上 下
36 / 94
光珠の視点

最低

しおりを挟む
『さよなら』

「希海さんにヤキモチを妬いたんだろ?自分がしたかったんだろ?また、こんなのでお預けを食らわしていなくなるつもりなのかよ?ちゃんと責任とれよ」

私は、麗奈の手を強く握った。

『離して』

怯えた目で、睨み付けてる。

もっと、嫌いになれ。

私の事をもっと嫌いになってくれ。

「そんな生ぬるいキスで終わらせれるわけないだろ?」

『んんっ、やっ…』

バシン……。

また、頬を叩かれた。

『どうして、酷いよ。光珠。』

「うるさい、黙れ」

『やっ、やめて、んんっ』

バシン……。

『何で、こんな酷い事するの?』

「お前が私に、酷い事を言ったんだよ!わからないのか?21歳で死んだような人間には、わからないよな。所詮、クソガキだったって事だよな。」

バシン……。

『今まで、そんな言い方した事ないよね。こんな酷い事も…』

「今まで?たった、4年しかいなかったのに、私の何を知ってるんだ?一度、結婚したぐらいで私の全てを知ってると思ってるなら大間違いだよ。お前が、私の全てを知ってるわけないだろ。20年も前に、私を捨てて勝手に死んだのだから」

バチン……。

さっきより、強い力で叩かれた。

「テメー。ふざけんなよ。」

わざと、腕を力強く掴んだ。

『やめて』

「うるせー。」

『んんっ、はぁはぁ。やっ…』

わざと舌をねじ込んだキスをする。

ガリっ……。

麗奈に、唇を噛まれた。

「イッ……」

バシン…………

頬を叩いてしまった。

ボタボタと血が、流れる。

『酷い』

こんな終わらせ方しか、出来なくてごめん。

「ほら、指貸せよ。はめてやるから」

『嫌、やめて。そんな風に私の想い出を汚(けが)さないで。』

「つけて、欲しいって言ったのお前だろ?貸せよ」

『嫌よ。やめて!こんなの光珠じゃない。私が、愛した光珠じゃない。』

「知ってるなら、言うなよ。お前が、愛した光珠は20年前に死んだんだよ。お前と一緒に」

『酷い、最低。あんたなんか嫌いよ。どっかいって』

「じゃあ、これは自分ではめるんだな」

私は、麗奈にわざと指輪を投げつけて立ち上がった。

ありがとう、そう言ってくれて。

泣いてるのをバレないようにしながら、立ち上がって歩き出した。

『酷いよーー、あ、ああ』

麗奈を抱き締めてあげたかった。

ごめんねって、言ってあげたかった。

私は、綺麗に終わらせられなかった。

ガチャ……。

「不器用ですね」

「宝珠!!見てたのか?」

「はい。途中からですけど」

「希海さんは?」

「喜与恵とパフェを食べに行きました。」

「聞かれてないなら、よかった。」

「血が出てますよ。」

宝珠に、ハンカチを渡された。

「これで、よかったんだよ。」

「よくないでしょう。こんなお別れは、お互いによくない。」

「仕方ないだろ?私は、麗奈と一日で別れられないんだよ。」

「誰が、一日で別れろと言いましたか?」

私は、宝珠を見つめた。

「妊婦さんじゃない方がお別れをしやすいですか?」

「何を言ってる」

「二条に頼めばいいんですよ。最大一週間しかいれないですが、きちんとお別れしてはどうですか?」

「能力者が、そんな事をしてどうなる。」

「どうなるとは?光珠が、前に進めるだけですよ。」

「希海さんに悪い」

「その宙ぶらりんな気持ちで向き合われている方が宮部さんに悪いと思いますけどね。」

「もう、いいよ。」

歩きだそうとした腕を掴まれた。

「今すぐ戻って、ごめんねと言うべきです。そして、彼女にちゃんとしたお別れをしようと話すべきです。」

「無理だよ。二条さんにお願いしてどうするんだよ。」

「光珠が、前に進めるんです。誰の為でもありません。一度ぐらい自分の為に使ってもらっても罰(ばち)は当たりませんよ。ほら、謝ってきなさい。」

私は、宝珠に肩を叩かれた。

「彼女を殴り傷つける、最低な男として終わりにするのはやめなさい。だから、ほら謝ってきなさい。」

私は、宝珠に背中を押されてゆっくりと歩きだした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

五年目の浮気、七年目の破局。その後のわたし。

あとさん♪
恋愛
大恋愛での結婚後、まるまる七年経った某日。 夫は愛人を連れて帰宅した。(その愛人は妊娠中) 笑顔で愛人をわたしに紹介する夫。 え。この人、こんな人だったの(愕然) やだやだ、気持ち悪い。離婚一択! ※全15話。完結保証。 ※『愚かな夫とそれを見限る妻』というコンセプトで書いた第四弾。 今回の夫婦は子無し。騎士爵(ほぼ平民)。 第一弾『妻の死を人伝てに聞きました。』 第二弾『そういうとこだぞ』 第三弾『妻の死で思い知らされました。』 それぞれ因果関係のない独立したお話です。合わせてお楽しみくださると一興かと。 ※この話は小説家になろうにも投稿しています。 ※2024.03.28 15話冒頭部分を加筆修正しました。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる

兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。

ようこそ異世界温泉宿『日ノ本』へ♨️〜とんでも効能温泉に、美味しいご飯とお酒でおもてなし〜

タジリユウ
ファンタジー
ひっそりとした場所に突如現れた♨️が描かれている暖簾に木とガラスでできている謎の引き戸。 その引き戸を開けば、この世界では見たことがない造りをした宿が現れる。その宿にある温泉は傷を癒やして魔力を回復するだけでなく、高い美肌効果まである。 見たこともない料理やキンキンに冷えたうまい酒、お金を入れれば自動で身体をほぐしてくれる謎の魔道具まで存在する不思議な温泉宿『日ノ本』。 神様からもらった能力で温泉宿を作っていき、訳アリ従業員を仲間に加え、異世界に転生してきた元温泉宿の長男が目指すはスローライフ!                           ※ 【異世界でキャンプ場を作って全力でスローライフを執行する……予定!】書籍化進行中!  https://www.alphapolis.co.jp/novel/776184086/177668488

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

私モブ(幽霊)だよねっ!

弥生 桜香
恋愛
目が覚めたら綺麗な花壇にいた私 そこで出会ったイケメン男子 見覚えがあるような、ないようなイケメン男子遭遇し 違和感を覚える えっ!ちょっと、待ってっ! 嘘でしょっ! 透ける体 浮いている足元 …まさか…私…… 幽霊少女と出会った、イケメン男子 その出会いは偶然か? 謎多き、秘められた物語(ストーリー)が始まった

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

処理中です...