召喚する。 神に自分を殺してくれと魔王は頼んだが条件を出された。  それは神域に至った魔王に神になるか人族として転生するかを選べと言うものだった。 神域に至る程の魂を完全に浄化するのは難しいので、そのまま神になるか人族として大きく力を減らした状態で転生するかしか選択肢が無いらしい。  魔王はもう退屈はうんざりだと言う事で神になって下界の管理をするだけになるのは嫌なので人族を選択した。 そして転生した魔王が今度は人族として2度目の人生を送っていく。  魔王時代に知り合った者達や転生してから出会った者達と共に、元魔王様がセカンドライフを送っていくストーリーです! 元魔王が人族として自由気ままに過ごしていく感じで書いていければと思ってます!  カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております!

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

こじらせ中年の深夜の異世界転生飯テロ探訪記

陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中
ファンタジー
※コミカライズ進行中。 なんか気が付いたら目の前に神様がいた。 異世界に転生させる相手を間違えたらしい。 元の世界に戻れないと謝罪を受けたが、 代わりにどんなものでも手に入るスキルと、 どんな食材かを理解するスキルと、 まだ見ぬレシピを知るスキルの、 3つの力を付与された。 うまい飯さえ食えればそれでいい。 なんか世界の危機らしいが、俺には関係ない。 今日も楽しくぼっち飯。 ──の筈が、飯にありつこうとする奴らが集まってきて、なんだか騒がしい。 やかましい。 食わせてやるから、黙って俺の飯を食え。 貰った体が、どうやら勇者様に与える筈のものだったことが分かってきたが、俺には戦う能力なんてないし、そのつもりもない。 前世同様、野菜を育てて、たまに狩猟をして、釣りを楽しんでのんびり暮らす。 最近は精霊の子株を我が子として、親バカ育児奮闘中。 更新頻度……深夜に突然うまいものが食いたくなったら。

処理中です...