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喜与恵と宝珠の視点
喜与恵の痛み
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喜与恵の痛みが、流れてくる。
橋崎先生は、私に言った。
【いつか、幸せを手に入れてもMOON先生。誰かを傷つけるような人間には、ならないで下さいね。子を授かれない事は、望むものにとって、本当に辛い事なのです。】
私は、橋崎先生に頷いたのを覚えている。
「喜与恵、お昼ご飯食べるんだって!」
「成木さんには、連絡してる?」
「うん、ちゃんとしてるよ。」
「なら、よかった。」
喜与恵は、いつも私の体を丁寧に洗ってくれる。
営みをしない私達に、とってお風呂は大切なコミニュケーションの一つだ。
「バスタオルで、拭くね」
「うん」
人間は、なぜ優劣をつけたがるのだろうか…。
宮部さんのように望まない人間も、喜与恵のように望む人間も、何故、報われないのだろうか…。
同じ電車に乗って、同じ駅で降りない私達は、どうして可哀想だと哀れみをもたれ、蔑まれなければならないのだろう…。
「宝珠、拭けないよ」
「ごめん」
私は、喜与恵を抱き締めていた。
望みを叶えてあげられない事が、辛い。
【嫁が、妊娠したんです。不倫相手の子だと100%わかってるんです。あなたも、検査したんでしょ?】
40過ぎのおじさんに検査に行った時に突然話しかけられて驚いた。
私は、幽体だと思っていた。
5年後、あの人はニュースに出てきた。
【三日月さん、やっぱり私ね!許せなかったんです。不倫相手の子を育てられなかったんです。血が繋がってるって怖いですよ!相手は、私の友達でね。五歳の息子の蟹の食べ方が同じだったんです。それでね、やりました。】
一家惨殺事件の犯人になり、自殺した彼が現れて私に話した。
「大丈夫?震えてるよ。」
「大丈夫」
とめてあげたかった。
そもそも、検査結果をしらなければあの人は幸せでいれたのに…。
何故、検査などしたのだろうか?
そんな幽体を沢山見てきた。
【三日月先生、検査をしなければ幸せでした。】
【三日月先生、治療をしなければ幸せでした。】
【三日月先生、妊娠しない理由などいらなかった。】
検査を受けて、治療を受けて、その結果授かる人もいる。
しかし、その一方で、検査を受けて治療しても思い描いた未来を得られなかった人、検査をした事で、うまくいかなくなった人、治療を続けられなくなった人、私は沢山の幽体に話を聞いた。
その悲しみや苦しみや痛みを知った。
「宝珠」
「喜与恵の痛みや悲しみや苦しみの根本を解決出来ない事が悲しい。」
涙がスッーと流れてくる。
「同性を愛するだけで辛いのに、私は子種もない。だから、だから、喜与恵の願いをどんな形でも叶えられないのが辛く悲しい。」
「宝珠」
喜与恵は、私の涙を拭ってくれる。
「喜与恵、生きてる限り苦しむのかな?それなら、こんな拷問はないね。」
「宝珠」
「それでも、一緒にいる時間だけは忘れようね。忘れさせてあげれるようにするから…」
私は、喜与恵にキスをする。
「宝珠」
「喜与恵、私が傍にいるから」
「うん」
喜与恵と何度もキスをした後で、服を着替えてお風呂を上がった。
「何て名前にするの?」
私は、喜与恵から水を受け取って飲む。
喜与恵は、昨日ゐ空さんに渡された二体を動かした。
(う?)
(ううっ)
喜与恵は、また頭を撫でてもらっている。
「宝珠、何て名前がいい?」
「何だろう?ゆっくり考えようか」
「うん。珈琲いれるね」
「うん」
喜与恵は、珈琲をいれてきた。
「はい、混ぜ混ぜして」
(うっ?)
