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人形師

小さな人形

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「基本的には、寝てるんだよ。こうやって、肩を叩けば起きる。」

ムクッと起き上がって、私と喜与恵を見つめた。

ニコッと笑って、喜与恵のおでこを撫でている。

「フフフ、可愛い。」

「出来る事は、撫でる事と笑う事、後はほらこういうのをね」

ゐ空さんが、ペンを差し出すと受け取って喜与恵に渡している。

「小人みたいですね」

「そう、それだよ。小人を造ったんだよ。いらないって言われたから、ずっと寝かせられてきたんだけどね。時々、動かしてあげてね。角砂糖をカップにいれて混ぜてくれたり、モカの料理を手伝ったりしてくれていた。だけど、最近解体するか迷っていたんだ。やっぱり、この2体だけを小さいからと特別扱いするわけにはいかなかったから。でも、二人になら任せられるよ。駄目だろうか?」

ゐ空さんの言葉に、私は首を横に振った。

「よかったよ。これで、安心できる。毎日じゃなくていいから、動かしてあげて欲しい。」

「名前は?」

「二人でつけてほしい。私は、つけていないから…。きっと、二人はいい両親になれたね。」

「そうでしょうか?」

「この子達を見る目でわかる。でもね、人間の親になるのが全てではないよ。子をなすことが、全てではない。私は、私の産み出す人形が全て子供だ。どんな風に愛されるかわからない。それでも、二人のように優しくしてくれる人を見るだけで救われるよ。」

ゐ空さんは、そう言って笑っていた。

「少しだけ魔法をかけてあげるよ。」

そう言って、ゐ空さんは2体のお人形の肩を叩いた。

(う?)(うぅ)

うだけで、会話をしてる。

「後は、二人次第だよ。」

2体は、喜与恵を気に入っていた。

「可愛いね」

喜与恵は、いいお父さんになれるよ。私なんかといなければ…。

「宝珠君」

「はい」

「宮部さんにいつか話してあげて欲しい事があるんだけど」

「はい」

ゐ空さんは、喜与恵に聞こえないように私の耳元で話した。

「まさか!!では、光珠の方も…。」

「そのまさかだよ」

その言葉に、喜与恵も気づいた。

「それでは、私達は!」

「三日月の教えでなかったかい?人形師に、辿り着けるのは必要な時だけだって」

「はい、聞いた事があります。」

「では、喜与恵君。君を私の元へ来るようにいったのは?」

「巫女です!!まさか、皆さんの…。」

「未来が、動き出したという事ですよ。」

「それでは、宮部さんは…」

「これからは、幸せになれます。彼女は、もう苦しみや後悔を感じる必要はないのだよ。」

「ゐ空さん、ありがとう。光珠には、もう話すのですね?」

「はい、彼はそれを望んでここにきましたから…。」

「それでは、二人はきちんと向き合えるのですね」

「喜与恵君のお陰ですね。」

ゐ空さんは、喜与恵の頭を撫でる。

(う?)(うう)

喜与恵は、よしよしされている。

「導かれてきたのなら、よかった。」

「あぁ、それともう二人。彼等を知ってますよね?」

私は、窓の外を見る。

「まさか、繋がってるんですね?」

「君が、導いたのですよ。宝珠君。行きましょうか?引き渡しです。」

私と喜与恵は、外に出る。

「三日月さん、今から引き渡しだそうです。」

「宮部さん、相手を見ましたか?」

「いえ、まだです。」

「そう、凄いよ。私と宮部さんがここに、二人を導いたんだよ。驚くよ」

「えっ?誰ですか?」

私達は、外に出る。

「まさか、三日月さん」

「そうなんだよ!皆の未来が動き出したんだよ。」

「それじゃあ、私もですか?三日月さんが、記憶がもどったから」

「そうだと思う!これからは、素敵な未来に進むんだよ」

私は、宮部さんに笑いかけた。

「それでは、行きましょう」

モカさんは、二人に近づいていく。

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