うんうん頷いている。
私と喜与恵のカップに、砂糖を2つ入れて混ぜてくれる。
どうぞと言われた。
「いただきます」
うんうん頷いて、笑った。
私と喜与恵は、珈琲を飲んだ。
「もうすぐ出ようか?」
「嫌だよ。外は、嫌い」
「喜与恵」
「子連れを見ると惨めになるんだよ。だから、嫌なの」
「それでも、彼がね。9時過ぎには来るから迎えに行かなくちゃいけなくてね。ほら、八時だし。」
喜与恵は、時計を見る。
「カラオケとかに行ったら、子供連れいないだろうし。見えないし…。三日月の家に行く?それか、神社で時間を潰して。」
喜与恵は、ポロポロ泣いてしまった。
「何で、こんな優しい喜与恵が苦しまなくちゃならないんだろうね。もっと、優しい世界に喜与恵と生きていたいね。」
私は、喜与恵の手を握りしめた。
二体は、頭を撫で続けてる。
惨めになる。そう言われても、世の中に子連れは多いわけだし。
どうするべきだろうか…。
橋崎先生は、私に言った。
【いつか、幸せを手に入れてもMOON先生。誰かを傷つけるような人間には、ならないで下さいね。子を授かれない事は、望むものにとって、本当に辛い事なのです。】
私は、橋崎先生に頷いたのを覚えている。
「喜与恵、お昼ご飯食べるんだって!」
「成木さんには、連絡してる?」
「うん、ちゃんとしてるよ。」
「なら、よかった。」
喜与恵は、いつも私の体を丁寧に洗ってくれる。
営みをしない私達に、とってお風呂は大切なコミニュケーションの一つだ。
「バスタオルで、拭くね」
「うん」
人間は、なぜ優劣をつけたがるのだろうか…。
宮部さんのように望まない人間も、喜与恵のように望む人間も、何故、報われないのだろうか…。
同じ電車に乗って、同じ駅で降りない私達は、どうして可哀想だと哀れみをもたれ、蔑まれなければならないのだろう…。
「宝珠、拭けないよ」
「ごめん」
私は、喜与恵を抱き締めていた。
望みを叶えてあげられない事が、辛い。
【嫁が、妊娠したんです。不倫相手の子だと100%わかってるんです。あなたも、検査したんでしょ?】
40過ぎのおじさんに検査に行った時に突然話しかけられて驚いた。
私は、幽体だと思っていた。
5年後、あの人はニュースに出てきた。
【三日月さん、やっぱり私ね!許せなかったんです。不倫相手の子を育てられなかったんです。血が繋がってるって怖いですよ!相手は、私の友達でね。五歳の息子の蟹の食べ方が同じだったんです。それでね、やりました。】
一家惨殺事件の犯人になり、自殺した彼が現れて私に話した。
「大丈夫?震えてるよ。」
「大丈夫」
とめてあげたかった。
そもそも、検査結果をしらなければあの人は幸せでいれたのに…。
何故、検査などしたのだろうか?
そんな幽体を沢山見てきた。
【三日月先生、検査をしなければ幸せでした。】
【三日月先生、治療をしなければ幸せでした。】
【三日月先生、妊娠しない理由などいらなかった。】
検査を受けて、治療を受けて、その結果授かる人もいる。
しかし、その一方で、検査を受けて治療しても思い描いた未来を得られなかった人、検査をした事で、うまくいかなくなった人、治療を続けられなくなった人、私は沢山の幽体に話を聞いた。
その悲しみや苦しみや痛みを知った。
「宝珠」
「喜与恵の痛みや悲しみや苦しみの根本を解決出来ない事が悲しい。」
涙がスッーと流れてくる。
「同性を愛するだけで辛いのに、私は子種もない。だから、だから、喜与恵の願いをどんな形でも叶えられないのが辛く悲しい。」
「宝珠」
喜与恵は、私の涙を拭ってくれる。
「喜与恵、生きてる限り苦しむのかな?それなら、こんな拷問はないね。」
「宝珠」
「それでも、一緒にいる時間だけは忘れようね。忘れさせてあげれるようにするから…」
私は、喜与恵にキスをする。
「宝珠」
「喜与恵、私が傍にいるから」
「うん」
喜与恵と何度もキスをした後で、服を着替えてお風呂を上がった。
「何て名前にするの?」
私は、喜与恵から水を受け取って飲む。
喜与恵は、昨日ゐ空さんに渡された二体を動かした。
(う?)
(ううっ)
喜与恵は、また頭を撫でてもらっている。
「宝珠、何て名前がいい?」
「何だろう?ゆっくり考えようか」
「うん。珈琲いれるね」
「うん」
喜与恵は、珈琲をいれてきた。
「はい、混ぜ混ぜして」
(うっ?)
うんうん頷いている。
私と喜与恵のカップに、砂糖を2つ入れて混ぜてくれる。
どうぞと言われた。
「いただきます」
うんうん頷いて、笑った。
私と喜与恵は、珈琲を飲んだ。
「もうすぐ出ようか?」
「嫌だよ。外は、嫌い」
「喜与恵」
「子連れを見ると惨めになるんだよ。だから、嫌なの」
「それでも、彼がね。9時過ぎには来るから迎えに行かなくちゃいけなくてね。ほら、八時だし。」
喜与恵は、時計を見る。
「カラオケとかに行ったら、子供連れいないだろうし。見えないし…。三日月の家に行く?それか、神社で時間を潰して。」
喜与恵は、ポロポロ泣いてしまった。
「何で、こんな優しい喜与恵が苦しまなくちゃならないんだろうね。もっと、優しい世界に喜与恵と生きていたいね。」
私は、喜与恵の手を握りしめた。
二体は、頭を撫で続けてる。
惨めになる。そう言われても、世の中に子連れは多いわけだし。
どうするべきだろうか…。
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